迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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というわけでデュエル開始です。




俺が姫様に仕えている理由(3)

「最後の晩餐は楽しめたかしら?」

 

 デッキの再作成も終わり、それでも起きてこない姫様に腹の虫が文句を訴え、それを聞いたアリアスの厚意で食事を振る舞ってもらったことを聞かされた迷宮姫の発言である。

 

 因みにメニューは『ジェノサイドキングサーモンの海鮮親子丼』であった。

 

 理由は姫様が昨日、唐突に夕食にジェノサイドキングサーモンを食べたいと駄々をこねたために調達した余りだそうだ。

 

 味は今迄食べてきた鮭が代用マスだったんじゃないかって思うぐらい絶品だった。

 

「ああ、うん」

 

 服装は『白銀の城のラビュリンス』で着ていた豪奢なドレスなのだが、寝癖が頭の頂点に髪が一房ほど跳ねているせいでアホ毛っぽくなっていて、気を抜くと笑いが出そうなのをこらえながら真剣な顔で頷きを返す。

 

「ふふふ。肩が震えているわよ?

 意地を張っていることは認めて差し上げますが、恐怖は隠しきれていないようね?」

 

 いや、震えているのは笑いを堪えているだけです。

 

 口に出したらギャグになってしまうので、俺は黙ってデュエルディスクを変形させて構える。

 

「そうね。最早言葉は不要。

 さぁ、極上の恐怖に震えたまま死出の旅路へと私自ら案内して差し上げるわ!!」

 

 迷宮姫がそう宣いデュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!!」」

 

 遊戯王ユーザーなら一度は言ってみたい台詞を口にし、最初の五枚を引いていく。

 

 その、俺の生死を賭けた最初の五枚は…

 

『浮幽さくら』

『レッド・リブート』

『ブラック・ホール』

『屋敷わらし』

『ライトニング・ストーム』

 

(手札事故ったぁ!!??)

 

 霊使いを始めとした主力はおろか、場に伏せられるカードさえ1枚も来ないという大事故だった。

 

 もしかしてライナの代わりにカグヤが入っているのが気に入らなかった!?

 

 仕方ないじゃん!! 『憑依覚醒』に対応しててサーチとバウンスまで出来るカグヤはガン積み一択だから同じ光属性のライナは外すしか無いんだよ!!??

 

「私のターン!」

 

 と、内心焦りまくっている間に迷宮姫が動き出す。

 

「ふふっ、先ずは『おもてなし』の準備から参りましょう」

 

 そう言って手札の一枚をモンスターゾーンに配した。

 

「私は手札から【白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーヴァンツ)アリアーヌ】を召喚するわ!!」

 

 【白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーヴァンツ)アリアーヌ】攻撃力1800/守備力1100

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1100

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):手札及び自分フィールドにセットされたカードの中から、

通常罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

デッキから「白銀の城の召使い アリアーヌ」以外のレベル4以下の悪魔族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

(2):自分の通常罠カードの効果でモンスターがフィールドから離れた場合に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

その後、以下の効果を適用できる。

●手札から、悪魔族モンスター1体を特殊召喚するか、魔法・罠カード1枚をセットする。

 

 呼び出したのはラビュリンスの初動枠の一枚。

 

 星4モンスターの中でも高水準の火力と指定の緩い低レベルモンスターサーチ能力で安定した活躍を見込める一枚。

 

「キャハハ!! 姫様、今回はどんな『おもてなし』にするのかしら?」

 

 無邪気な笑いを溢しながら長大な燭台を武器のように携えたアリアーヌが場に現れる。

 

「私はアリアーヌの効果を発動するわ!

 手札から『ビッグウェルカム・ラビュリンス』を墓地に送り、デッキから『白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーヴァンツ)アリアンナ』を守備表示で特殊召喚するわ!

 アリアーヌ、アリアンナを連れてきなさい!」

「待った!!

 効果発動の前に俺は手札から【浮幽さくら】を捨てて効果を発動する!」

 

 アリアーヌの行動効果を発動される前に俺は今の手札で出来ることをしておく。

 

【浮幽さくら】

チューナー・効果モンスター

星3/闇属性/アンデット族/攻 0/守1800

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合、

このカードを手札から捨てて発動できる。

自分のEXデッキのカード1枚を選んでお互いに確認する。

その後、相手のEXデッキを確認し、

選んだカードの同名カードがある場合、その相手の同名カードを全て除外する。

この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 手の内が見えない状況で切るべき札じゃないが、しかし棒立ちで眺めていたらそれこそ自分から十三階段を登るようなもの。

 なれば強引でもここでさくらを切りエクストラデッキの一番出されたくないカードを落とせる可能性に賭ける。

 よしんば読みが外れてもエクストラデッキを開示されるから、他のカードの切り時を測る参考になる。

 

 俺のディスクの墓地ゾーンから鎌を携えた着流しの少女が飛び出し、迷宮姫のエクストラデッキ目掛け鎌を振りかぶる。

 

「俺は『レイダーズ・ナイト』を指定する!」

 

 『バグースカ』や『デュガレス』『クロノダイバー・リダン』といった汎用エクシーズも致命的だが、中継地点であり高いフィニッシャー適性を持つレイダーズ・ナイトは何が何でも排除すべきだ。

 

 エクストラデッキからレイダーズ・ナイトを見せながら宣言すると、さくらは鎌を振り下ろしエクストラデッキを切り裂いた。

 

「キャアッ!?」

 

