迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
正直、ハゲはこの辺について考えてたのかな?
赤馬零王の要求への返答としてこちらも要件を語る。
「私共は貴方に臣従するために赴いたのではありません。
我々は貴方方融合次元の者にカード化され拉致された精霊界の住人を返還していただく為に赴いたのです。
この交渉を受けられないと云うならこの時点で私共は貴方方と話す口はなくなります」
下手に出ても良いことはないと判断し、強気な姿勢を示しておく。
「そもそもの話ですが、我々は貴方方の次元が如何様な状況にあり、どのような経緯と結論を以てかの振る舞いに至ったのか殆ど把握しておりません。
そちらについても御説明願えますね?」
「了解した。
この次元に付いて語れることを語ろう」
まあ、当然の話だ。
自分に有利に、相手にそうせざると思わせなければ侵略の正当性など証明出来はしまい。
「かつてこの次元は一つの世界であった。
しかし、ある悪魔により世界は破滅の危機を迎え4つの世界に分断されたのだ」
「それが現在の融合次元を含むこの世界であると?」
「そうだ。
世界は【スタンダード】【融合】【シンクロ】【エクシーズ】の4つに分断され、スタンダード以外の世界では其々の名を冠する召喚法以外の召喚を持たない世界に成り果てた。
私はこの間違った世界を一つの有るべき形に戻し、誰もが自由にエクストラ召喚を行える理想郷を取り戻すために戦っている」
この時点でツッコミどころが4つ5つは有るんだが気付いているのか?
「質問を宜しいですか?」
「構わん。理解を得るためだ。なんなりと答えよう」
「ありがとうございます。
それではまず、エクストラ召喚を行わない【儀式召喚】はスタンダード次元にのみなのですか?」
「いや、融合次元にも存在するがそれが?」
「そうですか。本筋に関係ないただの疑問ですのでお気になさらず」
おそらくはエクストラのみを選り分けた結果4つという形にしたんだろうが、結果として儀式はハブられてんのかよ。
いやまあ、【ドラグマ】とか【宣告者】【ヌーベルズ】に代表されるぶっ壊れ儀式テーマが無いならいらない子扱いもわからなくもないが、そろそろ儀式の不遇扱いも大概にしておくべきでは無いだろうか?
閑話休題
「次いでですが、嘗ての次元の形を記憶している者はどの程度になるのですか?」
「今のところ私以外見付かっていない」
おい。
「然様ですか。
では問いますが次元の統一と仰られておりましたが、その必要性の是非を確認したい。
貴方方は全ての者が自由に召喚方法を選べる世界を求めた為に次元の統一という選択を選んだようですが、そのような手段を講じずとも召喚方法の流布をするだけで良かったのでは?
力に訴えず、実際にデュエルにて他次元の召喚方法を流布し認知度を得させるだけでその理想は叶うはず。
態々そのような手段を用いた理由は何故ですか?」
「数多の召喚手段を使いこなす貴様には理解出来ないだろうが、各次元の者達は己の世界の召喚法こそ至高という凝り固まった思考に侵されている。
その思想を脱却させるためには分かたれた次元の統一の必要性を強く感じたのだ」
「成程」
一間筋が通っているように聞こえるが、しかし社会を知る大人からすれば穴だらけなのが容易に見透かせた。
「では次元の統一が必須であるとして、各次元に存在する政治的権力等に生じる混乱とそれに伴うライフラインに対するダメージへの対策は出来ているのですか?」
「……無論だ」
やってねえなコイツ。
子供向けホビーアニメだからスルーされているが、次元の破壊や統一なんで惑星単位の大事件が起きればその混乱は億単位の死傷者という形で現れるのが必然。
混乱と暴動、生活基盤の崩壊、それに伴うは貧困と飢餓による治安の悪化、蔓延する病気と足りない医療品の奪い合い。
東日本を襲った大地震の時の日本でさえ規模は小さくともそれらが現実に起きたのだから、より不安定な貧困地域や内乱中の国などその形態の維持さえ危ぶまれてしまうはず。
ついでに言うなら次元が一つになるなら土地に対する人口は単純計算でも4倍。
途方もない混乱が起きるのは目に見えている。
「重ねて尋ねます。
貴方方は次元を統一した後に理想郷を作り上げたとして、その理想郷を維持するための方策について明確なプランニングは存在するのか?
