迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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デュエル回でふ。


姫様は『家族』を愛しているし従者も姫様を敬愛しているがそれはそれとして偶にやらかすのは(re 【中編】

「し、しちゅじさん…?」

 

 呼び出された執事は目に見えるほどドス黒いオーラを纏った姿でデュエルディスクを構え姫の前に立っていた。

 

「姫様」

「ひゃい!?」

「後で報告しなければならないことがあります。

 それと申し訳ありませんがいつもより乱暴になると思いますがそこは御容赦を」

 

 声は落ち着いたように平坦だが、だからこそ津波の前の海水が下がった海岸のようなおそろしさを孕んでいた。

 

(どういう事よアリアーヌ!?

 あれ絶対デッキを持ってかれた事を怒ってるわよ!?)

 

 実際はアリアスの悪戯(サプライズ)によりマジでデッキを無くしたと思い込んだ執事が自責により闇堕ちしかけているだけなのだが、外野から見たらその違いはあまりにも見分けが付きづらかった。

 

「では始めましょう。

 先攻はいつも通り姫様からで?」

「い、いえ。

 今日は嗜好を変えて貴方からにしようかしら」

 

 黒過ぎる執事にビビり散らかしながらも外面を保ちそう嘯く姫に僅かに訝しかりながらも「畏まりました」と執事はデッキトップ五枚を引く。

 

「「デュエル!」」 

 

「私のターン。

 スタンバイフェイズからメインフェイズまでになにかありますか?」

「私は…」

 

 執事のいつもの問い掛けに手札を改める。

 

【ヴィジョン・リゾネーター】

【白銀の城の竜燭塔】

【迷宮城の白銀姫】

【白銀の城の狂時計】

【マルチャミー・フワロス】

 

 理想的な手札。

 フワロスが弾かれてもそれは同時に【ビッグウェルカム・ラビュリンス】がほぼ確定で通るということでもあるためむしろ弾けとさえ思える。

 うららでフワロスを弾き【ヴィジョン・リゾネーター】を墓穴で潰され【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を【屋敷わらし】でダメ押しする完封パターンもあり得るが、その場合は白銀姫が居るため執事の耐久リソースが大幅に削れた状態の執事に次ターン以降のリソース勝負を押し付けることでカードパワーで押し潰す方向に切り替えるだけだ。

 

「そうね。今はどう動くかを見ていましょうか」

「ではスタンバイフェイズに手札から【マルチャミー・プルリア】を発動。

 なにかありますか?」

「そうね…」

 

 通さざるを得ないが動かねば白銀姫で一枚。

 考えていたアリアーヌからの再召喚を実行すれば更に一枚引かせてしまう。

 カードパワーが勝るから余裕?

 エースモンスターをガメシエルに食われたことない奴だけが言え。

 

「じゃあ、その誘いに乗ってあげるわ。

 手札から【白銀の城の狂時計】の効果を発動するわ。

 この子を墓地に送ってこのターン中私は【ラビュリンス】モンスターがいる場合伏せた罠カードを即座に使用可能にするわ」

「やはり来てますよね。

 チェーンはありません」

「ではその効果にチェーンして手札から【迷宮城の白銀姫】の効果を発動よ」

「そちらもありません」

「じゃあチェーンして【白銀の城の竜燭塔】の効果を発動。

 手札の【ヴィジョン・リゾネーター】を墓地に送りデッキから【ラビュリンス】魔法罠カードをセットするわ」

「【ヴィジョン・リゾネーター】!?

 何故そのカードを…いや、チェーンありません」

「そして更にチェーンして【マルチャミー・フワロス】の効果を発動よ!

 このターン中貴方はデッキ・エクストラデッキから特殊召喚する度に私は一枚ドローするわ!」

「フワロスまで…」

 

 呆然とする余りチェーン確認の言葉さえ出なくなる執事に流石におかしいと思い姫は問いを口にした。

 

「執事? あれ? 手紙を読んでないの?」

「手紙…ですか?」

「アリアーヌが貴方のデッキを持っていくって手紙を残したって言っていたのだけど…」

 

 そう語る内に執事の闇が薄れ、ドッと疲れた様子で肩を落とした。

 

「そう、だったのか…」

「その様子だと読んでないみたいね」

「はい。その様な紙は見ておりません。

 故に無くしたのか誰かに盗まれたのかと気が気ではありませんでした」

 

 完全に気が抜けた様子で上を仰ぐ執事に姫は殺気立っていた理由を理解し自分達に怒っていたのではないと安心する。

 

「流石にそんな悪戯をする子がいるはず無いから風で飛んでしまったのか誰かが誤って廃棄してしまったのかしらね」

「そうでしょうね。

 これが悪戯なら流石に俺でも加減はしますが制裁(ディアハ)案件ですよ」

 

 洒落にならなくなる前にフォローするつもりでそれまで愉しもうと覗き見していたアリアスが脂汗を流しながらどう嘘を言わずに誤魔化すか全力で頭を回しているなど気付きもしないで姫と執事は穏やかさを取り戻し安堵し合う。

 

「という事はそのデッキは俺の【ラビュリンス】なのですか?」

「そうよ。

 アリアーヌが私の【ラビュリンス】にカードを加える場合の参考にと持って来たのを、折角だから完成しているデッキを実際に回してどう変わるか確かめてみようと思って使わせてもらっているわ」

