迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
「俺は【浅すぎた墓穴】を使い墓地の【機怪神エクスクローラー】を選択する!!」
「それは見逃せませんね。
伏せカードの【天龍雪獄】を発動して貴方の墓地の機怪神エクスクローラーをこちらの場に召喚します」
【浅すぎた墓穴】
通常魔法
お互いのプレイヤーはそれぞれの墓地のモンスター1体を選択し、
それぞれのフィールド上に裏側守備表示でセットする。
【天龍雪獄】
通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを効果を無効にして自分フィールドに特殊召喚する。
その後、自分及び相手フィールドから、種族が同じとなるモンスターを1体ずつ除外できる。
地面から這い出ようとした機械仕掛けの巨蟲が猛烈な吹雪に押し流されて本来現れるべき相手の場からこちらへと引きずり込まれていく。
【機怪神エクスクローラー】
リバース・効果モンスター
星9/地属性/昆虫族/攻2000/守3000
このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):裏側表示のこのモンスターを対象とする魔法・罠・モンスターの効果を相手が発動した時、
このカードを表側守備表示にして発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
(2):リバースしたこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、
相手フィールドのモンスターが発動した効果は無効化される。
(3):フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。
このカードとは元々の種族・属性が異なる
レベル9モンスター1体をデッキから手札に加える。
「チェーンはありますか?
無ければ逆順処理により【浅すぎた墓穴】は無効になります」
『これは恐ろしい!!
【メタルバウンサー】選手の巻き返しを図る乾坤一擲も躱されてしまった!!』
『これは上手いですよ。
チャンピオンは一見相手の場に強力なモンスターを出したくなかっただけに見えますが、チャンピオンの墓地にはセットしたくないモンスターしかいないことも鑑みれば相手への妨害よりも自身のアドバンテージ確保を優先したと見るべきでしょう。
加えてチャンピオンはフィールド魔法【白銀の迷宮城】を展開しています。つまり』
「【白銀の迷宮城】の効果を発動します。
通常罠カードが発動したため私は墓地に眠る【白銀の城の召使いアリアンナ】を守備表示で特殊召喚します」
鞭を携えたアリアンナがトンと地を蹴って場に降り立ち膝をついて身を護る体勢を取る。
「お休みのところを喚び出して早々ですがアリアンナさん。アリアスを呼んできて下さい。
アリアンナの召喚時効果により私はデッキから【白銀の城の執事アリアス】を手札に加えます」
『チャンピオンはフィールドコントロールを維持しながらボード・アドバンテージを稼ぐところまでを一手で行ってみせた。
引き込んだアリアスも含め、彼は何手先まで読んでいるのか』
『なんと鮮やかなるかな【迷宮の案内人】!!
特別レギュレーションにより枷を外された迷宮は正に難攻不落の要塞であります!!』
煽り立てる実況の声量に負けない大歓声がアリーナに轟き響く。
「今のは少しヒヤリとさせられましたよ【メタルバウンサー】さん。
ですが、私の下僕を退け我が主への謁見の資格を得たからにはこの程度で終わりはしませんよね?」
本音を交えつつパフォーマンスしながら煽ると【メタルバウンサー】は「当然だ」と意気軒昂に応えカードを伏せターンを終える。
そんな若々しい姿に若干思うものを抱きつつ、俺はスタンバイフェイズの宣言を行った。
〜〜〜〜
「流石に疲れた…」
一日ぶっ通しの大量デュエルで大分鈍った頭の回復を図って舌が溶けそうな果実水を胃に流し込みつつ、今日一日で一月分はデュエルした結果、全身の疲労に襲われもう若くないんだなと改めて思い知らされた。
「お疲れ様ですチャンピオン。
それにしても完全無敗とは恐れ入りましたよ」
褒め称えるマッチメーカーに俺は否と否定する。
「正直厳しかったよ。
【霊使い】も半分は突破されていたし、【ラビュリンス】の制限解除がされてなかったら押し負けていた試合がいくつもあった」
対戦相手が悉く【妖怪少女】と【増殖するG】をデッキに投入する現代遊戯王に近いデッキばかりだったのが主な敗因だった。
特に増Gが辛い。
アレの怖さはドローそのものもだが、手札の状況が読まれるのが宜しくない。
止めるリソースの有無が見透かされるだけじゃない。
ドローを許容してでも展開しなければマズいのか否なのか。
展開するにしても何枚までなら対応出来る範囲なのか。
その辺りの見えない推察要素を相手に渡すのが個人的にキツい。
使う方も嫌な顔をしつつもその妨害性能の本質に気付きつつあり、久し振りに増Gの恐ろしさを味わったよ。
それに自由都市のデュエリストの水準もかなり高くなったしこれで【ブラック・ホール】や【ライトニング・ボルテックス】だけじゃなくMD次元必須カードの【ハーピィの羽根箒】【ライトニング・ストーム】辺りの全体除去が主流に回るようになればいよいよ俺の【ラビュリンス】無双も終わるだろうな。
まあ、どれもレア過ぎて全く出回ってないんだけどね。
「流石に明日は休んでもいいよな?」
「いやいやいや。10日は休んでいいんですよ!?
