紅玉戦記   作:柱間ァ!!

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 水が、庭に弾ける。

 

「――――良し、第一段階はクリア」

 

 間桐家の庭で、檜扇佐介は弾けた水風船を見下ろして一つ頷いた。

 習得しようと考えた術。その修行段階は、大きく分けて三つ。水風船を用いるのは、その第一段階に相当する。因みに、所要時間は三時間程か。クリア方法を知っていた為、そこから逆算して試行錯誤を繰り返せば比較的簡単に仕上がった。

 

「さて、次は……桜」

「?」

「ゴムボールを一つくれ」

 

 椅子に腰かけ、佐介の修行を眺めていた桜は傍のテーブルに置かれた紙袋からゴムボールを一つ取り出し投げ渡す。

 佐介は、受け取ったゴムボールを右手で握ってその感触を確かめ、そのゴムの厚みが水風船の比ではない事を改めて実感する事になった。

 次は、これを割るのだ。それも、チャクラだけで。

 左手へとゴムボールを投げ渡して、握った状態で手のひら側を空へと向けて右手は左手の手首を握る。

 佐介のつむじは、左巻き。そして、チャクラの流れには得意な方向というのがあり、彼は左方向へと回転させる。

 

(チャクラを掌で回転させて、圧縮し、留めきる……)

 

 ジッとゴムボールを見つめる佐介。彼は気付いていないが、そのチャクラコントロールはかなりのレベルだったりする。

 理由は、天照だ。

 如何に万華鏡写輪眼を開眼しようとも、見たモノのみを黒い炎で自在に焼き尽すなど余程のコントロールが可能でなければ実現しない。ましてや、焼かないと決めたモノを一切傷つけないならば猶の事。

 故に、その結果は必然だった。

 激しく内側から出鱈目に膨らんで、次の瞬間ゴムボールは弾ける。

 

「やっぱり、ゴールが最初から分かってると楽だな………寧ろ、所々でヒントがあったとはいえ、手探りでゴールまで行ったナルトのどこが落ちこぼれなんだ?」

「なると?」

「あー……昼飯は、ラーメンにしようか」

 

 ゴムボールが割れた音に反応したのか、桜が近寄ってきていた。

 黒髪ながらも、僅かに紫の色合いがある頭を右手で撫でながら、佐介は左手にチャクラを集中していく。

 チャクラを掌で高速回転させ、圧縮し、球体の状態で留めきる。印を必要とはしないが、その代わり上忍クラスの緻密なチャクラコントロールを必要とする高等忍術。

 

「――――螺旋丸……まずは、一つ目」

「……うるさい」

 

 独特の高音を響かせるチャクラの球体に、桜は眉根を寄せて両手で耳を覆った。

 螺旋丸自体、かなり高度な術だが、この術自体も下地でしかない。

 その為に身に付けなければならないのがもう一つの術。

 

(形態変化は良いとして……性質変化、か)

 

 チャクラには、火、風、雷、土、水の五つの性質がある。

 基本的には一人一性質だが、当て嵌まらないものも少なくはない。

 見極め方の一つとして、チャクラを流す事で反応する感応紙を用いる方法もある。

 だが、佐介の場合は少し違う。彼には、チャクラを色で見分ける写輪眼があるのだから。

 桜の頭から右手を離して、チャクラを練り上げ印を組む。

 数は三つ。右手にチャクラを集中させる。

 

(電気……電気…………)

 

 螺旋丸とは違って、ノウハウのない性質変化。可能になれば、それだけアドバンテージが広がるのだが、

 

「…………ダメか」

 

 集めたチャクラは、うんともすんとも言ってはくれない。

 これに関しては、仕方がない。そもそも、チャクラの性質を変える方法がよく分からないのだから。

 因みに、やろうとした術の名称は、千鳥。性質は雷遁であり、コレが使えるようになれば身体能力の強化などにも応用が利く為、習得したいと考えた次第。

 とはいえ、出来ないのならば時間を無駄にかける訳にはいかない。

 桜を伴って屋敷内へと戻りキッチンへと向かうと、鶴野が買い込んだインスタントラーメンの袋を手に取った。

 味噌ラーメン。乗せるのは、キャベツとゆで卵、のり。

 

「「いただきます」」

 

