Fate/kaleid liner knight   作:シャチ猫

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お待たせしました。
第7話です

待たせた挙句、ご都合主義マシマシの話です。

あと、表紙の通りに設定が追加&編集をしました。

それでは、どうぞ!


第7話 飛行/勝利のための特訓

「キィイィィィィイイッ!!」

 

人がすでに寝ているであろう真夜中に人ならざる叫び声が周囲に響きわたっていた。

その叫び声をあげている元を見ると、それはまるで蝶のような見た目の人型の異形の怪物だった。

俺は狼俱をすでに召喚して剛烈剣を構え、上空にいるホラーを鎧越しに睨みつけた。

蝶ホラーは羽を羽ばたかせ赤い鱗粉を出してきた。

 

「ふんっ!!」

 

俺は腕を交差させ思い切り振り抜き、風圧で鱗粉を消し飛ばした。

 

「キィィィイイッ!!」

 

蝶ホラーは鱗粉攻撃が効かないと分かると、今度は額にある触覚を伸ばし頭を振るい俺に向かって周囲にある建物を破壊しながら薙ぎ払ってきた。

薙ぎ払ってきた触覚を大きくジャンプして交わし、そのまま上空に駆け上がった。

蝶ホラーよりも上にいき、俺は参式をいったん消して空いた左手は右手首を掴むように添え後方に引いた状態で、蝶ホラーに向かって急降下した。

 

「はあぁぁぁぁぁッ!!」

 

そのまま蝶ホラーのすれ違いざまに斬り付け、着地した。

 

「キュエェェェェェェッ!!」

 

斬り付けた切口から炎が発生して蝶ホラーはそのまま炎上して黒い霧となり消滅した。

俺は鎧を解除してふぅと一息ついたその時。

 

 

『飛竜 火焔、会得できたな』

 

 

どこからかゾルバの声が聞こえてきた。

 

「ああ。あの英霊相手に飛竜 火焔は使えるからな。早く会得したいと思っていたところだったよ」

 

姿が見えないゾルバに対して俺は答えた。

 

『そろそろ時間だ。戻るぞ』

 

「ああ」

 

俺は目を閉じて意識を集中させた。

再び目を開けるとそこにはさっきまでの建物がなく俺の部屋が広がっていた。

さっき俺がいたのは修行するための精神世界、内なる魔界だ。

ゾルバを介して行くことができ、そこでホラーと戦うことができる。

 

『順調に技の習得してるな。だが、まだまだ習得すべき技はあるぞ』

 

「分かってるよ。まだラスボス級のホラーに勝てないしな」

 

今の俺の実力は下級ホラーなら苦も無く倒せるのだが、魔導ホラーの尊士やリベラなどの幹部ホラーは中々手こずっているし、メシアやレギュレイスなどのラスボス級のホラーに関してはまだ勝てない。

まだまだ実力が全然だな。もっと修行して技を習得していかないと。

 

『もうすぐお嬢ちゃんとの特訓の時間だぞ』

 

「そうだな、行くか」

 

今日はイリヤと飛行訓練を行う予定だ。

俺はゾルバの言葉で立ち上がり出掛ける準備をして、家を出た。

歩いて行きイリヤと約束した林に着くとイリヤがすでに着いていた。

 

「よっ、イリヤ、ルビー」

 

『おはようさん、二人とも』

 

「あっ、大和君、ゾルバさん」

 

『おはようございます、大和さん、ゾルバさん』

 

「すまない、待たせたか?」

 

「ううん、私たちも今来たところだよ」

 

『それじゃあ早速特訓といきますか。じゃあイリヤさんチャチャっと転身しましょう』

 

ルビーはステッキになりイリヤがルビーを掴むと光が放たれ、イリヤは魔法少女の格好になった。

 

『ではまず飛行をマスターしましょうか。今回は完全に空中戦になりそうですし』

 

「とりあえず素早く動けるようにするとか?」

 

