迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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本来投稿する話とは違う話ですが、予定の話が結構長くなるのと最近全く姫様メインで描いてなかったのでちょっと弾けました。

そして姫様メインなので当然ヤマもオチもないです。


今日も姫様はポン可愛い

「アリアス!!

 私は今怒っています!!」

 

 それは唐突なことであった。

 いつもの様に『騎士』にコテンパンにされ、ジェネクス・コントローラーを通して旦那様(本人不認知)と逢瀬を楽しんでいた姫様が唐突にそんな事を宣ったのだ。

 

「如何なさいました姫様?

 また執事くんが誰ぞ新しい女を引っ掛けていましたか?」

「そうじゃないわよ!!

 そうじゃなくて! 執事が私の事を放置し過ぎにも程があると言いたいのよ私は!!」

 

 どうやら何時もの我が儘が始まったようだ。

 これはまた愉快な事が始まりそうだとアリアスはどんな無茶振りをされるか期待しつつ

尋ねてみる。

 

「確かに最近は執事くんもだいぶ時間が取れるようになっている様ですが、姫様の顔を観にさえ来ていないようですからね。

 そろそろ【拷問車輪】にでも乗せて姫様への忠義を思い出させておきましょうか」

「やり過ぎよアリアス!?

 執事が痛いのは駄目です!」

 

 半分冗談で物騒な事を提案すると、さっきまでのお怒りはどこに行ったのかとばかりに慌てふためく姫様にアリアスはホッコリする。

 

「そうではなく、もっとこう、夫婦みたいなイチャイチャが足りないと思うのよ!

 だからアリアス!なんかこう、いい感じに執事とイチャイチャ出来る何かを用意しなさい!」

 

 フワッフワッな無茶振りを口にする姫様にアリアスはフムと考えてみる。

 

(なるほどこれは難しい)

 

 ぶっちゃけ執事も男なので姫様がネグリジェ1枚でベッドから誘えばそのまま『昨夜はお楽しみでしたね』で全部解決しそうなものだが、しかし性耐性がクソ雑魚ナメクジな姫様と忠誠心がガンギマリ過ぎて心臓を自分で引きずり出して捧げるぐらいやらかしかねない執事の二人にそんな提案しても変なぐだぐだが発生して阿呆な展開になるだけで終わるだけだろう。

 

(ワンチャン上手くいくかもしれないけど、ただ褥に入るだけじゃあ面白くないしね)

 

 姫様で遊んでいる? いやいや。姫様の愉快な日常に彩りを添えたいだけさ。

 

 突っ込まれたらそんな事を嘯くだろう素敵な笑顔を浮かべながら、アリアスは姫様が満足するプランを提示する。

 

「それでしたら執事にコチラを飲ませてみるのは如何でしょうか?」

 

 懐より琥珀色の液体が入った小瓶を取り出し提示する。

 

「それは何かしら?」

「執事が姫様に嘘を言えなくなる薬です」

 

 そう伝えると姫様はその綺麗な顔を不快そうに顰める。

 

「アリアスは執事が私に虚言を弄していると言いたいのかしら?」

「それはありませんよ」

 

 証拠もなしに身内に嫌疑を向けたのかと問う姫様にアリアスは否定を返す。

 

「執事は姫様への賛辞をあまり口にしたがらないので、こちらを飲ませて押し留めている姫様への賞賛を吐き出させようというのです」

「それは良いわね!!」

 

 倒れるまで無理した際に執事の口から垂れ流しになった褒め殺しがまた聞けるのかと一気に機嫌が天元突破のストップ高になる。

 

「ならば早速執事を呼び出しなさい!!

 そしてその薬を飲ませて私を褒め倒させるのよ!!」

「お待ち下さい姫様。

 この薬を最大限に効果を発揮させるのであれば酒精に混ぜるのが一番効果的ですので、晩酌の酒に混ぜて飲ませるべきかと」

「そうなの?

 では、その様に準備を進めなさい」

「畏まりました」

 

 恭しく頭を下げるアリアスを前に姫様は上機嫌で高笑いをする。

 

「オーホホホ!

 待っていなさい執事!今日という今日こそ私を褒め称えさせ殺してあげるわ!!」

 

 

デュガレス『時間を飛ばす?了解した』

 

 

 そうして夜になり姫様は自室の椅子に座って両手を膝に乗せた姿で顔を真赤にして固まっていた。

 

(よくよく考えたらこれって、『夜のお誘い』ってやつよね?

