迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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俺は俺が思っているより疲れているらしい。

 アリアスと連絡を取り数日後、先方から色よい返事を貰い来訪に備えて更に数日が過ぎた日のことであった。

 

「彼が話していた機械に精通する知人だよ」

 

 そうアリアスが紹介した相手に、俺はドン引きしていた。

 

 身長2メートルを超えていそうな禿頭の巨漢。

 全身を拘束具にも見える黒いスーツと同色のベルトを巻き付け、その顔にはガスマスクのような器具をベルトで固定した怪人と表する人物であった。

 

 それだけでも異様だが、何より俺が引いたのは彼の人物の事を知っていたからだ。

 

「アリアスって、【人造人間サイコ・ショッカー】と知り合いだったんだな?」

 

 確かにGXで精霊として登場してたから居るのは解るが、【ラビュリンス】からしてみれば存在自体が生まれて来たことが罪扱いするぐらいの天敵じゃないか。

 俺の質問にアリアスはあっさりした様子で理由を語る。

 

「彼とは編物教室繋がりの知り合いなんだよ」

「証拠に新作を持ってきている」

 

 証拠と言い可愛らしい手の平サイズのぬいぐるみを見せてくるサイコ・ショッカー。

 その図体と格好で編物教室って…いや、外見で個人の趣味をどうこうは偏見か。

 

「ああ、いえ。

 貴方の趣味を疑っているわけではなく意外すぎる組み合わせに戸惑っているだけですから」

「ならばよい。

 それでは話にあったロボットを見せてもらおうか」

 

 もうどんなキャラだったか思い出せないのでツッコむのも面倒とロボットを安置している納屋に2人を案内する。

 

「ふむ。確かに人間にしか見えないね」

 

 バイクの横に寝かせてあるロボットをためつすがめつ眺めながらアリアスはそう言う。  

 

「では、任せてもらおうか」

 

 早速サイコ・ショッカーはロボットに近づき、腕を持ち上げたり剥き出しになった中身を確認していく。

 

「ふむふむ…なる程、ここはこうなっているのか…」

 

 おお!? 予想以上に手応えがありそうな雰囲気だぞ?

 もしやこのまま修理が出来るという展開もあり得るか!?

 

「よしわかった」

 

 と、ロボットを調べるために身を屈めていたサイコ・ショッカーが背筋を伸ばし堂々宣う。

 

「複雑過ぎてさっぱり解らん」

「ちょっと歯ぁくいしばれ」

 

 あまりにも力強い宣言に思わず【月鏡の盾】を『召喚』して腕に装着し拳を握りしめると、サイコ・ショッカーは慌てて静止を図ってきた。

 

「待ち給え!?

 私には修理できないが、修理する方法は見つけたからまずその拳を収め給え!!」

 

 必死な様子で言い募るサイコ・ショッカーに俺は一先ず殴るのを我慢した。

 

「適当吐いたら次は本当に殴るからな?」

「嘘など言わん!!

 全く、聞いていた人物像とまるで違うではないか!?

 少し茶目っ気を見せた途端暴力を振るおうなど、それこそ野蛮人ではないか」

 

 そう愚痴を吐くサイコ・ショッカーに、俺は内心吐き捨てる。

 街の外では殺し殺されなんて履いて捨てるほど転がってるだろうが。

 ()()()()()()()()()()()……

 

 そんな事を思ったのがいけなかったのだろう。不意に『あの景色』が蘇る。

 

「どうした執事君!?

 顔色が真っ青だぞ!?」

 

 焼け爛れた世界を生み出した巨大なクレーター。

 

 その衝突の余波を逃れる術無く食らって炭化した、数えるのも嫌になるほどの命であったものの残骸。

 

 アリアスの声がひどく遠く聞こえる向こうに、()()()()()()()()()()が広がっていた。

 

「…すまない。

 自分でも気づかない間に相当疲れていたみたいだ」

 

 何を考えているんだ俺は?

