迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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というわけでブルーノとデッキ作りアンド雑談回。


馬鹿話は男友達の特権だと思う。

「【ヴァレルロード・S・ドラゴン】か…。

 今のシンクロにはこれほど強力なカードが幾つも有るというんだね…」

 

 その手には枚数が少ないから一つにまとめられた制限・禁止カードが集められたファイルが開かれていた。

 

【ヴァレルロード・S・ドラゴン】

シンクロ・効果モンスター

星8/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがS召喚に成功した場合に発動できる。

自分の墓地からリンクモンスター1体を選び、装備カード扱いとしてこのカードに装備し、

そのリンクマーカーの数だけこのカードにヴァレルカウンターを置く。

(2):このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの攻撃力の半分アップする。

(3):相手の効果が発動した時、このカードのヴァレルカウンターを1つ取り除いて発動できる。

その発動を無効にする。

 

「【ヴァレル】は【ヴァレット】と組み合わせる事で無法を極めたテーマの一つだよ。 

 全カードが禁止カードを経験した全盛期【征竜】やほぼ全てが禁止か制限になった完全体【イシズティアラメンツ】程理不尽じゃないが、カオス・ルーラーが禁止になるまで妨害握れずに先攻取られたらサレンダーしても許されるレベルだったよ」

「どうして君の故郷は機皇帝に滅ぼされていないんだい?」

「機皇帝以前にDMの理がエンターテイメントに留まって世界の理と繋がっていないからだろうな。

 だから可能性の模索の皮を被った殺意の追求が際限無く加速しているんだよ」

「僕のクリアマインドが濁りそうだよ…」

 

 (常にハイライトが無いが)若干死んだ目で遠くを見ながら地獄のラインナップに黄昏れた様子を見せるブルーノ。

 アニメ主要キャラすら殺しに掛かる現代遊戯王の闇よ…。

 

「【TG】と相性の良いリンクモンスターも有るしサベージドラゴンは単体でも汎用シンクロ枠だからバロネスと一緒に使うなら使ってもいいけど…」

「使ったら【TG】じゃなくて【ヴァレット】に乗り換えてしまいそうだからどちらも遠慮しておくよ」

「そうか」

 

 MD次元なら舐めプ呼ばわりされるだろうけど、デッキがアイデンティティと直結する精霊界でただ強さを求める強要は良くないな。

 

「とりあえず【ジャンク・スピーダー】と【シンクロン】は入れていいんじゃないか?」

「そうだね。

 入れ過ぎてデッキが【ジャンク】にならないよう気をつけないとだけど。

 まあ僕はジャンクじゃなくてスクラップなんだけど」

「そのジョークは笑えないな」

「たはは…」

 

 滑ったかぁと頭を掻くブルーノにファイルからカードを抜いて差し出す。

 

「これ、【TG】と相性良さそうじゃないか?」

 

【機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-】

永続魔法

このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できず、

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):フィールドの表側表示モンスターは機械族になる。

(2):自分フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500アップし、

相手フィールドの機械族モンスターの攻撃力・守備力は500ダウンする。

(3):墓地のこのカードを除外し、手札を1枚捨てて発動できる。

デッキから機械族・地属性モンスター1体を手札に加える。

 

【王虎ワン・フー】と組み合わせて地獄の妨害展開を広げでも良し、【キメラテック・フォートレス・ドラゴン】の召喚素材に相手モンスターも巻き込んでも良しの隠れた壊れカードをブルーノに渡す。

 

「ありがとう。

 機械族としても扱うの効果を失っていたモンスターが多かったから困っていたんだ」

 

 3枚組み込んで仮組みを終えたブルーノが一枚一枚丁寧にカードをばらけさせてデッキを混ぜながら、不意に真面目な顔になった。

 

「執事君。気分を害する覚悟で質問をいいかい?」

「構わないが…?」

 

 態々そんな前置きをするという事に訝しみつつ促すと、ブルーノは真剣な顔で口を開いた。

 

「アリアスちゃんの事だよ」

「……そうか」

 

 ダルクもそうだが、ブルーノもアリアスを危険視していたようだ。

 

「彼女に助けられた手前、あまり悪くは言いたくないけれど彼女は邪悪なモンスターだ」

「否定はしないよ」

 

 無邪気な姫様や意外と怠惰なアリアンナと悪戯好きなアリアーヌ達と違い、アリアスは明確に悪意を持って行動する節がある。

 

「彼女は危険だ。

 可能なら距離を取るべきだ」

 

 切り離せと言いたいのを敢えてそう言い換えたのが用意に察せられるブルーノに、しかし俺は答える。

 

「その必要は無いよ。

 そんな形をしたらアリアスが()()()()

「可哀想?」

 

 意外すぎる言葉に目を丸くするブルーノに言う。

 

「アリアスは真面目過ぎるんだよ。

 彼女は姫様を本気で愛していて、姫様が幸せになるために全力を尽くす事がラビュリンスの存在理由(レゾンデートル)だとそう信じているんだ。

 だから俺を認めてくれているだけでも信じられないぐらい譲歩してくれていると分かっているんだ」

「どういう意味だい?」

「例えばさ、ブルーノが任務を放りだして遊星と何の関係もない遠い地で修理工場に勤めだしたらZONEはどうしていた?」

「……理由を問い質して任務に戻れと命じていたと思う」

「だろうな」

 

