迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
シリアスの反動か短めかつネタがヤバ気味ですね。
「姫様。一つ尋ねても宜しいでしょうか?」
「何かしら?」
「
視界の先には槍を掲げ勝利ポーズらしき体勢を決める【騎士】の姿。
「私も時折解らなくなるわ」
そう答えた姫様は所々服を焦がし髪の一部をチリチリのアフロ状にした姿でうつ伏せに転がっていた。
周囲は正に死屍累々。
アリアスを始めとした家令達は軒並み目を回して倒れ、家具や石像等の無機物系のモンスターも破壊されたりした姿で散乱していた。
自分が無事だったのは姫様からの「呼ぶまで出てこないように」という申し付けに従い自室に篭っていたからである。
その判断は間違いではないのだが、親しい者達が死なない程度とはいえ痛めつけられ転がっている姿は正直面白くはない。
「通算百勝目達成。
タイムは悪くなかったですが、新ギミックの幾つかに無駄足を踏まされたので次回はその辺りを詰めていきたいと思います」
懐かしの饅頭頭を思い出させる抑揚のない声で虚空にそう語りかけた『騎士』は、ぐぬぬと悔しがる姫様に「また来るね」と挨拶して普通に歩いて帰っていった。
そうして城の日常の一部である『騎士』の襲来は今回も姫様の完全敗北という形で決着が着いたのだった。
〜〜〜〜
「対策会議を行うわ!!」
それは『騎士』の襲来から数日たったある日のことであった。
「姫様。
今回は何故に私達を招集したのでしょうか?」
普段は一人で全ての罠を考案し、その設置の指示だけを此方に振り分ける姫様が自分を含めた全員を呼びつけるという珍しい振る舞いに代表してアリアスがそう尋ねる。
「今回私が貴方達を集めたのは外でもないわ!
あの忌々しい『騎士』に敗北することにいい加減飽き飽きだからよ!」
だったらいっそ、『騎士』が来ても戦わなければと思わなくもないが、『騎士』は『騎士』で姫様の罠を攻略するために来ているらしく、そんな『騎士』が罠をスルーしたりすると落ち着きをなくしたり不安がったりととにかく面倒になるので言わないでおく。
「執事、先ずは貴方からなにかアイデアを提示しなさい!」
「えぇ?」
なんで新参者の俺からなんだろうか。
そう思いながらも姫様の要望ということで考えてはみる。
姫様の敷く罠こと『おもてなし』は複数の罠を組み合わせた技巧的に妙手の極みである。
中には【粘着テープの家】とかなんでそれを選んだと聞きたくなるような内容も含まれていたりはするが、俺程度なら看破も回避も叶わずに罠に掛かって手痛い目に遭うだろう。
実際【黒蠍盗掘団】が忍び込んだことがあったが、姫様の『おもてなし』に袋叩きにされ這々の体で逃げ帰っている。
それを全て躱して最後まで駆け抜ける『騎士』の方が異常なのだ。
そんな『騎士』を絡め取れるだろう罠なんて俺には思いつか…。
「……姫様。
ご趣味に合わないようなものであれば一つ思い付きました」
正直発想からして
「構わないわ。
まずは聞いて、それから判断するわ」
「でしたら提案致します。
城外の湖と城内の地下エリアに【バージェストマ】モンスターを放してみるのは如何でしょうか?」
【バージェストマ】
紀元前の原始海洋生命体をモチーフにした罠でありながら墓地から召喚されるとモンスターに変わるという特殊な種族であり、罠であることから鎧姫でサーチも可能と【ラビュリンス】との相性もかなりいい。
特に除外効果を持つ【バージェストマ・ディノミスクス】や魔法罠を破壊する【バージェストマ・オレノイデス】なんかは妨害札として扱いやすく効果も悪くない。
更には隠し効果としてモンスターとしてフィールドに出た後は『モンスター効果を受けない通常モンスター』というかなり特殊な存在になり、条件が厳しいが高い効果を持つ暴君罠カードのコストに使うことも出来るし最強除去アーゼウスでさえ排除出来なかったりする。
弱点は攻撃力防御力がお粗末だということだが、そこは今は考えなくていいだろう。
「聞いたことある気がするんだけど…どんな子だったかしら?
執事。カードは持っていないの?」
「ありますよ。
此方がその中の一枚です」
そう言ってバージェストマの中でも比較的ビジュアルがマシな【バージェストマ・アノマロカリス】をテーブルに乗せる。
「あら、結構可愛いかも」
「姫様。私から提案しておいてなのですがこの案は下げたいかと」
「なんで?」
「アノマロカリスはまだマシですが、他のは結構グロテスクな見た目をしていますので、姫様の『おもてなし』に加えられるには相応しくないかと」
もうぶっちゃけてしまうが、【バージェストマ】を思いついたのがグロリョナ有りエロトラップダンジョンが発想の元ネタだったりするからです。
真っ当なジャンルでは無理そうでソッチ系に思考が走ったが、俗に言う
万が一にも姫様に感づかれてしまう前に案そのものを排斥してしまおうと言い募るとアリアスとアリアンナも助け舟を出す。
「そうですね。
執事の言う通り彼奴らは姫様に臣従するには些か姿観に難があると思います」
「生物であるなら管理に割く手も必要でしょうし、人出を増やす必要もありますね」
「うーん? 確かにそれだったら城に合う見た目が華やかな娘を迎えたいわね」
よし、姫様の関心が逸れ始めた。
このまま見た目の良い【フォーチュン】か【悪魔嬢】辺りの導入に思考をずらしてしまおう。
「えー? 私はいいと思うけどなー?」
流れをぶった切るようにアリアーヌが援護してきやがった。
「普通に罠を仕掛けても駄目だったんだし、一回ぐらい試してもいいと思うな」
「確かに。そのために貴女達を集めたのだし、試す前から取り下げるのも良くないわね」
ヤヴァイヤヴァイヤヴァイヤヴァイ!!
なんてことをしてくれやがりますかという感情を籠め視線を向けると、気付いたアリアーヌはニヤッと愉しそうな笑みを返してきた。
コイツッ、まさか俺の発想に気付いていたのか!?
「それじゃあ次の発表はアリアスにしようかしら」
「はい。私は…」
かなり真剣な顔でプレゼンを開始するアリアスを横目に、俺は自身の案が通らないことを人生で数えるほど真剣に神に祈るのだった。
後日、執事が姫様が出歩く際に姫様の持ち物の中に『レッド・リブート』と『トラップ・スタン』をきちんと所持しているかしつこく確認するようになりました。