迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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 今更な話ですが、執事は浮幽さくらの開示要因としてバロネスとデスフェニは最初から所持してました。
 ダッシュ・ガイ等の融合要員は十代と交換にて入手してました。
 そして同じ理由からエクストラに寝ているモンスターがあと2体居たりします。


俺は二君に仕えない

 アリアーヌとアリアンナに姫様を預け、対融合に調整した【霊使い】を馴染ませること数日。

 手応えも確かに甘くなっていた勘も大分戻った感覚を取り戻した所で屋敷に来客があった。

 

「私はセレナ。

 プロフェッサーから貴様たちを招待するよう命じられてきた」

 

 眼帯を付けたガタイの良い男を伴う青い髪を黄色いリボンでポニーテールに纏めた少女はそう名乗った。

 姫様には負けるがかなりの美人なのでポジション的には孔雀舞か天上院明日香辺りの立ち位置にいる人物なのだろう。

 

「ユーリはどうしました?」

「プロフェッサーから任務を命じられて作戦中だ」

 

 心配したというわけでもないが、ユーリが来なかった理由を聞き一先ず納得しておく。

 

「そうですか」

「このディスクを装着すればすぐに私達のアカデミアに移動出来るよう準備は済ませてある。

 人数は4人分と聞いていたが間違いないな?」

 

 そう言ってフィールドゾーンの無いデッキホルダーだけのデュエルディスクが収められたアタッシュケースを開封してみせる。

 今更の話だが、俺のデュエルディスクはアニメ初代のフィールドゾーンが2つに分解した状態から変形展開するタイプでアニメとの違いはペンデュラムスケールとリンクゾーンも搭載している点だろうか。

 姫様を始めとしたラビュリンス勢はアニメGXの標準型をラビュリンス仕様にデコレーションした特別仕様である。

 俺の分も勿論姫様が用意してくれたのだが、使ってみると微妙に座りが悪く何故か【霊使い】だと初期装備に比べて引きが微妙になり、【ドリアード】だと事故率驚異の一〇〇%となるため最初から持っていた方のディスクの方が使いやすいとこちらを主に使用している。

 とはいえ使わないと姫様が拗ねるので城ではなるべくそちらを使っていたが、拗ねる姫様が可愛らしいのでその顔見たさに城でもちょこちょここっちを使っていたりする。

 

「確かに。

 申し訳ありませんが支度をするので暫し時間を頂きたいかと。

 三十分程を見て頂きたいのでその間お茶を用意致しますのでお待ち願えるでしょうか?」

「結構。準備ができるまで此処で待たせてもらう」

「そうですか」

「じゃあその間に僕がディスクを確かめておくね」

「何か仕込んでいるとでも?」

 

 特に準備の無いブルーノがそう言い、あからさまに不快感を見せるセレナに弁明する。

 

「違うよ?

 僕達の使っている一部の召喚方法にシステムが対応しているか確かめておきたいんだよ。

 そうならないと思いたいけど、そのディスクを使ってデュエルをする必要が出てきた時に召喚方法に対応していないから召喚できませんじゃ困るからね」

「……そういう事なら承知した」

 

 ブルーノの答えに納得したとディスクを渡すセレナ。

 

「執事君。今のうちに支度を整えてきてくれるかい?」

「ああ。任せたよブルーノ」

 

 すぐにノートパソコンで作業を開始するブルーノとハスキーさんを残しすぐさま執事服に着替え、裾の中に幾枚かカードを仕込んでおく。

 融合次元に向かうのは俺、ハスキーさん、マルファ、アリアンナの4人だ。

 

「アリアーヌ。此方の事は任せるぞ」

「ちぇ〜。

 せっかくお出かけできると思ったんだけどな〜?」

「はは。ブルーノに勝率2割は流石に連れて行くのは厳しいって」

 

 というか俺達の中で1番強いのはブルーノで間違いないない。

 流石ラスボスの側近だけあってタクティクスは元より引きの強さが半端じゃない。

 何なら姫様入れた俺の【ラビュリンス】でも負けた回数が片手で足りないとなればその強さは分かるだろう。

 

「執事。コンちゃんも連れて行くの忘れないでよ」

「ああ。でも本当にいいのか?」

 

 戦いを嫌う優しい性格のジェネクス・コントローラーを連れて行く理由が分からないが、しかし当人もやる気ということで同伴者に名を連ねている。

 着替えを終え再び二人の前に戻るとブルーノもシステムチェックを終えていた。

 

「お待たせしました。

 ブルーノ、ディスクのほうはどうだった?」

「残念だけどリンク召喚には対応していないから自前のディスクを持っていってもらうしかないね」

 

 そう言いディスクを渡そうと近付いたブルーノは俺に耳打ちする。

 

「トラップは仕掛けられてなかったけど監視システムが入っていたから気をつけて」

「分かった」

 

 ブルーノはユーリは少しだけなら信用していいと言ったが、人をカードにしている技術者達は信用するべきじゃないと警戒していた。

 なんなら魔導サイエンティストやコザッキーと同類の外道だと考えるべきとさえ口にしていた程なのだから相当なものと分かる。

 そして人の欲望が世界を壊した未来から来たブルーノの警句は間違っていなかったらしい。

 

「ディスクは装着するだけで大丈夫ですか?」

「ああ。転送はアカデミアで管理するから心配しなくていい」

 

 転送先が牢屋なんてオチの可能性もあるから全く信用出来ないが?

