迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
引いたのは…火吹炉か。
カードを見ながら先の相手のプレイを反芻する。
最初の裂け目からのやり取りに比べてあの幸魂公開は大分違和感があった。
手札にマルファがあったのなら間違いなく先に使っていた筈だが、相手は幸魂を使うことを選んだ。
何故だ?
……いや、そこまでおかしくないのか。
あの時は俺の場には罠サーチが出来る鎧姫とラビュリンスモンスターを手札に引き込めるビッグが待機状態。
俺が逆の立場ならエンドサイクならぬエンドビッグをされないよう先にビッグを使わせておきたいと考えただろう。
憶測だがあの時点では手札にマルファは無く幸魂と次元の裂け目は破壊前提で貼ったのかもしれない。
だから幸魂を見せる事で此方にエクシーズ召喚されるとプレッシャーを掛けて姫様を入れ替えさせて幸魂を破壊させる。
仮に幸魂をスルーされても次元の裂け目を無視できないからそちらを優先するだろう。
そうまでしてでも最後に伏せたカードを守りたかった。
そう考えて展開したのなら筋は通る。
その上で導き出されるカードは……伏せたんだし【エクソシスター・バディス】の可能性が高いよな。
或いは幸魂を破壊させるために敢えて展開し、その予想を外して手札のマルファを失ったため新たに引いたカードを伏せたというパターンもあるが、どちらにしろ相手の思惑に大分引っ張られているのは事実だろう。
思考を変えて幸魂を見ていなかったらどうしていた?
使わず増G無駄打ちに終わらせたいと動かなかったか、いや、どのみち次元障壁を貼るために鎧姫の効果を使おうとビッグ発動していたのは変わらないな。
その後は姫様を喚んで裂け目を破壊していたか、或いはこのターンに確定でアドバンテージを稼ぐためにアリアンナを喚んで手札に入れていたか。
手札がバディスであった前提でどちらが嫌だったかというなら選択肢の増えるアリアンナの方が俺は嫌だが果たして何が正解だったんだか…。
「私は姫様の効果を使い墓地のビッグウェルカムをセットします」
ともあれ勝ち筋は見えているのだ。伏せカードがバディスだったとしても次元障壁がある限り主力のエクシーズは出て来ないのだから早めに押し切る方向で…
「チェーンして罠カード【無限泡影】発動。
【白銀の城のラビュリンス】の効果及び直線上の伏せカードの効果を無効に」
「っ!! 姫様の効果にチェーンが発生したため墓地のアリアスの効果発動!!」
翼竜の幻影が姫様を包み込まれ吃驚した拍子に敷こうとした罠を墓地に落としてしまう。
その様子にヤレヤレと頭に手を当てたアリアスが守勢を取って場に現れる。
どうやら幸魂からはブラフだったようだ。
相手も完全に上振れしている前提での読みを完全に外した俺のミスを女は指摘する。
「悪あがきのつもりだったのだけど、意外とあっさり引っ掛かりましたね」
「ええ。見事に読みを外してしまいましたよ。
どうやら自分が思うより疲れが溜まっている様ですね」
相手の嘲りにまともに返す事も出来ず、俺は詰めきれない未熟さを自戒しながら現時点で使える効果を使っていく。
「罠カードが発動したため手札から【迷宮城の白銀姫】を守備表示で特殊召喚。
その後、バトルフェイズに移行します」
心配げな表情を俺に向ける姫様に申し訳無さを抱きつつ俺は姫様に攻撃を指示する。
「姫様でダイレクトアタック。ブレイク・ラブリュス!」
「うっ!?」LIFE4000→1100
ダメージを受けた呻きを聞きつつ俺はバトルフェイズを終える。
「メインフェイズ2は何もせずエンドフェイズへ移行。
ターンを終了します」
優位は間違いなく此方にある筈なのだが、妙に空回りしているような違和感を強く感じつつターンを渡す。
「私のターン。ドロー。
私は手札から【一時休戦】を発動」
また厄介な。
デッキにバーン系のカードは入っていないので次のターンに決着を着けるのは無理になった。
そして一時休戦で引いたカードは、2枚目のロールバック。
裂け目を処理しておいてあれば火吹炉のコストにして2枚目のビッグを貼るかラビリンスを伏せておくんだがな。
やはり姫様に手札を破壊させたのは失敗だったか?
