迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
俺の前に現れた全身真っ黒な僧侶は徐ろに結跏趺坐を組んで座り込んだ。
「『サモン・プリースト』は召喚時に守備表示になる。
効果の発動はあるか?」
アニメ特有の「既に発動していたぜ」をさせないために此方から確認してかかる。
「…でしたら私は『ビッグウェルカム・ラビュリンス』を使いデッキから2着目の鎧を召喚するわ!!」
来た!!
俺が何より求めていた
「その発動にチェーンしてライフを半分支払い手札から【レッド・リブート】を発動する!!」
【レッド・リブート】
カウンター罠(制限カード)
このカードはLPを半分払って手札から発動する事もできる。
(1):相手が罠カードを発動した時に発動できる。
その発動を無効にし、そのカードをそのままセットする。
その後、相手はデッキから罠カード1枚を選んで自身の魔法&罠ゾーンにセットできる。
このカードの発動後、ターン終了時まで相手は罠カードを発動できない。
発動した直後、経験したこともない強烈な虚脱感が唐突に全身を襲い立っていることが出来ず膝を付いてしまう。
「だ、大丈夫なの!?」
一応命を賭けたデュエルの筈なのだが、本気で心配している様子で安否を問う迷宮姫に
「あ、ああ。元いた場所ではリアルダメージは受けた事が無かったから吃驚しただけだ」
そう応え俺は笑う膝に無理矢理力を込めて立ち上がる。
「ふぅ…すまない待たせた。
『レッド・リブート』へのチェーンはあるか?」
「悔しいけれどありませんわ」
「じゃあチェーンの逆順処理により『レッド・リブート』の効果で『ビッグウェルカム・ラビュリンス』は不発になりこのターンの罠カードの使用は不可能になる。
代わりに『レッド・リブート』の効果でデッキから通常罠を任意で一枚セット出来るが適用するか?」
「…では、私は『強制脱出装置』を伏せておきますわ」
容赦ねぇ。
状況次第では回避手段にもなり得るカードを選ぶ辺り迷宮姫も破壊一辺倒で止められないことは分かっているんだろう。
「少しだけ驚かせてもらったけど、これだけのフィールドを前にそのモンスターだけで凌げるなんて思ってないわよね?」
「当然だ。俺は勝つぞ」
「っ!? その大口が本当か私に見せてみなさい!!」
不安なのか大仰に煽る迷宮姫に俺はにっと笑って返してやる。
「勿論だ」
「〜っ!?」
不敵な態度に息を呑む迷宮姫を前に俺は勝利への唯一の道を駆ける。
「俺は『サモン・プリースト』の効果を発動。
手札の魔法カード『ブラック・ホール』を墓地に送りデッキからレベル4のモンスターを特殊召喚する」
迷宮姫の手札は0。
うららの心配が無いからサモプリの効果も安心して使える。
「俺はデッキから【憑依装着−ダルク】を攻撃表示で特殊召喚する」
【憑依装着−ダルク】
効果モンスター
星4/闇属性/魔法使い族/攻1850/守1500
このカードは自分フィールド上の「闇霊使いダルク」1体と闇属性モンスター1体を墓地へ送り、
手札またはデッキから特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚に成功した時、
デッキからレベル3またはレベル4の魔法使い族・光属性モンスター1体を手札に加える事ができる。
また、この方法で特殊召喚したこのカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
黒衣の僧侶の聞いたこともない経文が梵字の列となって宙を舞いそれが人形を形作ると中から杖を携えた黒髪の少年が現れた。
「『ブラック・ホール』を使わずにダルクを召喚…?
っ!? ダルクは闇属性魔法使い!? 貴方まさかっ!!??」
アリアーヌを超える攻撃力を持つダルクを前に前のターンのやり取りを思い出したらしい迷宮姫が驚愕に染まる。
その懸念は大正解だ。
「俺は2体でオーバーレイネットワークを構築!!
現れろ!【レイダーズ・ナイト】!!」
【レイダーズ・ナイト】
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/闇属性/戦士族/攻2000/守 0
闇属性レベル4モンスター×2
このカード名はルール上「幻影騎士団」カード、「RR」カードとしても扱う。
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
このカードよりランクが1つ高いか1つ低い、
「幻影騎士団」、「RR」、「エクシーズ・ドラゴン」Xモンスターの内いずれか1体を、
自分フィールドのこのカードの上に重ねてX召喚扱いでEXデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは次の相手エンドフェイズに破壊される。
ダルクとサモプリが生じた光の渦に消え、その軌跡の中から首元のマフラーから青い炎を噴射する機械仕掛けの馬に乗った重装騎士が舞い降りる。
「エクシーズモンスター…だけどその程度の攻撃力で私を斃すことは…」
効果を知らないようで困惑する迷宮姫に対し、俺はレイダーズ・ナイトの効果を語る。
「『レイダーズ・ナイト』は効果で自身のランクより一つ上か下のランクのエクシーズモンスターに変化できる」
「更にエクシーズ召喚を!?」
「『レイダーズ・ナイト』の効果発動!!