 もしかしたら私しちゃうの? 執事にチューニングされてそのまま2人でオーバー・レイしちゃうの!?)

 

 中学生男子染みたアホな思考で目をグルグルにしながら緊張しているとコンコンとドアがノックされた。

 

「ひゃわっ!?」

『姫様。お呼びに応じて参上いたしましたが、入室しても宜しいでしょうか?』

「よよよよろしくてございますことよ!?」

 

 目茶苦茶になった承諾の言葉に疑問符で頭をいっぱいにしながらも執事は「失礼します」と部屋に入る。

 

「……」

 

 そうして姫様を一目見るなり硬直した。

 

「ど、どうしたのかしら?」

「…ああ、いえ。

 普段と違うお召し物に驚かされたもので」

 

 ジャージ姿を予想していた執事だが、気合を入れた姫様は身体のラインが見えるギリギリ肌の透けない赤いネグリジェに黒いナイトケープを羽織った姿で待ち構えていたのだ。

 執事的にはバニラビートかと油断していたらいきなり逆鱗ワンキルか飛んできたぐらいの衝撃であった。

 

「そ、そう!

 偶には違う色も試してみようって思ったのだけど、似合っているかしら?」

「ええ。よくお似合いですよ。

 ですが姫様には情熱の赤よりも清廉たる白銀こそが一番お似合いですね」

「〜〜〜〜!?」

 

 開幕からヌメドラワンキル並の火力を叩き込まれこのままベッドで悶絶したいところであったが、しかし今回は大事な勝負が待っていると溢れそうな嬉しさを我慢してクールに「ありがとう」と返す。

 尤も、羽と尻尾が凄まじい自己主張をしているため執事には丸わかりなのだが、そんな姫様が可愛いと指摘はしないで堪能する。

 

「ところでですが姫様。

 姫様の御就寝も間近なこのような夜遅くに呼び出されたのは如何なる御用に御座いますか?」

「え!? あ、そうね。

 最近貴方が私の美しい顔を見ることも禄に叶わないほど忙しくしていたから、その労いに晩酌の共にする権利を与えようと思ったのよ!」

 

 執事から切り出され必死に取り繕いながら理由を告げると執事は「それはそれは」と嬉しそうに頬を緩める。

 

「半ば私情による自業自得の私にその様なご配慮を頂けるとは、やはり姫様はお姿のみならずそのお心まで白銀に相応しき美しさをお持ちでおいでなのですね」

「ふにゃ!? と、当然よ!!

 私以上に身も心も美しい女は他にいないのよ!!

 オーホホホ!!」

 

 普段であればいつにも増して口が上手いと疑問に思うだろうが、今の彼女はもしかしたらこのまま同衾してしまうかもという緊張と興奮に加えて執事から褒めちぎられて舞い上がっているため全く疑問に思わなかった。

 

「さあ執事! 私自らグラスに注いだお酒を最初に口にする権利を与えるわ!

 主手ずからの美酒の味をたんと味わうのよ!」

 

 薬の色と同じお酒とアリアスが用意したウィスキーを姫様は執事のグラスに注ぐ。

 

「ウィスキーをストレートですか?」

「あら? ストレートは嫌いだったかしら?」

「ああ。いえ。氷もチェイサーも無いので変わった飲み方と思ってしまっただけです」

「……」

 

 しまった。いつもアリアスが全部用意してくれた物を自分は飲むだけから気にもしていなかった!?

 

「ふふっ、このお酒には氷やお水なんてそんな余計なものは一切必要無いのよ!」

 

 こうなればハッタリでゴリ押す以外道はないとテンパった頭で適当を並べると執事は感心したと顔に驚きを乗せた。

 

「ほぉ? さすが精霊界のお酒ですね。

 私は人間界のものと同じ飲み方しかしていませんでしたが、水等で口の中をリセットしなくても楽しめるのですね」

(上手くいったわ流石私!!)

 

 その場しのぎのデタラメを馬鹿正直に信じた執事に日頃から培ってきた信頼の賜物だと内心自画自賛する。

 

「それでは、姫様の御厚意に預かり最初の一口を賜らせて頂きます」

 

 両手でグラスを持ち、すぅっと静かに一口を口に含み、薫りを確かめるように口の中で転がしていく。

 

(やったわ!! これでもうすぐ執事は私を褒めちぎらずにはいられなくなるのね!!)

