迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
治市に降って暮らしてみてから分かることも多い
自由都市のアリーナ。
城壁に囲まれた城塞都市のその中央に設置されたそのフィールドに俺は立つ。
『さあ、本日のメインイベントの時間がやってきた!!』
耳が痛くなるような大音量が沸き起こり歓声と称賛と罵倒の入り混じった声援が俺に降り注ぐ。
唐突なんだが、精霊界のカードプールはヤバイ。
何がどうヤバイかというと、カードレアリティとデッキの格差とカードのカテゴリーの数がヤバイ。
アニメシリーズで世界に1枚しか無いカードなんて紹介されてたカードは何枚かあるが、そういったカードは本当に1枚しか無いし、部族だの何だのが専有しているために出回らないテーマはかなりの数になる。
俺が姫様から賜わった【ラビュリンス】もその一つ。
シャンドラやストービー等はカードショップで見かけたので多少世に出回っているらしいが、魔神像が高級品としてとんでもない値段を掛けられ、アリアーヌ達は有るわけ無いだろと怒られるレベルで希少カード扱いされ姫様に至っては店員から殺してでも奪い取るとナイフを突きつけられたぐらいだ。(実体験)
そんな感じなので市井に出回るカードは種類は多いが強さとなると優しい目をしたくなるレベルのカードで溢れている。
中には元の世界ことMD次元では実在しなかったテーマもあり、【ハニワ】とか【怪盗】とか見ている分にはそれなりに楽しかった。
で、だ。
そんなテーマ縛りさえ難易度が高めなデッキ作りを強いられる世界で高Tierデッキをぶん回せばどうなるか分かるよな?
『ここまで98勝無敗!
余りの強さ故にデッキの交換という前代未聞の事態を巻き起こした最強のチャンピオン【迷宮の案内人】の登場だ!!』
リングネームとして登録した俺の名を呼ばれ、大仰な一礼を以ってパフォーマンスとする。
端的に言って、やり過ぎてしまったのだ。
先攻を握れば城を背にする姫様が場に立ち、後攻に回れば先攻が終わる前に準備万端の罠が敷かれる。
MDでラビュリンスを握れば当たり前の光景を普通に展開しただけなのだが、しかしデュエルの速度がアニメGX前後の精霊界でそんな真似をすればどうなるか…。
「試合にならないから全部制限か禁止カードに指定させてください。
後、ウイルス系カードは頼むから外して下さい」
と、土下座されてしまったのだ。
ウイルスカードは…うん。嫌な事件だったね。
かいつまんで語ると、初日に当たった対戦相手がヴォルカニック軸のバーンデッキだったんだよ。
そいつは性格も悪くて選手の間でも嫌われていたが、勝率は悪くなくアリーナでは比較的強い側の選手だった。
で、だ。そいつがデュエル中に姫様を愚弄してきたもんだからついつい本気で潰してしまったのだ。
具体的なプレイ内容はというと、
姫様をリリースして【魔のデッキ破壊ウイルス】発動。
チェーンして鎧姫様で【闇のデッキ破壊ウイルス】サーチ。
ラビリンスの効果で墓地のバックジャック召喚して【死のデッキ破壊ウイルス】発動。
手札から時計捨てて鎧姫様リリースして【闇のデッキ破壊ウイルス】発動。
墓地のロールバック除外して再び【闇のデッキ破壊ウイルス】発動。
この時点でも容赦無さすぎだったのだが、当時の俺はバーサーカーソウル使用中の闇遊戯レベルでブチギレていたため更に以下の方法を用いて追い詰めてしまった。
天龍雪獄で相手の墓地のメタモルポット回収。
ダルマ・カルマで裏守備表示。
リバースしてドロー&全破壊。
落ちたロールバックでビッグ使い姫様蘇生してついでに戻ってきた時計で再びダルマ・カルマ使用。
この時点でほぼ相手の心はへし折れていたのだが、それで気が済まなかった俺は更に煽り倒してしまった。
「どうした?まだ手札とフィールドが更地になっただけだろうが?
手札から破壊されたのだから効果を発動しろ!
墓地を除外して効果を使え!
墓地からデッキに戻してエクストラからモンスターを召喚してみせろ!
HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!HURRY!!」
今思えば余りにも度が過ぎていたと反省しているが、この事件の結果、俺は姫様に心酔する狂信者扱いされ暫くの間は腫れ物扱いされてデュエルでも通常より3メートルは距離を離して行われてしまった。
余談だが、件の戦いを姫様にお話したら「まるで私がヤバイ病気撒き散らす罹患者みたいじゃない!!」と泣きギレされ、アリアス達からも正座させられたので今はウィルス系はデッキから外されている。
閑話休題
『対するチャレンジャーは351戦300勝の大ベテラン、【デーモン・バトラー】だ!!』
その紹介を受け、地面から髑髏の意匠が入った厳つい鎧を着込んだ巨漢が地面に突き立てたグレートソード型デュエルディスクを前にした姿で迫り上がって現れる。
特注品のデュエルディスクのせいで出で立ちが某運命の初代様っぽいなぁなんて場違いなことを思いつつ、俺は静かに【霊使い】をセットしたデュエルディスクを水平に掲げデュエルモードを起動展開させる。
同じく【デーモン・バトラー】も重そうな剣を片手で持ち上げると剣を変形させて装着する。
『レギュレーションは何時も通り先に二勝した方が勝利となるマッチデュエル。
果たして【デーモン・バトラー】は【迷宮の案内人】から一勝をもぎ取り、案内人の持つ真のデッキを使わせる事が出来るのか!?
いよいよ開始です!!』
実況の言葉に更なる歓声を耳にしながら最初の5枚を引き、俺は何時も通りに宣う。
「それでは、貴方様が我が主のおわす迷宮に入る資格があるか試させて頂きましょう」
こういうのは俺のキャラじゃないよなぁ、と思いつつディスクが先攻後攻の順番を表示したところで同時に告げる。
「「デュエル!!」」
そうして今日も俺は城に帰るためにデュエルを続けている。
次回は休日の過ごし方の予定。