『動きも大事ですけどそれより魔力の効率運用ですね。飛行は大量に魔力を消費しますから』

 

ルビー曰く自分たちステッキは契約者に無制限に魔力を供給できるが、使える量は契約者の資質次第だそうだ。

分かりやすく言うと、水道の蛇口だな。ノズルの大きさで出る水の量が決まる感じだ。

 

「つまり少ない魔力で飛行して、かつ攻撃も自在にしなきゃいけないということか」

 

『その通りですね』

 

「じゃあ今日俺はイリヤの攻撃のサポートだな」

 

俺は飛行ができる訳じゃないし、そもそも狼俱を纏ってないと上空に行くことができない。

だから俺にできることはイリヤの攻撃の練習相手になることだな。

イリヤは今の今まで戦闘なんてしたことがないから、少しでも英霊と戦えるようにしないとイリヤ自身が危ない。

 

『そう言えば大和さんは普段どのような修行をなさっているのですか?』

 

俺が考えているとルビーが質問をしてきた。

 

修行方法か………。まあ狼俱の鎧のこと話したしいいか。

 

「俺は内なる魔界っていう精神世界で修行しているんだ」

 

「精神世界!?」

 

イリヤが目をキラキラさせながら驚いた。

 

「ああ、ゾルバを介してそこで技の習得や精度を鍛えているんだ。」

 

俺の説明でイリヤが、おぉぉーっ!と興奮していた。

 

『ほうほう、なるほど。精神世界ですか。本当に何でもアリなんですね、大和さん』

 

ルビーが凜さんと同じようなことを言った。

まあぶっちゃけ、最初俺も精神世界でホラーと戦えると知ったときはルビーや凜さんと同じ思いだった。

 

「それより早く特訓するぞ。今晩リベンジするんだから」

 

「そうだね。あっ、そうだ」

 

イリヤが何か思い出したようにクラスカードを取り出した。

 

「凜さんからこれ預かってきたんだけど、試しに使ってみてもいいかな?」

 

『あらカードですか。いいですよー』

 

なるほど、アイマスク女と戦った時の美遊と同じことを試すのか。

 

「アーチャーっていうくらいだから弓だよね。どんな必殺の武器か……」

 

イリヤは期待しているような顔をしながらクラスカードをルビーにかざした。

 

「えーと…限定展開(インクルード)!」

 

するとルビーが光り輝き、ルビーはイリヤの身長程もある弓に変わった。

 

「ほんとに出た!スゴ!!これがあれば勝てちゃうんじゃない!?」

 

イリヤは弓を見て興奮している様子で、試し射ちをするのか弦を引っ張ていた。

確かに立派な弓だ。だが、肝心なものがなかった。

 

『それで矢もないのにどうやって試し射ちをするんだ?』

 

「え?あっほんとだ。ねぇルビー矢は?」

 

ゾルバの指摘でイリヤは矢がないことに気づき、ルビーに矢の所在を聞いた。

 

『ありませんよ』

 

イリヤの質問にルビーはシレッと答えた。

 

「えぇぇ弓だけ!?全然意味ないよコレ!?」

 

『そういえばこんなんでした。凛さんが試した時は手近にあった黒鍵を矢の代わりにして使ってましたが………』

 

要するに矢は自前で準備するということか。

何とも不便な力だな。

すると、弓はもとのルビーに戻った。

 

「あ!戻った!」

 

『時間切れです』

 

どうやらクラスカードには制限時間があるみたいだ。

 

「はぁ……地道に特訓するしかないね………」

 

「そういうことだな。さて、俺も鎧を召喚するかな」

 

「えっ、だ、大丈夫なの?」

 

俺がそう言うと、イリヤは不安な顔をした。

鎧の制限時間のことを気にしているみたいだな。

 

「大丈夫だよ。今日は特訓のために召喚するから時間を超えることは絶対にないから」

 

