――誰のために走るのか。何を求めて走るのか。
URA設立から半世紀以上。世界各国の競馬も様変わりしてきた。まだウマ娘達にロマンはあるのか。そもそもロマンとは何なのか。
変わってきた近年の競馬界をウマ娘界に当てはめた妄想譚。
※この物語はすべてフィクションです。
※主役のウマ娘は完全オリジナルになります。
※未実装、またはウマ娘化されていない実在競走馬がキャラクターとして登場する場合があります。
さて今年からいよいよ整備されたダート三冠が中央勢も交えて開催されますね。
収入アップをしたい南関東公営競馬と、せっかくの「ダート三冠」をどうしてもGⅠ格で開催したいJRAとの思惑が一致。
『――りました。それでは2週間後の水曜日、面接を行いますので、当日、履歴書を持参してください』
ドリームトロフィー・リーグを引退したジェノヒュマスは、同時にトレセン学園も卒業した。
レース中に軽い痛みがあったのですぐにその場で競走を中止、診察を受けたところ、怪我自体は大した怪我ではなかったが限界はそう遠くないことを告げられた。
競走が本能であるウマ娘は、これこそが自分の生き様だとばかりにトゥインクルシリーズ、ドリームトロフィー・リーグを走りまくって限界を迎え、若くして車いすでの生活を余儀なくされることも多い。
その点、ジェノヒュマスには理性があった。ドリームトロフィー・リーグを経験していることからもわかる通り、トゥインクルシリーズでは素晴らしい成績を収めており、当面の生活には困らない貯金は口座に眠っている。
ドリームトロフィー・リーグでは芝ダートOK、短距離から中距離までこなし、タケシバオーの再来とまで評されていたのだが、“どちらかといえば”ダートのほうが得意であり、脚元に負担がかかる芝レースでついに故障したのであった。
さて、ジェノヒュマスは適当に借りたアパートで数日間ゴロゴロしていたのだが、如何せんヒマであった。
故障が怖くてドリームトロフィー・リーグを引退したのに、まさかコンクリートの道路をランニングするわけにもいくまい。
金を残しておけばいつ辞めてもいいのだからと、職を探すことにしたのだった。
ウマ娘向けの求人は現場系が多い。人材不足の世の中、ヒト族でも現場系が多いのは当たり前なのだが、ウマ娘の場合一番多いのは警備会社。次いで土方系。運送会社の倉庫管理業務はあるが、運転手としての求人は少ない。
パワーを持て余すウマ娘は運転が荒いのだ。ハンドルを一気に回してしまい。ガードレールに突っ込む者もいれば、40km/hでの走行は遅すぎると、本能に負けてアクセルを吹かし違反切符を切られる者も多かったのだ。
事務職が少ないのも似たような理由で、3日に1回パソコンのキーボードをぶっ壊されたのでは会社としてはたまったものではない。
しかしトゥインクルシリーズで活躍したウマ娘には、もう一つ、大きな求人がある。
その知名度を当てにした営業職である。
基本的にGⅠを勝つようなウマ娘は大手会社に鳴り物入りで入社できる。
(どうせなら海外出張とかもしたいよね)
ジェノヒュマスが応募した会社は、ロンドンに本社を置く世界企業の日本支社であった。
しかし、ジェノヒュマスは大切なことを見落としていた。
人事の担当者と電話で話した際、「応募条件は満たしています」と言い切ったのだが、最も重要な条件を満たしていないことに、ジェノヒュマスも、そして採用担当者も気づかなかったのである。
ジェノヒュマスがそれに気づくのは、面接目前になり履歴書を書き上げている途中であった。
〈ワールド・テクノロジー・ジャパン株式会社〉
ウマ娘の方専用(ヒト族の方はこちらのページへ)
求人内容:営業
