迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。   作:サイキライカ

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今回も長くなりそう…


ここからは()()()()()いかせてもらう(2)

 

 ……やられた。

 

 ターンエンドを告げた今になって、前のターンにスカイ・マジシャンの効果で倶利伽羅天童が破壊されなかった事を漸く疑問として思う事が出来た。

 

(マインド・コントロール…いや、そこまで悪質じゃない。

 おそらくメンタリズムを応用した思考誘導だな)

 

 表情や動作から思考を誘導し自分に都合の良い展開に持ち込む。

 アリアスが俺をからかう際によく使う手段であり、同時に余程卓越していなければ初見の相手とのデュエルではあまり役に立たない技能とも嘯いていた()()()()()()()()()()。 

 それを用いられたからといって卑怯とは思わない。

 その技術とて極めるには膨大な努力を必要とすることに変わりないのだ。

 そもそもの話、デュエルには心理フェイズなんて言葉があるぐらいにはそのようなテクニックも重要な武器の一つなのだ。

 それを罵るなら闇遊戯なんかがよくやっていた挑発だって非難の対象になってしまう。

 

 閑話休題。

 

 今はそうまでして榊遊勝が狙った事とは何かが重要だ。

 それは俺のフィールドに蘇生したスカイ・マジシャンで間違い無いないだろう。

 憶測の域だが、榊遊勝はスカイ・マジシャンを手札とフィールドで使い回すことに特化した構成でデッキを組んでおり、墓地リクルートの手段は必要最低限に絞っているのだろう。

 【死者蘇生】が伝説級のレアカード扱いのこの世界ではローリスクな墓地回収方法が限られているのを鑑みればおかしいということもない。

 というか、大抵のデッキが墓地を当たり前に手札扱い出来る現代遊戯王のほうが異常なのだ。

 そうして考えてみれば榊遊勝が伏せたカードも候補が絞りやすくなる。

 それを前提にして俺が選ぶべき手は見えて来たのだが、問題はこの思索さえ誘導ではないかと疑い迷ってしまう事だ。

 

(よし、()()()()()()()()()

 

 ターンが回ってきた榊遊勝は帽子の鐔を弄り位置を直すと顔に再び笑みを浮かべる。

 

「私のターン。ドロー!」

 

 引いたカードを一瞥し、榊遊勝は芝居のように滔々と語り出した。

 

「さあお立ち会い。

 スタァの離反という今生最大の危機を迎えた我が座は果たして希望は潰えたのか?

 いいえ。我等の絆はそう安々と断たれたりなど致しません!

 これよりお見せいたしますは奇跡の逆転劇!

 さあ刮目して御覧ください!

 私はメインフェイズに手札から」

「すみませんがスタンバイフェイズに手札からカード使いたかったんでスタンバイフェイズまで巻き戻してもらっていいですか?」

「……」

 

 意気揚々メインフェイズを始めようとした榊遊勝に水を差す。

 スタンバイフェイズの妨害が叩き込まれ合う空中戦は日常の光景であり、かつ【三戦の才】等のメインフェイズ中でないと発動条件を満たせないカードを使わせない貴重なフェイズとしても決して軽んじて良いものではない。

 

「あまりこう言うのも憚られますが、貴方もプロなんですから各フェイズの移行宣言はしっかり行いましょう。

 今みたいに華麗な見栄がすっごい間抜けになりますから」

「……そ、そうだね。

 君が遊矢に言っていた過ちを実践してしまうとは恥ずかしい限りだよ」

 

 ははは、と笑う榊遊勝だが、こめかみがヒクついていることから大分怒らせてしまったようだ。

 まあ、悪いのは進行確認怠った榊遊勝なので謝ることはしないが。

 

「では改めてスタンバイフェイズに私は手札からディアベルスターを墓地に送り【白銀の城の竜飾灯】の効果を発動します。

 チェーン確認です」

「流石に無視は出来ないね!

