迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
昼食を終えその後も幾つかの店を回ったものの、いまだ決まらぬ姫様への献上物を探していた。
「後はもう、此処しか無いな」
眼の前には老若男女問わず賑わう自由都市最大のカードショップ。
MD次元ならオタクショップ扱いだが、精霊界というか遊戯王世界なら無難なデート先としても利用できる便利スポットである。
実のところ珍品漁りにならもう一軒『ゴブリン珍品堂』なる店があったりするのだが、あそこは元【成金ゴブリン】が経営する九割九分ガラクタか贋作か盗品というヤバイ店なので、トラブルに巻き込まれたいので無いなら近付かないほうがいい。
逆にトラブルが起きている時には事件の解決につながるキーパーソンが紛れ込んでいたりするので、何かあったら問い詰める先として無くてはならないのだから、世の中というものはうまく回っていると思う。
「あー!!
チャンピオンだ!!」
良さげなプレイマット辺りから見てみようと店に入ると、目敏く俺を見つけた子供の絶叫に視線が集まり、あれよあれよと群がる小さな人だかりに囲まれてしまった。
「サイン頂戴!!」
「握手してくだしゃい!!」
「デッキ診断おねがい!!」
「姫様のパンツ何色?」
「そのロボットカワイイ!」
「俺とデュエルしろ!」
「エリアちゃんとお付き合いさせて!」
「リダン様とお話したいです!」
「たまにはライナちゃんも活躍させろ!」
「そっちの美人はチャンピオンの彼女なの?」
正直面倒臭いが、こういったファンサもプロデュエリストの仕事の一環とお子様特有の甲高い声に嫌な顔をしないよう気をつけながら無難なリクエストを捌いていく。
後、姫様への不敬を口にしたガキは後で泣かす。
そうして群がるお子様のリクエストに応えられるものには応えて三十分程を消費しつつなんとかファンサを切り抜ける。
件のクソガキには逃げられた。クソがっ!
「済みませんでした。
チャンピオンなんて役柄上、愛想良くしないと後が色々と面倒でして」
「大丈夫ですよ。
旦那様が人気者で喜んでますから」
ニュアンスがなんかおかしかったが、気分を害されていないようだからいいか。
賑わう店内を縫ってプレイマットやアクセサリーが並べられた区画を覗き込む。
ただのプレイマットだけでなく、普通に使うだけならただのアクセサリーだが店舗に設置されたデュエル用の対戦ステージに接続することでMD同様に自分の好きなフィールドを生成してプレイが出来るという中々洒落た高級品も幾つか並んでいる。
といっても、【ドラグマ】や【ミュートリア】みたいな他次元のフィールドは当然無いし、同じく接続することでフィールドに再現されるメイトもさほど種類は…って、
「ラドリーいるじゃん」
フンスとドヤ顔で胸を張る【ドラゴンメイド・ラドリー】のメイトが、フィギュアよろしくケースの中で自分をアピールしていた。
しかも説明文にはちゃんと変身ギミック付きとMDと仕様は同じらしい。
「ハスキーさん的に良いんですか?」
「本人がやりたいと立候補してましたから問題ありませんよ」
買いますか?と問うハスキーさんにやんわりと断りを入れる。
「今回は姫様がメインなので次の機会にと…」
なんか一瞬、ラドリーのメイトがショックで半泣きになっていたような…?
若干のホラーを感じつつ他のアクセサリーを見ていく。
スリーブとプレイマットの一番人気は俺が使っている影響もあってか【霊使い】らしい。
通常のイラストのみに加え、こちらもMD同様に絵柄が変化するスペシャル仕様もあるが【入荷待ち】の札が下げられていた。
「なにか良いものは見つかったか?」
コンに尋ねてみるが、しかしどれもお眼鏡には叶わなかったようでストレージのコーナーへと向かっていってしまう。
ストレージのコーナーもMD次元とあまり変わりはない。
膨大なカードの山に寄せ集め束売のパック。
それと真剣に向き合う子供達の姿にこういうのはどの世界でも変わらないなと思い、そのまま魔法的な強化をされたガラスケースの棚に視界を移す。
結構なラインナップが揃っているが、並べられているカードのお値段も地球換算5桁からと素晴らしい金額が並んでいる。
新しいカードは入荷したかなと目を滑らせていると、【灰流うらら】のカードが陳列されているのが目に入った。
そのお値段、傷アリで一般的給料5ヶ月分。
少し前までは効果は悪くないが採用は見送られるカードとしてストレージにいっぱい並んでいたが、俺と対戦する際の必須カードとしてアリーナで持っていないデュエリストが居なくなった影響から馬鹿みたいに高騰したカードである。
他の妖怪少女も高騰しており、うらら程ではないがどれも地球換算二桁万円と大変良いお値段で取引されている。
「お? 探していた【次元障壁】があるじゃないか」
俺も持っておらず姫様のストレージに入っていなかった強力な封鎖能力を持った罠カードをガラスケースの中に見付け、値段は安くないが最低2枚は押さえておこうと決めピックアップしておく。
「後は…と、俺の買い物は後々。
コン。何かいいカードは見つかったか?」
気を抜くと数時間は潰れてしまうため切り上げてジェネクス・コントローラーに戦果を尋ねる。
だが、此処でも結果は芳しくないようだ。
「どうしたもんか…。
いっそ、天に運を任せてみるか」
見つからないのなら引き寄せるの精神で数枚パックを買い序でに先程見掛けた【次元障壁】も2枚買っておく。
「最悪【次元障壁】を俺からってことにしておけばコンが怒られる事もそうは無いだろう」
なんとなく当たりを引く予感を感じつつ、ジェネクス・コントローラーと2人でカードパックを開封していく。
不思議な事にでもないのかもしれないが、こういう時のカードパックには何かがある。
例えば【宵星の機神ディンギルス】と【オルフェゴール・ガラテア】を2枚抜きしたすぐ後に星遺物組が迷い込み、【リペアジェネクス・コントローラー】を引いたそのすぐ後にジェネクス・コントローラー達がこの次元に逃げ込んできた。
……今更ながらに厄ネタの予兆だったりしたのか?