俺は不安な顔をしているイリヤに安心させるように言った。

その言葉にイリヤは顔を和らいだ。

 

俺は魔戒剣を掲げて空中に円を描き鎧を召喚した。

 

『改めて見ると風格を感じますね』

 

「うん。それにすごくきれいな鎧だね」

 

狼俱の鎧をまじまじ見てルビーとイリヤは言った。

 

「それじゃあ特訓開始するか。まずは空に行くか」

 

「うん」

 

俺とイリヤは上空に行き向き合った。

 

「じゃあ行くぞ!」

 

「う、うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人称side

「………無理です」

 

「美遊、あなたが飛べないのはその頭の固さのせいですわ」

 

「………不可能です」

 

「最初からそう決めつけていては何も成せません!」

 

「………ッですが…ッ!」

 

大和とイリヤが特訓をしている同じ時刻。

美遊はルヴィアに飛行するために連れられて山の上空にヘリコプターで来ていた。

飛行のために空に来ているというのは分かる。

だが、問題はその内容だった。

それは_____

 

 

 

 

 

『おやめくださいルヴィア様。パラシュートなしでのスカイダイビングなど単なる自殺行為です』

 

「こうでもしないと飛べるようにならないでしょう!身体が浮く感覚を実体験でもって知るのですわ!」

 

「・・・・・・・・・・」

 

ルヴィアが美遊をヘリコプターから飛び降りるよう指示していた。

確かに体が浮く感覚を実際に体験するというのは一理ある。

だが、パラシュートどころか命綱なしの落下などサファイアの言う通りただの自殺行為である。

 

美遊はヘリのドア枠に掴まってガクガクと体が震えていた。

いくら魔法少女に転身しているとはいえ、高高度からの落下はさずがに恐怖しかないだろう。体が震えるのは無理もない。

 

「美遊はなまじ頭が良いから物理常識に捕らわれているんですわ。魔法少女の力は空想の力………。常識を破らねば道は拓けません」

 

『付き合う必要はありません美遊様。拾っていただいた恩があるとはいえ、このような命令は度が過ぎています』

 

ルヴィアのあまりの無茶振りにサファイアは美遊に提言した。

 

「さぁ一歩を踏み出しなさい!あなたなら必ず飛べます!できると信じれば不可能など無いのですわ!」

 

だが、ルヴィアはサファイアの言葉を無視して美遊に飛ぶよう続けた。

美遊は目を閉じて葛藤していた。

だが、やはり恐怖の方が勝ってしまいルヴィアにゆっくり振り返り断ろうとした。

 

「いえ、やはりどう考えても無理でs」

 

