迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
後、城編と自由都市編で章管理しました。
倒された衝撃で意識が無くなったユーリを拘束するのをハスキーさんに任せ、俺は先に屋敷に戻って尋問の支度を行うことにした。
「執事君、それは一体何に使う気なんだい?」
俺が用意していた物が理解できないと言いたげに尋ねるブルーノ。
用意していた物。
『鋏』
『携帯コンロ』
『鍋』
『味噌』
『葱』
「尋問に使うんだが?」
「ごめん。僕にはそんな用途に使う物とは到底思えない」
まあ、確かにそうだな。
「大人しく情報を出してくれれば使うつもりは無いが、そうじゃないなら少し酷い目に合わせようかと思ってな」
「まさか彼を痛めつける気じゃないよね?」
「流石に拷問は無理だよ。
代わりに奴のデッキを眼の前で刻んで鍋で煮込んでやろうかなと。
それでも駄目なら飲める程度に冷ましてから無理矢理食わせるつもりだが」
「発想が悪魔よりも邪悪だよ!!??」
絶叫するブルーノ。
カードとデッキが生命より重い世界だからこそ有効かなと思い用意していたが、ブルーノの反応を見るに家族を惨殺する並に効果的らしい。
俺だって姫様のカードにそんなことをされたら舌を噛んで死んだ後怨霊になって七代祟るぐらいやるから言い分はわかる。
「どうしてそこまで酷い事が出来るんだい!?」
「奴は人がカードになる際に恐怖する姿を愉しむクソガキだぞ?
そんな奴に本気で恐怖させて絶望させようと思ったらこれぐらい必要じゃないか?」
「だけど、」
「それにだ、ブルーノ」
恐慌するブルーノに俺は言う。
「俺は別に人の命が特別大事だなんて思想は無いが、カードにされた被害者達の事を考えるとこれでも温いと思うんだよ」
俺はユーリが人をカードにする事を嗤った時、少し古い漫画のワンシーンを思い出した。
『俺はロンドンなんか嫌いだ
でもなあいつらはバーテンや女郎達やバアさんはこの闘争とやらと何の関係もねえ
でもあいつらは今死体になって死体を食ってる
それが俺には勘弁ならねえ』
そう語った彼の静かな義憤の言葉がストンと収まったのだ。
「ブルーノ。俺はユーリ達の事情は知らない。
もしかしたら他の3つの次元が加害者で、融合次元こそが本当は被害者なのかもしれない。
だけどさ、ユーリの言葉が真実なら精霊界は、エリス達エクソシスター達は奴等の侵略戦争なんて
なのにカードにされて連中の侵略戦争に利用されている。
おそらくはエクソシスター以外にも被害者は居るだろう。
そんな奴等に俺達が自重なんてする必要あるのか?」
真っ直ぐ見据えて問い掛けると、ブルーノは声を静かに少しだけ悲しそうに応えた。
「……言いたい事は理解出来るよ。
その考えと怒りは過激過ぎるけど否定は出来ないさ。
だけど執事君、君が
少なくとも今はまだ。
それは違うのかい?」
自分でも驚くぐらいブルーノの言葉は受け入れることが出来た。
「……それもそうだよな」
同郷の者が撃たれたから自分達も撃ち返していいなんて、考えの正しさ以前にそれを言っていいのは直接襲われたマルファ達だけの権利であって俺が振り翳していい言葉では無い。
「お門違いは解っているが、ユーリの尋問は任せていいか?
俺だと
「うん。あまり役に立てていないし是非任せてくれ」
「そんなことは無いぜ。
ディスクの解析もそうだし、今も俺がやり過ぎだと諌めてくれたしな」
「ありがとう。
いつ起きるかわからないしこのままハスキーさんと監視を代わってくるよ」
そう言って席を立つブルーノに俺も用意した鍋をキッチンに戻してから手持ち無沙汰にならないようデッキを調整に入る。
「とりあえずサイドは全部戻しておくか」
対応力は上がるが複数テーマを入れてデッキ総数が50を超えているのは宜しく無い。
墓地肥やし特化の【ティアラメンツ】を混ぜているならまだしも、【隣の芝刈り】【おろかな埋葬】【おろかな副葬】の3枚だけでカバーするには些か事故率が怖い。
「ディアベルは残して【次元障壁】ガン積みしておこう」
対応力と制圧力の高さからディアベルスター関連は引き続き登用するが、デスフェニギミックとシャドールは外し壺系も金謙のみに絞る。
強貪を抜くならダ・イーザも使いづらくなるのでデスガイドと共に外す。
リンク召喚が実装前らしいからイヴリースをピン差しから2枚にして【ワン・フォー・ワン】も入れておく。
ジェスターとバック・ジャックは1枚づつのままにするか増やすか…。
「姫様達は…可能な限り入れておこう」
城とクックロック以外の全員を2枚づつにしておく。
手札誘発は増Gは1枚だけは入れさせてもらいうららを1枚に減らしてわらしは1枚のまま。
罠はイヴリースの事故を避けるためにエクストラ召喚に制限を課すウェルカムは1枚に変更。
他は次元障壁を増やす分ドラパニ、雪獄、ダルマ・カルマ、無限泡影の4枚に絞る。
そうして出来上がったデッキを確認したのだが…
「…あんまり変わってねぇな」
というか、ぶっこみ過ぎてさっきまで50枚どころかデッキは60枚限界値だったらしい。
今更ながらよく回ったもんだ。
現在枚数50。これなら下手に減らすこと考えずに芝刈り入れて51枚にするべきか?
その辺りはエクストラを整理しながら考えるほうがいいな。
エクストラデッキに手を付けようとした所でハスキーさんが声を掛けてきた。
「旦那様。
夕食の準備に取り掛かろうと思いますが、捕縛した彼の分は如何致しましょう?」
「手を付けないかもしれないからサンドイッチみたいな簡単なものを用意しておいてくれるか」
「畏まりました」
敵なんだから食事を用意しなくてもいいのかもしれないがブルーノに諌められたばかりなのでちゃんと人として扱う事にする。
「さてと…ん?」
座り直した所でジェネクス・コントローラーが裾をクイクイと引っ張って自身を主張していた。
「どうかしたのかコン?」
抱えてテーブルに乗せるとジェネクス・コントローラーはまるで慰めるように俺の手を擦った。
「……大丈夫だよコン。
引き金を引く覚悟はちゃんと出来ているよ」
ブルーノには俺が
態々言う必要もないしそれが戦場での正当な行いの結果と罪として記されていないからだ。
…と、肯定的な理由で言わないでいたのなら格好がついたんだろうが、残念な事に人殺しの肩書をブルーノに知られたくないだけの臆病さからだ。
だけどもし次元侵略を指揮しているプロフェッサーなる人物が生かしておいたら碌な事にならない悪人で、精霊界へも侵略を企てているというなら俺は今一度
姫様のために
姫様のために
勿論そうならないよう尽くせるものは尽くすが、
結果としてそのせいでブルーノと決別するかもしれないが、それでも俺は止まる気はない。
「誰も傷付かないハッピーエンドなんて贅沢は言わないが、せめて人死の出ないノーマルエンドぐらいは目指したいものだな」
因みにブルーノは尋問の際にデッキ味噌汁の件を語りユーリに協力を求めてユーリは真っ青な顔で快く応じることを快諾しました。