迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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今回はオリジナル設定をちょい足ししとります。

遊戯王世界ならさもありなんかと。


姫様はポンだが、聞き分け自体は結構いい

 俺の名は『迷宮城の執事見習い』である。

 本当は違う名前だが、訳有ってそう名乗っている。

 日々城主の唐突な思い付きや我儘に振り回される合間に書類作業に追われ、時折襲来する『騎士』の後始末に奔走する下級モンスター(扱い)である。

 

「休暇ですか?」

「そうよ」

 

 いつもながらのジャージ姿で執務室に訪れた姫様から唐突な言葉を賜った。

 

「貴方は良くやっているわ。

 だから偶には1日自由にしてあげようというのよ。

 さあ、私の寛大な言葉に感謝しなさい!オーホホホ!!」

 

 自画自賛で機嫌を良くする姫様にふむと考える。

 

 なんか企んでるなこのアホ姫。

 

 自分が1番じゃないと気が済まない我儘姫が純粋な善意なんて発揮するはずがない。

 

 いや、身内の危機とかだとカリスマ溢れる主君たるやになるから一様には言えないのだが、普段は楽だからでジャージ姿だししょうもない思いつきでボッタクリ価格の使い道のない罠を買い込んだりする等のポンな部分を見過ぎているせいで信用が足りない。

 

 とはいえ断ったら断ったで絶対面倒になるよな。

 

「ありがとうございます姫様。

 では、明日は一日城を空けさせて頂きますね」

「え?」

「なにか問題でも?」

 

 実際俺の仕事の大半は俺の執事教育の時間を確保するためのアリアスの手伝いと姫様の我儘を主要に受ける肉盾に近いものなので、居なければ居ないでも問題無く回る存在でしか無い。

 

 居たら多少楽程度の俺が抜けても問題が起きるとは思えないのだが?

 

「一人でいっちゃうの?」

 

 雨の中の捨て犬みたいな目で俺に訴える姫様。

 

 これは…つまりアレか。

 

 俺の休暇に託つけた俺についていくという理由付けを得た事による合法的な城からの脱出が目的か。

 

 理由は聞かされていないが、姫様は城から出ることが出来ないらしい。

 

 正確には城と城を囲う森と湖も移動が許された範囲に含まれているが、森から先に出ることは禁じられている。

 

 それを聞いた際に俺は、自分が何故この世界に来たのか分かった気がした。

 

 まあ、その話はおいおいと言う事で、今はこの難題こそが問題だ。

 

「姫様。外に出てはならないとアリアスからキツく言われているのでしょう?」

「それはそうなんだけど…伴侶なんだから一度ぐらいデートとかしてみたいし

 

 言葉尻が口の中に引っ込んだため何を言いたかったのか微塵も聞こえなかったが、恐らく我儘で超えてはいけないラインと自覚してなお外に行きたいと、そうゴネたのだろう。

 

 普通に惚けて蹴っ飛ばしても良さそうだが、しかしこのままというのも座りが悪い。

 

「私の立場からは姫様の望みを叶えて差し上げるわけには参りませんが、代わりに何か土産を用意して戻りますので、今回はそれで我慢していただけないでしょうか?」

 

 結局のところ無碍には出来ず代案を呈する辺り、俺が姫様に絆されているのは事実なのだろう。

 

「……本当に?」

「ええ。姫様が喜ぶお土産を必ず御用意してみせますよ」

 

 そう約束すると姫様はションボリ顔から一転してぱぁぁと顔を輝かせた。

 

「約束だからね執事!!

 気に入らなかったら地下水路の掃除を一人でさせてやるんだからね!!」

 

 割と洒落にならない罰を言いながら嬉々とした様子で執務室を飛び出して行った。

 

「良く耐えましたね」

 

 と、それまでのやり取りを見届けていたアリアスがそう褒めた。

 

「禁忌を破る恐ろしさは良く分かっているからな」

 

 特に遊戯王世界の禁忌破りは惨劇の始まりからの世界崩壊の引き金を兼任しているパターンばっかだからな!!

 

 ストーリーをちゃんと知っているのは聖遺物世界ぐらいだが、烙印とか端末とかヴィサス=スタフロストとか遊戯王世界は地獄ばっかで、しかも大概主人公が悪意なく行動したことが惨劇の引き金になってんだろ!?

 

 現在予想している最悪は、俺が原因になり姫様と『騎士』が本気で殺し合わなきゃならなくなって、誰も幸せにならない救いのない結末を迎えることだ。

 

 そこまで懸念するか?

 

 だったらアプリの星遺物世界読み返してこい。

 

 アレでハピエンだと言うのがKONAMIだぞ?

 

 そんな連中相手に油断なんか出来るか!!

 

「アリアス、もう一度聞くけど姫様はなんで城に囚われているんだ?」

 

 質問にアリアスは苦い顔で告げる。

 

「すまないがその質問には答えられない。

 姫様が城から出てはならない理由も、城や私達についても、『騎士』の事も語る事は『契約』で禁じられている」

 

 あのアリアスでさえ()()なのだ。

 

 警戒し過ぎてもまだ足りはしないだろう。

 

「分かってる。一応確認しただけだ」

「ただ、これだけは言わせて欲しい。

 私も『契約』も、決して悪意から『姫様』を城に留めているわけではないんだ」

「……ああ。信じているよ」

 

 そう話を切り、俺は自分の髪を撫でて嘆息する。

 

「しかし参った。

 年頃の娘が気に入るような土産なんてどうしたもんだか…」

 

 食い物系はアリアスが用意している食事や菓子に優るもんなんかパッと思い付くのは料理をテーマにした【ヌーベルズ】位なんだが、態々土産にせんでも出張サービスを頼めば事足りてしまう。

 

 無難にアクセサリーなんかが良いのだろうが、宝石なんていくらでも手に入れられる姫様に贈るには彼女すら出来たことはないオッサンには敷居が高過ぎる。

 それに、女子って花言葉とかそういった物の意味に五月蝿いから下手なモチーフの物を選ぼうものなら即座に地下水路行きになるだろう。

 

「ふふっ」

 

 真剣に悩んでいると、その様子を眺めていたアリアスが笑いを零すのが耳に入る。

 

「あまりいい趣味じゃないぞ?」

「いやすまない。

 それと、君からのプレゼントならば余程じゃなければ姫様も不貞腐れはしないだろうさ」

 

 アドバイスのつもりだろうアリアスの言葉は、男にとってはまさにハードルが高くなる言葉だと分かって欲しい。

 

「とりあえず、行った先で考えるしか無いかな」

 

 人はそれを行き当たりばったりというのだろうが、だったら正解を教えてくれ。

 




姫様は気付いた。

「私、執事の伴侶なのに伴侶らしいこと何一つしていないじゃない!?」

そう気付いた姫様は一直線。

「最初はデートが定番って本で読んだし早速行くわよ!!」

しかし姫様は城から出られません。

代わりに伴侶(当人は認知していない)からはプレゼントを用意してくれると約束をもらいました。

「フフフ、どんなプレゼントを用意してくれるのか楽しみね!!」

 嬉しさを堪えきれずベッドに飛び込みはしたなく転がりまわる姫様を、『白銀の城ラビリンス』はただ静かに見守っていた。
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