迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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お久しぶりです。
コロナ舐めてました。



俺は心が折れそうだ

 

 アンチノミーの駆体の修理の傍らで彼が属していた『イリアステル』がどういった目的で活動していたのか、アンチノミーと遊星達『チーム5D'S』とどのように関わりがあったのかを聞かせてもらったのだが、一言言わせて欲しい。

 

 誰がラスボスの設定をこんなに酷くしたんだよ!!

 

 ラスボスのZONEは世界を救うために嘗ての英雄『不動遊星』に容姿から考え方に至る己の殆どを自分自身に上書きして書き換えた?

 

 それで苦難の果てにうまく行ったのに救わせた全部をぶっ壊して絶望させた?

 

 それでも折らせずに足掻き続けさせて、共に歩んだ生き残りの仲間達をみんな先立たせた?

 

 それでも、それでもなおと世界最後の人類になっても諦めずに苦しみ続けた最後に、寿命という限界の前に結局解決策を掴めずどうしようもなくて闇落ちからのラスボス化かと思ったら、その真意が未来のために自分の功績が存在そのものも含めて全て無くなることも承知で過去を破壊してでも未来を守り通そうとしていた?

 

 子供向けアニメで自分が勝っても負けても救いが無いラスボス用意するとか、お前ら人の心無さ過ぎるだろ!!

 

 何? ZONEの設定考えたの虚◯なの!? 

 

 脚本家に◯須き◯こ混じってたの!!??

 

 こんなんゾークとかドーマとかダークネスとかの方がよっぽどマシなラスボスじゃねえか!!

 

 今更ながらにMD次元にいる間に5D'SのDVD見とけばよかったと心底後悔しつつ、俺は5D'Sでこんなんならその後は更に酷いことになっているんだろうと本気で慄く羽目になった事に憂鬱な面持ちを抱かざるを得なかった。

 

 因みにアンチノミーは人間界に戻る事は保留するそうだ。

 

 理由は俺が次元を渡る伝として頼った事のあるマハード経由で手に入れた最新型のノートパソコン(代金は勿論俺が出した)のスペックから現代が遊星達が産まれるずっと前の時代である事を知ったアンチノミーが、今人間界に戻っても未来に渡るためにデルタイーグルの修理が必要であるため意味がないどころか自身が未来を変えかねない劇薬になる可能性があるからだそうだ。

 だったら技術力の確かかつ社長の『海馬瀬人』が手綱をしっかり握る海馬コーポレーションを頼るという案も思いついたのだが、時間を行き来する技術が拡散するリスク以前にユベルを引き合いに出せるレベルでアテムに執着している海馬が時間を行き来する技術を手に入れたら未来を変える云々すらすっ飛ばして原作をぶっ壊してお釣りが出そうな大惨事を起こしそうなので、そんな火薬庫に火種を持って行くような危険な考えはそっと無かった事にした。

 

 話は逸れるが態々マハード…正確にはマナことブラック・マジシャン・ガールにノートパソコンを買ってきてもらったのは俺が人間界に渡るのは止しておけとパンドラマジシャンから忠告を貰ったからだ。

 今の俺は魂と肉体が魔力に完全に順応する大事な過渡期にあり、今魔力の薄い人間界に渡った場合以前以上に体調を崩す可能性があると懸念を出されたのだ。

 それにはマハードことブラック・マジシャンも意見を同じとし、どうするかと悩んだところでマナが代わりに買いに行くと申し出てくれたので頼った次第である。

 金は精霊界の通貨が使えないため俺がパックから引いた手持ちの中で使う予定の無かったレアカード【トゥーン・サイバードラゴン】を売ってもらい作ってもらった。

 これは完全に余談だが、マナも年頃の娘なんだから少しぐらいは遊びたいだろうとカードを売った金の中からパソコンを買った残りは御駄賃として使っていいと言ったら、売る際に手伝ってもらった武藤遊戯の実家こと『亀のゲーム屋』で殆ど散財して帰ってきたためマハードにしこたま説教されていた。

 

 個人的に金に困っていないし武藤遊戯と爺ちゃんがまだ元気だと知れたから使い込まれた事は構わないのだが、ゲームに加え服やらコスメやらまで買い込んで師匠に土産の一つもなかったので少しぐらいの説教は残当かなと庇うことはしなかった。

 

 そんな感じで原作関係で俺のメンタルに予想以上のダメージが入ったりしつつ1週間が過ぎ、アンチノミーの身体の修理は順調とまではいかずとも再起動が可能なぐらいに修理は進んだ。

 進行が遅い理由は修理に必要な資材及び機材の不足。

 調達しようもない未来の技術により製造されたパーツの代替や機材の確保等、用立てするのも一苦労な部品の多さが主な理由であった。

 アンチノミーの提案により再起動に必要な電子系のパーツはバイク改め『デルタイーグル』から借り受けることで少なくない数は賄えたが、しかしどうにもならない部分というのも少なくはない。

