迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
休みの日でも俺の朝は早い。
元よりMD次元の頃から始発出勤終電帰宅の生活だったから、最小限の休息で活動出来るよう身体が調教され尽くされていたから早く起きるのは平気なのだ。
それに、休みといってもアリーナでの対戦予定がないだけで、本当に休日になるかは今日が終わるまでは確かではない。
空が白じみ始めた頃にベッドから身を起こして顔を洗って歯を磨き、一通りの身嗜みを整えたらコーヒーの香りが漂うダイニングに向かう。
「おはようございます旦那様。
今日の予定をお伺いしても宜しいですか?」
煎れたてのコーヒーを注いだカップを載せたソーサーを手渡すメイド服を身に纏う黒い双角を生やした美女。
彼女からコーヒーを受け取りつつ俺は挨拶を返す。
「おはようございますハスキーさん。
今の所喫緊の用事もありませんので、急用が入らない限り一日空いたままになります」
俺の答えにハスキーさんは「分かりました」と瀟洒に返事をする。
彼女の名はハスキー。
名前と特徴から分かる通り【ドラゴンメイド・ハスキー】である。
なんでこんな高レベルモンスターから旦那呼びされているかについては後で語るとして、今は裾を引っ張る者の相手を先にさせてもらう。
「おはようございます。
今日はみずきさんなんですね?」
傍らに霊体の犬を伴ったシスター服の少女【儚無みずき】になるべく視線を合わせながら挨拶する。
『……』
みずきはコクリと頷くとふわりと溶けるように消えていった。
この屋敷には彼女を含めた【妖怪少女】達が住み着いており、俺は彼女達から信用を頂いて住まわせてもらっている。
「ハスキーさん。
彼女達に今日の分のお菓子とミルクは受け取って貰えてますか?」
「ええ。どちらも大変喜んでいましたよ」
「そうですか」
彼女達の心の傷も少しずつ癒えているようで安心する。
「午前中は屋敷内に居ますので、出る際には声を掛けさせて頂きますね」
「はい」
しっかり返事を聞き、香り高いコーヒーに舌鼓を打ちながら残る眠気を溶かしていく。
なんと優雅な朝だろうなと思いつつ、不意にこの1年ほどの間にあった大きな事を思い出す。
自由都市に転居しようと物件を見繕っていた際に出会った【妖怪少女】との一騒動。
自由都市の顔役の一人である【ウィッチクラフトマスター・ヴェール】からの要望により巻き込まれた魔道具ギルドの鉄火場地獄。
飛び入りでアリーナに参加してきたブルーアイズ使いの【カイバーマン】とブラック・マジシャン使いの【ATM】との死物狂いのデュエル血風録。
MD次元からの来訪者とは名ばかりの遊戯王ミリしらの半グレDQNにリンチされてラビュリンスを奪われ姫様達までをも巻き込み死に体のまま取り戻しに奔走した事件。
ハスキーが俺に付けられたのもその事件が契機であったりする。
他にも比較的最近では星遺物を探し始めたばかりで悲劇が始まる前のアウラム一行がこの次元に迷い込んできたのでギルスにリースが黒幕だから注意しろと警告してから送り返したり、【スペア・ジェネクス】を守ろうとこの次元に逃げてきた【ジェネクス・コントローラー】を取り戻しに来たマッドサイエンティスト共をぶちのめして序でにマッドサイエンティスト共を追跡してそのまま侵略しようとしてきた【ワーム】をアーゼウスで消滅させたりした事もあった。
この調子で【異世壊】とか【烙印】とかヤバイ問題が絡んでこないことを本気で祈ってる。
あの辺のテーマはMDだとラビュリンスでも負ける事が少なくないから色々と洒落にならんのよ。
その事件のせいで【エンディミオン】と【魔導】から目を付けられたりもしたが、軽く小突いて俺と【ラビュリンス】を不可侵領域として手を出さないことを互いに誓わせた。
何したか?
自由都市に進軍する両陣営のど真ん中にニビル降らせた後にデュガレス伴わせたアークリベリオンとアーゼウスとアストラムとアクセスコード・トーカーを同時に並べて「本気でやるならコイツラの手綱を手放すぞ?」と脅しただけだ。
今更ながらに半暴走状態のコイツラ相手に一時とはいえ凌ぎきった『騎士』って、控えめに言ってもバケモノとしか思えないよな。
「もう1年か」
定期的に姫様の顔を見に戻ってはいるが、それを楽しみに思うようになっている辺りすっかりこの世界の住人になったのだなと思う。
最近は以前より負荷が大きいだけで『召喚』も出来るようになったし、左腕の麻痺も滅多に起きる事は無くなったから完治も間もなくだろう。
折を見てまたパンドラ・マジシャンのところに行って診断してもらおうと思いつつ、今日はどうするかと考える。
このまま屋敷でゆっくりするのもいいが、偶にはぷらぷら歩きつつカードショップ巡りなんかも良いかもしれない。
「ハスキーさん。買い出しの予定はありますか?」
「いえ。食材の準備も済んでいますので出る予定はありませんよ」
成程。
「ではデートでもどうですか?」
「デートですか?」
「ええ。
目的もなく散歩するのも悪くないですが、普段からお世話になっているハスキーさんへの御礼がしたいので、お昼を奢らせて貰えないでしょうか?」
そう提案すると、何故かハスキーさんは苦笑した。
「御厚意は嬉しく思いますが、浮気は駄目ですよ?」
浮気? 俺、誰とも付き合ってないんだが?
ハスキーさんが何を言っているのかいまいち理解できず首を傾げているとハスキーさんはこう言った。
「ですから、ただのお礼として御相伴に預かるのは歓迎致しますので着替えてまいりますね」
そう言って奥に引っ込んでいくハスキーさんを見送りつつ、俺も支度をするため自室に向かった。
次回はお出かけ。
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