迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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アンケートを見るとやはり姫様の人気がよくわかりますね。



なんてこと無い日常だって偶には有るもんだ(中)

 執事とハスキーがお出かけしているその背後、建物の隅からその様子を伺う小さな姿があった。

 剥き出しの真空管が頭部より飛び出したロボット【ジェネクス・コントローラー】である。

 

 彼は現在身を寄せている【白銀の城ラビリンス】の主よりある密命を帯びていた。

 

 それは、

 

「執事の日常を私に逐次伝える密偵として働くのよ!!」

 

 というものである。

 

 因みに彼の見た光景は城内に残った【スペア・ジェネクス】に送信され、リアルタイムで姫様に情報が伝わっている。

 

 そして当然、先の執事の言葉も姫様に伝わっていた。

 

 なので…

 

「なんで伴侶の私を差し置いてぽっと出のメイドとデートしているのよ!!」

 

 絶賛大噴火していた。

 

 (スペア・ジェネクスを除く)目についたもの手当たり次第に掴んでは理性と共に投げ捨てヒステリックに感情を喚き散らす。

 

「だいたい執事は私のことを蔑ろにし過ぎなのよ!!

 私がいっぱいアピールしているのにキスどころか手も触れてくれないしどういうつもりなのよ!!

 私だって執事と街を歩いたりお買い物したりお外でご飯食べたりしたいのにどーして何一つしちゃ駄目なのよ!!

 悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい!!」

 

 どたん ばたん がこん ドゴッ バキャッ ガゴンッ! ドゴンッ! ドンガラガッシャーン!!

 

 投げるものはトランプやマクラから服、アクセサリーとどんどん大きくなり、チェストの引き出しからスタンドそのものまでぶん投げて壁を壊してもまだ収まらず、ついには天蓋付きのベッドまでもを掴みあげ感情と共に一切手加減なくぶち撒けた。

 

「執事のバカァァァァァァァああああああああああああ!!」

 

 ドゲガシャーーーーン!!

 

 凄まじい破壊音とともにベッドがガラスと城壁の破片を伴い空を飛んでいく。

 『騎士』が大暴れした際よりも酷い惨状の中、風通しが非常に良くなった自室の真ん中で姫は残った理性の一欠片が危害を加えずに済ませたスペア・ジェネクスを抱きしめて丸くなって嗚咽を漏らす。

 

「しちゅじのうわきもの〜。

 すきならちゃんとわたしにもえっちなことしてみなさいよ…」

 

 その様子を壊れた壁の隙間から伺うアリアス姉妹。

 

「うわぁ…執事さんやっちゃいましたねぇ」

「姫様がヘタレなのが原因とはいえ、今回のは流石に擁護は出来ませんね」

「いっそ執事が今度戻ってきたら媚薬を一服盛って、『〇〇〇〇しないと出れない呪い』を掛けた部屋に2人を閉じ込めてしまいますか?」

 

 下ネタもイケるアリアーヌではなくアリアンナがそんな提案を出すほどに今回のは大惨事過ぎた。

 

「執事君ならアークリベリオン辺りに部屋ごと扉を破壊させて脱出するだろうから却下です」

 

 アリアス達姉妹的に執事と姫が懇ろになる事に厭う感情はあまり無い。

 万が一姫がそのせいで姫が子を宿したりするような事が起きても、執事ならきちんと責任を取ると分かっているからだ。

 

 最も、敬愛する主君にも無体を働いた自責からアーゼウス辺りに自分を焼き払えと命じるのが先だろうから実行するつもりは無いが。

 

「そろそろ声を掛けますよ」

 

 啜り泣く姫に落ち着きを取り戻したと判断したアリアスがそう号令を掛け3人は粛々と部屋に入っていく。

 

「姫様。お茶とお菓子の用意が出来ておりますが如何致しますか?」

「ありあすぅ…」

 

 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした姫が情けない声で縋り付く。

 

「私、執事に嫌われているのかなぁ?」

「そんな訳ありませんよ。  

 もしそうなら、姫様の為に死の淵に立ちながらデュエルを続けるなんて真似はしないでしょう?」

「それは…だけどぉ…」

 

 ぬいぐるみのようにスペア・ジェネクスを抱きながら姫は胸中の不安を口にする。

 

「執事の周りには可愛い女の子が一杯いるのに、私はデート一つ出来ないのよ?

