迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
理由は業務がちょっとブラックしてて執筆時間と精神が落ち着かなったからです。
ドラゴン二体が本気で暴れて問題ない場所ということで選ばれたのは砂漠であった。
容赦なく降り注ぐ直射日光は昨今の真夏の日本を思い出す熱中症まっしぐらな灼熱地獄を作り出しているが、ドラゴン二体は知った事かとばかりにドッタンバッタン大乱闘。
躱されたブレスが地面に着弾しては砂を溶かしてガラスを量産し、振るわれる四肢と尻尾が砂を巻き上げ巻き上げられた砂が鑢のカーテンとなり砂をさらに細かく研磨する。
「アリアス。
そう言えばなんだが、ハスキーさんとの馴れ初めってどんなだったんだ?」
「大した話じゃ無いよ。
ハスキーとは姫様に仕えるにより相応しい知識と技術を磨くためにと門戸を叩いた専門学校の寮で同室になったのが縁の始まりさ」
視線は戦場に向けたまま、気にはなっていたが問い質すほどでもない二人の関係について尋ねてみた。
「そこで友人になったのか」
「いや。お互いに不倶戴天の天敵と認識し合って敵対したよ」
「なんて??」
俺は最初にハスキーさんを友人と紹介されたはずなんだが?
「あの頃はふたりとも揃って未熟な頃でね。
今思えば中々愉快な出会いとやり取りをしたものだよ」
アッハッハッと珍しく声を上げて笑う姿に意外も意外と思わされる。
「アリアスは最初から完璧だと思っていたからそんなふうに言うのは意外だな?」
「ふふっ。私とて至らぬ事は沢山あるよ。
故にこそ学ぶことは尽きないよ」
「そうだな」
学校を卒業すれば勉強とは無縁になれるなんてことは全く無い。
寧ろ足りないことばかりであの頃にもっと学んでおけばと後悔するばかりだ。
必要だが誰からも強要をされない故に自ら必要な事を選ばなければならず、時間も限られ学ぶ事の難易度はうなぎ登りに上がり続ける。
「あの頃のハスキーは反抗期もあってだいぶ荒れていてね。
親の指示で本人の意志と関係なく無理矢理入学させられた事が気に入らないからとサボりこそしないが授業態度は最悪の一言に尽きたね」
「成程。不良生徒と生真面目生徒って比較されて余計にって感じか?」
「その通り。
そんな感じでお互いに不満をためた結果、ふとしたきっかけで爆発してしまってね。
最終的に校舎の2割を消し飛ばす被害に至る殴り合いをやってしまったのさ」
2割の被害って…。
寮が有るそうだし相当でかい学校だろうから実際は凄惨極まる光景だっただろう。
「そんな経緯で最終的にハスキーとは和解してね。
今では信頼して依頼を出来る友人の一人になったんだよ」
「そうか」
時折垣間見える妙な過激さから昔はやんちゃだったとは思っていたが、アリアスの話のお陰で色々理解出来た。
とりあえず怒らせないよう気を付けよう。
「それにしても変わったね」
「ハスキーさんがか?」
「いや、アークリベリオンがさ」
そう言う視界の先ではアークリベリオンがハスキーさんが変態したシュトラール相手に優位を取る光景があった。
『キュォォォオオオオン!!』
甲高い咆哮を上げ幾条もの光線を撃ち出すシュトラールだが、アークリベリオンは翼を形成するエネルギーの被膜から断続的にエネルギーを噴かして宛ら◯Cのクイッ◯ブーストのような鋭角的な軌道を描いて光線を潜り抜ける。
『グォォォオオオオン!!』
そのままシュトラールとすれ違いざまに手首のブレードを一閃してそのまま離脱。
追撃可能だが深追いはせずヒットアンドアウェイを繰り返す慎重な立ち回りを意識しているような動きを見せる。
「多くのドラゴンが自身の種族としての強さを前面に押し出すことで相手を押しつぶすのを好む。
だけど今のアークリベリオンはそうでは無く
それはとても
「そうなのか?」
俺が実際にアークリベリオンが戦う姿を見るのはこれが二回目だ。
最初は『騎士』との決闘の際にデュガレスを伴わせた時。
その時のアークリベリオンはデュガレスにより強化された暴力を超えた暴虐的な能力で『騎士』を押し潰そうとするような広範囲攻撃を多用していた。
だが『騎士』はその攻撃を全ていなしきり、10秒と経たず『騎士』には通じないと判断したのかアークリベリオンはハスキーさん相手に見舞った着弾速度を高めた収束ブレスや瞬時加速を多用する高機動戦に切り替え、最終的に敗北を喫したものの『騎士』から「お前は難敵だ」と言わしめた。
「君は見ていないから知らないのだろうけど、アークリベリオンはドラゴンとしての戦い方に執着し二度に亘り『騎士』に惨敗した。
それが彼を変えたのだろう」
俺が姫様とのデュエル後に一度。
そして俺が遊城十代と初邂逅を果たした日に二度目の『騎士』との闘いを繰り広げ、そしてどちらも惨敗したと聞いている。
その際に『騎士』はアークリベリオンを「強いが時間稼ぎにしかならない」と酷評していた。
俺も含めた多くのプレイヤーが切り札と呼び扱われてきたアークリベリオンにとって、それはどれほどの屈辱と激憤であっただろうか想像もできない。
「友人としては複雑だが、力を奮いたいだけのままではハスキーに勝ち目はないだろうね」
そう口にする視線の先では戦いの趨勢がアークリベリオンに傾いている事は俺にすぐ分かるほどはっきり見えた。
そしてその動きを見ていた俺は、アークリベリオンの動き方が『騎士』と全く同じものであることに漸く気付いた。
『よもや此処までとは!?』
人には言葉に聞こえない竜の鳴き声で眼の前の雌…ハスキーは確実に傾いていく天秤に怒りを含んだ喜悦を隠しきれずに笑っていた。
竜の姿となったハスキーとの力の差は俺が確実に劣っていた。
しかし戦いが長引くに連れ俺とアイツで負傷の差がハッキリと現れていった。
攻撃を避ける事を意識した俺は全身に多くの擦過や焦げ付きの痕跡があるばかりなのに対し、ドラゴンらしく正面から受け止めていたシュトラールは鱗を何枚も砕かれ幾つものブレスの着弾痕が残されていた。
ソレが意味する事を理解し、俺は裡に渦巻く
『貴方が精霊である事が実に惜しい!