 手札から【墓穴の指名者】を発動する!」

 

 墓穴か。

 うららが先に来なかったからディアベルスターと竜飾灯両方が無効になる一番の最悪は回避出来たな。

 

「チェーンはありません」

「私はディアベルスターを除外する!」

 

 そちらを除外するか。

 やはり倶利伽羅天童を破壊しなかったのはスカイ・マジシャンを蘇生させるためだったみたいだな。

 

「それでは私はデッキから【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をセットします」

 

 自らリクルートが可能でフィールドが更地でもモンスターを残せる【ウェルカム・ラビュリンス】で安定を取るほうが無難だろう。

 だが、()()()()()()()

 

「更に手札をコストに消費したため墓地の【白銀の城の狂時計】を守備表示で特殊召喚します」

 

 これで即死する目は薄れた。

 さて、生き残れるかな?

 

「それでは改めてメインフェイズに移ります!

 私はここで伏せカードを公開しましょう!

 永続罠【洗脳解除】!」

 

【洗脳解除】

永続罠

このカードがフィールド上に存在する限り、

自分と相手のフィールド上に存在する全てのモンスターのコントロールは、元々の持ち主に戻る。

 

 コントロール奪取系かと思っていたが、まさか【洗脳解除】とはな。

 あれが入っているとなると、【死のマジック・ボックス】辺りも入っている可能性は高いだろう。

 

「そして新たな団員の紹介です!

 手札より【Couple of Aces】の効果を発動!」

 

Couple of Aces(カップル・オブ・エーシーズ)

効果モンスター

星2/地属性/天使族/攻 100/守 100

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札に存在する場合に発動できる。

コイントスを1回行う。

表だった場合、このカードを自分フィールドに特殊召喚する。

裏だった場合、このカードを相手フィールドに特殊召喚する。

(2):このカードの(1)の効果で特殊召喚に成功した場合に発動する。

自分はデッキから2枚ドローする。

 

 洗脳解除が有るから確定で2枚ドローか。

 

「それではジャッジメントタイムと参りましょう!」

 

 ポケットから取り出したコインを鮮やかな手つきで真上へと弾き、出た目は裏だった。

 

「これはなんというバッドラック!

 しかしご安心を。【洗脳解除】の効果により私の団員達は必ず私の舞台に戻ってきてくれます!」

 

 フィールドにアルファベットのAを連想させる赤と黒の二人組のモンスターが榊遊勝のフィールドに現れた。

 

「そしてフィールドに特殊召喚出来た者には2枚ドローのセカンドチャンス!」

 

 大仰な手振りでデッキトップを引き込む榊遊勝の眉が一瞬動いた。

 今のは…困惑か?

 

「さあバトルフェイズと参りましょう!

 私は先ず【Couple of Aces】で【白銀の城の狂時計】を攻撃!」

 

 奇妙な二人組が狂時計へと飛び掛かりアクロバティックなコンビネーションを見せて赤い方を上へと投げ、投げられたモンスターが飛び蹴りを放って狂時計を壊してしまった。

 

「残念ですが私は此処でメインフェイズ2に移行します」

 

 榊遊勝の手元を見るといつの間にか手札が3枚になっていた。

 おそらくアクションカードを拾った結果だろうが、引いたのは倶利伽羅天童を倒すために必要な攻撃力を高めるカードでは無かったらしい。

 

「それでは此処で再びジャッジメントタイムと参ります!

