迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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リソースの分配は難しい

「良かったのですか?」

 

 盤面から手札を読もうと集中していた所でアリアンナがそう問いかけた。

 何をと確認するまでもなく送り返したユーリに何ら細工を施さなかったことだろう。

 

「完全に信用したわけじゃないが、いつまでも拘束しておくメリットもないしユーリが本気で言っていたならそれこそ余計な事をしたほうが不利益になりそうだったからな」

「お姉ちゃんは心配し過ぎだと思うよ?

 少なくともアイツぐらいのデュエリストなら執事の敵じゃないし、束になってかかってきても私達でぶっ飛ばせばいいじゃん」

 

 楽観的な台詞を口にするアリアーヌにアリアンナは溜息を吐く。

 

「彼個人はもとより、融合次元に私達のデッキの情報が渡ったのは看過するべきじゃないと思うわ」

「それこそ今更だな。

 俺は自由都市で有名になり過ぎた。

 少し調べればデッキの傾向は幾らでも調べられてしまう。

 それに融合次元の標準デッキは【古代の機械】でエクストラにシンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、リンクは無く融合の強テーマ【烙印】や【ティアラメンツ】は存在すらしていないそうだ。

 【サンダー・ドラゴン】や【HERO】使いは居るそうだがプロフェッサーの次元統一には賛同せずアカデミアと反目状態でプロデュエリストを貫く姿勢。

 【イヴリース】や【次元障壁】なんかでロックすれば雑なプレイでもしなければまず負けないだろうさ」

「執事もこう言ってるんだからお姉ちゃんももっと気楽に行こうよ」

「それでいいのかしら…」

「そうだよ。

 私は【ウェルカム・ラビュリンス】発動!

 デッキから姫様を召喚するよ!!」

「残念。永続トラップ【暴君の暴飲暴食】発動。

 フィールドの【稲荷火】をリリースしてレベル6以上の特殊召喚を封じる」

 

【暴君の暴飲暴食】

永続罠

自分フィールド上に存在するモンスター1体をリリースして発動する。

このカードがフィールド上に存在する限り、

お互いにレベル6以上のモンスターを特殊召喚する事はできない。

自分の手札が3枚以上の場合、このカードを破壊する。

 

「ニャアッ!?」

 

 意気揚々と使ったカードが空振りになりアリアーヌがネコみたいな悲鳴をあげる。

 

「手札制限の関係で使いづらそうなカードですね」

「エクシーズ・リンク主体のデッキだったら刺さりづらいが、融合・シンクロ軸ならいい感じに拘束してくれるからな」

 

 【霊使い】は手札消費が激しいのでそれを逆手に取り入れてみたが、【憑依覚醒】を引けない状況なんかでは中々厭らしい結果を残してくれている。

 特殊召喚を多用する【ラビュリンス】は元より、【クシャトリラ】や【ジャックナイツ】なんかも召喚出来ずに手札を腐らせてくれるし、 なんなら流行りの【スネークアイ】【ホルス】【R-ACE】なんかも打つ手が制限出来るぜ!

 

「ホルス?スネークアイ?」

 

 なんかまた何処かから電波受信してしまったみたいだ。

 

「どうしました?」

「いや、なんでもない。

 それより二人共姫様を入れた感想はどうだ?」

 

 前回の勝利の報酬としてアリアーヌは、俺が持っているカードの姫様をデッキに入れてみたいと望んだ。

 アリアンナは特に希望が無いとのことだったので、せっかくだからとアリアーヌ同様姫様をデッキに組み込ませていた。

 俺が所持している姫様は二組4枚。

 その全てを二人に預ける形になったが、貸したのは二人だから姫様も怒りはすまい。

 

「結構変わるね。

 気持ち的にこう、絶対勝つぞってやる気になるよ」

「私も最大限手を尽くそうという気になりますね」

 