美遊の言葉を最後まで聞かずにルヴィアは美遊をヘリから蹴り出した。

 

~~~~~~~~~!!!??!!!

 

蹴り出された美遊は声にならない悲鳴を上げながら、真っ逆さまに落下していった。

 

「獅子は千尋の谷に我が子を突き落とすと言いますわ……見事這い上がってみせなさい美遊……!」

 

ルヴィアは腕を組み涙を浮かべながら言った。

どこまでも自分勝手なルヴィアであった。

 

 

 

 

 

 

 

大和side

「イリヤ、少し落ち着いたか?」

 

「う、うん………大分落ち着いたよ………」

 

『いやー大和さんスパルタですねー』

 

俺達は一旦休憩ということで休んでいる。

俺は鎧を返還しており特に疲れていなくて立ったままの状態だが、イリヤはかなり疲れており女の子座りをして息を整えていた。

 

『それにしても大和さん本当に強いですね』

 

「私の攻撃が全然当たらなかったよ………」

 

『大和は内なる魔界で特訓をしているからな。それにお嬢ちゃんは戦闘なんてしたことがないから当然だ』

 

俺はイリヤが放った魔力弾を剛烈剣で斬り裂いたり、こっちから近づき寸止めだけど剛烈剣で斬ろうとしたりといった特訓をしていた。

 

「でもいい特訓になったろ?いつ俺みたいに剣を使う英霊と戦うか分からないから」

 

『確かにそうですね。それに大和さんとの特訓はより戦闘をしているって感じがしてイリヤさんにもいい刺激になったと思います』

 

「うー、疲れたよ~………」

 

『だが、俺達としてもお嬢ちゃんとの特訓はやって良かったぞ。まさかその状態で鎧に触れることができるなんてな』

 

そう、ゾルバの言ったことがこの特訓で一番の収穫だろう。

それは特訓中のことだった。

イリヤが一度鎧に触ってみたいと言った。俺は危ないからやめろと止めたが、ルビーがステッキの能力でイリヤが魔法少女に転身すると魔術障壁、物理保護、治癒促進、身体能力強化などが常時かけられている状態だから、恐らく大丈夫だろうと言った。

いくら保護されていてもソウルメタルに触れられるか心配だったが、ゾルバが試しに指先だけで触れてみたらどうだと提案した。

俺は渋々ゾルバの提案を受け入れイリヤに触れさせてみた。結果はイリヤにケガはなく鎧に触れても大丈夫だと分かった。

まさかソウルメタルに触れるとは思ってもみなかった。

ちなみに、実際に触ってみたイリヤは暖かい感触だそうだ。

 

さっきまでの特訓のことを振り返っていると、何か聞こえてきた。

それも上の方からだ。

何だ?

見上げると何かこっちに降って来ようとしていた。

 

「あれは……まずい!」

 

よく見ると美遊だった。何で空から降って来るんだよ!?

俺は素早く鎧を召喚して上空へ駆け上がった。

 

「『大和君(さん)!?』」

 

突然の行動にイリヤとルビーが驚いていた。

すまないが、説明はあとでな!

 

 

 

 

 

 

 

美遊side

ヘリコプターから突き落とされて恐怖で身体が動けず、ただ真っ逆さまに地面に衝突するのを待っている状態の私。

 

「(怖いよ……!誰か……!)」

 

目を閉じて心の中で必死に祈った。

すると、今まで感じていた冷たい風や浮遊感がなくなり、代わりに何か暖かいものに抱かれている感覚がした。

 

「大丈夫か?」

 

拡声器を使って喋っているような掠れた声を聞き目を開けると、そこには深緑の狼がいた。

 

「え、あっ、神楽坂?」

 

よく見ると狼俱っていう鎧を纏った神楽坂だった。

 

「大和でいいぞ。それより何で空から降ってきたんだ?」

 

「えっと、ルヴィアさんが飛行するために身体が浮く感覚を実際に体験しろって言われて。それで、突き落とされちゃって」

 

神楽坂……いや、大和が何で私が落下するか質問をしたので答えた。

 

「だからって何の装備もなしに?無茶苦茶だなあの人」

 

『何を考えてんだ。あの縦ロールは』

 

大和と大和の腕に付いているブレスレットのゾルバがルヴィアさんに対して呆れていた。

 

「まあでも地面に激突する前で良かったよ」

 