 

 もう既にキャパオーバーなのも忘れて執事がいっぱい自分を称賛してくれると期待でワクワクする姫様。

 そして十分薫りを堪能したと口の中のウィスキーを嚥下してからほうと息を吐く。

 

「成程。これだけ強い薫りなのに水で洗わずとも口の中から消えてしまうのなら一々水で流す必要も無いのですね」

「ふふふ、精霊界のお酒も中々のものでしょう?」

「おみそれいたしました。姫様のお陰で新たな啓蒙が拓いております」

「オーホホホ! そうでしょうそうでしょう!

 さあ、もっと私を褒め称えなさい!」

 

(グッジョブよアリアス!!後でいっぱい褒めてあげるわ!!)

 

 うまく乗り切れたと内心で万歳三唱しつつホッと胸をなでおろす。

 そうして執事が旨そうにウィスキーを舐めるのを幸せな気持ちで眺めていると執事は漸く気付いたとばかりに姫様に口を開く。

 

「ああ。大変申し訳ありませんでした。

 私ばかり楽しむばかりで姫様に酌を注ぐのを失念しておりました。

 姫様。遅まきながら私に姫様のグラスに一献注ぐ名誉を戴けないでしょうか?」

「え?」

 

 しまった。今回はあくまで自分の酒を分けるという名目なのだから自分が飲まないのはあまりにも不自然だ。

 どうにかやり過ごせないかと抜けは多くもちゃんと優秀な頭脳を回転させる姫様だが、その優秀さ故に断れないという結論しか無いことを理解してしまう。

 

「そそそそうね。

 貴方の献身を受け取ってあげるわ!」

 

 こうなればなる様になるしかない。

 アリアスが用意した薬が自分に効かない事を祈りつつ、それでいて旦那さまからお酒を注いでもらうという憧れのシチュエーションに飲む前から酔っ払う姫様。

 

「では、失礼致します」

 

 トクトクと微かな粘りのある琥珀色の液体がグラスに注がれ、ランプの薄い光を取り込み呪いを宿す宝石のように怪しい光を宿す。

 

「ふふふ。

 とっても美味しそう…」

 

 内心冷や汗で全身を濡れそぼらせながらゆっくりとグラスを傾ける姫様。

 そんな一見雰囲気の良い、その実とても愉快な光景を扉越しに眺める姿があった。

 

「うんうん。上手くいったみたいだね」

 

 その人物とは当然アリアスである。

 

「中姉さまもえげつないよね〜。

 あのシチュエーションで姫様が薬を回避するなんて無理なのにそうなるよう仕向けるんだから」

 

 そんな愉快そうなアリアスに呆れと感心の混ざった視線を向けるアリアーヌ。

 その隣でアリアンナがアリアスに問う。

 

「それで、中姉様。

 結局姫様には如何様な薬をお渡ししたのですか?」

「ん? ああ、私が渡したのは只のウィスキーだよ」

 

 いけしゃあしゃあと種明かしをするアリアス。

 

「態々薬なんて盛らなくても、執事くんに姫様が寂しがっているから褒め倒して来いと背中を押すだけで済むのだから必要無いのさ」

「姫様を騙すなんて中姉さまって本当にいい性格しているよね?」

「私は姫様に一切嘘なんか言っていないよ?

 よく言うだろ?『酒は百薬の長』。アルコールも立派な薬さ」

「詭弁ですね」

「詭弁なんだよなぁ」

 

 悪質なのは何も知らない姫様が慌てふためく以外は自身が望んだ通りの状況になっている事だろう。

 

「さて、覗き見していたと怒られる前に退散するよ。

 2人も夜更かしは程々にしておきなさい」

 

 アリアスとしてはこのまま酒の勢いに任せてワンナイトからの一撃必殺居合ドローを決めてもらいたい所だが、姫様のギャグ体質とアーゼウスでも貫通不可能な鋼の意志を持つ執事ではアルコール如きでその二枚壁は破壊できないだろうとも思っている。

 颯爽とその場を去るアリアスに、二人は顔を見合わせ同時にため息を吐いてからその場を離れていく。

 

 そうして残された二人だが、アリアスの予想通り姫様は飲んでいる最中に酔い潰れ、執事は酔い潰れた姫様を寝かしつけ目の前の据え膳から全力逃走を図ることで作品の健全性を完璧に保ってしまうのであった。

 




というわけで今度こそデスマ前の最後の投稿になるかな…

次回は早くて来週になると思います
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