 世界を救う為に自分の全てさえ捧げた男だ。

 無意味に脇道に逸れるような無駄を認めたりはしまい。

 

「今のアリアスはそれと変わらない状況を繰り返している俺を許してくれているんだ。

 それどころか伝を持ち出して手伝ってくれている」

 

 現状を会社に例えるならラビュリンスが会社で姫様は設立した社長。

 アリアスは創立以来会社を支えた重役。

 今の俺は社長の肝入で入社した幹部候補の新人。

 なのにその新人は会社の業務を放りだして会社に関係のない企業に入り込んで他所の手伝いをしている。

 そんな奴が同じ会社に居たら俺なら間違いなく同じ会社の人間とは思わないだろう。

 

 だが、アリアスは会社への帰属意識さえ確かなら気が済むまでやりなさいと注意だけで済ませている。

 それどころか身銭を切って必要な人材の紹介までしてくれている。

 

 それを踏まえれば昨日の嫌がらせも意味は変わる。

 

「君は【ラビュリンス】(我が社)の一員であると忘れていないよね?

 忘れているなら忘れないよう手始めに種族から帰属させようか?

 会社に関係ない真似はまだ許すけど、不利益を見舞わせるなら容赦しないよ?」

 

 あの時のアリアスがこう言っているように聞こえていたからこそ、俺はアリアスの嫌がらせじみた悪戯に不快感や敵愾心を抱きはしなかった。

 どころかアリアスの視点からなら殺しても道理が通るのにあくまで脅かすに留めた点からアリアスの恩情と慈悲がよく染み渡った。

 そんな神上司(悪魔だが)を嫌うなんてそれこそ人の心を持っているという資格はないだろう。

 

「アリアスは()()だけど()()じゃない。

 姫様のためならどんな悪行も愉しみながら実行するだろうが、ラビュリンスの利とならないなら理不尽に悪行をばら撒かない。

 それが分かっているから大丈夫だよ」

「……」

 

 理解はしたが完全には納得いかない。

 そう言いたげなブルーノだが。そうかとカットしたカードを束ねていく。

 

「君がそう言うなら僕ももう少しだけアリアスちゃんを信じてみるよ」

「その信用を裏切ったら容赦しなくていいからな。

 ブルーノが信じる義に悖るとそうなって対立するのはどうしようもない状況だろうからな」

「そんな日が来ないと良いけどね」

 

 そういい束ねたデッキをケースにしまう。

 

「そうだな。

 後十年若かったら本気で口説いていた美人と友人が敵対するのは楽しくないからな」

「え? 執事君ってアリアスちゃんが好きだったの!?」

「ここだけのぶっちゃけ、姫様より好みだったりする」

 

 ここだけの話、姫様は性的対象に見れるぐらい好きだがどうしても敬愛が上回るため()()()()()()回数はアリアスのほうが多かったりする。

 バレたら本気で養豚場に送られるだろうから墓穴の底まで道連れにするけどな。

 

 ゾゾッッ!!

 

「「っ!?」」

 

 凄まじい悪寒が走り、二人して警戒しながら入口に視線を飛ばす。

 

「ブルーノ、病み上がりなんだから下がっていてくれ!」

「すまない」

 

 エクストラからいつでもモンスターを喚べるよう警戒しているとコンコンとドアをノックする音が響き、次いで扉の先からハスキーさんの呼びかける声が聞こえてきた。

 

『旦那様。ジェネクス・コントローラーが御出ですが入っても宜しいでしょうか?』

「……ああ。入ってくれ」

 

 「失礼します」とドアを開けて入ってきたハスキーさんは言葉通りにジェネクス・コントローラーを抱えていた。

 

「? 如何致しましたか?」

「「ふぅ~」」

 

 ハスキーさんが入室するなり空気が軽くなり二人して緊張を解く。

 

「いや、ちょっとあっただけだからハスキーさんは気にしなくていいよ」

「然様ですか。

 ジェネクス・コントローラーがアリアスより手紙を預かっているそうなので確認をお願いします」

 

 そう言い下がっていくハスキーさん。

 

「態々手紙?」

 

 魔力通信で話せるのに何でと思いつつジェネクス・コントローラーが手にする手紙を開き、そして俺は地面に倒れ込んだ。

 

「執事君!?」

 

 慌てて俺に近寄るブルーノだが、俺にソレを構う余裕はなかった。

 

「一体手紙に何が…」 

 

 開いたブルーノが顔を引き攣らせているのだろう。

 

『ごめん。嫌いじゃないけど交際は無理』

 

 盗聴されていた事以上に、学生時代の最大のトラウマと一文一語変わらないお断りの言葉に俺はワンショット・キルを喰らい力尽きた。




現在のブルーノのデッキは旧弾【TG】【ジャンク】【シンクロン】の複合型にクロック・ワーク・ナイト他汎用サポートで繋いだ状態です。
ここから新弾カードで再強化します。

オマケ〜アリアスの受難〜

(爆弾発言直後)

姫様「アリアス」(絶対零度)
アリ「ひゃい!?」(ガクブル)
姫様「偶になら貸してあげるけど、一番は解っているわね?」(養豚場の(re)
アリ「今すぐ振って来ます!」(手紙を送り出したジェネクス・コントローラーに持たせに飛ぶ)
姫様「アリアスなら妾になっても許したんだけど…」
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