 どうやら精神的支柱である姫様を手にした事でデュエルに対する姿勢に変化が起きているようだ。

 俺も【ラビュリンス】を握っている時は相手に殺意しか無いので気持ちは分かる。

 因みに【霊使い】の時は勝ち負け含めて楽しむことが何より大事に感じるし、【ドリアード】ならやりたい事さえやらしてもらえれば勝ち負けは割と考えてない。

 勿論どれを使う時も勝つことを考えてはいるが、それぞれ重要視しているものが違うという話だ。

 

「そうだな。そこまで変わるなら今回の件が片付くまで二人に預けたままにしておくのもアリだな」

「執事〜。

 流石にそれはマズイって」

「気持ちは有り難いですが、やはり姫様を所持するのは執事の役目かと」

「それは当然なんだが?」

「これだけ独占欲あるのになんで手を出さないかなぁ?」

「こうなるともう姫様が押し倒す以外解決策は無いわね」

「何をコソコソ話し込んでいるんだ?」

「べっつに〜?

 執事の姫様への愛が重いってだけだよ〜」

 

 何故か投げやり気味な態度でそう嘯くアリアーヌ。

 

「俺なんかまだまだだよ。少なくともアリアスには遠く及ばないな」

「姫様のためなら三幻神にカチコミかけれる中姉さまとタメ張ってる時点で大概だからね?

 かなりじゃ済まないぐらいヤバイ奴って事だからね?」

「三幻神って…本気でやったのか?」

「姫様が止められておられなかったら本気でやってたいたと思うわ」

 

 疲れ切った様子でため息を吐く二人。

 流石アリアス。

 その覚悟には頭が下がるばかりだ。

 

「っと、話が変な方向になってたが、兎に角万が一があったら姫様に顔向けできないからな。

 俺のためにも姫様を預かってほしい」

「ちぇっ、有耶無耶に出来なかったか」

「流石に無条件では聞けないよ〜。

 せめて【霊使い】で私一人だけにでも完勝してもらわなきゃ姫様は預かれないかな?」

「それもそうだな。

 ちょっと待っててくれ。

 【霊使い】を融合メタに特化させてくる。

 それと【次元障壁】も1枚ずつ貸すからデッキに入れておいてくれ」

 

 そう言い【次元障壁】をテーブルに置いて俺はデッキを手に席を立つ。

 そのまま書斎に向かうといくつかのファイルを取り出し、俺はデッキの改造を始めた。

 

 

〜〜〜〜 

 

 

「姫様、どうしましょうか?」

 

 コンちゃんを通して姫様に今のやり取りに意見を伺ったんだけど…。

 

『姫様は執事の執着心に悶絶してお応え出来なくなられているからこの先の指示は私が執るわ』

 

 割れ鍋に綴じ蓋というか、見ている分には愉快だからいいけどもうちょっとこの二人はなんとかなんないかなぁ?

 なんとも言えない気持ちになる私に中姉さまの冷酷な声が伝えられる。

 

『アリアーヌ。執事を徹底的に叩き潰しなさい。

 彼の意見は間違っていないけれど、()()()()()私達(アリアドネ)より彼の方が重要度は上よ』

 

 姫様在りて我等在り。

 城の呪いと姫様の御力により私達『アリアドネの姉妹』は在る。

 故に姫様さえ御健在であられれば我等は幾らでも生み出すことが叶う。

 

「中姉さま。執事が勝ったらどうするの?」

『そうなったならば彼の思う通りにさせなさい。

 代替可能だからと貴女達を()()()()する理由は無いし、貴女達も無事に帰ってきて欲しい事に変わりはないわ』

 

 中姉さまも言葉選びが悪すぎるんだよね〜。

 単純に「無事に帰ってきなさい」って言えばいいだけなのに、『自分達は道具』だって律し過ぎて素直に言葉に出来ないんだよね〜。

 姫様も多難だけど、中姉さまもいい人見つけるのはまだまだ先なんだろうな。

 いっそ、私達も纏めて執事に囲われちゃうほうが早いか?