有ると云うのならその詳細を求めます」
「……詳細は極秘につき口頭では語れない。
協力を約した後であればその資料を貴様に公開しよう」
ついにボロを出してきたな。
だが、弾劾するにはまだ足りない。
何の話をしているのか全く理解できていない顔をしているセレナ達を放置して俺は問を重ねていく。
「何より私達が疑問視しているのは人間をカードにする技術についてです。
その技術は何のために開発されたのかお答え願えますか?」
「理想郷の実現のための必要な処置だ」
「その必要性を語れと言っているんだよ。
俺達からすれば従わない邪魔者を排除するための拘束手段にしか見えてないんだよ。
加えて次元統一に直接関係ない精霊界の住人にそれを行った理由も答えてもらうぞ」
態と怒りを顕にした風を装い語彙を荒げて詰問を強くする。
「カードにした者達は次元統一に必要なエネルギー源として活用する。
精霊界でのカード化はその技術試験のために行ったのだ」
「エリス達をそんな事のために…」
ギリギリと歯を食いしばりハスキーさんに押さえつけられながら必死に飛びかかるのを堪えるマルファ。
「落ち着いてくださいマルファ。
それだけの大規模な計画ならエリス達にはまだ手を出されていないはずです」
「くっ…!?」
ハスキーさんに宥められ怒りで目尻に涙さえ滲ませて耐えるマルファを横目に俺は湧き上がる怒りを鎖で押さえつけながら会話を続ける。
「先に告げておきますが、彼女達の返還と今後精霊界で同様の活動の永久禁止は今回の最低限と我々は考えています。
それについて同意は頂けるのですか?」
「返還については前向きに検討しよう。
だが、次元統一に必要なエネルギーの確保には到底届いていない現状、容易に頷くことは出来ない」
「成程。ならば是が非でも頷けなければならないようにしないとなりませんね」
「やらせん!!」
最早交渉は無意味と判断したように見せかけるためそう口にすると、狙い通り眼帯の男が真っ先に反応した。
鍛え上げられた肉体に相応しい身体能力で俺を取り押さえようとしたのだろう。
だが、
「お止めなさい」
人の筋力を遥かに凌駕するドラゴンのパワーを惜しげもなく発揮したハスキーさんに頭を掴まれ、そのまま地面を砕かせながら掴まれた頭を地面に沈めた。
「バレット!?」
呻きすら漏らさず痙攣する男にセレナが悲鳴をあげる。
「ご安心を。殺しはしていません。
ですが、数カ月はベッドに根を張る必要がある程度に痛めつけさせていただきました」
ヤバい感じに痙攣してんだが、本当に死んでない?
笑顔でそう宣ったハスキーさんにちょっと引きつつ、俺は困った様子で肩を竦めた。
「これは参りましたね。
私は交渉に気合を入れねばと口にしただけなのですが、そちらはもう話すことは無いと仰られますか?」
「……いや、部下が粗相を働いた。
非礼を詫びよう」
交渉の意思はあると示すために謝罪を口にする零王。
セレナは信じられない様子で零王を見るが、俺の言葉を勘違いして攻撃してきたのはアカデミアだ。
謝罪しなければ交渉決裂となり、奪われた者たちの救出という大義名分を得たハスキーさんの暴力がどう振るわれるか想像は容易い。
「セレナ。人を呼んでバレットを医務室に」
「分かりました!!」
零王の言葉に何処かに通信を始めるセレナを放置して俺は嘯く。
「あまり好ましくない状況ですがお互い忙しい身の上。
交渉を続けましょうか」
零王「上手く言いくるめて味方に引き入れればズァークを倒す戦力に…!」
執事「味方にしたけりゃ統合後の社会問題と政治問題と人口問題の解決策を提示しろ」
零王「」
舌戦はまだまだ続きます