迷宮姫に仕えているんだが、今日も姫様はポンである。 作:サイキライカ
…分からん。
先程はスカイ・マジシャンを蘇生するための手段として倶利伽羅天童を破壊しなかったから納得出来た。
しかし今回スカイ・マジシャンの効果でアーゼウスを破壊しなかった理由が分からない。
プレミでスルーしたなんてことはありえないとして、考えられるのは【妨げられた壊獣の眠り】の破壊対象に残したかった。
或いは【心変わり】他のコントロール奪取系カードへの期待。
そうでなければ…エクストラデッキ?
しかしエクストラデッキのモンスターの中に
いや、アーゼウスは機械族だから【キメラテック・フォートレス・ドラゴン】なら条件を満たせるな。
しかしだ。このタイミングでデッキ構築的に採用は1枚か2枚が限界だろう【サイバー・ドラゴン】モンスターを引くなんて事があるか?
……十代とか遊矢とか前例が結構普通にあったわ。
「私のターン。
ドロー。スタンバイフェイズ。メインフェイズ」
さっきのやり取りの後だからか榊遊勝はしっかりとフェイズ進行を明言してからパフォーマンスへと移った。
「始めに勤勉なる団員をご紹介します。
手札から【EMフレンドンキー】を通常召喚です」
【
効果モンスター
星3/地属性/獣族/攻1600/守 600
(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。
自分の手札・墓地からレベル4以下の「EM」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
現れたのは間の抜けた顔に見える驢馬。
今の榊遊勝の墓地にフレンドンキーの蘇生効果の対象になるのはレベル3のレビュー・ダンサーのみ。
「フレンドンキーの効果でレビュー・ダンサーを復活させます!」
驢馬が背負っている箱が独りでに開き、中からレビュー・ダンサーが派手な登場を見せてくれる。
ここから有り得る展開先はランク3エクシーズ召喚かリンク召喚だが…
と、そこで演出だろう周囲が帳を落としたように暗くなり、榊遊勝だけがスポットライトに照らされながら滔々と語り出した。
「これより皆様が気になっているだろう、何故スカイ・マジシャンの破壊効果を使わずに居たのかをお答えしたいと思います。
これより語るは星の空に広がる宇宙の物語。
人は母なる星を旅立ち、無限に広がる宇宙にロマンを抱いて航海する黄金の時代を迎えました」
どういう効果なのか暗闇に星の光が煌めきプラネタリウムの中にいるような足元が覚束ない不安感を抱きつつ榊遊勝の動きを見逃さぬよう集中する。
「無限の宇宙に拡がった人類は多くの新たな発見とともに発展し、その栄華は絶頂を迎える筈でした」
バンッ、と音と共に星の光が消え、紫色の紫電が走る。
「しかし人類の繁栄を快く思わぬ者が居りました。
彼の者達は人類に敵対し、彼等と人類は大きな犠牲を払う大戦を開始したのです」
帳の先で爆発が幾つも生まれ、破壊の爪痕が幾つも空に刻まれていく。
「人類はこの戦争に勝利するため、十二の機神を生み出しました。
それこそが【
新たなスポットライトが灯され、その光は俺のフィールドのアーゼウスを差した。
「しかし彼等も決して指を咥えてみていたわけではありません!!
神話を終わらせる機神に対抗し、彼等は神話の再来を、神の裁きをこの世に再誕させたのです!」
「…っ!?」
まさかアーゼウスやアライズハートのような限定条件を満たす事で特殊召喚が可能になるモンスターが居るというのか!?
「さあ、刮目して御覧じください!
召喚条件は
それを満たし神の怒りに触れた彼は、神の怒りの代弁者を前に果たして生き残れるか!
