迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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という訳で色々決着です。


姫様は『家族』を愛しているし従者も姫様を敬愛しているがそれはそれとして偶にやらかすのは(re 【後編】

 姫の手に入って来たのは【トランザクション・ロールバック】。

 

(竜飾塔のコストに使えば【ビッグウェルカム・ラビュリンス】二連打も可能だけどそれだとトドメは刺せないのよね)

 

 先程引いたのは【三戦の才】であり引きは優秀だがタイミングが些か噛み合っていない。

 

(一発目の【ビッグウェルカム・ラビュリンス】で私を呼び出しヴェルズビュートを破壊しその後バトルフェイズでダイレクトアタック。

 二発目を使ってアリアーヌを呼び出し私の再攻撃を可能にしても執事の墓地のシラユキが起動効果で出て来て私を裏守備表示にしてくるから耐えられちゃう。

 …あ。【トランザクション・ロールバック】で【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をコピーした後私の破壊効果を使わず【ビッグウェルカム・ラビュリンス】の墓地効果でヴェルズビュートをエクストラデッキにバウンスしちゃえば除外する枚数が足りなくなるからシラユキは喚べないじゃない)

 

 普段なら不可能な通常効果と墓地効果の同一ターン中の使用が可能と気付き姫は感嘆の念を抱く。

 

(って事は、竜飾塔で持ってくるのは【ウェルカム・ラビュリンス】にして、ロールバックでアリアンナを喚んでから私の鎧を呼び出してから【ウェルカム・ラビュリンス】を使って新たな罠を仕込むこともできるし、アリアーヌを喚んで【ウェルカム・ラビュリンス】を効果のコストにしちゃえば【クリムゾン・リゾネーター】を喚んで下僕を手札に増やしてからエクストラデッキから【レッド・ライジング・ドラゴン】を経由して【えん魔龍レッド・デーモン・アビス】か【魔王龍べエルゼ】を喚ぶなんて事も出来ちゃうし、アリアーヌで【深淵の結界像】を出してシラユキを出させないって事もさせちゃえるし、アリアーヌから【魔界特派員デスキャスター】で私を蘇生させるなんて事も可能なんて凄いわ執事!)

 

 デッキの60枚の中にふんだんに用意された選択肢の数々に姫は驚きと興奮で胸を熱くさせる。

 

(凄い凄い! こんなに沢山の『おもてなし』を仕込んでいるなんて執事ってばどれだけ私を喜ばせば気が済むのよ!?)

 

 研ぎ澄まされた殺意の中に見え隠れする()()と罠以外の選択肢からひろがる数多の可能性に姫は内心で燥ぎまくる。

 

「姫様?」

「なにかしら執事?」

「いえ。ドローフェイズから止まっているようですのでどうしたのかと」

「あらやだごめんなさい」

 

 【ラビュリンス】に固執するあまり見えていなかった可能性の数々を自ら体感した興奮で時を忘れてしまっていた。

 

「凄いわよ執事!

 貴方の作った【ラビュリンス】は私よりずっと自由なのね!」

「姫様…」

 

 本人は全く自覚していないだろう自らを皮肉するような言葉を嬉しそうに告げる姿に、執事は衝動的に「城の外に出てみますか?」と喉から出そうになった言葉を封じ込める。

 

(忘れたのか俺は!?

 この世界は優しい世界(ディ◯ニー)なんかじゃない。

 残酷な世界(グリム童話)なんだ。

 赤ずきんを救う猟師も居ないし、ラプンツェルは再会した王子に失望して魔女の元へと帰ってしまうような世界なんだぞ!!)

 

 『ラビュリンス』がコメディに溢れていてもそれを囲う世界は優しさより残酷さが強い場所だ。

 【白銀の迷宮城】に守られた文字通りの箱入り娘である姫様が外の世界で生きていけるような生易しい世界ではない。

 

「でも、執事とこうしてデュエルしている方が自由よりずっと素敵に思うわ!」

「…然様で御座いますが」

 

 そう無邪気に笑う姫様に執事は静かにそう言うしか無かった。

 

「じゃあ行くわよ執事!

 貴方に相応しい最高の『おもてなし』を見せてあげる!

 スタンバイフェイズ!メインフェイズ!

 私は手札から【白銀の城の狂時計】を手札から捨てて効果を発動!

 それにチェーンして手札の【白銀の城の竜飾塔】の効果を発動よ!

 竜飾塔と手札から【トランザクション・ロールバック】を墓地に送ってデッキから【ウェルカム・ラビュリンス】をセットするわ!

 そして手札から【ラビュリンス】カードを墓地へ送ったことで墓地から狂時計を特殊召喚!

 その後墓地の【トランザクション・ロールバック】の効果を発動!

