迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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俺は姫様に仕えさせて貰えるのさえ過分だと思っている。

「一応どうにかなりそうだな」

 

 あの後暫く一人で頑張って瓦礫などを片付けていたのだが、一向に戻る気配の無いアリアス達に本気で自分一人に片付けをさせる気なのだと理解した俺はまだ動く魔神像が残っていないか調べ、4体がまだ機能を失っていないのを確認し内2体が片付けを手伝わせても問題ないことを確認し作業に従事させることでなんとか目処を立てることが出来た。

 いや、本当に魔神像が残っていて助かったよ。

 あまり力仕事をやり過ぎると腰と背中の筋肉が死んでしまうからな。

 そんな所で老いを感じつつ、俺は一向に動く気配のないオーディンを正面に立つ。

 

「出来れば自力で帰って頂きたいのですが?」

 

 デッキキルの衝撃で精神が擦り切れたどころか、魂までもが摩耗して死んだまで行ってないよな?と不安に思いつつそう声をかけてみる。

 

「…何故か?」

 

 反応が無くマジで死んでしまっているんじゃと諦めかけたところで掠れた声でオーディンが問いを溢した。

 

「世の混迷は遠からず貴様の主君にも害を齎すのは理解しているじゃろう?

 なのに、何故にそれだけの力を持ちながらそれを静めようとは思わぬのだ?」

「俺はあんたが思ってるような強さは無いよ」

 

 しつこいと思いながらそれでも言葉にしなければ理解は出来ないと俺は理由を語る。

 

「俺は盛って2流のデュエリスト。

 いや、デュエリストには成れないカードゲーマーだ。

 戦争を止めるなんてもとより、何かを成すことすら出来るかも怪しい平々凡々な唯人だ」

「戯言を申すな。

 其れ程までにカードに信を置かれる貴様の何処が2流か」

「本物を知っているからだよ」

 

 武藤遊戯。アテム。海馬瀬人。遊城十代。エド・フェニックス。ヨハン・アンデルセン。不動遊星。ジャック・アトラス。

 

 彼等の戦いを見て、実際にカードに触れてみれば否が応でも理解出来る。

 

 俺は彼らの様にカードに愛され、カードが必ず応えてくれるなどと信じる事は出来ない。

 

 他にも俺が見れていないアニメ主人公もおそらく同様にカードに愛され、カードは応えてくれているんだろう。

 

 精霊界に来てから多少引きは良くなったように感じるが、しかし引きが悪い時は普通に悪いままだし、それが普通だと思えてしまう辺りが俺の限界なのだと理解している。

 

 それに、アニメだけじゃない。

 

 MDを闊歩するガチ勢や修羅勢といった本気で勝利を目的にデッキを改良し最適化出来る一流デュエリストに日々タコ殴りにされ、何も出来ずサレンダーを山のように重ねてきたからこそ俺は主人公にも一流デュエリストにもなれないのだと弁えている。

 

 そんな気概があったらとっくに烙印ビーステッドかイシズティアラメンツ、さもなくばガエルスプライト辺りに乗り換えていただろう。

 

「世界を救うのは俺でも、ましてやアンタでもない。

 魔導とエンディミオンの戦争に本気で義憤を抱き、悪果を断つと決して折れることなく何度でも立ち上がる事が出来るまだ見ぬ誰かだ。

 大志も夢も持たない俺じゃあ、世界は救えない」

「……」

「それにだ、」

 

 この機会にオーディンに与したくないもう一つの理由もついでに語っておく。

 

「俺はシンクロ召喚とペンデュラム召喚が苦手なんだ。

 アンタの所に行っても益々弱くなるだけだよ」

 

 融合はまだ分かる。

 エクシーズやリンクも理解しやすい。

 だが、シンクロとペンデュラムは本当に無理。

 効果でレベル調整とか何度食らっても訳分からん。

 

「…くくっ」

 

 俺の告白にオーディンは気力が抜けた様子で笑うとゆっくりと身を起こした。

 

「なんと無駄な時間を浪費した事か。

 儂の目も随分曇っておったようだな」

 

 そう言い残し、城を後にするため背を向ける。

 

「報酬に一つ忠告しておこう。

 少し前から次元の壁が異様な揺らぎを起しておる。

 他次元からの干渉もありうるかもしれん用心しておけ」

 

 そう言い残しオーディンは去っていった。

 

 ……他次元からの干渉ねぇ。

 

 俺みたくMD次元(仮称)のプレイヤーが渡ってくるのか、それとも端末や烙印なんかの別次元のシナリオが絡んでくるのか…。

 

「って、オーディンに責任取らせりゃ良かった」

 

 城を壊されてただ引き下がらせるだけとか差し引きマイナスもいいところ。

 

 デュエル前になんも要求しなかったが、よくよく考えてみたら後始末ぐらい要求してもよかったのではないだろうか?

 

 言って、今更呼び戻すのもどうかと思うし仕方ないかと思い改め、ついでに昨日から何も食べていないことを思い出した。

 

「腹減ったんだけど、何か食わせて貰えるかな?」

 

 黒パンと水だけ出される気もしないでもないが、流石にそこまでは無いよなと祈りながら厨房に向かう。

 

「おや? 片付けは終わったんですか?」

 

 厨房に向かうと、テーブルでパンケーキを食べる姫様とお世話をするアリアスが居た。

 

「ちょっと休憩をな。

 急ぎで戻ったから腹が減って目が回りそうなんだよ」

「しちゅじはおなかすいてるの?」

 

 どうやらまだ姫様は復活なされておられないようだ…。

 

 今更ながらに最初に墓穴ぶち込んで増G止めとくべきだったと後悔していると、ズイッと切り分けられたパンケーキが刺されたフォークが突き出された。

 

「わたしのおやつわけてあげる!

 あーんしてしちゅじ!あーん!」

「いや、姫様のおやつを貰う訳には…」

「しちゅじはおやつきらいなの?」

「いえ、そういう訳では…」

 

 と、そこで無言の圧力を掛けてきているアリアスに気づく。

 

「姫様の好意を無下にする気ですか?」

 

 言葉にしないでそう警告を出すアリアスに負けて大人しく相伴に与った。

 

「あーん」

 

 オッサンのあーんなど誰得なんだと思いつつ、フォークに触れないよう気をつけながらパンケーキを口にいれる。

 

「おいしい?」

「ええ。誠に」

   

 個人的に少し甘すぎるが、姫様の手前そんな事はおくびにも出さずそう答える。

 

「じゃあもっとたべる!」

 

 そう言って先程より大きく切り分けたパンケーキを差し出す姫様と拒否したらただじゃ済まさないと圧を掛け続けるアリアスに逆らえるわけも無く、俺は姫様が満足するまでパンケーキを咀嚼する機械になる事に専念するのだった。




執事の原作知識は5D'Sの序盤までで止まってるため遊星とジャックぐらいしか知りません。
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