 

 ……アリだな。

 

 顔はそこまでじゃないけど最初に比べて大分体も引き締まってきたし、姫様との本番のための練習とか理由付けすれば後腐れもないし手頃かもしんない。

 

『アリアーヌ』

「どうしたの中姉さま?」

『誂うのはいいけど程々にしなさいね?』

 

 バレテーラ。

 

「あはは…ちゃんと自重するよ〜」

『アリアンナ。アリアーヌがやらかさないようちゃんと監視しておきなさい』

「ええ。姫様より先に執事の()()()()にならないよう目を光らせておきます」

『頼むわね。

 姫様は私達が執事と()()()程度の関係を持つ事を構われておられないようだけど、だとしても姫様よりに先に関係を持つなんてありえないからね』

 

 そう言い残し中姉さまは通信から離れていった。

 

「お疲れ様コンちゃん」

 

 頭を撫でるとコンちゃんは手をカチャカチャ振る。

 可愛いヤツだなぁ。

 

「因みにさお姉ちゃんは執事の事どう思ってるの?」

「特にどうとも思っていないわ。

 紳士的だし良き同僚と思っているぐらいよ」

「ふーん」

 

 中姉さまもそうだけどこれは脈アリですな。

 

「待たせたな。

 使いたかったカードが見つからなくて手間取った」

 

 もうちょっと問い詰めてやろうってとこで執事が戻ってきちゃった。

 

「おかえり〜。

 私に嫐られて情けない悲鳴をあげる準備は出来た?」

「それはどうかな?

 おいたが過ぎるならオジサンが少しばかり()()()()()やらないとな」

 

 やらしい感じで煽ると執事も悪ノリしてやらしく聞こえる台詞で返してくれた。

 呆れるお姉ちゃん達と違ってこういうユーモアに付き合ってくれるから執事は面白いんだよね。

 テーブルに敷かれたプレイマットにデッキをセットして私と執事が対面に座る。

 

「お姉ちゃん、コイントスお願い。私が表で」

「宜しいのですか?」

「ああ。裏で構わないよ」

「然様ですか。それでは参ります」

 

 コインを乗せた手を真ん中に伸ばしお姉ちゃんがまっすぐ真上にコインを弾く。

 くるくるとコインは回転しながら落下してテーブルに落ちた。

 そして上を向いていたのは、裏だった。

 

「俺が先攻だな」

「ちぇっ、先攻取って制圧してやるつもりだったのに」

「【ダイノラビュ】で先攻制圧は洒落にならんな」

 

 そうして引いた手札は好調。

 火吹炉もあるからいきなり姫様を呼び出して短期決戦を仕掛けられる気配がしていたんだけど…

 

「俺は手札から【インスペクト・ボーダー】を召喚。

 更に【カイザーコロシアム】も発動するがチェーンはあるか?」

 

【インスペクト・ボーダー】

効果モンスター

星4/光属性/機械族/攻2000/守2000

自分フィールドにモンスターが存在する場合、このカードは召喚・特殊召喚できない。

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

その間はお互いにそれぞれ1ターンに発動できるモンスターの効果の回数が、

フィールドのモンスターの種類(儀式・融合・S・X・P・リンク)の数までになる。

 

【カイザーコロシアム】

永続魔法(準制限カード)

(1):自分フィールドにモンスターが存在する限り、

相手はその数より多くなるように自身のフィールドにモンスターを出す事ができない。

 

 ……もしかして私、詰んじゃったかな?




その後、アリアーヌはロックが崩せず執事にわからされました。

ちな、現在の好感度

姫様→「直接好きと言ってほしい…」エンディング条件達成済み
アリアス→「手のかかる部下ですよ」フラグ条件達成済み
アリアンナ→「良い同僚です」フラグ条件未達成
アリアーヌ→「面白いから好き」フラグ成立済み
ドリアード→「貴方の望むように」エンディング条件達成済み
???→「さて、全部捨てて此方に来るのかな?」フラグ条件達成済み
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