 そうなればハスキーさんが物理的に解決してくれるからそこは安全だなと思いつつ其々己のディスクと反対の腕に装着していく。

 

「準備出来ました」

「分かった。

 セレナより本部へ。転送を開始してくれ」

 

 セレナがそうデュエルディスクに言うとセレナ達と共に俺達の転移が開始される。

 

「執事君。君には返さなきゃならない借りがまだ沢山あるんだ。

 だから無事に帰ってきてくれ」

「ああ。ブルーノ。アリアーヌ。いってくる」

 

 直後、俺達は精霊界を離れ別次元へと跳んだ。

 

 到着したら包囲された挙げ句拘束された…といった事もなく場所も牢屋などではなく海岸線が見える妙に既視感のある波止場に立っていた。

 

「……あ、十代だ」

 

 絶海の孤島であるデュエルアカデミアに十代が降り立ったのが丁度こんな感じの場所だったはず。

 

「何を言っているのかしら?」

「ただの独り言だから気にしないでくれ」

  

 発言を訝しむマルファをスルーして俺は島の中心部に視線を向ける。

 そこには突き立った岩に囲まれた自然豊かな学園なんかはなく、剥き出しの岩肌を要塞化した城のような建築物がそこにはあった。

 

「こちらについて来い」

 

 そう先導するセレナに付いていきながら近付いていく城の感想を漏らす

 

「実用性重視なんでしょうけど、姫様が見たら美しく無いとブチギレそうな外観ですね」

「そうですね。

 海風対策も万全に見えませんし評価は下げざるを得ませんね」

「城壁の状態から清掃も機械任せでロクにしていない様子。清掃は居住の基本だと言うのに」

「好き放題言ってくれるな貴様ら」

 

 感想を言い合っていると不快そうにセレナに睨まれてしまった。

 

「失礼しました。

 城勤めの執事という役職柄そういった感想は隠しきれないもので」

「同じく城勤めのメイドなのでやはり気になってしまいまして」

「城に勤めてはいませんがプロフェッショナルのハウスキーパーとして黙っていられませんので」

「……フンッ!!」

 

 三人していけしゃあしゃあと述べてやるとセレナは不愉快だと鼻を鳴らした。

 

「こんな奴等にユーリが本当に2回も負けたのか?」

「彼とデュエルをしてカードにされていない事が証拠になりませんか?」

 

 やはりユーリはブルーノと同じぐらいの強キャラという立ち位置らしい。

 確かに彼の【捕食植物】はバランスが良く出来ていたし、スターヴヴェノムもボス格のキャラが使うような強カードなので妥当といえば妥当なのだろう。

 とはいえMD基準で見ればまだ多くの粗が目立つのが気になってしまう。

 もっとこう、エクストラだけにでも【アロマ】とか混ぜてより情け容赦なく殺意を煮詰めていこうぜって思うのは現代遊戯王に染まった悪い癖だろう。

 

「ユーリを降したからとあまり調子に乗るなよ。

 もしも甘く考えているなら私の【月光(ムーンライト)】で思い上がりを糺してくれる」

 

 脅すようにそうデッキをチラつかせるセレナだが、俺はつい別のことを考えてしまった。

 

「【月光】とは怖い怖い。

 まあ、先攻ワンキル型じゃ無いでしょうからどうにか足掻けそうですが」

「は?」

 

 と、セレナは足を止め俺に振り向く。

 

「何をふざけた事を言っている?

 何をどうしたら先攻1ターン目で勝利出来ると言うんだ!?」

「俺の故郷では【月光カタパ】使いの有名なデュエリストが居りまして、彼の場合【月光】の展開力でリンクモンスターとエクシーズモンスターを何度も召喚して攻撃力一万オーバーのモンスターを【カタパルトタートル】で射出するという手段のために採用していますね」

「なにそれ巫山戯ているの?」

「彼を筆頭に【月光】は展開要員としてシンクロ使いやエクシーズ使いにも人気が高いですよ」

「馬鹿じゃないのか!?

 【月光】は融合モンスターをエースに戦うテーマだろうが!?」

「融合テーマだから融合しか使わないのは可能性を狭める甘えですよ。

 甘えではなく信念を持ってそれを貫きたいというのなら、それだけの誇り(殺意)を以て他の使い手を叩き潰す以外その正しさを証明する術はありません。

 反論があるなら伺いますが?」

「〜〜〜ッッ!!」

 

 そう言ってやるとセレナは顔を真っ赤にして俺に背を向けて城への歩みを再開する。

 

「ちょっと虐めすぎたかな?」

「間違いなくオーバーキルだったわよ」

「旦那様は時折悪魔より人の心が無くなりますよね」

「どうせならその嗜虐心を姫様に向ければいいのに」

 

 なんでそこまで言われなきゃならないんだよ?

 というかアリアンナが何を言っているのか全く分からんのだが?

 

 少しばかり空気を悪くしてしまいつつその後は特に会話もなく小一時間程歩いた所で漸くアカデミアに到着した。

 

「貴様がユーリを降したデュエリストか」

 

 無駄に広い階段の先に頭に機械を埋め込んだ禿頭の男が待ち構えていた。

 

 主人公に倒される役に相応しい悪人面をしている男に俺は慇懃に挨拶する。

 

「初めまして。貴方がプロフェッサーで宜しいのですか?」

「そうだ。【赤馬零王】それが私の名だ」

「赤馬…」

 

 名前的に海馬剛三郎の系譜だろうか?

 まあ、今はそんな制作側的なメタは置いておこう。

 

「今回私は貴方から招待されたという認識でおりますが、用件があるならば先に伺いましょう」

「では単刀直入に言わせてもらう。

 私の配下となり、世界を統合する私の計画に協力してほしい」

 

 やはりそう来たか。

 予想通りの言葉に、俺はハッキリと答えを口にした。

 

「お断りします」




次回は会話フェイズです。
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