『大和様、ありがとうございます。全魔力を物理保護に変換しても不安でした。本当にありがとうございます』

 

サファイアが安堵したように大和に感謝の言葉を伝えた。

私まだお礼言っていなかった。

 

「ありがとう………や、大和」

 

「ああ、どういたしまして」

 

鎧で素顔は分からないけど、何だか眼差しが暖かく感じ顔が熱くなった。

それに私は今大和にお姫様抱っこされている状態だから余計熱くなってしまう。

 

……って、ちょっと待って。

 

「なんで私鎧に触っているのに無事なの?」

 

『はっ、そう言えばそうでした』

 

確か鎧に直接触ると皮膚が貫かれるって言っていたけど、なぜ?

 

『イリヤのお嬢ちゃんもそうだが、魔法少女の状態だと鎧に触れても平気みたいだ』

 

ゾルバが私の疑問に答えてくれた。

この状態だと鎧に触れるんだ。ちょっと驚いた。

 

「大和君いきなりどうしたのって、美遊さん!?なんで!?」

 

すると、私と大和の所にイリヤスフィールが飛行してきた。

 

「………飛んでる」

 

『はい、ごく自然に飛んでいらっしゃいます』

 

私のできない飛行をやってのけいているイリヤスフィールに愕然とした。

 

「話は降りてからでいいか?このままだと落ち着いて話ができないからさ」

 

「そ、そうだね。大和君も鎧を取らないとまずいし」

 

それから私、大和、イリヤスフィールは地面に降りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大和side

何とか間に合って良かった。

魔法少女の状態だったのが不幸中の幸いだったな。そうじゃなかったら鎧で助けられなかった。

美遊が無事だと分かり俺は胸をなでおろし、美遊を抱いたまま地面に降り立った。

 

「立てるか?」

 

「うん」

 

美遊を地面に降ろして、鎧を解除した。

 

「それで何で美遊さんが空から来たの?」

 

『もしかして飛行訓練ですか?』

 

ルビーの言葉に美遊がぎこちなく頷いた。

その後美遊はイリヤに何か言いたげそうにしていたが、言いづらそうにしていた。

たぶん飛び方を教えてほしいって言いたいんだろう。

 

『(公園で戦わなくていいって言った手前だからな。中々言えないだろう)』

 

確かにな。あれだけ啖呵を切ったのに教えを乞うのはかなりきついだろう。

 

「あの、良かったら一緒に練習しない?」

 

すると、イリヤが少し照れた表情で美遊に言った。

 

「空が飛べなくちゃ戦えないもんね。だから一緒に、ね?」

 

イリヤの誘いに美遊は躊躇っていた。

 

『美遊様』

 

サファイアが後押しするように美遊に言った。

美遊は意を決したように少し俯いていた顔を上げて、恥ずかしそうに言った。

 

「その………教えて欲しい…飛び方……」

 

「うん!」

 

美遊の言葉をイリヤは笑顔で了承した。

2人の様子に俺は笑みがこぼれた。

これで少しは2人の仲が進展したかな?

 

その後飛行訓練を行うのだが、これが中々うまくいかなかった。

イリヤは飛行しながら教えているのだが、美遊はやってみるが飛ぶことができずその場でジャンプだけだったり、転んだりするだけだった。

 

「本当にどうすれば………」

 

美遊は悔しそうに言った。

 

「ごめんね、美遊さん。私あんまり教え方うまくなくて………」

 

『いえ、イリヤ様の教え方というよりも、やはり美遊様の飛行イメージに根本的な問題があるように思います』

 

イリヤが申し訳なさそうに謝ったが、サファイアがイリヤをフォローするように言った。

 

美遊は【人=飛べない】という考えだから、イリヤのように飛行するイメージができていないから飛ぶことができていない。

対して、イリヤは【魔法少女=飛べる】という思い込み、つまり飛ぶイメージが最初からできており、なおかつそれを感覚でやってのけている状態だ。

考え方ひとつで、こうも違うとはな。

魔法は奥が深いな。

 

『昨晩イリヤ様は〈魔法少女は飛ぶもの〉とおっしゃいました。そのイメージの元となった何かがあるのでは?』

 