「私はそちらの【迷宮城の白銀姫】と【白銀の城のラビュリンス】をリリースして【溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム】をそちらのフィールドに特殊召喚するわ」
【溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム】
特殊召喚・効果モンスター
星8/炎属性/悪魔族/攻3000/守2500
このカードは通常召喚できない。
相手フィールドのモンスター2体をリリースした場合に相手フィールドに特殊召喚できる。
このカードを特殊召喚するターン、自分は通常召喚できない。
(1):自分スタンバイフェイズに発動する。
自分は1000ダメージを受ける。
アドバンテージを意識しすぎて裂け目の処理を怠ったツケを感じた直後、空から灼熱の塊が降り注ぎ二人の姫様が赤い泥流に飲み込まれてしまった。
「姫様!!??」
姫様を喰らい俺を体内に閉じ込めたラヴァ・ゴーレムに俺はマグマの熱以上の灼熱の憎悪が臓腑を焼くのを覚える。
「貴様…よくも姫様を…!?」
「冷静になれマスター!!
除外されたのはカードだ!!
本物のラビュリンスの姫に障りはない!!」
ダルクから飛んだ必死の呼び掛けに沸騰した頭が僅かに冷える。
そうだ。今のマグマに飲み込まれたのはあくまでカードに宿る姫様の一部だ。
本体に影響があるというなら、囮役として盾にして使い潰したり相手の場にモンスターがいない状況で手札を破壊したいからとラビリンスの効果の対象に選んだりウイルスカードのコストとしてリリースしたりダルマ・カルマで吹っ飛ばしたり天龍雪獄の除外コストに選んだりした俺のほうが余程酷い目に遭わせたと姫様から怒られていなきゃおかしい。
そう考えたらマグマに飲まれたぐらいただのコテラルダメージと割り切れる範囲だと思い直せて煮えた頭がスゥッと冷えてきた。
「私はターンを終えるわ」
再びターンが渡ってきたが、状況は一転してかなり悪くなった。
「スタンバイフェイズに入りますが、ラヴァ・ゴーレムのバーンダメージは一時休戦の効果で無効に」
ラヴァ・ゴーレムから溢れたマグマが降り注ぐも直撃せずに外へと流れていく。
墓地のビッグウェルカムを除外してバウンスすることでバーンダメージを回避する事は可能だが、そうすると墓地に落ちているロールバックが腐る。
今すぐロールバックでビッグをコピーして姫様を呼び裂け目を排除したいところだが、このターンで決め切れないのだから今は動かず返しのターンにリソースを吐き出したほうが良いだろう?
次元障壁が墓地に落ちるか2枚目のビッグが落ちるまではライフダメージは耐える方向でいたほうが良いだろうか。
「ドロー」
引いたカードは【ドラグマ・パニッシュメント】か。
「私はカードを2枚伏せてターン終了」
ドラパニとロールバックを伏せてターンを渡す。
エクストラにヌトスがあるので相手がモンスターを召喚すれば裂け目を破壊出来る。
一時休戦の効果が切れた現状、手札にある幸魂を伏せなければラヴァ・ゴーレムの攻撃で終わる可能性が高いのは向こうも承知済みだろう。
「私のターン。手札から【成金ゴブリン】を発動。
私は1枚ドローし、相手はライフを1000回復する」
ラヴァ・ゴーレム召喚しておいてライフを戻してデッキ圧縮?
……アレ? エクソシスターに成金ゴブリン入れる必要あるか?
いや、幸魂とラヴァゴ入れているのだから純エクソシスターと考えるのは早計じゃないか。
エクソシスターと組ませて強いテーマといったら、天庭ギミック投入目的で【ドラグマ】か、エクシーズ素材確保に【オノマト】か不意打ち狙いでデスフェニ差すために【D−HERO】入れるか、或いは…
「手札から【閃刀起動-エンゲージ】を発動!」
エクソシスターと言いましたが、純構成だとは言ってないですよね?(曇りなき眼)