応募条件:日本トレセン学園を卒業した者で、かつ国際GⅠ優勝歴がある者
必須資格:なし
※面接の際、履歴書をご持参ください。なお履歴書は「国際基準タイプ履歴書」の用紙にご記入をお願いします。
(ヤバイヤバイヤバイ!これは書いちゃダメなんだ!どうしよう……)
ウマ娘の履歴書には、「レース入賞歴」を書き込む欄が設けてある。数々の大レースを制してきたジェノヒュマスにとって一番張り切って書く欄であったのだが、書き方をネットで調べていると、とんでもない事実を見つけてしまったのだ。
〈国際基準タイプの履歴書には、国際格付けを得たレースの入賞歴以外を書いてはいけません〉
どうせ落ちるならいいかとヤケクソになって書き込んだ履歴書には、グレート格では【GⅢサウジダービー1着】【GⅡUAEダービー1着】【GⅢアミールトロフィー1着】の3つと、その他リステッド(L)やリステッド・リストリクテッド(LR)を数レースしか書けなかったのであった。
「ジェノヒュマスさん、応募条件は満たしていらっしゃるとお伺いしていたのですが?」
「申し訳ありません……てっきりGⅠだと思っていたレースが悉く国際格付けがなくて……」
「ええ、私も電話を受けたときはまさかあのジェノヒュマスさんが!と喜んでいたのですが……まさかまさか」
知名度という点ではジェノヒュマスは間違いなく世界的な名ウマ娘なのだが、会社側としては条件を満たしていないという理由で、帝王賞で1着、ドバイワールドカップとBCクラシックで3着の経験があるウマ娘や、古馬王道を完走し、掲示板は一度も外さなかったものの結局GⅠを一つも勝てなかったウマ娘を落としており、そのウマ娘達からジェノヒュマスの経歴を指摘された場合の会社へのダメージを考えると、彼女を合格とすることはできなかったのである。
結局ジェノヒュマスはその場で不合格を言い渡され、また数日ゴロゴロとした後、今度は条件をしっかり読み、“GⅠ級競走の優勝歴がある者”が募集条件だった会社に晴れて就職したのであった。
【ジェノヒュマスの戦績】
ジュニア期
・1着…メイクデビュー京都
・1着…もちのき賞
・1着…全日本ジュニア優駿(L・JpnⅠ)
クラシック期
・1着…サウジダービー(GⅢ)
・1着…UAEダービー(GⅡ)
・1着…羽田盃(LR*1・JpnⅠ)
・1着…東京ダービー(LR*2・JpnⅠ)
・1着…ジャパンダートクラシック(LR・JpnⅠ)
シニア期
・1着…アミールトロフィー(GⅢ)
・6着…ドバイシーマクラシック(GⅠ)
・1着…かしわ記念(LR・JpnⅠ)
・1着…帝王賞(LR・JpnⅠ)
・4着…キーンランドC(GⅢ)
・1着…ジ・エベレスト
・7着…有馬記念(GⅠ)
・1着…URAファイナルズ予選
・1着…URAファイナルズ準決勝
・1着…URAファイナルズ決勝
ドリームトロフィー・リーグ移籍後
・1着…ドリームシリーズ・ダート
・1着…ドリームシリーズ・スプリント
・1着…ウィンター・ドリーム・トロフィー・スプリント
・2着…サマー・ドリーム・トロフィー・ミドルディスタンス
・1着…ドリームシリーズ・ダート
・中止…ウィンター・ドリーム・トロフィー・スプリント
※国際グレート格付けは2024年2月19日現在のもの(2023年国際セリ名簿基準書に準拠)。但し羽田盃、東京ダービーに限り作者の空想上での格付け。
ジャパンダートクラシック(旧JDD)がLR格付けでブルーブックに記載されていることを考えると同じLR格で登録されると思います。
こんなクソローテ組む陣営なんてありえない……とは言えないんだよ最近の芝行ったりダート行ったり短距離行ったり中距離行ったり、陣営に振り回される馬たちを見てると。