ディンギルスとガラテアは旅の助けにとギルスに渡したし、リペアジェネクスもマッドサイエンティスト共にジェネクス・コントローラーから手を引く代わりとして叩きつけてやったため手元には無い。
それを踏まえて考えると、厄ネタの予兆というよりも、これから起きる問題を解決する一助として助けに来てくれたとも考えられる。
どちらにしろ、引いてみた中身次第なのは今も昔も変わりはしない。
「っと、当たりは当たりなんだが…」
引けたレアカードは正にそんな予感を感じさせる2枚だった。
【シューティング・クェーサー・ドラゴン】
【エクソシスターズ・マニフィカ】
どちらも多少の無理はあるが【ラビュリンス】と組み合わせられなくもないカードではあるが、どちらにしら大きくデッキを弄る必要があるカードであった。
「…マジかよ」
シューティング・クェーサー・ドラゴンはスターダスト・ドラゴンとビジュアルが似ていることから5D'Sとおそらく関わりのあるカード。
となると5D'Sに関わりのあるモンスターか作中登場人物の誰かと出会う可能性もあり得るが、俺に5D'Sの知識はあまり無く主人公の遊星が蟹型の髪型でバイクを自作できるぐらい機械に強いシンクロ使い程度の知識しかなく、他のキャラも海馬枠であろうジャック・アトラスしか解らないという事が問題になる。
そしてまだ安牌の可能性も考えられるシューティング・クェーサー・ドラゴンに対し、エクソシスターは本気で厄い。
何せ姫様は悪魔族。
悪魔祓いのエクソシスターは不倶戴天の天敵と言えよう。
「せめて姫様に害が及ばないことを願うしかないか」
もしそうなったら、彼女達には悪いが姫様の為に手持ちの手段は容赦無く切らせてもらう。
新たな火種の可能性を一旦脇に置き、ジェネクス・コントローラーの戦果を眺めてみる。
「おっ?【
大当たりじゃないか」
【ラビュリンス】でも使える強力なカードに褒めてやる。
使い方としては姫様を2体並べて【No.62 銀河眼の光子竜皇】を召喚、その後効果で呼び出してやれば攻撃力4000の3回攻撃と大抵の盤面は破壊し尽くしてくれる。
というか、ライフ4000の環境なら出せればフィニッシャーになるだろう。
もっとも、最大能力を発揮出来ていないので多少勿体ないとも思えるが、エクストラ以外の構築を弄らないでも済むメリットを鑑みると【ラビュリンス】の最大火力の問題解決策として一考するだけの価値はある。
「コレなら姫様も納得してくれるだろう」
俺の言葉にジェネクス・コントローラーもコクコクと頷いてくれた。
「と、なると使うためにはあの辺も欲しいな」
ガラスケースの中に有る事を確認していた【No.62 銀河眼の光子竜皇】と【No.97 龍影神ドラッグラビオン】を一緒にお買い上げしてジェネクス・コントローラーに渡してやる。
序でに【群雄割拠】と【センサー万別】に最後の一枚の【次元障壁】も追加で買っておく。
値段? …ファイトマネーで賄える範囲だよ。(震え声)
「良い買い物ができたな」
大分財布が軽くなったが、出費の大半が姫様への散財なので気分は寧ろ上がっているぐらいだ。
上機嫌で店を出て、物が物だけに一人で帰らせるのは不用心とアリアスに迎えを頼み一旦屋敷に戻る。
「今日はコンちゃんを案内してくれて助かったよ執事君」
と、屋敷の前に既にアリアスが待機していた。
「態々済まなかったな。
姫様はお元気か?」
「ええ。少し荒れていたが、もう既に機嫌を直して頂いているよ」
どうやらまた『騎士』に負けたらしい。
いつもの事なので特には触れず、ジェネクス・コントローラーを抱えてアリアスに渡してしまう。
「コンが持っているのは姫様への貢物だから丁重に頼む。
それと、後でコンの荷物が届くと思うからそちらの対応も任せた」
「ええ。わかってんん゙っ、承知したよ。
じゃあ、近い内に城に顔を出してくれ」
「ああ。分かった」
珍しく言い間違えかけたアリアスを珍しいと思いつつ、城へと戻るアリアスを見送ってから俺とハスキーも屋敷の門を潜った。
次回は…アンケートの結果を書くか、先に新たな火種を処理してしまうか