迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
※アクションマジックについて独自裁定がありますが、今作の特別裁定ということで理解をお願いします。
来客を告げるチャイムが鳴る音にハスキーが玄関を開けると、そこにはユーリ、ユート、ユーゴの三人が立っていた。
三人の代表として面識があるユーリにハスキーは尋ねた。
「お久しぶりですねユーリさん。
本日は如何様な御用でしょうか?」
「カードについて相談したくて来たんだけどオジサン居る?」
交換用のカードが入っているらしいデッキケースを示しながら来訪理由を告げるユーリにハスキーは困った様子で眉を寄せる。
「そうでしたか。
申し訳ありませんが旦那様はつい先程榊遊矢さんとアリーナに向かいました」
「ええっ!?
遊矢がオジサンとデュエルしているの!!
ズルいじゃないか!!」
全力で超えるべき壁と認識している目標が自分を差し置いて遊矢と私的なデュエルをしていると不平を口にする。
「私も今から向かいますので一緒に行きますか?」
「勿論だよ!!」
「ユートさんとユーゴさんのお二人は如何致しますか?」
「いいのか?」
「ええ。皆さんでしたら旦那様も問題ないと判断なさるでしょう」
「ちょっといいか?」
ハスキーの言い方に嫌な予感を感じたユーゴが待ったを掛ける。
「オッサンはデュエルするために態々アリーナに向かったのか?」
「ええ。
以前執事が使った【月光カタパ】に比類するデッキを使うとハスキーに仄めかされ三人がそれぞれに反応を示す。
「へぇぇ?」
DMの深淵を再び垣間見れるチャンスに喜悦と自分がそれを味わえない嫉妬を垣間見せるユーリ。
「げぇっ!?」
研鑽の果てに見えた理解不可能なギミックの数々に頭が混乱したユーゴは驚愕と嫌悪を隠せずに零す。
「……っ!?」
二人ほどあからさまでは無いが、ユートもまた驚愕と好奇心に緊張を露わにした。
ユーリを残し支度のためにハスキーは踵を返して屋敷に戻る。
「屋敷で待っていればオジサンも戻ってくるだろうけど君達はどうするのかな?」
「勿論行くに決まってるだろ!」
「当然だな」
自分達のデュエルを否定しかねない恐ろしい光景を見るのに躊躇いが無いかと言えば嘘だが、しかし彼のプレイングは見るだけでも百戦にも勝る知識と経験を得られるチャンスでもあるのだ。
より高い場所へと羽ばたく意志を抱く若鳥達は一度誤れば二度と這い上がれない奈落と知りながらより高く飛ぶために敢えて渦中へとその身を投じた。
〜〜〜〜
人払いを済ませた無人のアリーナ。
その中心で緊張した様子でデュエルディスクを構える遊矢に俺は、アリーナで行うパフォーマンスを行った。
「ようこそ。身命を捧げし我が主の座する呪われし白銀の城へと挑みし若き獅子よ。
私の名は【迷宮の案内人】とでも覚えて頂ければ結構にございます」
硬い靴音をカツンと起てながらゆっくりと遊矢が待つステージ中央へと歩いて行く。
「然し乍ら私は貴方が真に姫様に見えるに足る勇士であるのか些かながら疑問を抱いております。
ですので、貴殿にはその雄たる証を私に提示して頂きたい。
何。さして難しいことはございません。
私の信を受けし配下達を退けてみせるだけの簡単なテストです。
姫様に謁見するに足る勇士であれば苦労することも無いでしょう。
さあ、貴方の強さを示しなさい」
ガチャンと左腕のデュエルディスクが展開し戦闘態勢を整える。
そうして、表示された先攻は自分であった。
表示を確認し遊矢は益々不安そうにしながらもデッキトップから五枚を引いて手札とするとアクションフィールドが広がりカードが配される。
それを見ながら俺もまた最初の五枚を引いて態勢が整ったところで同時に開始を告げる。
「「デュエル!!」」
そうして素早く手札を確かめる。
【妖精伝記カグヤ】
【憑依覚醒】
【魔法族の里】
【憑依連携】
【聖殿の水遣い】
難しい所だ。
普通にやるなら【聖殿の水遣い】から切って手札誘発を確認しつつ【勇者トークン】を展開しグリフォンライダーを立てて様子を見るが、しかし遊矢のデッキはペンデュラム召喚メインである事が既に判明している。
此処は、展開を抑えつつも彼にとってはより嫌な方向に場を整えていこう。
「私は手札から【聖殿の水遣い】を除外して効果を発動します。
チェーン確認です」
手札から【聖殿の水遣い】を除外ゾーンに送り宣言すると遊矢はあからさまに怯えた様子で「……無い」と声を絞り出した。
「分かりました。
ではデッキから【アラメシアの儀】を手札に加えます。
そして手札から永続魔法【憑依覚醒】をセットします。
チェーンはありますか?」
「…無い」
「では手札から【妖精伝記カグヤ】を通常召喚します。
カグヤの攻撃力は1850なので【憑依覚醒】の効果が発動。その後カグヤの召喚時効果を発動します。
チェーン確認をお願いします」
「無い…」
アクションマジックを拾いはしたが、今必要なカードではなかったようでそう答える度にどんどん顔色が悪くなる遊矢に困りつつ今は試合中であると意識を固めて効果処理を行う。
「それではカグヤの効果でデッキから攻撃力1850のモンスター【憑依装着−アウス】を手札に加えて一枚ドローします」
アウスを提示し確認させた後にデッキトップを一枚引く。
「手札が減らない…」