 手札より【カップ・オブ・エース】を発動!」

 

【カップ・オブ・エース】

通常魔法

(1):コイントスを1回行う。

表だった場合、自分はデッキから2枚ドローする。

裏だった場合、相手はデッキから2枚ドローする。

 

 先程の困惑はこれが理由か。

 確かにドローソースをまた引いたとなれば困惑もするか。

 

「さあ、運命はどちらに微笑むか!」

 

 キィンと音を起てて再びコインが宙を飛ぶ。

 コインはクルクルと回転しながら榊遊勝の手の甲に落ち、それを掌で表示が変わらぬよう抑えてからゆっくりと重ねた手を退ける。

 

「出たのは……裏でございます!」

 

 堂々と敗北を宣言する榊遊勝。

 先のといい、どうやら流れは()()にあるようだ。

 

「これは有り難い事ですね。

 それでは2枚ドローさせていただきます」

 

 そうして引き込んだのはデッキのエンジンでもある【白銀の迷宮城】とバウンス効果の為に除外したビッグウェルカムを回収するために採用している【蠱惑の誘い】であった。

 流れは完全に()()の物と化しているようだが、引いた内容が現状無駄打ちになるカードな辺りが余裕ぶっこいてポンコツ晒す姫様らしい引きと変わらず一切油断は出来ない。

 

「これは中々に苦しいですが、しかし私にも座長としての意地がありますので決して諦めはしません。

 それではターンエンドです」

 

 そう嘯きながら榊遊勝はターンを返した。

 

「それではドローフェイズ。ドロー」

 

 引いてきたのはアリアーヌか。

 ならばやる事は決まりだ。

 

「スタンバイフェイズ。メインフェイズ。

 私は手札から【白銀の城の召使いアリアーヌ】を召喚します」

 

白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーバンツ )アリアーヌ】

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1800/守1100

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):手札及び自分フィールドにセットされたカードの中から、

通常罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。

デッキから「白銀の城の召使い アリアーヌ」以外のレベル4以下の悪魔族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

(2):自分の通常罠カードの効果でモンスターがフィールドから離れた場合に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

その後、以下の効果を適用できる。

●手札から、悪魔族モンスター1体を特殊召喚するか、魔法・罠カード1枚をセットする。

 姫様ならここはこうするだろう。

 

「召喚時にチェーンが無ければアリアーヌの効果を発動します。

 フィールドのセットされた【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を墓地に送りデッキから【白銀の城の召使いアリアンナ】を守備表示で特殊召喚します。

 チェーン確認です」

「いや。残念だが何も出来ないよ。」

 

白銀の城の召使い(ラビュリンス・サーバンツ )アリアンナ】

効果モンスター

星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守2100

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「白銀の城の召使い アリアンナ」以外の「ラビュリンス」カード1枚を手札に加える。

(2):自分の通常罠カードの効果でモンスターがフィールドから離れた場合に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

その後、以下の効果を適用できる。

●手札から、悪魔族モンスター1体を特殊召喚するか、魔法・罠カード1枚をセットする。

 

 全く同じ顔でありながら片方は無邪気な邪悪さを感じさせる笑みを浮かべもう片方は一切の内面を伺わせない無表情故に正反対の感想を抱かせる双子の悪魔がフィールドに降り立った。

「アリアンナの召喚時効果を発動します。

 チェーンはありますか?」

「そちらも残念だが見ているしか無いね」

「畏まりました。

 では私はデッキから我が主【白銀の城のラビュリンス】を手札に加えます」

「……」

 

 召喚権も無いのに自力では特殊召喚出来ないモンスターを態々特殊召喚出来るカードを消費してまで手札に引き入れた不合理に榊遊勝は表情を硬くする。

 

「さて、主賓をお喚びしましょうか。

 墓地から【ビッグウェルカム・ラビュリンス】を除外して効果を発動。

 フィールドの倶利伽羅天童を手札に戻します」

「それは流石に通せないね!

 スカイ・マジシャンの効果発動!

 フィールドの【魔術師の右手】を手札に戻し手札から【魔術師の左手】を発動して無効化する!」

 

【魔術師の左手】

永続魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する場合、

相手が発動した罠カードの効果を無効にし破壊する。

 

 スカイ・マジシャンの左手が魔力を弾けさせ倶利伽羅天童の上から降ってきたフィッティング・カーテンを弾き飛ばす。

 持たれていたくないカードを引かれていたのは誤算だが、しかしこれで不明札はアクションマジック1枚!