 私は伴侶としてどうしたらいいのかな?」

 

 主従の絆は確りと信じられるが、夫婦の絆を全く感じられず不安が拭えない姫は弱々しく萎れてしまう。

 

 そもそもの話として執事は自分が姫の伴侶である事を全く知らないのでさもありなんなのだが、しかし姫の視点では何度愛を囁いても応えて貰えていないようにしか見えていない。

 

「姫様。何もデートが出かけるばかりではありません。

 最近のトレンドは『お家デート』らしいですよ」

「お家デート?」

「はい。敢えて何処にも出かけず自宅で想いを重ねるのがお家デートです」

「自宅で想いを…はっ!?」

 

 アリアスの言葉に何かに気付いてしまう。

 

「え?つまり私、執事とずっとお家デートしていたの!?」

 

 真に不思議な思考を展開する姫だが、そうなるよう誘導していたアリアスはいけしゃあしゃあと笑顔で肯定する。

 

「そうですよ。

 姫様は既に幾度となく執事とお家デートしていたのです」

 

 詭弁も詭弁ではあるが、アリアスがそう言うなら間違いないと姫様は機嫌を良くする。

 

「ザマァ見なさいドリアード!!

 貴女の執事はとっくのとうに私のものだったのよ!!

 オーホッホッホッ!!オーホホホ!!」

 

 ドリアードが眼の前に居たらアホなワンちゃんの奇行を眺める飼い主のような面持ちで優しい目をしていたであろう。

 機嫌を直した姫の高笑いするに抱えられていたスペア・ジェネクスが身じろぎして地に降りる。

 

「あら?ペアちゃんどうかしたの?」

 

 姫の問いかけに答えずスペア・ジェネクスはトコトコと歩き、姫から少し離れたところで立ち止まった。

 そして両目をから光を発し空中にスクリーンを映し出した。

 

「キャッ!?

 って、映像?」

 

 スクリーンの正面にアップで映された執事。

 どうやらジェネクス・コントローラーの視点を映像に投射しているようだ。

 

『こんな所でどうしたんだコン?

 姫様に何かあったのか?』

 

 不思議そうにジェネクス・コントローラーを手に持ち上げ問い掛ける執事。

 見付かってしまい慌て両手をワタワタさせるジェネクス・コントローラーに意を得たりと執事は笑う。

 

『ふむ? さてはアリアス達に内緒で姫様からお使いを頼まれたってとこだな?』

 

 全くの見当違いなのだが、しかし密命を隠すにはうってつけだと首肯するジェネクス・コントローラー。

 

『全く姫様も困ったお方だな。

 まあ、偶にはそういうのも必要だろうな』

 

 苦笑する執事に、これは好機とアリアスは提言する。

 

「チャンスですよ姫様」

「チャンス?」

「コンちゃんを使って『遠隔デート』をするのです」

「遠隔デート!?」

 

 新たなカルチャーに驚愕する姫にアリアスは畳み掛ける。

 

「ええ。遠隔デートは最近開拓が開始された最新のデートプラン。

 離れていながら一緒にお出かけできる最先端のデートなのです!」

「最先端!!??」

 

 びっくりしながらも最先端という言葉に弱い姫様は真偽も疑わずスペア・ジェネクスに命じる。

 

「ペアちゃん!コンちゃんに緊急指令を送りなさい!

 内容は執事と一緒に行動して私を遠隔デートに連れて行くことよ!!」

 

 姫様の指令をすぐさまジェネクス・コントローラーに伝えるスペア・ジェネクス。

 

『何々? もしかして頼まれた物が何処に有るのかわからないのか?

 そうか。じゃあ一緒に探しに行こうか?

 分かった。じゃあ、目的の物が見付かるまで街を歩こうか』

 

 姫様が見ていることに気付きもしないでジェネクス・コントローラーを先導し始める執事。

 上手いこと誘導に成功した執事と連れ立って移動し始めるジェネクス・コントローラー。

 大凡を察したらしく然りげ無くジェネクス・コントローラーの視界から外れてデートらしくなるよう気を回すハスキー。

 初めての遠隔デートにワクワクする姫様。

 姫様が大人しい間にと部屋の修繕を急ぐアリアス姉妹。

 

 若干の混沌を孕みつつも休日は穏やかに過ぎていこうとしていた。




ジェネクス・コントローラーとスペア・ジェネクスは姫様により『コンちゃん』『ペアちゃん』と名づけられペット枠に収まっています。
次回はデート()です。
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