というか、チャンピオンは戦い過ぎなんですよ!
普通チャンピオンのファイトって言ったら週一で一戦するだけでも多いぐらいなんですからね!
なのに貴方は毎回5戦は当たり前で下手したらそれを週6で戦っているじゃないですか!?」
急にヒートアップし始めたマッチメーカーにそうか?と首を傾げる。
「そもそも俺は戦うために自由都市に来たんだから必要な休暇さえ取らせてもらえれば毎日10戦でも全く構わないんだが…」
「そんなに戦われたらあんたのファイトマネーでアリーナの経営が傾くわ!!」
主題は金や名誉ではなくデュエルなのでもっと戦ってもいいと告げたら逆ギレされた。
解せぬ。と言いたいが言い分は理解出来るので素直に引き下がろう。
ファイトマネーを下げるのは流石に安売りが過ぎるだろうから提案はせず受け入れる方向で了解を告げる。
「分かった。
十日以内に試合の予定が組まれたら早めに教えてくれ」
そう告げてからザックを肩にアリーナを辞する。
夕暮れに染まる自由都市を帰路に着きながら昼間の話を思い返す。
「デュエリストを狙う賊…ね…」
これがマンガかアニメならこんな話題が上がったら退治しようとか主人公か周りが騒いでたりするんだろう。
生憎俺は主人公でもなんでもないので直接狙われでもしなければ関わるつもりはない。
「フラグなのかねぇ…」
そんな事を考えたのが悪かったのか?
夕暮れ時とはいえ人通りは少なくなかった筈の通りからいつの間にか俺以外の人が消えていた。
「……来い、ダルク」
『召喚』でダルクを呼び出し状況を確かめてもらう。
「結界が張られているな。
人避けと逃走妨害、それと通信遮断も並行で使われている。
かなり精密な術式のようだし優れた魔法使いか悪魔族が張ったと考えるべきだな」
「わかった。
リダンかバグースカでなんとかなるか?」
時間の壁を抜けてもらい無理矢理突破するか歩くスキドレで無力化するか、手っ取り早い手段を挙げた処に第三者の声が響く。
「酷い人ね。
せっかく招待したんだから少しは付き合ってくれても良いんじゃないかしら?」
背後から投げられた声に即座にダルクが杖を握り直し前に立つ。
「下がれマスター」
その人物は全身を覆うローブで身を隠し、今の処分かるのは声と口調から若い女性であることと
「何者だ?」
ダルクの詰問に対し、女はデュエルディスクを展開する事で答えとした。
「野良試合の申し込みと言ったら納得してくれるかしら?」
「戯言を…!?」
魔力を杖に集約し始めたダルクを制し俺は問う。
「戦いたいならアリーナに来ればいい。
挑戦ならいつでも受けてやるぞ?」
「私は貴方との
アリーナじゃ貴方の本気は引き出せないでしょう?」
否定は出来ない。
今日はほぼフルスペックの【ラビュリンス】を使えたが、普段なら大分手加減を強制されたデッキである事は確かなのだ。
「一戦したら解放してもらえるか?」
「誓いましょう」
「マスター危険だ」
留まるよう引き留めるダルクに俺は首を振る。
「流石に逃げられんだろう。
ダルク、荷物を頼む」
懸念は分かるが
ザックを預け、いまだフルスペック状態の【ラビュリンス】をセットしたデュエルディスクを展開する。
「お待たせしました。
それでは、1手お付き合い願いますよ」
執事モードが発動した俺に女は愉快そうに嗤う。
「フフフ…楽しませてあげるわ」
よくある前口上を交わし俺達は同時に宣う。
「「デュエル!!」」
というわけで次回は久し振りの本気デュエル回です。
ガチラビュリンスだからって簡単に勝てるばかりじゃないよね?
‐追記‐
修正は完了してますが墓地のロールバックではラビリンスの効果は発動しないのを書いてから気付いて直したのに、修正前版を投下してしまいました。
姫様のポンが出せないからって俺がやっても誰も喜ばんわ…