フレンドンキーをエクシーズ素材としてオーバーレイ・ネットワークを構築します!」
通常の黄金ではない。
闇色の光の粒子が銀河を形作り、フレンドンキーを飲み込み中から這い出てくるように禍々しい機神がその姿を現した。
「来たれよ災厄よ!無限の宇宙を汚す人の愚かさを諌めし神々の代弁者!エクシーズ召喚!ランク12!【厄災の星ティ・フォン】!!」
【
エクシーズ・効果モンスター
ランク12/闇属性/悪魔族/攻2900/守2900
レベル12モンスター×2
このカードは相手がEXデッキから2体以上のモンスターを特殊召喚したターン及びその次のターンに、
自分フィールドの攻撃力が一番高いモンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。
この方法で特殊召喚したターン、自分はモンスターを召喚・特殊召喚できない。
(1):X召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、
お互いに攻撃力3000以上のモンスターの効果を発動できない。
(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
フィールドのモンスター1体を手札に戻す。
「【
なんだこれは…?
全ての能力がアーゼウスを殺す為だけに構成されたそのモンスターに、久しく受けることが無くなった
「ティ・フォンの効果を発動!!
エクシーズ素材を取り除きモンスターを手札に戻します!
私が選ぶのはアーゼウス!!」
「くっ!?」
ティ・フォンの背部ユニットが展開し紫電の蛇が大量に生み出されアーゼウスに迫る。
アーゼウスは全身の武装を全機稼働させ片端から撃ち落とすが、膨大な物量の前に撃ち漏らし、蛇の顎にその駆体が喰らいつかれた。
「アーゼウス!!??」
一匹、さらに一匹と喰らいつく顎は増え、蛇から流れ込んだ闇色のエネルギーにアーゼウスの両眼から光が消え闇へと飲み込まれていった。
「さあ、守る者も無い彼にこの窮地は切り抜けられるか!
バトルフェイズに移行!」
怨敵を排除したティ・フォンの蛇達が俺へと鎌首を擡げて牙を剥く。
「ティ・フォンの攻撃!!
更にアクションマジック【突撃】!!
攻撃力を600上げます!!」
蛇達が逃げ場を封じ、ティ・フォンの凶悪な形をした爪が振り下ろされた。
「ガッアァァァッ!!??」5000→1500
咄嗟に姫様のカードを守る形で防御するが、ハスキーさんに手加減失敗されたボディー・ブロー以上の激痛が襲い掛かり悲鳴が堪えられず溢れた。
「続いてレビュー・ダンサーで攻撃!!」
痛みで歪む視界の先で榊遊勝が更にアクションマジックを拾う姿が見えるが俺はただ見ているしかできない。
「アクションマジック【バイアタック】!
レビュー・ダンサーの攻撃力を2倍にする!」
振り下ろされた一本鞭の軌跡を確かめ姫様に当たらないよう自ら受けに行く。
「ぎっ、いっ!?」1500→300
無理に動いたせいで顔面に当たり、左目を打たれたせいか視界が半分になってしまった。
「っ! わ、私はメインフェイズ2を放棄してターンを終える」
異様に焦っている榊遊勝に疑問が過り、そして痛みに加え生暖かい感触が肌を伝ったことで出血しているらしい事に気づいた。
しかし、俺が気にするのは姫様のカードを血で汚してしまわないかだけだ。
「失礼。ターンを始める前に少々お待ち願えますか?」
「勿論だ」
険しい顔をする榊遊勝を横にハンカチを取り出し血を拭い傷を確かめる。
幸いにも薄皮を切っただけらしいので、ハンカチで傷口と左目を押さえるように縛る応急処置を済ませておく。
「お待たせしました。
それでは再開しましょう」
「……ああ。君がそれで構わないなら」
「ええ。ドローフェイズ。ドロー」
引いたのは…【闇の誘惑】か。
「スタンバイフェイズ。メインフェイズ」
姫様ならどうする?
自らや下僕を除外してまで勝ちに行くか?