X素材を1枚外し、そのままエクシーズ召喚!!」
機械馬から大量の炎が噴き上がりレイダーズ・ナイトを自身諸共包み込んでゴウゴウと燃え盛る。
多分主役級のカードだから専用のセリフがあるのだろうが、残念ながら俺は登場する作品を見ていないのでそれっぽい台詞を即興ででっち上げ諳んじる。
「雌伏の時を終え、今ここに反逆の翼は天を穿つ!!
再臨しろ【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】!!」
【アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン】
エクシーズ・効果モンスター
ランク5/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
レベル5モンスター×3
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):X召喚したこのカードは効果では破壊されない。
(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
このカードの攻撃力は、このカード以外のフィールドのモンスターの元々の攻撃力の合計分アップする。
このカードが闇属性XモンスターをX素材としている場合、
さらにこのカード以外のフィールドの全ての表側表示モンスターの効果は無効化される。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分はこのカードでしか攻撃宣言できない
何度も叩きのめされ、そして叩きのめすのに使い続けた俺の切り札が現実の肉体を得て降臨した。
炎の中より姿を現した濃い紫色をベースとした鋼の巨竜は、二本の足で大地を踏みしめながら轟と咆哮を轟かせる。
「こんな、たった一枚のカードからこんな怪物を呼び出すなんて…」
戦場に選んだメインエントランスが窮屈そうに見える巨躯にたじろぐ迷宮姫。
しかし城主としての矜恃からか毅然とした態度で俺に啖呵を切って見せる。
「いいでしょう。私が貴方を見縊っていた事を認めましょう。
ですが、そのドラゴンとて次の私のターンから始まる私の『おもてなし』の前では決して傍若無人に振る舞うことは叶わないと知りなさい!!」
左腕を引き剣先を俺に向ける迷宮姫だが、その手は微かに震え恐怖と戦っているのが手に取るように解ってしまった。
自分が逆の立場だったら間違いなく惨めに土下座して命乞いをしているだろうに、彼女は恐怖に耐えて誇りを貫こうとしている。
味方であると解っていても恐怖を感じずにはいられない俺と違い、アークリベリオンの覇気に果敢に立ち向かうその姿に俺は敵として相対している最中だというのに美しいと感じた。
だけど、だからといって死にたくはない。
だから止まれない。
「次のターンは来ない。
ここが最後のターンだ」
「冗談が下手なのね。
そのドラゴンの攻撃力は3000でしょう?
例え私のフィールドを完全に破壊しようと私のライフは削りきれはしないわ」
「『アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』は2つの効果を持っている。
一つはX素材にエクシーズモンスターを使用している場合、フィールドのモンスターの効果を奪うというもの。
そして、X素材を1枚外すことでお互いのフィールドの自分以外の全てのモンスターの攻撃力を合算した数値を加算することだ」
「……嘘でしょう?」
アークリベリオン以外にフィールドに存在するモンスターは計4体。
その攻撃力の合計値は、
「効果発動。
エクシーズ素材の『サモン・プリースト』を墓地に送り『アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の攻撃力を9300ポイント上昇させる」
合計攻撃力『12300』
ライフ8000スタートのOCGでさえ一撃で消し飛ばしてお釣りが出る超絶火力を手に入れた叛逆の竜が、近付くだけで心臓が停まりそうな凄まじい威圧感を解き放つ。
「……聞かせていただけるかしら?」
バトルフェイズへの移行を宣言しようとしたところで、迷宮姫は両手を下げて真っ直ぐ俺を見た。
「なんだ?」
「貴方のいた場所では、
「ああ。 俺も散々やられてきたよ」
多くの環境デッキが展開する手の打ちようのない地獄絵図の数々を思い返しながらそう答えると、迷宮姫は観念したように小さく笑う。
「そう。それはとても怖い場所ね」
そう言うと迷宮姫は一歩前に出て要望を願い出た。
「止めはアリアーヌではなく私に向けなさい」
「「「姫様!?」」」
迷宮姫の言葉にアリアス達が悲鳴を上げるが、迷宮姫は一喝して二の句を塞ぐ。
「狼狽えるな!!
避けられぬ死に怯え従僕を巻き込むなど、主として恥以外の何物でもないわ。
攻撃表示であれば誰を狙おうと私のライフは尽きるのだから構わないでしょう?」
「分かった。
バトルフェイズに移る」
その気高さに俺は了解すると戦いの幕を下ろすためにバトルフェイズへの移行を宣言する。
「お止めください姫様!!」
「お願いですからサレンダーをしてください!!」
「姫様!!」
泣きじゃくりながら思い留まるよう懇願する下僕たちの言葉に迷宮姫は恐怖など無いかのように満面の笑みを花開かせた。
「ふふふ。 こんなにも慕われている私はなんて果報者なのかしら」
まるで自分が悪役になったように感じながら、俺は終いの言葉を口にした。
「『アーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』。
『白銀の城のラビュリンス』を攻撃」
次回は戦後処理です。