苦しそうに呻く遊矢一体何を恐れているのかと訝しみつつ俺は引いたカードを確認する。
【龍皇の波動】
カウンター罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手がフィールドのモンスターの効果を発動した時に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
その後、以下の効果を適用できる。
●自分の手札からモンスター1体を選んで除外し、
この効果で破壊し墓地へ送ったモンスターの効果を無効にして自分フィールドに特殊召喚する。
本来であればタイミングを選べばかなり良い仕事をしてくれるカードなのだが、フィールドからは墓地に落ちないペンデュラムモンスター相手だとノーコストの【天罰】ぐらいに効果が落ちてしまう。
まあ、プラチナ帯以上を滞在地とする環境デッキを握る修羅相手ではないのでそれでも十分なんだけどな。
「私はフィールド魔法【魔法族の里】を発動します」
「そんなっ!!??」
【魔法族の里】
フィールド魔法
(1):自分フィールドにのみ魔法使い族モンスターが存在する場合、相手は魔法カードを発動できない。
(2):自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在しない場合、自分は魔法カードを発動できない。
フィールド魔法を使うというアクションマジックを使えなくなるリスクを犯した俺に驚愕の声を上げる遊矢だが、同時にそれだけの価値があると理解し血の気を引かせる。
「気付いたようですね。
【魔法族の里】の発動制限は
貴方が魔法使い族を召喚するか私のフィールドから魔法使い族を排除すれば解決しますが、そう簡単に私の部下を排せる等と思わない事ですよ」
自信たっぷりに笑みを深めてやると遊矢は泣きそうなほどに腰が引けてしまった。
…いや、流石におかしい。
比較的簡単に対処できる範囲でアクションマジックとペンデュラム召喚の弱点を突いただけでこんなに慌てふためくなんて一体何があったんだ?
或いはデュエルスタイルそのものを完全に否定されたか…。
「それでは最後にカードを二枚伏せてターンエンドです」
あれこれ考えても真相が明らかになるわけでもないので今はデュエルに専念しよう。
「お、俺の…ターン…」
弱々しい姿でそれでも戦う姿勢は崩さず遊矢はカードを引く。
「俺は、【時詠みの魔術師】を通常召喚する!」
【時詠みの魔術師】
ペンデュラム・効果モンスター
星3/闇属性/魔法使い族/攻1200/守 600
【Pスケール:青8/赤8】
自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこのカードを発動できる。
(1):自分のPモンスターが戦闘を行う場合、
相手はダメージステップ終了時まで罠カードを発動できない。
(2):もう片方の自分のPゾーンに
「魔術師」カードまたは「オッドアイズ」カードが存在しない場合、
このカードのPスケールは4になる。
【モンスター効果】
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、
1ターンに1度、自分のPゾーンのカードは相手の効果では破壊されない。
これで【魔法族の里】は潜り抜けたか。
だが、ここからどう動く?
「手札から【相生の魔術師】と【相克の魔術師】をペンデュラムスケールにセット!!」
【相生の魔術師】
ペンデュラム・効果モンスター
星4/光属性/魔法使い族/攻 500/守1500
【Pスケール:青8/赤8】
(1):1ターンに1度、自分フィールドの、
Xモンスター1体とレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。
そのXモンスターのランクはターン終了時まで、
そのレベル5以上のモンスターのレベルの数値と同じになる。
(2):自分フィールドのカードが
相手フィールドより多い場合、このカードのPスケールは4になる。
【モンスター効果】
(1):このカードの戦闘で発生する相手への戦闘ダメージは0になる。
(2):1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時までそのモンスターと同じになる。
【相克の魔術師】
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守 500
【Pスケール:青3/赤3】
(1):1ターンに1度、自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。
このターンそのXモンスターは、
そのランクと同じ数値のレベルのモンスターとしてX召喚の素材にできる。
【モンスター効果】
(1):1ターンに1度、フィールドの光属性モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
……プレミか?
ああ、いや。【魔法族の里】のせいで【時詠みの魔術師】の発動制限によりペンデュラムスケールにセット出来ないから腐らせるぐらいならとロック解除に使ったのか。
「揺れろ、魂のペンデュラム!
天空に描け光のアーク!
ペンデュラム召喚!