否。
誇り高く敗北を選ぶだろう。
ならば選ぶは一つだ。
「私は…?」
ターンエンドと口にしようとして、不意に視線を感じカードを見ると、目の錯覚だろうか姫様がお怒りになられているように見えた。
『貴方は私の下僕なのよ!
私以外に敗北など許さない!
私を使い潰してでも私に勝利を捧げなさい!!』
幻聴が聞こえる。
姫様らしい、めちゃくちゃな我儘を俺に要求する、そんな大分遠くなってしまった懐かしい姫様の御姿が見えた気がした。
「……畏まりました姫様」
頭を打ったせいで見ている幻覚と幻聴かもしれないが、
如何なる犠牲を払っても勝てと言われたなら、勝つ以外選択は無い!!
「私は手札から【闇の誘惑】を発動します!
チェーン確認を」
「此方から動くものはない!」
「分かりました。
2枚ドローし、手札から闇属性のモンスターを除外します」
導かれるようにデッキトップから引いてきたのは…
【黄金卿エルドリッチ】
【裏切りの罪宝-シルウィア】
「私は手札の【白銀の城のラビュリンス】を除外します」
除外する刹那、カードの姫様が笑っておられたように見えた。
「そうですね。こちらも少しばかり語りましょうか。
我が姫は多くを兼ね備えておられます。
天上にさえ勝る者のない美しき容姿。
城の仔細に渡るまで手ずから手掛ける実用性も兼ねた芸術性の高い優れた美的センス。
無断で城を踏み荒らす不届き者を誰一人として逃さぬ(例外アリ)悪辣な罠を敷く知性。
身内に向けられる深き慈愛。
高貴でありながら市井の感性にも理解のある善性。
我々は敬愛する我が姫の良いところは沢山ありますが、何よりも素晴らしいと思う事が【ラビュリンス】一同口を揃えているのですよ。
彼女の素晴らしさは、誰もが魅了されるその【カリスマ】であると!
私は手札から【黄金卿エルドリッチ】の効果を発動!!」
【黄金卿エルドリッチ】
効果モンスター
星10/光属性/アンデット族/攻2500/守2800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):手札からこのカードと魔法・罠カード1枚を墓地へ送り、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを墓地へ送る。
(2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドの魔法・罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。
このカードを手札に加える。
その後、手札からアンデット族モンスター1体を特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターは相手ターン終了時まで、
攻撃力・守備力が1000アップし、効果では破壊されない。
「手札からエルドリッチと罠カード【裏切りの罪宝-シルウィア】を墓地に送りティ・フォンを墓地に送ります!!
チェーン確認!!」
「止められない…!?
チェーンは無い!」
人の生み出した欲望の末。
黄金の輝き放つ死の呪いが神の尖兵を飲み込み深淵へと堕す。
「更に墓地のエルドリッチの効果を発動!!
フィールドの伏せカードを墓地に送り自身を回収!
その後手札からアンデット族を特殊召喚します。
来ませり!人の欲望を飲み干したる傲慢なる王!
【黄金卿エルドリッチ】特殊召喚!!」
欲に狂い死の呪詛と化した欲望を逆に支配した苛烈なる王が降誕する。
「チェーン確認!」
「それも無しだ!」
「ならば墓地の【蠱惑の誘い】を除外して効果発動!
除外された【ビッグウェルカム・ラビュリンス】をデッキに戻します!
チェーン確認!」
「無し!」
「その後墓地の【罪宝狩りの悪魔】を除外して効果発動!
【裏切りの罪宝-シルウィア】をデッキに戻して1枚ドロー!」
引いてきたのは【異次元からの埋葬】だった。
有効ではあるが、しかし今使っても仕方ないカードだ。
下手に使うよりエルドリッチのコストに使うべきだろう。
「バトルフェイズに移行します。
エルドリッチでレビュー・ダンサーに攻撃!」
自身の効果でエルドリッチの攻撃力は3500。
このまま貫通ダメージが通れば2900でジャストキルとなるが…
「アクションマジック【エクストリーム・ソード】発動!