 迷宮姫が驚いて悲鳴を上げるのを横目にさくらの鎌の先を確かめるが、しかし何かが起きた様子はない。

 

「『浮幽さくら』の効果は俺が提示したカードをそっちのエクストラデッキにも入れていた場合それを除外する。

 そしてエクストラデッキの開示も同時に行う」

 

 闇属性主体ならまず入れるだろうレイダーズ・ナイトが入っていなかったということでエクシーズ以外がメインの可能性が高くなったが、どちらにしろ切り札の一部はこれで確かめられる。

 

「さあ、エクストラデッキの中身を見せて貰おうか!」

 

 俺の要求に対し、迷宮姫はさくらに切られたことに対する不快感を隠そうともしない様子で高々と宣言した。

 

「エクストラデッキには1枚もカードは無いわ!」

「なん…だと…?」

 

 エクストラデッキゼロ?

 

 そんな馬鹿な。

 

 仮にエクストラデッキからの召喚を行わないデッキだとしても『ドラグマ・パニッシュメント』のコストとして数枚のカードは入れて然るべきだ。

 それこそヌトスやガルーラといった墓地に落ちることで本領を発揮するカードなどいくらでも…

 

「まさか…【帝】を入れているのか!?」

 

 【帝】

 

 アドバンス召喚を主体に召喚時に強力な効果を発揮するカテゴリーであり、その本領を十全発揮させるためには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()維持しなければならない。

 

 更に言うなら帝は強力だが専用サポートは永続魔法罠が多く魔法罠ゾーンを圧迫するリスクもありラビュリンスでは採用は難しいが、もし上手く噛み合せることが出来たというならその破壊力はどれ程になるのか俺では想像も出来ない。

 

「【帝ラビュリンス】。新たな境地が死に場所というなら悪くない」

 

 一周回って楽しくなってきた俺に対し、何故か迷宮姫は困惑した様子で言った。

 

「帝って、私、そんなカード1枚も入れてませんわよ?」

「………はい?」

 

 【帝】じゃない?

 

「じゃ、じゃあ【インフェルノイド】か?」

「入れてませんわ」

「だったら【クリフォート】?」

「いいえ」

「じゃあ【堕天使】」

「悪魔の私が天使なんて入れているわけ無いでしょう?」

「なら【デミス】は?」

「敵だけじゃなく私の可愛い下僕まで犠牲にするやつなんか願い下げよ!!」

「まさかの【真竜】!?」

「あんなの入れたら『おもてなし』が出来なくなるでしょうが!?」

 

 エクストラ不要なカテゴリーを片端から挙げていくがどれも否定され、俺はこの状況でまず無いだろう選択肢を口にする。

 

「もしかしてなんだが、姫さんのデッキって【ラビュリンス】以外入れてないのか?」

 

 出来ればそうじゃないほうがいいなぁと思いながら尋ねるが、返ってきた答えはいっそ無情なものだった。

 

「当然よ!!

 私のデッキに私の可愛い下僕以外必要なんて無いわ!!」

 

 フンスと自慢気に宣う姿に、どっと気疲れが襲ってきた。

 

 いや、良いんだよ?

 

 純【ラビュリンス】も十分強いからそれで完結したっていいよね。

 

 でもさ、何と言うかこう、

 

 『当店オリジナルスペシャルピザ』と言われて注文して出てきたのが素材がスペシャルなマルガリータピザだったみたいなこう、凄いのはわかるけどなんか違う的な気分になってしまったんだよ。

 

「一体何だというのよ!?」

「いや、すまん。

 この後【ブルーアイズ・アルティメットドラゴン】とか【天霆號アーゼウス】みたいな最終兵器がどれだけ敵陣に並ぶかって警戒してたから つい、ね?」

「なにそれこわい」

 

 俺の態度に憤慨する迷宮姫に隠してもしょうがないと素直に言うと、迷宮姫だけでなく控えていたアリアスやアリアーヌだけでなく家具達までもがドン引きした様子で此方を眺めていた。

 

「いや、それぐらい普通だろ?」

「普通じゃないわよ!!」

「え? うちのシマだと先攻は開幕から攻撃力三千前後数体と妨害3枚ぐらいは展開するのが当然なんだが。

 何なら先攻1ターンキルだってやるやつは一杯いるし」

 

 ヌメドラワンキルとかしょっちゅう食らうし。

 

 何なら俺のドリアードデッキだって手札が完璧な状態から完全展開出来たら『精霊神皇ドリアード』にマスカレーナ経由した『蒼穹の騎士アストラム』とリンク4素材にした『アクセスコード・トーカー』が1ターンで出てくるんだが?

 

「貴方、地獄から逃げ出してきた修羅かなにかなの?」

 

 何故か怯え気味にそう問い掛ける迷宮姫。

 

「いや、そんな奴らにボコられるエンジョイ勢だよ」

 

 ガチでやるなら【蟲惑魔】か【ラビュリンス】か【魔妖】辺りを持ち出すが、普段はドリアードデッキで時折勝てるぐらいの下層デュエリストです。

 




まだ先行初手なのになんでこんな字数になったんですかね?

まあ、今のうちにデュエルの常識と温度差の摺合せをしとかないと困るから仕方ないよね?

あ、1話目のこの世界のデッキは基本純正テーマの降りはここで判明しました。

余談ですが作中に書いたドリアードの完全展開、返しのターンの開幕にラー玉に食われて壊滅したことをここに報告しときます。()

次回は決着まで書き切るつもりです。
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