迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
もちろんレスバもあるよ!
「グハッ!?」
腹に一撃喰らい蹲る零王に俺は吐き捨てる。
「立てよ。
娘のためだなんて寝言をほざいて世界を4つも滅ぼそうってクソ野郎が、高々一発食らっただけでおねんねしないだろ?」
上着を脱ぎネクタイを緩めて首元のボタンを外しカードを血で汚さないようデュエルディスクも自動操作に切り替えてから上着と共に外し、執事の姿勢を投げ捨て俺は言う。
「貴様、なんのつもりだ!?」
「何のつもりだ?
言っただろ? テメエの腐りきった頭を叩き直すってな。
ほら来いよ。それともテメエの覚悟は、一発殴られたぐらいで挫けるもんなのかよ?」
「見下すな!!」
散々煽ってやると零王は顔を真赤にして拳を振り下ろす。
狙いは顔。
デュエルで鍛えた動体視力を駆使して首を横に拳を回避しカウンターを脇腹に叩き込む。
「グッ!? がァァ!?」
しかし今度はよろめかず逆に反対の拳が胸を打った。
「この程度!!」
歯を食いしばり耐え反撃の蹴りを見舞う。
俺に喧嘩の才能はない。
護衛の一環として体を鍛えるために俺のトレーナーを務めたハスキーさんはそう断言した。
なので、身を守る為にハスキーさんは殴られる前提の耐え方と受け方を徹底的に叩き込み、拳や足を振るう際はダメージを狙いやすい胴を打つよう指導した。
それは今、確かに結果を示している。
「がっ!?」
「グハッ!?」
拳が、足が、肘が何度も振るわれ互いにダメージを蓄積させていく。
だが同じ素人でも殴り方と守り方を教わった俺の方がダメージは少ない。
「何故だ!?何故私の邪魔をする!!??」
叫びながら振るわれた拳を硬い頭蓋で受け流し俺は叫ぶ。
「お前が何もかも間違っているからだよ!!」
反撃の膝が鳩尾に突き刺さる。
「グブゥッ!?
私は何も間違えてなどいない!!」
「だったらテメエは蘇らせた娘になんて言うつもりだ!?
お前のためにお前が命を擲って守った世界を4つ滅ぼしてやったぞって、そう言うつもりか!!」
「それは…!?」
たじろいだ瞬間を狙い飛びかかって馬乗りになりマウントポジションをそのまま拳を振るう。
「加えてこうも言ったな?
スタンダードで作った家族を捨てたってな?
そいつ等にはなんて説明したんだ?」
「くぅっ!?」
腕で顔を守り亀のように丸まる零王に怒鳴りつける。
「前妻の娘を蘇らせるためにお前達の人生目茶苦茶にすんぞとちゃんと言ってきてるんだろうな!!」
「いい加減にしろ!!」
腕を振り上げたタイミングで身を捩られ体勢を入れ替えられてしまう。
「これは私の罪だ!!日美香も零児も関係無い!!」
ゴッ!と体重が乗った拳を何度も叩きつけながら吠える零王に頭突きで胸を打ち押し退け、下がった所を腹筋を駆使して起き上がりながら言ってやる。
「被害者には関係ねえんだよ!!
被害者にとっちゃ犯人の家族も加害者の一味だ!
テメエの妻も、ガキも、会社も、何もかもが復讐対象になるんだよ!!」
「そんな屁理屈を」
「だったらテメエはなんで今もズァークを恨み続けてるんだ!!」
殴り殴られながら俺は言う。
「そもそもズァークとは何なんだ?
別次元からの襲撃者か?
それとも封印された邪神の手先かなんかなのか?」
仕切り直すため距離を取って他の遊戯王アニメを参考にその出自を問えば、零王は溜まった唾を吐き捨てて息を整えながら答えた。
「かつての世界を滅亡に追い込んだズァーク。
その正体は一人のデュエリストだった」
「人間?」
「ズァークはカードの声を聞こえると口にし、カードはその言葉を肯定するように自在に操られヤツはその才を開花させていった」
つまり、こちらで言うところのサイコデュエリストか精霊使いだったって事か。
だが人間がなんでドラゴンになってんだよ?
