迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
ちょっとデスマが過酷になるので来週は投稿できるか怪しいです。
『貴方が勝たねばならない戦に勝てず、主を苦行に晒した事を悔いておられることは理解しました。
確かにそれは誇りを失うに足る悪夢であったのでしょう。
しかし貴方は決してその悔悟から目を逸らすことも逃げようともなさっていない。
本当に心を折ってしまった者は罪と向き合う事さえせず外に責任の所在を押し付けてしまいます。
でも貴方はそうはせず己の罪の贖い方を求めている。
それは貴方の心の本当の芯がまだ折れていないからです』
『だか、そうだとしても俺には』
後ろを向こうとするアークリベリオンにシュトラールは凛と問い掛ける。
『ならば貴方はもう『騎士』と戦いたくないと?
只人に怯え、旦那様の影に隠れて逃げ続けるおつもりですか?』
『そんな訳があるか!!』
嘲りとさえ受け取れる問いにアークリベリオンは激昂を隠すことなく吠える。
『俺は必ずや『騎士』を討つ!!
喩え万の敗北を繰り返そうと必ず!必ず俺は『騎士』に勝つ!!』
『ええ。だからこそ貴方は強く美しい』
シュトラールは細く長いアークリベリオンの首に己の首を重ねその匂いを擦り付けるように身体を擦り付けながら嘯く。
『自らの驕りを恥じ、敗辱に塗れようと決して勝つ事を諦めない貴方にこそ
そう告げてシュトラールは再び戦いの間合いを取りなおす。
『さあ、戦いましょうアーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン。
私を糧に更なる高みへ。
私もまた、更なる境地へと羽ばたく為に貴方を糧とします』
『キュルルル…』と喉を鳴らせ
『ああ。その血、その鱗一枚に至るまで喰らい尽くし俺は蒼穹に羽ばたこう!!』
二頭の竜が新たに戦意を燃やし咆哮のデュエットを奏でる。
そうして再び苛烈な戦いが始まろうとしたその瞬間、砂を掻き分け空へと舞い上がらせながら全身に奈落を貼り付けた巨大な大蛇がその激突を阻んだ。
「うん?どうやら暴れすぎてゴルゴンダ砂漠の主を呼び寄せてしまったみたいだね」
「ゴルゴンダ!!??」
あっけらかんと大蛇の正体を口にするアリアスだが、執事が警戒しているテーマに関わりのある名に思わず叫んで問いただしてしまう。
「おい待てアリアス!?
ゴルゴンダって事は近くに『教導国家ドラグマ』があるのか!?」
「あれ?知らなかったのかい?
ドラグマは大陸を挟んだエンディミオンのお隣さんだよ」
「マジか〜。
って、それよりも二人を援護しないと」
二体が負けるとは微塵も思っていないが、しかし楽な相手でもないだろうとディスクを起動する執事にアリアスが待ったを掛けた。
「止めておいたほうがいい。
今の二人はゴルゴンダの主より危険だよ」
そう嘯いた直後、シュトラールとアークリベリオンが大蛇を睨みながら怒りの籠もった咆哮を轟かせる。
『私達の逢瀬を…』
『俺達の闘争を…』
『『邪魔してくれてんじゃねえぞ!!』』
そうして始まった二対一の戦いは、圧倒的という言葉ですら生温い蹂躙劇であった。
『くたばりなさい!!』
シュトラールが上空から魔力の槍を釣瓶撃ちに降り注がせ、ゴルゴンダの主が回避もままならずに周辺に穿たれた外れた魔力槍が巻き上げる砂塵に覆い隠される。
シャアアアアアア!!??
何本もの魔力槍に全身をくまなく打たれるも巨体に相応しい分厚い鱗が殆どを弾いていたが、しかし幾本かがその鱗さえ貫き吹き出した鮮血が砂の上に散る。
当然その程度で攻撃の手は緩むわけがない。
『デカいだけの蛇風情がドラゴンに歯向かうか!!』
魔力槍の隙間を当然のように擦り抜けたアークリベリオンのブレードが一振りで複数本の剣閃の軌跡を描き、砂塵の中で悶え苦しむ主を滅多切りにして更なる赤い花を咲かせる。
アークリベリオンは切り刻んだ体勢のまま即座に翼の魔力を炸裂。
爆発により生じた推力に抗わず背後へと退避した刹那、再び魔力槍の雨が降り注ぎ鱗の上に突き立てられた槍衾を敷いていく。
そして僅かに生まれた魔力槍の装填時間を埋めるようにアークリベリオンが肉薄し何度も切り裂きながら撹乱する。
完璧な連携を見せるアークリベリオンとシュトラールだが、二体の間に打ち合わせなど無い。
有るのはただ信頼のみ。
『シュトラールならこのタイミングで撃ち込んでくる』
『アークリベリオンならこの程度の弾幕は障害になり得ない』
組み交わした戦いの記憶がお互いにどう動けばいいか、どうすれば邪魔をしないかを理解させそれに従い飛翔する。
宛ら比翼連理の鳥の如く完璧な連携を完成させ、ゴルゴンダの主に碌な抵抗も許しはしなかった。
そうして乱入から十分と経たずにゴルゴンダの主は鱗という鱗を引き剥がされた姿でその身を砂の上に横たえる羽目になった。
「圧倒的じゃないか」
「これでも『騎士』には勝てないのだから奴はほとほと化物じみているね。
ともあれだ。望外のチャンスは活かさないと勿体ないね」
改めてヤツの強さは何なんだろうと執事が宇宙を背負っていると、アリアスがウキウキした様子でゴルゴンダの主の方へと向かい出す。
「奴に何かあるのか?」
「あの主はドラグマが栄えている理由の一つである『ホール』と呼ばれる異次元の扉を身体に宿しているんだよ。
そこから異界の珍しい物が手に入る可能性が有るから姫様への良い献上品が手に入るかもしれないよ」
「成程。それは確かにチャンスだ」
姫様への貢物とあって執事もやる気を出して砂漠を急ぐ。
と、そこで執事は二体の戦場にこの砂漠を選んだのがアリアスであったことを思い出す。
(……流石に無いよな?)