 熱いスープの絡む縮れ麺を啜る。

 そんな中で、佐介が考えるのはもう一つの身に付けようとしている術についてだ。

 

(まず、感知が出来るかどうか、か)

 

 彼の考えるもの、それは自然エネルギーを利用する仙術チャクラ。

 必要なのは、自然エネルギーを感知する能力と、取り込んだ自然エネルギーに負けないだけのチャクラ量と強靭な肉体。

 この内、チャクラ量に関しては佐介は問題ない。万華鏡写輪眼を乱用できるのだから、そのチャクラ量は相当だ。

 問題は、自然エネルギーの感知。

 

(妙木山の油、なんて便利なものはないだろうし……やっぱり、一か八かを試すしかないか)

 

 最悪の場合、石化のリスクはある物の出来た場合のリターンはかなり大きい。

 何より、佐介の考えている手法が使えるのなら戦闘においても大きなアドバンテージとなる。

 

 味気ない昼食を終え。丼を洗って乾燥籠へと放り込んでから、二人は改めてリビングへとやって来た。

 

「佐介君……」

「ん?どうした、桜」

「ヘビさんに、会いたい」

「良いぞ………夜刀神」

 

 ソファに腰掛けた所で、桜が佐介に強請る。

 桜にとって自分を助けてくれた佐介は、ヒーローだ。そして同時に、彼の伴っていた漆黒の蛇は、そんなヒーローのお供。

 天照に比べて、遥かに燃費の良い右目の瞳術。万華鏡写輪眼を意味も無く使っているようにも見えるが、実はとある思惑を同時進行していたりする。

 佐介の影より出てくる()()()()

 いつぞやの夜の大蛇の様に、額に小ぶりながらも漆黒の刀身の様な角のある十センチほどの小さなヘビ。

 その一匹は、桜の元へと向かい。その差し出された手に、するりと絡みつきチロチロと紅い舌を覗かせた。

 

「よしよし」

 

 つるりとした黒い鱗を撫でる桜。

 その隣で、佐介は自身の腕を伝って右肩の辺りまで登らせた蛇へと、脳内で指示を飛ばす。

 

(自然エネルギーを感知しろ)

 

 割と無茶を言っているが、如何せん割と仕方がない。

 性質変化のコツが掴めない以上、使える忍術はかなり制限されるのだから。であるのなら、制限される中で、強力な術を求めるのは致し方ない事。

 ぶっちゃけ、佐介自身も出来るとは思っていない。九割方無理だろう、と考えている。

 

(後は、影分身か。便利だとしても、厄介なのが本体へのフィードバックと、チャクラを等分して数を出す点。チャクラ量を制限できるなら……いや、そうなると最早分身じゃなくて、分裂か)

 

 影分身の術は、チャクラ量に不安がある者では真面に運用できないが、上手く使えば数の暴力すらも可能となる。

 その他有用な術といえば、変化の術や口寄せの術などだろうか。

 色々と佐介が考えていると、不意に隣が静かになった。

 何かあったのか、と横目に確認すればこちらを見て首を傾げる桜が。

 

「佐介君……ヘビさん、おけしょうした?」

「あ?」

 

 言われ、自身の右肩に乗せた夜刀神を見る。

 漆黒の体表。黒い刀身の様な角。違う色といえば、白く輝く目と空中を舐める紅い舌位だろう。

 変化は、その目元。

 

 目元を包むようにして、濃い紫色の隈が浮かんでいた。

 

「…………マジ?」

 

 幸運か、或いは別の()()()()()()()

 理由はどうあれ、パワーアップ手段は得た。

 まだまだ足りないが、それでも死地で即死しない程度の力は身に付けられる事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 間桐雁夜は激怒した。

 必ずや、あの魔術師的思考に染め上げられ子供たちの幸せの一つすらも真面に考えられない優雅()に鉄槌を下さねばならぬと。

 雁夜に魔術師的思考は分からぬ。彼は、出奔者であった。だが、人一倍ある女の事に関しては敏感であった。

 

 そんな某小説の主人公の様な心情になりながら、間桐雁夜は出奔してから一度として帰る事の無かった実家へと帰ってきていた。

 そこで見たのは、

 

「鶴野、冷蔵庫が空だ」

「はあ!?え、もうか?」

「買い物に行ったのが、一週間前。人間三人が、好きに飲み食いすれば、そうなるだろうな」

「あー……成程」

 