 ライフポイント半分を対価に墓地の【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をコピーするわ!」4000→2000

「ピンポイントにトラザク引くとは流石姫様です!」

「オーホホホ!そうよもっと褒めなさい!

 私はデッキから【白銀の城の従者アリアーヌ】を攻撃表示で特殊召喚してフィールドの狂時計を手札に戻すわ!

 それによりアリアーヌの効果が発動!

 更にチェーンして墓地から竜飾塔の効果も発動!

 竜飾塔を手札に戻した後カードを一枚ドローして魔法罠カードをせっとするか悪魔族モンスターを特殊召喚出来るわ!

 …ふふ。やはり私は最強よね!

 引いてきた【白銀の城のラビュリンス】を攻撃表示で特殊召喚するわ!」

 

 姫様素引きは事故と言いますと内心で突っ込みつつ執事はそこで違和感に気付いた。

 

(真ん中は空いているのに右隣に姫様を喚んだ?)  

 

 一番目立つ真ん中に置かないと必ず不機嫌になる姫様がそこを態と避けたことに違和感を抱きつつ姫が何を為さるかを執事は黙って見届ける。

 

「アリアーヌの効果を発動!

 フィールドにセットした【ウェルカム・ラビュリンス】を墓地に送りデッキから【白銀の城の従者アリアンナ】を守備表示で特殊召喚よ!」

 

 アリアーヌに呼び掛けられ面倒そうにアリアンナがフィールドに立つ。

 

「特殊召喚されたアリアンナの効果で私の鎧を手札に加え効果で自身を守備表示で特殊召喚するわ!」

 

 空いた真ん中を挟んでドレスを纏う姫と鎧を纏う姫の二人が並び、フィールドの両端にそれぞれの姫に傅く形でアリアーヌとアリアンナが並ぶ。

 

(成程。シンメトリーを意識したのか)

 

 双璧を成す二人の姫とその後ろに控える妻たる姫の姿は中々に壮観であった。

 おそらく真ん中にアリアスを喚んでフィニッシュは『ラビュリンス』全員集合の形にするのだろうと執事は想像した。

 

「ふふふ。

 これで墓地の【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を使えばリーサルは確定」

「ええ。

 まさか見ているだけになるとは思「だけど!」」

 

 執事の感想を遮り姫が嗜虐的に笑みを深くする。

 

「私の『おもてなし』は此処からが本番よ!

 アリアーヌとアリアンナでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

「姫様がエクシーズ召喚を!?」

 

 出来るけどやらないだろうと思っていた執事の前でアリアーヌとアリアンナの二人の下僕が黄金の銀河へと身を投じる。

 

「さあ!行くわよ執事!

 エクシーズ召喚!ランク4!【レイダーズ・ナイト】!!」

 

 黄金の銀河が爆ぜ中から鋼鉄の騎馬を駆る黒い騎士が二人の姫の間に降り立った。

 

「この布陣…まさか姫様!?」

「そのまさかよ!【レイダーズ・ナイト】の効果を発動!

 エクシーズ素材を一枚墓地に送り更なるエクシーズ召喚を行いますわ!」

 

 騎馬の首のマフラーから炎が噴き出し渦を巻いてレイダーズ・ナイトを覆い隠す。

 

「ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!

 来なさい執事の『最強』!

 エクシーズ召喚!ランク5!【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】!!」

 

 炎の渦が爆ぜ、その中から黒と紫を基調とする鋼鉄の武装を己の血肉とする龍がフィールドに現れ咆哮を轟かせた。

 

「貴方は私が家令全員を揃えると思ったのでしょうが、貴方に相応しい『おもてなし』はこれよ!!

 どうかしら執事?」

 

 執事が『最強』と信じる存在が姫を護るように立つ姿に、執事は声を抑えきれず笑い出した。

 

「これはやられました!

 このような『おもてなし』をされては私程度の語彙では素晴らしい以外何も申せませんよ!」

 

 勝つだけならもっとスマートにやれるにも関わらず、態々()()()()()()アークリベリオンを喚び出したことで執事は完全敗北を受け入れてしまった。

 

「さあ行くわよ執事!

 【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】の効果を発動!

 エクシーズ素材を一枚取り除きフィールドのモンスター全ての攻撃力を合算させるわ!

 それにより【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】の攻撃力は10700ポイントになるわ!!」

 

 高々とアークリベリオンが咆哮を上げその身に敵味方全ての力が集約された。

 

「そして墓地の【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を除外して効果を発動!