 特に外皮を構成する人工皮膚等は入手する当てさえ無かった。

 とはいえ人工皮膚に関してはウイッチクラフトに医療用の人工皮膚を融通して貰うとの代案も上がっており、最終的にアンチノミーの身体は万全では無いにしても手打ちに到れる仕上がりにはなるそうだ。

 

「こうして見ると改めて痛々しいな」

 

 ウィッチクラフト製の人工皮膚を使うかは駆体の稼働を見てからにしたいとアンチノミーの言によりまだ張り替えられておらず、剥き出しの内部を誤魔化すために包帯を各所に巻いた重症人にしか見えないアンチノミーの駆体にそう感想を漏らす。

 

「見た目は良くないが君達の協力のお陰で予定より大分スケジュールは縮まった。

 正直私一人だったら、ここまで持っていくだけでも数年は掛かっていただろう。

 何より君は、ZONEに報いではなく安らぎを望んでくれた。

 その想いに心から感謝しているよ」

 

 そうアンチノミーは俺達に感謝を告げると駆体の横においた椅子にサイコ・ショッカーの身体を腰掛けさせた。

 

「パソコンに入力したタスクが完了すれば私は目を覚ますだろう。

 身体をサイコ・ショッカーに返させて貰うよ」

 

 言うと動作時にカクンと首が落ち、ゆっくりと再び首をもたげながらサイコ・ショッカーは疲れた様子で天を仰いだ。

 

「流石に少し堪えたな…」

「お疲れ様です。

 部屋は用意してありますので案内します」

「そうさせてもらおう」

 

 ハスキーさんに案内されて納屋を出ていくサイコ・ショッカーを見送ってから俺は一人パソコンの画面を覗き込む。

 モニターの中ではいくつものウィンドウが開かれそれぞれに別のタスクが走り、全体の作業の進捗を示すシークバーには30時間ほどの所要時間が表示されている。

 

「また後でなアンチノミー」

 

 ここに居てもやることは無いと納屋の戸を閉め屋敷に向かう。

 今日は試合の予定が組まれているからハスキーさんに託けをしてからアリーナに向かう。

 アリーナはいつもの如く賑わっているのだが、スタッフのバタつきはいつもより忙しそうに見える。

 

「何かトラブルか?」

 

 血の気の多い奴等が場外乱闘を始めたのかと偶にあることを訝しみつつ控室に向かうと、俺の担当のマッチメーカーが待っていた。

 

「案内人殿はご無事でしたか」

「無事って、只事じゃなさそうだな?」

 

 焦り様からアニメなら数話の尺を取りそうな事件の予感を感じつつ話を伺うと、昨夜にかけて選手の何人かが襲われたというのだ。

 

「まだ公表はしていませんが、武闘派でも知られている【デーモン・バトラー】選手も被害に遭い命に別状こそ無いですが負傷し入院治療を受けているため運営委員会は厳戒態勢を敷くべきか協議を行っています」

「【デーモン・バトラー】もか…」

 

 本人曰く【デーモンの召喚】に描かれているデーモンと切り合って引き分けたと自慢するほどのリアルファイト強者であり、実際にデモンストレーションの際に剣技を披露している姿は素人目線でも洗練されたものとして映るぐらい強い剣士でもある。

 そんな【デーモン・バトラー】を重症に追い込んだ某が潜んでいるというならこの慌ただしさも納得がいく。

 

「分かった。こちらでも注意はしておく。

 それはそれとして今日の対戦はどうなるんだ?」

 

 身の安全は別として既に客を入れている以上今から中止にするのも難しいだろう。

 

「それなんですが…」

「それは私からお願いしよう」

 

 言い淀むマッチメーカーに代わり運営委員会の役員が割って入ってきた。

 

「今日の試合は予定を変更し、君に今アリーナに居る者との総当たり戦をやってもらいたい。

 勿論全員とデュエルさせるつもりはないがやってもらえないだろうか」

「無茶を言ってくれる」

「こちらもそれは承知している。

 故にとはどの口がと自分でも思うが、今回に限っては【ラビュリンス】のデッキを完全解禁した状態で回してもらって構わない」

 

 最近は【霊使い】を攻略してくるデュエリストも増え【霊使い】の勝率は七割前後と落ち込んでいたが、それでも【ラビュリンス】のフルパワーの前では5ターンと保たないため現在の【ラビュリンス】は【ウェルカム・ラビュリンス】さえピン差しのハイランダーを強要されていた。

 

「分かりました」

 

 確かに厳しいものがあるが、もとよりデュエル漬けになるために自由都市に来た身としては歓迎すべき条件ではあるし、何より、久し振りに本気の【ラビュリンス】が回せると合っては断れない。

 

「デッキの調整に時間が欲しいんたが、どれぐらい稼げる?」

「2時間は確保する」

「十分だ」

 

 サイドに眠らせていた2枚目以降の【ラビュリンス】カードを引き出し、俺は今作れる最強の【ラビュリンス】の姿を取り戻すためデッキと向き合い始めた。

 




というわけでアンチノミー復活を前に不穏な空気がただよっているようですね。
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