迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

24 / 255
というわけでオーディン戦始まります。


ソリティアの時間と洒落込もうか。

「ふむ」

 

 オーディンは俺の返事に怒る様子もなく顎髭を擦った。

 

「過分なお言葉の多くに感謝痛み入りますが、しかし私は姫様に忠義を誓った身。

 おいそれと鞍替えなどは考える余地もありません」

「成程。仕える者としてよく教育を受けている様だな」

 

 忠誠心の高さに逆に評価を上げたようでオーディンからは不快感を持たれなかった。

 

「だが、 この状況を見て自らの身一つで主の命を救えると気付けぬのは少しばかり視野が狭いようだな?」

「いいえ。寧ろ逆ですよ」

 

 俺は敢えて原作の名言を引用させてもらう。

 

「ハッキリ言うぜ。お前、弱いだろ?」

「……」

 

 オーディンの握る杖がギチリと軋み、空気が物理的な痛みを感じるほどに冷え込みだす。

 

「し、執事…?」

 

 姫様が白目を剝いて泡を吹きそうになってしまっている。

 

 ああ、しまった。

 

 姫様が怪我をしているのを失念していた。

 

「姫様。お手を煩わせるのは心苦しいのですが、アリアス達の介抱をお願い申し上げます」

「ヨロシクテヨ」

 

 何故かカチコチな挙動で動き出す姫様を不思議に思いながらオーディンに視線を戻す。

 

「儂の聞き違いかのう?

 余りに不遜な暴言を聞いた気がしたが?」

「いいえ。貴方の耳は正常ですよ」

 

 煽りを意識しながら俺は嘯く。

 

「貴方の武は城を陥落せしめるほどのものであるのは確かでしょう。

 ですが、いえ、だからこそ私は貴方の弱さを確信致しました」

 

 だってそうだろう?

 

「私だけを欲していたなら、態々兵を派遣せずともましてや武をひけらかす必要も無かった筈。

 そのような労を払わずとも()()()()()()()()()()だけの話なのだから」

 

 デュエルの勝敗に対する絶対遵守の重みこそが遊戯王世界の根底である。

 

 だから、デュエルをすればそれで解決する話だ。

 

「貴方は姫様にデュエルで勝てないと思った。

 だからこそ力で服従させようと兵を用いた。違いますか?」

「……」

 

 お前は姫様とのデュエルから逃げたんだと暗に批判してやると、流石に我慢できなかったらしく心臓を鷲掴みにされるようなプレッシャーを放つオーディンだが、何故か全然怖くない。

 

「良かろう。

 貴様の口車に乗ってやる」

 

 そう言うとオーディンの握る槍がデュエルディスクに変じる。

 

「望み通り貴様をデュエルで屈服させ、軍門の最前列で使い潰してやろう」

「承知致しました。

 では…と、少々お待ちを」

 

 そう言って俺は姫様の下に向かう。

 

「姫様。こちらを預かっておいてください」

 

 そう俺は【ラビュリンス】と【霊使い】のデッキを姫様に預ける。

 

「執事!? 貴方まさか!!??」

()()を戦に用いるわけには参りません。

 ですから万が一の際はカードと共にお隠れ下さい」

 

 負けるつもりは微塵もない。

 だが、万が一が起きた際の保険は必要だ。

 

 姫様の御身は元より、神殺したる【アーゼウス】と【あのカード】が神の手駒に成り下がるなど冗談では済まないだろう。

 

 口に出すわけにはいかないと歯を食いしばる姫様に優しく笑みを向けてから俺は【ドリアード】が装填されたデュエルディスクを構えオーディンに対峙する。

 

「別れの言葉は済ませたようだな」

「いいえ。

 勝利をお約束してきた次第です」

 

 あくまで取るに足らないと言う態度を崩さない俺にオーディンは言う。

 

「その不遜を悔いるがいい」

「冗談が下手だな爺。

 惚れた女に怪我させたテメエは伊達にして返してやるよ!!」

 

 あ、感情任せにし過ぎて()()()()が抜けてしまった。

 

「惚れっ!!??」

 

 なんか聞こえた気がしたが、ディスクの表示に意識が向いていた俺は気にしないで最初の5枚を引く。

 

 先攻は……俺だ!!

 

「俺のターン!!」

 

 堂々名乗り手札を改める。

 

【一時休戦】

【星杯を戴く巫女】

【ローンファイア・ブロッサム】

【予想GUY】

【墓穴の指名者】

 

 手札に直接ドリアードが入らなかったことを除けば完璧な手札だ。

 

 このデッキは正確に名付けるなら【星杯軸リンク多用型ドリアード高速召喚デッキ】とでも名付けられるものなのだが、現代遊戯王の視点から見ると、欠点だらけの不出来な代物と評価されてしまう。

 

 理由は大きく3つ。

 

 1つ目、初動がなければ全く動かない事。

 

 これ自体は多くのデッキにも言えることではあるのだが、このデッキは通常モンスターの【星杯に選ばれし者】か【星杯を戴く巫女】のどちらか、或いは【予想GUY】と【ローンファイア・ブロッサム】か【捕食植物オフリス・スコーピオ】の四枚が其々1枚は無ければろくな展開さえ叶わないという事故要素満載なのだ。

