迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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今回はまたユーリ視点です。


俺はデュエルに勝ちたいんじゃなくて楽しみたいんだ。

「今度こそ通れ【ビッグウェルカム・ラビュリンス】発動!!」

「ざーんねん!今度も【灰流うらら】で止めるよーだ!」

「同じだと思うな!さっきは通したが【墓穴の指名者】で除外する!」

「指名者の発動にチェーンして私が【神の宣告】発動させて頂きます」

「糞がぁ!!??」

 

 僕にはこの光景が全く理解出来ない。

 オジサンは二人にいいように弄ばれボッコボコにされている。

 それだけならただ愉快な光景で終わる筈なのに、オジサンの顔には悔しさとそれ以上に楽しいと笑顔が浮かんでいた。

 

「じゃあいっくよー!

 【ダイノルフィア・フレンジー】発動!」

「墓穴止めたのが運の尽きだ!

 灰流うらら発動!!」

「うにゃあライフムダ払いさせられた!?」

「アリア。今回は自分でなんとかしなさい」

「むーりー!!

 妨害打ってよお姉ちゃん!」

 

 劣勢に次ぐ劣勢。

 絶望的な展開の綱渡り。

 猫に弄ばれる鼠のほうがまだ有情を感じるような苦境なのに、オジサンは悔しそうにしても笑みは消えない。

 

「流石にこれで終わりますよね?

 【悪魔嬢リリス】トドメを」

「あー…クソ、通しだ」

 

 結果は当然のものだった。

 展開を妨害され、耐え忍ぶもヤスリで削り取るようにリソースをすり減らしたオジサンは敗北した。

 なのに、

 

「初手リンカーネーションが致命的だったな…」

「というかあの状況から3回もターン回させるとかしぶと過ぎだよ〜?」

「それぐらい出来なきゃカチコミなんざ怖くて出来ないよ。

 二人共、ちょっと感覚が鈍っていたから次は【霊使い】使わせてくれ」

「いいけど姫様のが強いよね?」

「デッキパワーが低いと言え。

 未明札の読みの勘を取り戻したいから十回はボコられておきたい」

「執事って意外とマゾ?」

「じゃなきゃデュエルなんて出来ないよ」

「どうしてなのかな?」

 

 気がつけば僕はオジサンに質問していた。

 

「ん?」

「オジサンは負けるのが怖くないの?

 どうして負けたのにそんなに楽しそうなんだよ?」

 

 分からない。

 デュエルは勝つためにやるものだ。

 勝つことを望み、()()()()()()()()()()()()()()()()

 だけどオジサンは負けたのにその事を意に介していない。

 

「負けるのが怖いって、負けて失う物があるわけでも無いのに何を怖がる必要があるんだ?」

「失うだろう!?

 負けたら今までの勝利が全て無意味になるんだよ!?」

「……なんでだ?」

 

 オジサンは本当に解らないという風に僕に尋ねた。

 

「DMは()()()なんだから勝つ事もあれば負ける事だってあるだろう?」

「オジサンには分からないみたいだけど、僕達には勝敗は生き死にに関わる問題なんだよ」

「そうじゃなくて、俺が分からないのは()()()()()()()()()()()()()って事なんだが?」

「はぁ?」

「お前の言い分だと敗北は罪みたいに扱っているように聞こえるが間違っていないか?」

「それは……」

 

 僕は負けてはいけない。

 勝たなければいけない。

 

 でも、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 なんで()()()()()()()()()()()()()

 

 僕にとって勝つのが楽しくて負けるのは楽しくない。

 それは間違いないはずなのに、どうして()()()()()()()()()()? 

 オジサンの指摘で僕は僕の中に僕とは違う考え方がある事に気付かされてしまった。

 

「どうした?」

「なんでもないよ。

 僕の事よりもなんで負けたのにそんなに楽しそうなのさ?」

 

 それがどうしても理解出来ない。

 

「そりゃあ()()()()()からに決まってるだろ?」

「でも負けたよね?」

「ああ。最後は手も足も出なくなったな」

「それなのに楽しかったの?」

「ああ。内容があったからな」

「内容があった?

 負けたなら過程なんか意味ないじゃないか」

「そうでも無いぞ」

 

 そう言うとオジサンは何故か遠い目をした。

 

「先攻1ターン目にミラジェイドとバロネスとデスフェニ立てられるような、足掻く権利さえ与えられない盤面に押し潰されるのに比べたら手応えの残る敗北は十分楽しいのさ」

「ミラジェイド? どんなモンスターなのかな?」

 

 様子からフルール・ド・バロネスやデストロイフェニックス・ガイに並ぶ強力なモンスターなのは予想できるけど…

 

「専用融合魔法1枚だけで召喚出来る攻撃力3000のモンスターで、相手ターンでも発動出来るフリーチェーンの除外効果と自分がフィールドから離れたターンの終わりに相手フィールドのモンスターに全体破壊をぶち込む俺の故郷の地獄絵図を象徴するカードだ」

「なにそれふざけてるの」

 

 僕のスターヴヴェノムが霞んで見える強さなんだけど?

 

「ふっ、こんなの序の口だぞ?

 俺の故郷にはドローフェイズに追加ドロー3枚した挙げ句ターン1制限なしにフリーチェーンで連続使用可能なデッキバウンス使う完全耐性を兼ね備えた駄犬もいれば、テーマ内のカード全部が裏側除外する効果があってエースに至っては墓地に落ちる全てのカードを強制的に除外ゾーンに送る上フリーチェーンで裏側除外もできる野郎もいるし、なんなら相手ターンに手札から速攻魔法を使用可能にした挙げ句使った速攻魔法を3枚までデッキにバウンスしてバウンスした枚数分のドローを行うフィールド魔法もあるんだが?」

「オジサン。それは本当にDMの話なんだよね?

 熱で寝込んだ時に見た悪夢の間違いじゃないの?」

「それならどれだけ幸せだったろうな?」

 

 目がマジだ。と言うか濁りきって混沌みたいになってる。

 

「因みに故郷ではデュエルのライフは8000スタートで4ターン目にはほぼ決着付くのが普通だ」

「どうやったらそんな真似が出来るのさ…?」

「お前が負けた最終盤面に更に先があるのは日常茶飯事だ」

「アレにまだ先があったんだ…」

 

 勝てない訳だ。

 オジサンは僕達よりずっと余裕がある条件で、それでさえ全く足りない地獄みたいな環境で闘って来た怪物だったんだ。

 勝てる相手を見下して藻掻いている様を楽しんでいた僕とは最初から立っている土俵が違ったんだ。

 それを理解して僕は、漸く負けを認めることが出来た。

 

「うん。決めたよ。

 オジサン。僕とデュエルしてくれないかな?

 ただし、デュエルディスクを使わないテーブルデュエルでお願いしたいんだけど」

「何を考えているんだ?」

 

 訝しむのもしょうがないよね。

 

「オジサンが言う『過程を楽しむ』デュエルに興味が湧いたんだよ。

 オジサンが勝ったら僕が融合次元に行けるよう全員分のデュエルディスクを用意してあげるよ。

 どうかな?」

「……わかった。

 1戦やろうか」 

 

 訝しんではいるけれど、オジサンは僕の提案を受けてくれた。

 

 そして僕は本気で挑み、そしてオジサンの本気のデュエルをしっかりと身に刻み込んでから融合次元へと帰還した。




なんか書いてたらユーリ君が少し漂白されちゃいました。

マジでなんでだろう?

個人的に4人の中で一番ズァークの悪影響受けているのがユーリだと思ってます。
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