なるほど、美遊にイリヤのイメージの元を知れば飛ぶことができるかもしれないということか。

すると、イリヤはなにか気まずそうな恥ずかしそうな表情をした。

 

「元?あーーーー……それなら……」

 

 

 

 

 

 

〔雲の中に逃げても無駄だ!この空で散れ!!〕

 

「こ・・・これ・・・?」

 

「う…うん。私の魔法少女イメージの大本……の一つかな。恥ずかしながら………」

 

あれから俺たちはイリヤのイメージの元を知るために衛宮邸に来た。

そこで魔法少女物のアニメを見ていた。そのアニメこそがイリヤのイメージの元であった。

そのアニメを美遊は正座しながら愕然とした顔で見ていた。

 

『確かにこれを見れば魔法少女=飛ぶっていう発想になるな』

 

ゾルバの言う通り、魔法少女物のアニメを見てればイメージがしやすいかもな。

 

「航空力学はおろか重力も慣性も作用反作用すらも無視したデタラメな動き・・・」

 

「いやー、そこはアニメなんで固く考えずに見てほしいんだけど………」

 

目を大きく見開き食い入るように見ながら、小難しいこと呟く美遊。

アニメでそんな感想が出るなんて、美遊が初めてなんじゃないか?

 

『実体験に依らないフィクションからのイメージのみとは思いもよりませんでした』

 

『イリヤさんの空想力はなかなかのものですよー』

 

「・・・褒めてるの?」

 

イリヤがジト目でルビーを見た。

 

『空想というか妄想というか、夢見がちなお年頃の少女は現実と非現実の境界が曖昧になりがちですから』

 

「・・・褒めてないよね」

 

「ルビーの言っていることは置いといて、このアニメのおかげで飛べることできるから結果オーライだろ」

 

ルビーの発言で落ち込んでいるイリヤをなだめていると、美遊は見終わったようだ。

 

『このアニメを全部見れば美遊様も飛べるようになるのでしょうか』

 

「ううん…多分、無理」

 

美遊は俯きながらブツブツと呟き始めた。

 

「これを見ても飛んでる原理が分からない。具体的な飛行イメージには繋がらない。必要なのは揚力ではなく浮力だってことまでは分かる・・・けどそれだけではただ浮くだけだから移動するにはさらに別の力を加えるか重力ベクトルを制御するしかないんだけど・・・でもそんなことあまりに非現実的すぎてとてもじゃないけどイメージなんて・・・」

 

「ああああああのっ………!」

 

専門的な言葉を早口で話している美遊にイリヤは頭を抱え出した。

今の美遊はちょっと怖いな。

 

『ルビーデコピン!』

 

「はフッ!?」

 

そんな美遊にルビーは羽の部分で美遊のおでこにデコピンをした。

 

「な、何を………?」

 

『姉さん?』

 

『全くもー。美遊さんは基本性能は素晴らしいみたいですが、そんなコチコチな頭では魔法少女は務まりませんよー』

 

ルビーは溜息交じりに言い、羽でイリヤのことを指した。

 

『イリヤさんを見てください!理屈や行程をすっ飛ばして結果だけをイメージする!そのくらい能天気で即物的な思考の方が魔法少女に向いているんです!』

 

「何かさっきから酷い言われようなんだけど!?」

 

『つまりお嬢ちゃんは何も考えていない頭空っぽってことか』

 

「ゾルバさんも酷いよ!これでも学校の成績はかなり良い方なんだからね!」

 

ルビーもゾルバも言いたい放題だな。

 

『そうですね…美遊さんにはこの言葉を送りましょう』

 

『≪人が空想できること全ては起こり得る魔法事象≫私たちの創造主たる魔法使いの言葉です』

 

「…物理事象じゃなくて?」

 

『同じことです。現代では実現できないような空想も遠い未来では常識的な事象なのかもしれません。それを魔法と呼ぶか物理と呼ぶかの違いです』

 

「まあ……つまりアレでしょ?」

 

Don’t think!(考えるな!)Imagine!(空想しろ!)…ってうわー…すごく納得いかないって顔ですね…」

 

イリヤの言葉を聞いて美遊はげんなりした表情をした。

