迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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お待たせしました。
これにて決着です。


手札誘発が無いのは引けないほうが悪いのが遊戯王。

「僅か3枚のカードを用いるのみで本来手を携えるはずのない数多の種族を纏め上げ、呼び出すのに多くの代償を支払わねばならぬ筈の精霊の管理者と終末を祓う異界の騎士を最初の一手に呼び出すその手腕、見事であった」

 

 純粋な称賛を贈ってきたオーディンに俺は一礼する。

 

「称賛を賜り光栄の至り」

「だが、対価は決して安くは無いぞ?」

 

 そう20枚まで膨れ上がった手札を見せつける。

 

「貴様の切り札は確かに脅威だと認めよう。

 特殊召喚された相手に必ず勝つ異界の騎士。

 特殊召喚そのものを禁じる精霊の管理者。

 儂のデッキからしてみれば正に天敵と言って差し支えない」

 

 言うてこのデッキも通常召喚しかしない【帝】と【ふわんだりぃず】相手だと餌にしかならないんだけどな!!

 

「しかし、場に居なければ恐るるに足るまい?

 貴様の献身がその者たちの命脈を断つ手段を儂に齎しおったわ」

 

 クツクツと笑いを零すオーディン。

 

 …不味い。

 

 本来ならば『星杯を戴く巫女』を2体目のイムドゥークにリンク召喚させ、ファイアウォールと一緒に【ペンテ・スタッガー】にリンク召喚させて更に2枚引かせ手札を22枚にするはずだったのだが…

 

「さあ、ターンを渡すがよい。

 神に歯向かう愚かしさをしっかりと教えてやるわい」

 

 あ、勝ったわ。

 

「おや? 何を勘違いなされておいでなのですか?」

「なんだと?」

「まだ私のターンは終わっておりませんよ?

 私は手札から【手札抹殺】を発動します!!」

 

【手札抹殺】

通常魔法(制限カード)

(1):手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。

その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

「手札抹殺だと!?

 まさか貴様、最初からこれが狙いだったのか!!??」

 

 一時休戦で引いた時には外れ引きかと思ったが、クソジジイが増Gを使った瞬間このカードはプライドを徹底的に否定する最高の一枚に見えた。

 

 驚愕しながらもオーディンは手札の1枚を引き抜き俺に開示する。

 

「そのような不遜が叶うと思うな!!

 儂は【灰流うらら】をチェーンして手札抹殺を止める!!」

 

【灰流うらら】

チューナー・効果モンスター

星3/炎属性/アンデット族/攻 0/守1800

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):以下のいずれかの効果を含む魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、

このカードを手札から捨てて発動できる。

その効果を無効にする。

●デッキからカードを手札に加える効果

●デッキからモンスターを特殊召喚する効果

●デッキからカードを墓地へ送る効果

 

 分かっていたよ。

 増Gが入るならうららだって当然入れてあるよなぁ?

 

 無邪気な笑顔で手札抹殺のカードに戯れつこうと飛び掛かるうらら。

 

 だけどな、オーディン。

 

 それが通ると思うほうが甘いんだよ!!

 

 カードに手を伸ばすうららだが、その手が触れる刹那、ガクンとつんのめる様に動きが止まる。

 原因は何かとうららが足元を見ると、地面から生えた何者かの腕がうららの足首を掴んでいた。

 

「何を!!??」

「うららにチェーンして【墓穴の指名者】を発動します」

 

【墓穴の指名者】

速攻魔法(準制限カード)

(1):相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを除外する。

次のターンの終了時まで、この効果で除外したモンスター及び

そのモンスターと元々のカード名が同じモンスターの効果は無効化される。

 

 うららを掴んだ腕が泣きながら嫌がるうららを引き摺り込み、何処とも知れぬ場所へと連れ去ってしまった。

 

「チェーンは無いようですね?

 では、逆順処理で墓穴の指名者により灰流うららは効果を無効化され除外。

 そして手札抹殺の効果が発動され互いの手札は墓地に送られ送った分だけデッキから手札に加えていただきます」

「……ありえん」

 

 呆然とするオーディンを介助するように手札が自ら墓地へと向かいデッキからカードが手札に加わっていく。

 

 そして、ディスクに表示されるオーディンのデッキの枚数は残り1枚。

 

 このままターンを譲り、ダメージを与えることも出来ずになけなしのプライドの為に無意味に展開させて屈辱を味合わせるのも愉快になれるだろうが、万が一手札に【貪欲な壺】があったらそもそもが御破算となりえるため、俺は完全に殺しにかかることにした。

 

「ああ、失礼。

 私はフィールドの3体をリンクマーカーにセットし【デコード・トーカー】をリンク召喚します」

 

 ヤレヤレと言いたげに肩を竦めるファイアウォール・ドラゴン。

 手にした剣を収め仕方ないなと苦笑するアストラム。

 俺に微笑みながら小さく手を振るドリアード。

 

 3体は散歩をしに行くような軽い足取りでリンクサーキットの中へと進み、その後には金の縁取りがされた黒い鎧の騎士が佇んでいた。

 

【デコード・トーカー】

リンク・効果モンスター

リンク3/闇属性/サイバース族/攻2300

【リンクマーカー:上/左下/右下】

効果モンスター2体以上

(1):このカードの攻撃力は、このカードのリンク先のモンスターの数×500アップする。

(2):自分フィールドのカードを対象とする魔法・罠・モンスターの効果を相手が発動した時、

このカードのリンク先の自分のモンスター1体をリリースして発動できる。

その発動を無効にし破壊する。

 

 本来の想定では3体が揃った瞬間オーディンがニビルを特殊召喚しフィールドを更地にするだろうと考えていた。

 だからニビルとうららの消費分も加味し手札が22枚になるよう努力したのだが、途中で展開を急ぎ過ぎて手順を誤り手札が20枚で止まってしまった際には本気で焦った。

 

 完全に気力が尽きたのか最期の1枚も自ら引くことが出来ずディスクの自動操作で引かされるオーディンに、俺は慇懃に嘯く。

 

「さる人物は申されました。

 『恐怖には鮮度がある』と」

 

 それを言った殺人鬼は精神を殺す手段として述べていたが、俺は別の意図を持ってそれを語る。

 

「いかなる恐怖であっても繰り返されてしまえば慣れてしまい、僅かな驚きを感じさせるに留まってしまうでしょう。

 故に我が主は日々研鑽を繰り返し、決して慣れるようなことの無い至高の『おもてなし』を提供出来るよう努力しております」

 

 おそらく聞こえてはいないだろうが、しかし構いはしない。

 

「私も姫様を見習い、此度は貴方様が経験した事が無いであろう手段での『敗北(おもてなし)』を提供させて戴きました。

 どうか、心ゆくまで敗北の絶望をお楽しみ下さい」

 

 バラバラと手の中のカードを取り零し両膝を着いて項垂れるオーディンに、俺は心からの愉悦の笑みを浮かべながら告げた。

 

「それでは、ターンエンドです」




作中の執事のプレイミスですが、作者が書いている最中にリアルにやらかしたものだったりします。←

次回は後始末です。
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