「ヤツとモンスターのコンビネーションは他と一線を画していた。その素晴らしいパフォーマンスやデュエルに観客は熱狂し、その興奮する観客に応えるため奴のパフォーマンスは激しさを増していった」
おい。なんか雲行きが別方向に怪しくなり始めたぞ?
「そうした中である日、リアルソリッドビジョンにより実体化したモンスターに奴と対戦していたデュエリストが押し潰され重症を負う事故が発生した」
「それでデュエリスト業界から追い出されて復讐に走ったのか」
「否だ。その事故の衝撃は観客をより熱狂させ、その結果他のデュエリストもより過激なパフォーマンスを行うようになり、奴もまたさらに過激なパフォーマンスをくり返すようになった」
どうしよう。俺、ズァークが可哀想になってきた。
「そして奴はデュエリストの頂点に立ったその日、観衆の望みだと【アストログラフ・マジシャン】の力を使い自らが使役する4体のドラゴンと一つになり【覇王龍ズァーク】へと変貌し世界を滅亡させようとしたのだ」
「…………」
「人の欲望がズァークを生み出した事は事実だ。
だが、カードの怒りに飲み込まれ破壊を為さんとしたズァークを私は決して許しはしない!!」
世界を奪ったズァークへの怒りを語る零王だが、俺はただズァークに対し
「莫迦野郎が」
「!?」
「カードの怒り?
お前はなんでカードが、モンスターが、精霊達が人間を滅ぼそうと思うほど怒り狂ったかちゃんと理解してねえじゃねえか」
「怒りの理由?
それは人間の欲望が」
「カードが怒っていたのはそんなことじゃねえ!!
モンスター達は、
「……は?」
なんでそんな事も分からないんだ。
「事故が起きた時にお前達はズァークを叱るべきだったんだよ。
観客に阿るためでも事故の可能性が起きる危険なパフォーマンスは止めるべきだと。
もうさせないよう制度やルールを改め、もう同じ過ちが起きないよう厳格な処罰を制定していればズァークは狂わなかったんだ」
ズァークの苦しみが少しだけど俺には理解できる。
自分が悪いことをしたはずなのに誰も怒ってくれない。誰も叱りもしない。
それどころかそれを称えもっとやれと強要する。
そのストレスは鬱病を患うのに十分なものだった筈だ。
そうして懊悩しながら苦しみ続ける主をただ見ているしかなかったカードの精霊達の嘆きと怒りはどれほどなのか想像もつかない。
今なら分かる。
あの日、俺がニビルを戦場に向けて召喚した時に喚び出したモンスター達がどうしてあんなにも怒っていたのか。
ニビルが、アストラムが、アーゼウスが、アークリベリオンが、デュガレスが、アクセスコード・トーカーが、まるで視界に映る全てを焼き払わねば収まりがつかないと怒り狂っていたのかようやく理解できた。
その怒りは全てマスターである俺のための怒りだったんだ。
「ズァークと融合した4体の龍も、アストログラフ・マジシャンもマスターであるズァークを救おうとしたんだよ。
マスターを追い詰め苦しめる世界から解放するために人間である事をやめさせ何もかも消し去ることで原因を取り除き苦しみから救おうとしたんだよ」
誰もマスターを救わないなら俺達がやる。
マスターを苦しめる世界など無くなってしまえ。
「だが、だとしても私は……」
「そうやってズァークと同じ様に唯一人のために世界を滅ぼすのか?」
赤馬零王は何も答えなかった。
静かに膝を着き、放心した貌で燃え尽きたように空を見上げていた。
そして戦闘の終了を告げるように【カイザーコロシアム】は幻影のように消えていく。
「この世界は俺も含めて莫迦野郎ばかりだ」
虚しさを吐き捨てるように漏れた言葉はコロッセウムと共に幻影の中に消えていった。
ズァークとモンスターの怒りについてはオリジナル解釈です。
というか、中学生前後のカードに愛されるような子供が人を傷つけて怒られるどころか褒められたら絶対歪むし鬱にだってなるって。
そしてそんなン見せつけられたらモンスターだってキレる。
躁鬱で暴走したら喜んで世界を滅ぼすと思うんよ。
なんでズァークがZONEばりにおいたわしくなった上に世界滅亡は自業自得感マシマシになりましたが、良いですかね?
次回は後処理。
後デュエルもやりたいな。