 ヴェルズビュートをエクストラデッキに戻させるわ!」

「まあ、そうですよね」

 

 守備表示で引き攣った笑いを浮かべていたヴェルズビュートがその宣言にいい笑顔で全力で敬礼すると足元がパカリと開いて敬礼したままフィールドから姿を消した。

 

「しちゅじ。流石に忠誠心無さすぎない?」

「相手がアークリベリオンだからやむ無しかと」

 

 効果を無効にされていなくても効果破壊耐性があるアークリベリオンにはヴェルズビュートではどう足掻いても死ぬ以外選択肢が無いのと普段のデュエルなら似たような状況で時間稼ぎの壁役になってもらった際はちゃんとしていた事から先程の反応は『ラビュリンス』との対戦故の悪ノリだったのだと許す事にした。

 

「まあ、執事がそれでいいならいいわ。

 さあ、バトルフェイズよ!

 やっておしまい【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】!!」

 

 本来の使い手が相手だからこそ無様は見せられないとアークリベリオンが全力を振るうため鋼鉄の翼を開きアフターバーナーへと力を溜める。

 

「見せてくれるのはいいが、誤ってやりすぎるなよ?」

 

 『そんなヘマはするか』と言う様に喉を鳴らしアークリベリオンが執事へと吶喊しその身を引き撥ねた。

 

「ぐあぁぁぁぁぁっ!!??」4000→−6700

 

 派手に吹き飛ばされた執事の身体が地面に叩きつけられる。

 

「さすが…おれの『最強』…いい、いちげきだっ…たぜ……」

 

 ガクリと力尽きる執事にやり過ぎたと気付いた姫が青褪めながら駆け寄る。

 

「しちゅじぃぃ!?

 しんじゃだめよ!!?? わたくしをみぼうじんにするなんてころしちゃうんだからね!!??」

 

 パニックで幼児化して目茶苦茶喚く姫と完全に意識を飛ばした執事しかおらず誰もツッコミを入れるものがいない中、この機を逃さんと颯爽とアリアスがその場に現れる。

 

「何かありましたか姫様!?」

「ありあしゅ! しちゅじがしんじゃうかも!?」

「失礼します……ふむ。

 ご心配無用です姫様。 少しダメージが大きかったようですが致命には至っておりません」

「しょ、しょう、なのね…」

 

 執事は死なないと言われ安堵してへたり込む姫を横にアリアスは手早く治療を済ませる。

 

「う、うぅ…」 

 

 そうして数分後には意識を取り戻した執事が呻きながら起き上がった。

 

「一万超えは三途の川が見えかけましたよ」

「ごめんぬ執事。

 愉しくなって手加減し忘れちゃったわ」

「まあ、デュエルではままありますから大丈夫ですよ」

 

 リアルファイト(ディアハ)に比べれば全然問題無いとそう宥めると姫がデッキを執事に返す。

 

「先に返しておくわ。

 今度借りる時はちゃんと口頭で断るようにさせるから」

「そうして頂けると安心します」

 

 デッキを受け取り大切にケースに仕舞うと、そこで意を得た様子でアリアスが言った。

 

「それなんですがお二人共。

 手紙を無くしたのは私が原因なのです」

「「はい?」」

「実は、必要な書類を取りに執事君の部屋に入った際にうっかり火の魔術を使ってしまいまして、その際に燃えてしまった紙にアリアの名前が書かれていたのでおそらくその紙が件の手紙だったのかと」

「ならなんですぐに執事にその事を話さなかったのよ!?」

 

 自分が犯人だと自白したアリアスに凄く怖かった事を思い出してお冠になる姫にアリアスは申し訳なさそうに振る舞いながら嘯く。

 

「いや、流石に自白するには恥ずかしい理由だったのでつい証拠隠滅をしてしまったので…」

「全く…」

 

 おそらく調整用に広げていたカードの中の【増殖するG】を不意討ちで見たとかその辺りなのだろうと考えた執事は怒る気力を萎えさせる。

 

「とはいえ執事君に迷惑を掛けたのは事実だからね、それなりの罰は受けるつもりさ」

 

 自白しつつ自ら罰を言い出すことで軽いもので済ませようとするアリアスに対し姫が罰を告げた。

 

「アリアスの隠してる高いお酒を執事にあげなさい」

「え゛?」

「ああ。ならロマネ・コンティの1945年のジェロボアムボトルを貰おうか」

「執事君流石にそれは!?」

 

 現存本数は無いとさえ言われる秘蔵中の秘蔵のワインを指名されさしものアリアスも拒否の姿勢を見せるが…

 

「ねえ執事。それ凄いの?」

「とてつもなく凄いです」

「私も飲んでみたいわ!

 アリアス。寄越しなさい」

「……畏まりました」

 

 姫の御命令とあれば『アリアドネの姉妹』に拒否する権利は無い。

 あまりにも高過ぎる代償を支払った報いにアリアスはディアハとどっちがマシだったかなぁ…と内心でさめざめと涙を流すのだった。




アリアスは命の代わりにもっと重いものを失いました。
そしてロマネ・コンティは殆ど姫様が飲んじゃいました。

最近引っ越しすることになり諸々忙しいため次回もまた遅くなふと思います。
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