 最後に見た時よりも血色の良くなった兄と、それから見た事のない黒髪の少年。それからその少年の背にぴったりと引っ付きながら、二人の会話の動向を眺めているほんのり紫色に見える黒髪の少女の姿。

 思わず、荷物を落としてしまい、音が鳴る。自然と、雁夜に向けて三つの視線が集中する事になった。

 

「雁夜、か……?」

「……ジジイは何処に?」

「妖怪爺さんなら、死んだぞ」

 

 雁夜の問いに答えたのは、少年だ。そして、その回答は、瞠目に値する。

 

「し、死んだ……?」

「正確には、俺が殺した」

「殺っ!?な、え……?」

 

 雁夜、混乱。しかし、これもまた致し方なし。

 何百年と生きている妖怪ジジイ。それが、間桐臓硯という存在だったのだ。要するに、化物。

 その化物を、十歳にもなっていなさそうなあどけない少年が殺した。

 信じろ、という方が難しい。だが、チラリと流し見た兄である鶴野からの否定の言葉は出てこなかった。

 つまり、本当の事。そう結論付けた瞬間、雁夜の胸の内には何やら寒気の走るものが過っていた。

 同時に、鶴野にとって雁夜の帰郷は歓迎されるものでは無かったりする。

 

「……何で、帰ってきた」

「ッ……桜ちゃんが、養子に出されたと聞いたんだ。あの妖怪ジジイが何をするか分かったものじゃなくて………」

「お前のその行動が、こっちを危険に晒してるんだが……?」

 

 僅かな苛立ちを含んだ鶴野の言葉。

 

「近々、聖杯戦争が起きるらしい。今日か、明日か、一週間後か、一ヶ月後か。そして、ここは腐っても御三家の一つ、間桐家だ。そこにマスターに成れる可能性がある魔術師が、擬きとはいえ集まったらどうなると思う?」

「そ、れは………でも、心配で――――」

「お前は、いつもそうだ……!周りの事なんざ、何も考えちゃいない。自分の目的にしか目を向けない!…………親父にそっくりだよ、その盲目的な部分は」

 

 吐き捨てる鶴野の言葉には、憎悪が入り混じる。まあ、出奔した雁夜の穴埋めとして当主にねじ込まれたのだから、恨み言の一つや二つじゃ足りない数あるのだろう。

 だが、雁夜は雁夜で元々魔術師として染まったと考える兄の言葉に、多少の動揺は見せても怯まない。

 兄から視線を切って、会いに来た少女へと足を一歩進め、

 

「――――止まれ」

 

 その前に、得体の知れない少年が立ち塞がる。

 両目が不思議な紋様の真紅の瞳となり、同時に少年少女の足元を巻き取る様に蜷局を巻いた漆黒の鱗を持つ角のある大蛇が現れた。

 如何に、魔術師の家系から逃げた雁夜といえどもここまでの異常な相手に無防備に近づく事はない。ギクリ、と蛇に睨まれた蛙の様にその動きを止められる。

 

「お前ら兄弟の確執も、家の事情も知らない。だが、今は内輪もめをしてる場合じゃない。違うか?」

 

 淡々と言う少年に大人二人は、口を閉じる他ない。

 正論以上に、この場には力による絶対的なヒエラルキーの差があるのだから。












この主人公は、完全な天才型+超常存在のお遊び的運の上振れがあります
つまり、努力パートがほぼありません



天照に関するご指摘を受けたので、ここで補足を。
主人公が出来る黒い炎の操作というのは、言うなればどの範囲に、どの程度の大きさの炎を着火、どの程度まで燃やして消すのか、を操作できる程度です。形態変化はできません
一方で炎遁・加具土命は黒い炎の形態変化に特化しています。原作だと、黒い炎を鋭い棘の様な形にして相手へのカウンターにしたり、槍の様に刺し貫いて燃やしたり、などですね。
主人公は、上記の事は出来ません。あくまでも、着火、燃焼範囲、消火を微細なレベルで出来るだけです

もう少し分かりやすく、お届けできるように努力したい所ですが、如何せん私の文才は味噌っかすですので、こうして後書きなどで補足説明をさせていただく事があると思いますが、よろしくお願いいたします
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