迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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今回は反動で色々はっちゃけてます。

キャラ崩壊も激しいので合わないと思われたらバックして下さい。


払った代償は大きかった。

 ディスクに『YOU WIN』と表示され墓地に送ったカードが自動的にデッキに戻されていく。

 

「姫様。勝ちましたよ」

 

 ターンの移行と共に『ヤツラ』も消え、放心しっぱなしのオーディンを放置して姫様の下に向かう。

 

「「「「……」」」」

 

 しかし4人とも全員気絶していた。

 

 まあ、あの地獄絵図の中に居たのだからさもありなん。

 姫様など白目を剝いて女の子がしちゃいけない顔まで晒している。

 アンモニアを主体とする尊厳を喪った匂いはしていないのでそうなる前に意識を絶ったようなのが救いか。

 恐怖を手繰る側が恐怖に屈している事には目をつむりつつ優しく揺らして姫様を起そうと試みる。

 

「姫様。勝ちましたよ」

「う、うぅぅ…」

 

 非常に苦しそうな呻きを漏らし姫様が目を開く。

 

「……ふぇぇ…うわあああぁぁぁぉぁぁん!!!!」

 

 そして俺をみるなり大号泣し始めた。

 

「姫様!?」

 

 ヤバッ、『ヤツラ』の恐怖で姫様の均衡がブッ壊れてしまった。

 

「やっぱりしちゅじはわたしがきらいなんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 はいぃっ!!!???

 

「わたしがなんどもやめてっておねがいしたのにやめてくれなかったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 …………どうしよう。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあん!!!しちゅじぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 ギャーピーと泣き喚き童女の如く爆発した姫様をどう宥めていいか分からず、とりあえず弁明を試みてみる。

 

「落ち着いて下さい姫様。

 私は姫様を嫌ってなんかいませんよ」

 

 後でしばかれるのを覚悟で抱擁しながら背中をポンポン叩いてみる。

 

 すると僅かに効果があったようで、姫様はしゃくりをあげながら泣き止んでくれた。

 

「ひっぐ…ひっぐ…しちゅじぃ…」

「はいはい。大丈夫ですよぉ」

 

 そうして暫く背中を叩き続けていると、肩に顔を埋め姫様が口を開く。

 

「しちゅじ、ほんとにわたしのことすき?」

「ええ。大好きですよ」

「じゃあいっしょにあかちゃんつくって!!」

 

 ……落ち着け。

 姫様は今現在錯乱しておられる真っ最中。

 今の発言も幼児退行した幼い思考による突拍子も無い脈絡により生み出された台詞に過ぎないのだ。

 だから今の発言を真に受ける必要など存在しないのだ。

 

「あの、姫様。

 私は無学故に姫様が仰る意味がわかりかねるのですが?」

「しちゅじはしらないの?

 すきなひととちゅーするとこーのとりしゃんがあかちゃんもってきてくれるのよ!」

 

 ……ふむふむ。

 よくある「赤ん坊はどうやって産まれるの?」系の質問にそう答えた誰かが居たのだろう。

 

「しちゅじはわたしのことすきなんでしょ?

 だからちゅーしていっしょにあかちゃんそだてるの!」

 

 頼むからそろそろ正気に戻ってくんないかなぁ?

 

 普段のギャップとかいつもに増した幼い様子のせいで脳がおかしくなりそうなんだよ。

 

「やっぱり、しちゅじはわたしのこときらいなの?」

 

 目を潤ませて今にも泣きそうな様子を見せる姫様。

 あ、ヤバ、下手なこと言ったらまた泣くぞこれ。

 

「大丈夫ですよ姫様。

 執事は恥ずかしがっているだけですから、姫様からしてあげれば良いのです」

 

 アリアスさん!!??

 

 とんでもないキラーパスをぶん投げてきた推定諸悪の根源に視線だけで文句を言うが、しかし返ってきた返事は姫様から見えないように調整した邪悪な笑みであった。

 

 コイツ、さっきの恨みを晴らすために姫様を利用する気か!!??

 

「しょうなのしちゅじ?」

「え゙? え、ええ…」

 

 否定したいがまた決壊されるのが恐ろしく曖昧に返事をすると、「じゃあわたしからしゅる!」と唇目掛け顔を近づけ始めた。

 

 ヤヴァいマズいヤヴァいマズいヤヴァいマズい!!??

 

 万が一正気に戻った時に姫様に記憶が残っていたら、この先どんな顔してお仕えすればいいんだよ!!

 

「ひ、姫様、ちょっとお待ち下さい!」

「う?」

 

 俺は奇跡的に留まってくれた姫様にどうにか止めさせるため必死に頭を捻る。

 

「そ、そうだった。

 私は姫様と種族が違うのでキスだけでは赤ちゃんを授かるのは無理なのです!」

「できないの?」

「ええ! 誠に残念ですが今回は我慢を…」

「じゃあどうやったらあかちゃんくるの?」

「ぐっ…」 

 

 下手な嘘吐いたら今すぐやるとか言いかねないぞ!?

 

「私も気になりますね」

「私も〜」

 

 ここでキラーパスのおかわりが来たよ(白目)

 

 余程腹に据えかねているらしくいたずら好きのアリアーヌだけでなくアリアンナまでそう訊いてきやがった。

 

「ねえしちゅじ。

 しちゅじはどうやってあかちゃんもらうの?」

 

 うごごごご……

 

「…せ、」

「せ?」

「聖なる儀式を行った後にナチュルの森の奥の畑から貰ってくるんです」

 

 自分でも何を言っているんだと言いたくなる苦しい言い訳を吐いていた。

 

「じゃあいっしょにぎしきしゅる!」

「残念ですが姫様。

 この儀式は1年以上一緒に暮らした夫婦以外には行ってはならない決まりがあるんです」

 

 100%嘘ではない。

 うん。

 守るケースは全く無いが、一応嘘ではないんだ。

 

「しょうなのね…」

 

 しょんぼりする姫様に、焦眉の急は切り抜けたと内心安堵する。

 

「今回はこれで許しておきますよ」

 

 と、俺にだけ聞こえるようにアリアスは言ってから姫様を抱き上げる。

 

「さあ姫様。

 そろそろおやつの時間ですよ」

「おやつたべりゅ!

 ありあす、あまいのたべたい!」

「畏まりました。

 うんと甘いお菓子を御用意致しましょう」

 

 きゃーとはしゃぐ姫様を連れてホールを去るアリアス。

 アリアーヌとアリアンナもそれに追従して出ていくのを見届ける、漸く難は完全に去ったと息をはいた。

 

 そうして一息ついた所で気づく。

 

「って、もしかしてコレ、俺一人で片付けるのか?」

 

 破壊の跡が残るホールにいまだ萎れたまま蹲るオーディンに、どこから手を付けろと言うんだと俺は遠い目をするしかなかった。 




次回は後日談です。
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