「然様ですか。

 なればこそこれ以上無様は晒せませんね」

 

 スッと、執事が先程とは全く別の抜身の刀身を思わせる殺意を纏う。

 

「私がこれから挑むのは私が『最強』であれと願い組んだデッキ。

 故にこそ『最高』のデッキと信じるこのデッキで挑むからには一切の油断も予断も赦されない。

 叶わぬは承知で申します。

 そのライフポイント()、頂きます」

 

 張り詰めた空気に向けられたいつにも増して鋭い視線に姫はぞくぞくと背筋を震わせ紅潮する頬を自覚しながら嘯く。

 

「執事ってばなんて堪らない目をするのかしら。

 そんな目で迫られたら貴方の全てを受け入れたくなるじゃない」

 

 下腹の未知の疼きと高鳴る胸に姫は蕩けながら手を伸ばす。

 

「旦那様。血に塗れた悪魔の闘い(踊り)を一曲宜しいかしら?」

「ええ。味を踏まぬよう全力でデュエルさ(踊ら)せて頂きます」

 

 死力を尽くすと口上を交わし、執事は先程の処理へと告げる。

 

「フワロスにチェーンはありません。

 逆順処理を開始します」

「なら、フワロスの効果を適用後竜燭塔の効果で【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をセット。

 そして鎧の私を守備表示で特殊召喚してから狂時計の効果でセットした罠カードを発動可能にするわ」

「最後にプルリアの効果が適用ですね」

「そして墓地に送られた【ヴィジョン・リゾネーター】の効果と狂時計の効果を発動するけどチェーンはあるかしら?」

「…【クリムゾン・ヘルガイア】は持たせるとリソース差が無視出来ない。

 【ヴィジョン・リゾネーター】に【灰流うらら】をチェーンして発動します」

「あら残念」

 

 これで【ビッグウェルカム・ラビュリンス】が通る可能性が大幅に高まった。

 

「じゃあ狂時計を守備表示で特殊召喚するわ。

 折角だからこのまま【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を発動するわ」

「っ! チェーンはありません」

「ならば白銀姫の効果を発動!

 デッキから好きな罠カードをセットするわ!」

「その効果にチェーンして手札から【幽鬼うさぎ】を捨てて効果を発動!

 姫を破壊する!」

「そう来るか!!??」

 

 フィールドにセットカードは無いため破壊耐性を持っていない白銀姫は破壊される。

 いそいそと新しい罠を用意していたフィールドの姫が足元から顔を出したうさぎにびっくりして自分で設置した落とし穴を起動してしまいその穴へと落ちていく。

 

「だけどデッキから【列王詩篇】をセットしてその後【ビッグウェルカム・ラビュリンス】の効果で【白銀の城のラビュリンス】を特殊召喚して狂時計を手札に戻すわ!」

 

 狂時計が独りでに倒れ穴へと落ちるとフンスと鼻を鳴らしながらドレスに召し直した姿で狂時計の蝙蝠に引っ張られて穴から出てくる姫様。

 

「効果解決後墓地の竜燭塔の効果を発動!

 更にチェーンして私の効果を発動!

 私の効果によりチェーンは組ませないわ!

 手札を一枚破壊し竜燭塔を手札に戻すわ!

 私は右端を破壊!」

「忘れがちだけど強力な効果ですよね!?」

 

 残っていた蝙蝠達に命じて執事の手札から【妖精伝姫シラユキ】を墓地へと落とす。

 

「さあ、私に出来ることは全てやらせて頂いたわ。

 ここからどう為さるかお見せ頂きましょう旦那様?」

 

 邪悪に笑い煽る姫に執事も口の端を三日月に歪めて嗤う。

 

「ええ。ええ。存分に踊らせて頂きますよ。

 メインフェイズ!

 手札から魔法カード【強欲で貪欲な壺】を発動!デッキトップ10枚を裏側除外し二枚ドロー!

 手札から【憑依装着−エリア】を召喚!更にフィールドに魔法使い族が居るため手札の【デーモン・イーター】を特殊召喚!

 二体でオーバーレイ・ネットワークを構築!

 来い!世界の未来を見守る闇より生まれし光!

 エクシーズ召喚!ランク4!【励輝士 ヴェルズビュート】!!」

 

 召喚された少女と使い魔が黄金の銀河へと身を投じ、その銀河から蝿をモチーフとする白い剣士が現れた。

 

「あ、ヤバっ!? フワロスの効果で一枚ドロー!」

 

「このタイミングで使える【列王詩篇】は一枚かつ既にセット済み!

 私のデッキに今ヴェルズビュートを止める術はない!

 効果を発動!薙ぎ払えヴェルズビュート!!」 

 

 主の命を受けヴェルズビュートが手にした剣を逆手に持ち変えて地面に突き立てる。

 すると大地が爆ぜ、その衝撃でフィールドは全て破壊され尽くした。

 

「ターンエンド。

 さあ、弱者の足掻きをご覧下さい」

 

 愉悦に嗤う執事に姫は高鳴る胸の鼓動で耳が痛くなりそうになりながら笑みを蕩けさせ応える。

 

「ええ。存分に嬲らせて頂きますわ旦那様!

 私のターン!ドロー!」

 




さあ、こっからどう巻き返そう←

勿論アリアスもこのまま素直に無罪放免にはなりませんよ。
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