悪意ではないとは言え彼らの戦いを利用したのかと勘ぐり、考えすぎだろうと頭振ってその思考を排する。
それに仮にそうだとして損をしたのはハスキー達であり、文句を口にするべきは彼女達でありアリアスと共にその
「どうしたんだい?」
「チョット暑さが辛かっただけだ」
「ああ。確かに砂漠の日差しは人間の君には相当堪えるだろうからね。
少しでも気分が悪くなったら言ってくれよ?
君に倒れられたら姫様にどんなお叱りを受けるか想像も出来ないからね」
「ああ。無理はしないでおくよ」
そんなやり取りを交わしながら二人が倒れ伏したゴルゴンダの主の下へと向かう。
「災難だったな二人共」
二人を労る言葉を掛けるとシュトラールが人間態に再変態する。
「ええ。折角の昂ぶりが台無しになってしまいました」
心底残念そうに溜息を吐くハスキーに執事は苦笑を返してからアークリベリオンに向き直る。
「お疲れさん。アークリベリオン。格好良かったぞ」
『グルル…』
喉を鳴らし頭を下げて執事に目線を合わせるアークリベリオンの頭を撫でながら告げる。
「アリアスに通訳してもらって聞いたよ。
『騎士』に勝ちたいんだってな」
『ぐぅっ!?』
まるで聞かれたくない話を聞かれて慌てふためいているように首を振って唸るアークリベリオンに執事は苦笑をこぼすと、不意に表情を引き締めた。
「お前が本気で悩んでいる事にも気付かない鈍いマスターですまない」
そう執事はゆっくりと頭を下げて慙悔を口にした。
「あの敗北は俺にも責任がある。
俺は戦いの素人だから余計な口出しなどしないでお前に全てを任せてしまえばいいと、担い手として指示を出す事もせずお前が必死に戦う姿をただ見ていたことは俺の過ちだった。
その結果お前に自責の念を抱かせたことは俺の罪だ」
お前だけが悪かったのではないと口にする主の言葉に呆然と固まるアークリベリオンに執事は心から謝罪した。
「俺が悪かった。ごめん」
『ギャオッ!? グゥオオッ!!??』
人の言葉に直せば止めてくれとそう懇願するように悲しげな鳴き声をあげるアークリベリオン。
悲しげな鳴き声を聞きながら顔を上げた執事はアークリベリオンに告げる。
「だからさ、勝とう。『騎士』に勝とう。
今度は俺も一緒にだ」
手を差し伸べ、求めるように掌を上にアークリベリオンへと差し出しながら執事はそう彼を求めた。
『……』
差し出された掌をじっと眺めていたアークリベリオンだが、やがて壊れ物を扱うようにゆっくりと恭しくその手に爪を乗せた。
「ありがとう。
俺の
握手をするようにその爪をしっかりと握り、そう彼を称賛する。
「ハスキーさん。今日はこの辺でお開きにしましょう」
「ええ。闘争の空気は流れてしまいましたし、屋敷の修理もありますので私は先に戻りますね」
そう翼を開き一足先に自由都市へと帰還した。
「執事君見たまえ!
とんでもなくヤバいカードが何枚も見つかったよ!!」
興奮した様子でそう呼び掛けるアリアスに今行くと返事をしてから執事はアークリベリオンに声を掛ける。
「行こう。
アークリベリオン」
『グォ』
主の言葉に応と短く鳴き、主従は数多のお宝に興奮した様子の上司の元へと並んで歩き出した。
因みにゴルゴンダは九割殺しで解放されたのでアルバスくんはフラグ折れてません←
次回は投稿のタイミング的に間に合わないかもなので禁止カード使うでしょうがご容赦戴ければと思います。