生身であったならその精を宿した次代を孕む事も願う程です!』
興奮から雌の本能を口にし歓喜するシュトラールだが、俺はそんな雄として最上級の賛辞が何よりも辛く聞こえつい吐き捨ててしまった。
『止めろ』
『なんですか?』
『俺を称賛するな!』
自らに向いた赫怒のままに俺は吠える。
ハスキーとのシュトラールとの交戦の中で俺は己の研鑽は結実を結んでいたことを理解できた。
だが、だからこそ理解してしまった。
『プライドに固執し『騎士』に勝つことが叶わずマスターを死なせかけた俺を称賛なんかするな!!』
最強種というプライドを捨て、ドラゴンの戦い方を捨て、共に轡を並べる同胞達に頭を下げてあらゆる戦略と戦術を身に着けたからこそ理解
あの時自分が『騎士』に勝てなかったのは、力の差などではなく勝利に対する執念の差であったのだ。
一度目はたかが人間と甘く見て見下されて当然の無様を晒した。
二度目はリベンジの機会だとマスターが主と仰ぐ姫と呼ばれる悪魔の召集に応え同じ轍を踏んだ。
そして三度目。マスターが『精霊使い』として『騎士』と決闘を行った時。
あの時俺はマスターから過去と未来の因果を手繰り寄せるデュガレスを補佐に頂き、己の全力を投じて漸く手応えのある障害程度では無いと認識を改めさせる事が叶った。
だが、そのすぐ後にアーゼウスを相手にした『騎士』が勝利を手にしようと決闘のルールを投げ捨てマスターを殺そうとした事でそんな甘い考えこそが愚かな証だと思い知らされた。
『俺が最初からプライドを捨てていれば『騎士』を倒せていればマスターは死にかける様な事はなかったんだ!!
俺が『騎士』を倒していればマスターはアーゼウスを呼ぶ必要は無かった!!
街に居を移し同族殺しに手を染める必要も無かった!!
多次元の問題に巻き込まれ眠る暇もなく倒れるまで無理をする必要もなかった!!
全ては俺が愚かだったからマスターはそんな目に遭っている!!
そんな愚かな俺に賛辞など相応しくない!!』
それが思い上がりであり自己陶酔に歪んだ自責だということはアルファやアーゼウス等俺と同じく『騎士』に敗北を喫した者達からは物理的な方法も含めて諭されていたが、しかしそうだとしても『騎士』に負けた己を許せるものでは無い。
『お前は俺を高く買っていたが、その正体は反逆者の名を背負いながら過去に縛られどこにも行けなくなっている愚かなトカゲなんだ。
だからそんな俺を称賛なんかしないでくれ。』
溜め込んでいた感情を吐き出し落ち着きを得た俺は、純粋に戦いを楽しんでいたのに水を差して惨めな愚痴の相手をさせてしまったシュトラールに申し訳なくなりそう卑下を口にした。
『確かに今の貴方には賛辞は心地良いものではないのでしょう。
ですが、そんな貴方を私はとても強い雄なのだとそう思います』
執事に着いている精霊達は『騎士』について主に三派に分かれてます。
絶許or殺す:知能低い系、カグヤ、ニビル、アークリベリオン
許してはいないが完全に否定もしていない:霊使い、マスカレーナ、星遺物組、アーゼウス、デュガレス他
ケジメは付けたしマスターも許したので許した:レイダース・ナイト、アルファ、サモプリ、サイバー全般、ドリアード、ラビュリンス
その別枠でその後の事も有って拗らせ気味なのがアークリベリオンとアストラムになります。
所で精霊とオリジナルの間で恋愛関係成立した場合ってどうなるんだろうね?