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「……もうっ」
あたしは大好きな旦那さんの帰りを一人待ってたの。
外は夜で真っ暗。軍のお仕事は忙しいって分かっているけど……。
(今日は早く帰って来るって言ってたのに。アスランの……ばかっ)
今日のために用意もしたのに。早く帰って来ないと、真夜中になっちゃうよ。でも、いつ帰って来てもいいように待ってるの、あたし。
「もうすぐ帰ってきてくれるよね? ……きっと、すぐに」
彼のためにお店で買って用意した、赤いリボンと包み紙で梱包した贈り物。両手で手にとって、彼に渡すことを夢に見てた……丁度そんな時だったの。
ピンポーン
──って、玄関のインターホンの鳴る音が聞こえました。
ぱっと立ち上がって急いで玄関に向かったの。そしてドアを開けると目の前には、あたしの一番大切な人が。
「ただいま、ミーア」
オーブの軍服姿のまま帰って来てくれたアスラン。彼はあたしの頬にキスをすると、申し訳なさそうに少しはにかみます。
「それとすまない、軍務と……少し買い物があって一時間遅れてしまった。もっと早く帰れると思っていたけれど……」
「ううん、あたしは大丈夫。アスランは軍で大事な仕事をしているの、知ってるから。
今はちゃんと帰って来てくれたのが嬉しいの。……ふふっ、お疲れさま♡」
アスランは家に帰って来ると軍服を脱いで、シャツ姿になってからリビングに。
ソファーにいるあたしの隣に座って一息つく彼の横顔。つい眺めてしまいます。
「急いで仕事を終わらせたからヘトヘトだ。けれど家に帰ってミーアといるだけで、そんな疲れも忘れられる」
あたしの視線に気づいたアスランはこんな言葉を。それから少し照れたように頬を掻いて、訂正するように。
「……っと、これじゃあ言い訳みたいだな。すまない、けれど君と居れて心地が良いのは本当なんだ」
ちょっとだけ口下手な旦那さん。あたしはくすっと笑って、ソファーに置いてある彼の──薬指に指輪をはめた左手を愛おしく撫でながら応えるの。
「分かっているわ。だってあたしも、同じ気持ちなんだから」
そしてあたしは、続けてアスランに尋ねます。
「アスラン。今日は何の日か分かりますか?」
あたしと、テーブルに置いたままの包みとリボンで飾った贈り物を見て、彼はもちろんと答えてくれる。
「分かるさ。今日、2月14日はバレンタインデーだ。
……あの惨劇が起こった日でもある。けれど、本来は大切な恋人にプレゼントを送る記念日。だから俺は──」
アスランはズボンのポケットから小さな白い箱を取り出して、あたしに手渡してくれた。
「先に俺からプレゼントをして構わないだろうか? 良かったら開けてみて欲しい」
どんなプレゼントだろう? ワクワクしながら彼の言う通り箱を開けるの。中身は──。
「──わぁ♪」
プレゼントの中身は、黄金色の宝石がはめ込まれた首飾りだったの。
「飾り気はないシンプルなネックレスだけれど、その宝石が気に入って買ったんだ。
君の星の髪飾り、それと同じくらいに輝いていたから」
言われてどきっとして、自分の髪飾りをつい撫でてしまう。それから……。
「ねぇ? 今この首飾り、つけてもいい?」
アスランは微笑んで頷いてくれた。あたしは長い後ろ髪をかき上げて、ネックレスを首にかけたの。
胸元に見える輝くネックレスの宝石。うっとりと眺めた後、彼にお礼を伝えます。
「ありがとアスラン! とっても素敵なネックレス、感激しちゃった♡」
歌姫をしている時のように可愛く笑って、ウィンクしてみせるあたし。
そして嬉しい気持ちのまま、あたしの贈り物もアスランに両手で手渡すの。
「あたしからも……はいっ! どうか受け取ってください」
「ミーアからのバレンタイン……か。ふむ、少し甘い香りがする。──これは」
アスランは受け取ると、少し顔に近づけて匂いを嗅いで確かめます。それから、包みとリボンを丁寧に解いて、中身の箱を開けました。
「──チョコレートか。どれも美味しそうだ」
「そうなのっ♡ バレンタインはチョコレートを送るのも風習みたい。だから……アスランにってあたしが手作りしたのよ」
あたしからのバレンタインプレゼントは、手作りチョコレート。
「作り出したら楽しくなって、幾つも作っちゃった。好きなのを食べてみて?」
箱の中に並んだ、いろんな形のチョコレート。アスランは考えるようにして眺めて、それから一つ手に取ったの。
「なら先にこれを食べてみようかな。それこそ髪飾りと同じ星型のチョコレート……どんな味だろうか」
さっそく一つつまんで、一口。あたしはチョコレートを食べているアスランの口元を、ドキドキして眺めながら。
「味はどう? 美味しい?」
「……ああ。この味はミルクチョコレートか、程よい口溶けとほんわか甘い味がする。ミーアにはパティシエの才能もあるんじゃないか?」
「アスランってば大げさですっ! でもミルクチョコレートは大正解♡ こう言うのも悪くないでしょ?」
彼も美味しそうに食べてくれて、あたしも嬉しい気持ちなの。
「せっかくだからもう一つ食べてみたい。次はどれを……」
「──アスラン」
「うん?」
あたしはアスランを呼び止めたの。そして今度はあたしの方からチョコレートを──大きめのハート型のチョコを片手に、笑って。
「ハッピーバレンタイン、あなた。
チョコを食べるのも素敵だわ。でもチョコレートだけじゃなくて、一緒にあたしも味わって♡」
そして自分の口元にチョコを咥えて、差し出すの。
あたしが今期待していること。アスランも分かってくれて、私に身を寄せて微笑んでくれた。
「こんな時でも甘えん坊だな。……けどそれも悪くない。
俺の方からも、ハッピーバレンタイン──ミーア」
彼はあたしの口元のチョコを反対側から咥えて、ソファーに優しく押し倒してくれる。一緒に一つのチョコレートを食べて、そのままチョコ味の口付けを交わすの。
──それからあたしとアスランがどうしたのか、言う必要はないわね。
一つだけ言うなら二人でバレンタインをたっぷり……思う存分満喫したってこと、かしら。