現れろ、雄々しくも美しく輝く二色の眼!
【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】!」
【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】
ペンデュラム・効果モンスター
星7/闇属性/ドラゴン族/攻2500/守2000
【Pスケール:青4/赤4】
このカード名の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。
(2):自分エンドフェイズに発動できる。
このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
(1):このカードが相手モンスターとの戦闘で相手に与える戦闘ダメージは倍になる。
遊矢の手札は残り二枚とアクションマジック。
ペンデュラム召喚で使わなかったから魔法か罠のどちらかなのだろうが、さて、何をしてくるのか…
「バトルフェイズだ!!」
「は?」
「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで【妖精伝記カグヤ】に攻撃!!
更にアクションマジック『ワンダーチャンス』発動!!
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを選択しもう一度攻撃権を与える!!
螺旋のストライク…」
瞳に二色の輝きを宿す竜が主の意に沿おうと口腔に溜めたエネルギーをカグヤへと照準を合わせる。
対してカグヤは扇子で口元を隠しているが、しかしその顔には俺の感情を表すように嘲りと憐れみが混ざった笑みが浮かんでいた。
「残念ですよ遊矢君」
「……え?」
「カグヤの効果を発動。
チェーン確認です」
「え? あ、ありません…」
「ではチェーンしてトラップカード発動。【憑依連携】。
チェーン確認をお願いします」
「あ、ああ…」
自分がとんでもない失態を犯したと理解したらしく遊矢は絶望に顔を染めるが、しかしディスクは無情にも正確に処理を進める。
「無しと判断し処理を続行します。
手札から【憑依装着−アウス】を特殊召喚しフィールドに光属性と地属性の二属性がある為【憑依連携】の破壊効果発動。
対象は【時詠みの魔術師】です」
アウスとカグヤの放った魔力が混ざり合い極光の魔力弾となって時詠みの魔術師を飲み込み消し去る。
「時詠みの魔術師が!?」
「更にカグヤの効果適用。
貴方はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをデッキから墓地に送れない場合手札に戻さねばなりません」
「そんな…」
この次元では一枚しかないズァークのカード故にカグヤの効果を防げるわけもなくオッドアイズは弾かれるようにデュエルディスクから吹き飛びフィールドのオッドアイズも優雅に姿を消したカグヤとは裏腹に悔しそうに鳴きながら掻き消えた。
「お、俺は…」
「落ち込んでいるところ申し訳ありませんが、アウスが場に現れたことで【憑依覚醒】の効果により一枚ドローしますのでチェーン確認をお願いします」
見ているほうが辛くなる落ち込みようだが、しかし実際の試合でそんな事に時間を取られていては客から物が飛んでくるだろう。
「遊矢君。
君が今何を思い悩んでいるのかは知りません。
ですが、貴方の目指すエンタメデュエルとはその様に恐怖に縮こまり丸まる事を良しとはしない筈ですよ。
ですから私は敢えてこう言いましょう。
そんなに辛いのならエンタメデュエルなんて捨てて逃げてしまいなさい」
「逃げるなんて俺は!!??」
「貴方のお父上は自らの目的も語らずプロデュエリストとしての責務さえ放り出したのでしょう?
その為に残された貴方は辛い幼少期を送らされたと聞きました。そうではないと?」
「それは…」
古傷を抉るような真似はしたくないが、こうまで拗れてしまった彼を矯正するならいっそ支柱となっている
これが原因で大惨事の引き金が引かれるのも覚悟で俺は言う。
「当人を知らぬ身で口にするのは私の主義に反しますが、それでも今回はそれを曲げて言わせて頂く。
貴方の父【榊遊勝】は貴方の師としても父としても失格だ。
そんな男の事など捨てて、貴方を支える者達と共に自分の為に生きればいい」
「……っ!!」
此処にいたり漸く遊矢の目から怯えが消えた。
しかしその目にあるのは怒りであり、ともすれば先程より危険かもしれない。
だかもう止まるわけにはいかない。
最後まできっちり憎まれ役を全うするため、俺は敢えて不快感を感じるよう言葉を選んだ。
「それはそうと、何も出来ないバトルフェイズをいつまで引き伸ばすつもりですか?
貴方の掲げているエンタメデュエルには対戦相手を不快にさせるための遅延行為も含まれているのですか?」
「そんな事無い!!
カードを二枚伏せターンエンドだ!!」
怒りに飲まれながらも遊矢は残りの手札はきっちり使い切りターンを終える。
「宜しい。
では、貴方の言うエンタメデュエルがこのターンを凌いでみせるか是非とも確かめてみましょう。
私のターン。ドローフェイズ、ドロー」
シナリオの都合とは言え、正直遊矢はなんでこんだけ迷惑かけられた父親を嫌いになんなかったんだろうね?
真面目な話、ここから遊矢が逆転したらご都合すぎるんだがあっさり負かして良いものか…