 

「ならばその邪魔者を消し去りましょう!

 アリアーヌとアリアンナの2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!

 現われよ!魔術の理を薙ぎ払う暴風!エクシーズ召喚!【竜巻竜】!」

 

竜巻竜(トルネードラゴン)

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/風属性/幻竜族/攻2100/守2000

レベル4モンスター×2

(1):自分・相手ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、

フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

そのカードを破壊する。

 

「エクシーズ素材を墓地に送り【魔術師の左手】を破壊する!」

「やられた!?」

 

 竜巻そのものを身体とするドラゴンが荒れ狂う風を巻き起こし【魔術師の左手】を破壊する。

 

「バトルフェイズに移行!

 倶利伽羅天童でスカイ・マジシャンに攻撃!

 浄罪の獄炎波!」

「アクションマジック!【奇跡】発動!」4000→3900

 

【奇跡】

自分場上のモンスター1体は破壊されず、戦闘ダメージを半分にする。

 

 さっき引いたのは戦闘破壊耐性付与だったのか。

 翼を広げ倶利伽羅天童の使役する龍と激しい空中戦を繰り広げたスカイ・マジシャンだが、龍から解き放たれたブレスを躱せず地面へと墜落するも翼で強引に体勢を戻しギリギリの所で両足で地面に着地した。

 

「次いで【竜巻龍】で【Couple of Aces】に攻撃!」

「何の!アクションマジック【ハイダイブ】発動!

 【Couple of Aces】の攻撃力を1000上げる!」

 

【ハイダイブ】

自分モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップさせる。

 

 更にアクションマジックを追加で手にしようとするがそれより先に竜巻竜がモンスターを飲み込んだ。

 ルール上ターン1制限無しとは言え、流石にバトルフェイズ中に連続で使われるのは苛立ちが凄いな。

 

「見付けたが流石に間に合わなかったか…」3900→2900

 

 手にした新たなアクションマジックを悔しげに見る榊遊勝。

 

「バトルフェイズを終了しますがやることはありますか?」

「いや。そのまま移行して問題有りませんよ」

「そうですか。

 でしたら私はこのターンエクシーズモンスターが戦闘を行ったので竜巻竜を新たにエクシーズ素材としてオーバーレイ・ネットワークを構築します」

「何?」

「来なさい!!天空を統括する、雷霆の機神!

 人類最大最後の究極的一撃を以て災禍を撃滅すべし

 エクシーズ召喚!【天霆號アーゼウス】!!」

 

 竜巻竜が天高く昇り上空に生じた光の銀河に飛び込み、その渦より人が生み出せし神殺しの機神が姿を現す。

 

「これは何という威容だ…」

 

 圧倒的な威圧感を放つアーゼウスに流石に榊遊勝も言葉を失う。

 

「そしてアーゼウスの効果発動!

 エクシーズ素材2枚を消費しフィールドの自分以外の全てのカードを墓地に送る!

 焼き払えアーゼウス!デウス・エクス・ケラウノス!!」

 

 名に従いアーゼウスが全ユニットを展開しフィールドを敵味方問わず焼き払う。

 

「私はフィールド魔法【白銀の迷宮城】を発動しカードを伏せてターンエンドします」

 

 完全にブラフだが()()()()()()()()()()()()()()と判断しターンを終えた。

 




おまけ

姫様「ふふふ。執事ってばそんなに私が恋しかったなんてなんて可愛いのかしら?」
アリアーヌ「あそこは絶対火吹炉でしょ?執事らしくないプレミだよね?」コソコソ
アリアンナ「しっ!」コソコソ
アリアス「……ああ。姫様の動きを模倣しているのですか」
アリアス「確かに迷うぐらいなら他の者をトレースすれば誘導も関係なくなるからいい作戦だ」
アリアス「何よりそこで姫様を選んだところは好ポイントだよ」
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