 

 2つ目、デッキに手札に来てはならないカードが3枚潜んでいる事。

 

 初動を揃える可能性を少しでも高め、デッキ枚数の圧縮するために1枚しか入れていないデッキから呼び出さなければならない展開要員が3枚も潜んでいるのだ。

 初手で1枚でも引いたらもう終わり。

 展開は中途半端に終わりドリアードを出す前に蹂躙されて終わる。

 

 3つ目、妨害が来たら終わり。

 

 このドリアードデッキはソリティア要素が非常に高く、遊戯王に於いては非常にリスクが高い。

 

 うらら、ヴェーラ、泡影、うさぎ、ニビル。

 

 うららヴェーラうさぎは墓穴の指名者でなんとかなる可能性がまだあるが、ニビルと泡影は対処のしようが無く使われたら即死するカードである。

 

 そんな不確定要素と相手の手札誘発がない可能性を掻い潜らねばならないお祈りデッキ。

 

 それが俺のドリアードデッキの正体なのだ。

 

 だが、今はその不確定要素は無くなった。

 

 後は回すだけだ!!

 

「俺は先ず、【一時休戦】を発動する」

 

【一時休戦】

通常魔法(制限カード)

(1):お互いのプレイヤーは、それぞれデッキから1枚ドローする。

次の相手ターン終了時まで、お互いが受ける全てのダメージは0になる。

 

 地雷を引くリスクはあるが、不思議と使うべき予感がしたため発動する。

 

「ふむ。小癪な真似をする」

 

 よっぽどいい手札らしいオーディンは嘲笑うようにそう言う。

 

「更に俺は【予想GUY】を発動。

 デッキから通常モンスター【星杯に選ばれし者】を特殊召喚する」

 

 そう宣言しデッキに手をかけた瞬間オーディンが手札を1枚公開した。

 

「ならばその発動に合わせて儂は手札から【増殖するG】を切らせてもらおう」  

 

【増殖するG】

効果モンスター

星2/地属性/昆虫族/攻 500/守 200

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分・相手ターンに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。

このターン中、以下の効果を適用する。

●相手がモンスターを特殊召喚する度に、自分は1枚ドローする。

 

「増殖するGだと!?」

 

 なんでこの世界の住人が増Gをデッキに入れているんだ!!??

 

 以前も言ったが増Gは買取金を要求されるぐらいこの世界では嫌われているカードだ。

 

 【ラビュリンス】に入れようとすれば姫様が泣きギレするぐらい怒り狂い、昆虫デッキにさえ「他ならまだしもアイツだけはちょっと…」と言われるぐらい嫌厭されている。

 

 なにせ…

 

 ザワッ!

 

 視界の通らない場所でナニカが蠢く音が響く。

 

「ヒィッ!!??」

 

 姫様と意識を回復させたアリアス達が抱きしめ合うように身を寄せてそのナニカの接近に全力で怯え始める。

 

 発動すると()()が起こり、視覚的な大惨事が発生するのだ。

 

 なんでこれを入れられるのはG愛好家か実用性にしか目を向けない俺ぐらいなものなのである。

 

「よもやそのカードを入れておられるとは」

「たしかに不愉快ではあるが、世界の安寧のため使える物は使うべきであろう?」

 

 そう嘯くオーディンの顔には怯える姫様たちへの愉悦が伺えた。

 

 つまり、このクソジジイは姫様への嫌がらせのために増殖Gをデッキに入れたと。

 

 ブチ殺すだけじゃ済まさねえぞ。

 

 それはそれとして止めねば不味いのは事実だ。

 

 ドリアードデッキは大量のカードを墓地に叩き込む為に特殊召喚を多用するソリティアデッキだ。

 増Gを止めねば手札は二十枚を楽に超えて…ん?

 

 手札が沢山?

 

 ……………。

 

「姫様」

「なによ!?

 早くコイツラをなんとかしなさい!!」

 

 奴等の気配に怯える姫様に胸を痛めつつも、俺はその感情に蓋をしてニッコリと笑い掛けた。

 

「姫様はとても強い娘ですから、少し怖いのぐらいへっちゃらですよね?」

「ッッッッッ!!??」

 

 何を言わんとしているのか理解したらしい姫様達が乙女にあるまじき悲鳴を上げる。

 

「失礼しました。

 チェーンはありませんので逆順処理で増殖するGの効果適用後に【星杯に選ばれし者】を召喚します」

 

 フィールドに新品の鎧と剣を装備した少年が現れる。

 

【星杯に選ばれし者】

通常モンスター

星3/炎属性/サイキック族/攻1600/守 0

機怪の残骸で武装する、真っ直ぐな心の少年。

星辰の森に古くから伝わる『星の勇者』に憧れており、

妖精リースの願いを受けて、光を授かった仲間たちと共に七つの星遺物を解き放つ旅に出る。

 

”星明かりの勇者 掲げし剣に光を束ね 大いなる闇を討ち祓わん”

 

「では、遠慮なく一枚引くかのう」

 

 訝しみながらも効果により手札を増やすオーディン。

 

 ククク…。

 

 さあ、テメエに()()って奴を教えてやるよ。

 




何が起きるかは、MDユーザーならもう分かるよね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。