レビュー・ダンサーの攻撃力は1600になる!」2900→1000
【エクストリーム・ソード】
自分モンスター1体の攻撃力をバトルフェイズ中1000ポイントアップさせる。
死霊の魔力を掻き集めた呪詛の砲撃は、しかし後一歩で榊遊勝の命を刈り取るのに届きはしなかった。
「バトルフェイズを終り…」
と、そこで俺は足元にアクションマジックが落ちているのに気付いた。
何故かそれを拾えと姫様の声が聞こえた俺は徐ろにそれに触れた。
その瞬間、
「フィールド魔法を発動しているのになんで?」
困惑する俺に関せずアクションマジックが効果を発動し
【ブレイクショット】(アクショントラップ)
自分場上モンスター1体の攻撃力を900ポイントダウンさせる。
「このタイミングでアクショントラップを引いてくる辺り、私はつくづくアクションデュエルと相性が悪いようですね」
「いや。君の勝ちかもしれないよ」
何故か榊遊勝は困った顔で笑っていた。
「はい?」
「君は勘違いしているみたいだが、
「通常罠?
まさか!?」
振り向けば背後にそびえ立つ迷宮城が膨大な魔力を放出し城門が開こうとしている。
「……成程。
こんな事も有るんですね」
「制作した私も予想外だけどね」
「では、バトルフェイズを継続し迷宮城の効果を発動しますが、チェーンして手札から【異次元からの埋葬】を発動します」
【異次元からの埋葬】
速攻魔法
(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から
合計3体まで対象として発動できる。
そのモンスターを墓地に戻す。
「確認は攻撃宣言まで無しで」
「分かりました。
では逆順処理により除外された【黒魔女ディアベルスター】と【白銀の城のラビュリンス】を墓地に戻してから墓地より【白銀の城のラビュリンス】を攻撃表示で特殊召喚します」
【白銀の城のラビュリンス】
効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻2900/守1900
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の通常罠カードの発動に対して、相手はモンスターの効果を発動できない。
(2):自分の墓地の通常罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを自分フィールドにセットする。
この効果でセットしたカードは、自分フィールドに悪魔族モンスターが存在しない場合には発動できない。
(3):自分の通常罠カードの効果でモンスターがフィールドから離れた場合に発動できる。
相手の手札・フィールドのカード1枚を破壊する(手札からはランダムに選ぶ)。
城門が内側から蹴破られたような勢いで開き、カツカツと靴を鳴らせながら凛々しく顔を引き締めた姫様がフィールドに立たれた。
「姫様。お手をお借りします。
姫様でダイレクトアタック!
ブレイク・ラビュリス!!」
携えた戦斧を両手で構え姫様が弾丸のような速さで疾走しながら榊遊勝へと斬りかかる。
「だが、最後まで足掻かせていただこう!」
そう宣い姫様の斬撃を紙一重で避けた榊遊勝がアクションマジックを手にしたが…。
「流石に運も尽きたらしい。
だが、楽しかったよ」
状況を切り抜けられるカードではなかったらしいが、それでも榊遊勝は笑顔を保ったままついに姫様の斬撃に捉えられた。
「ぐはぁっ!?」1000→0
普段に増して力がこもった様子で斧を振り抜き榊遊勝が派手に吹っ飛ばされた。
そんな榊遊勝をいつもの様に嘲笑い高笑いするでも無く姫様は俺の側に近付くとスッと頰に指を這わせてから仕方ないと言いたげに目元を緩めそのまま城へと帰っていった。
前のターンでアーゼウス破壊しなかったのは作者がこの状況でアーゼウス破壊したらティ・ホン召喚出来たか忘れてしまったので、どうせバウンスするから変わらんし場面演出を派手に描けるからいいかの演出重視です。
因みに城では姫様は榊遊勝にかなりお怒りですが、執事に姫様を褒めさせたので手を降すのは保留してます。