 ()()()()()になったからと言って、それを理由に人を傷つけていい理由になるわけがないだろうが。

 

 …どうやら相当参っているみたいだな。

 

 この件が片付いたら城に戻って姫様の顔を見に行こう。

 あの無邪気な顔を傍で眺める為にも、背負った罪の重圧に狂ってなんかいられないんだ。

 

「? どうしたんだい執事君?」

 

 何故だろう。

 一瞬、アリアスが凄く愉しそうに嗤っていたように見えた。

 

「いや。リフレッシュも兼ねて今度休みを取って城に戻ろうと思っただけだよ」

「そうか。姫様も大変お喜びになるだろうね」

 

 気が滅入っていたせいで見間違えただけだろうとそう言ってサイコ・ショッカーに改めて謝罪する。

 

「すまない。足労を働かせた相手に取る態度じゃなかった」

「…謝罪はいい。

 こちらも少し悪ふざけが過ぎていたということで納めてしまおう」

「感謝する。

 それで、修理の方法とは一体?」

「うむ。その方法とはズバリ。本人自らに修理させるのだ」

 

 ………。

 

「失礼ながら意味が解りかねる。

 もう少し詳しく説明願えるか?」

 

 一瞬また巫山戯たのかと思いかけ、また早合点はよくないと先程の無礼もあるから漏れ出しそうな感情を控えて詳細を促す。

 

「この私のサイコパワーを使い、ロボットの奥底に眠る魂を励起させ私の身体に憑依させることで当人自らに駆体の修理を行わせるのだ」

 

 先程よりは要領を理解できる内容の説明だったが、それはそれとしていくつか気になる点があった。

 

「ロボットに魂があるのですか?」

「勿論だとも。

 そうでなければ【死者蘇生】が効果を発揮する道理はあるまい?」

「それはまあ…そうかも?」

 

 機械の魂の所在や証明は全くわからないが、サイコ・ショッカーが言う事も一理ある。

 

「しかしだが、精霊界の機械ならまだしもこのロボットは人間界の物では?」

「左様。

 普通に作られただけならば人間界のロボットに魂が宿る事はまず無いな。

 だが、この者の制作者はよほど思いを込め丁寧に丁寧を重ね制作したらしい。

 故にこのロボットには魂が宿っていたのだ」

「そういう事ですか」

「これだけしっかりした成長を遂げた魂の宿る精霊界の機械ならば【死者蘇生】を使えば駆体の損傷も一緒に直るが、この駆体は人間界の物故にきちんと修理してやらねばならないのだ」

 

 ならば【死者蘇生】を使えばいいのではという疑問もサイコ・ショッカーの解説で無理と理解できた。

 

「分かりました。

 それで、ロボットの魂を貴方に憑依させるとのことですが貴方への負担は大丈夫なのですか?」

「そちらの心配も問題ない。

 私のサイコパワーを以てすれば、1週間程度なら私の身体に定着させずに魂を憑依させ続ける事が可能だ」

「そうですか。ですが、どうしてそこまでしようと?」

「なに。大した理由では無い。

 この者の魂がまだ生きていて、私に救う手があって()()()()()()()()()からするのだ」

 

 なんの気負いもなくそう宣うサイコ・ショッカー。

 

「…そうですか」

 

 であれば、俺が躊躇うのも違うだろう。

 

「わかりました。

 お願いします」

「任せてもらおうか」

 

 手筈について詰めておく必要があるなと思ったところで、不意にアリアスが俺に近寄り耳打ちした。

 

「君に伝えておくよ執事君。

 姫様は()を好まれているけれども、()も好ましいと思われているからね」

「なんの事だ?」

 

 態々声を潜めるような内容とは思えず疑問符を浮かべる俺に、アリアスは愉しそうに嗤って言った。

 

「いずれ思い知るさ。

 その時を楽しみにしておくといいよ」




やっぱり修理終わらなかった(;´Д`)

執事は自由都市防衛戦を経験した結果表面的には変わらないけど実は精神がガタガタで箍が外れやすくなってます。

なので荒療治が必要ですね。
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