まあ、すぐに考え方を変えられるわけないか。

 

「…そう。あまり参考にはならなかったけど…少しは考え方が分かった気がする」

 

そう言いながら美遊は立ち上がりリビングから出て行こうとした。

 

「あ、帰るの?」

 

「うん。また…今夜」

 

美遊は顔をこちらに向けずそう言い残してリビングを後にした。

 

『行っちゃいましたね』

 

「また今夜……か。あなたは戦うなって言われた昨日よりだいぶ前進したかな?」

 

『あとはお二人でキチンと連携が取れれば言う事なしなんですがー…』

 

連携か………。よし。

 

「さて、俺も帰って準備するかな。じゃあ、イリヤまた後でな」

 

「うん、またね」

 

俺はイリヤにそう言って衛宮邸を後にした。

外に出ると、美遊がちょうど門を開けようとしていた。

俺は美遊に近づいて話かけた。

 

「美遊、ちょっといいかな?」

 

「………何?」

 

美遊は開けるのを止めて、こっちに振り向いた。

 

「実はさ、昨日公園で美遊とイリヤの会話聞こえちゃってさ」

 

「………そう」

 

俺の言葉に美遊は静かに反応した。

 

「今更だけどさ、イリヤのこと悪く思わないでやってくれ。イリヤは今の今まで魔法なんてフィクションだけの世界にしかないと思っていたから、どうしてもあんな風に考えちゃうんだ」

 

「………私も昨日の今日で言えたことじゃないから、イリヤスフィールには悪いことしたと思ってる」

 

とりあえず美遊はイリヤに対しては悪い印象はないみたいだな。

ひとまず安心した。

 

「ねぇ、あなたはどうして戦うの?」

 

美遊が昨日イリヤにした質問をしてきた。

 

「そうだな………。剣と鎧に誓うためかな」

 

「誓う?」

 

「ああ。この剣と鎧で大切な人を守る。そう誓っているんだ」

 

俺は鞘に収まっている魔戒剣を出し、美遊の目を真っ直ぐに見据えた。

偶然魔戒騎士の力をもってしまった。だからせめて、その力に恥じない生き方をしようと心に決めていた。

 

「だから、戦うんだ。イリヤと美遊を守るために」

 

「………私も?」

 

美遊は少し怪訝な表情をした。

 

「美遊は戦える技量があるから、美遊にとっては余計なお世話かもしれないけどさ。イリヤや美遊みたいな可愛い女の子が戦っているのに何もしないのは男が廃るだろ。だから美遊も守りたいんだ」

 

俺がそう言うと美遊は分かったと言いながら後ろを向いた。

 

「………ありがとう、大和」

 

「おう。じゃあ、また後でな」

 

美遊は門を開けて豪邸の中に入って行った。

 

『なにかっこつけてんだ、お前は』

 

「いいだろ。俺だって男なんだから、かっこつけたって」

 

とは言ってもキザな言い方だったかな。

自分で言っといて何だが、恥ずかしくなってきた。

そんなことを思いながら、家に帰って行った。

 

 

 

 

 

 

美遊side

『大和様はかなりの覚悟をお持ちのようですね。さすがあの危険な鎧を身に纏うだけのことはありますねって、美遊様どうなさいました?』

 

「(私のこと可愛いって言ってくれた。可愛いって………)」

 

大和の言葉に私は顔を真っ赤になってしまった。

そのあとも大和の言葉で頭の中がいっぱいになり、サファイヤやルヴィアさんの言葉が耳に入ってこなかった。

 




いかがだったでしょうか。

魔法少女の保護ならソウルメタルは触れられると思い、意を決して書きました。

今回の話を作るうえで、牙狼本編でソウルメタルに触れているシーンを調べました。
大体が素手で触るとやけどするような描写なんですが、≪牙狼 MAKAISENKI≫の第14話で鋼牙が破狼に直接触れているシーンがあるのですが、アレって魔戒騎士なら大丈夫ってことなんですかね?

あと、内なる魔界での修行相手をホラーや暗黒騎士と敵役だけにしました。
理由は本編を見ててホラーを倒せる=魔戒騎士の強さなのではと思い変更しました。

不快に思った方は、大変申し訳ございません。


さらに余談ですが、ハガネを継ぐ者、最高に面白かったです!
流牙と創磨の閃光剣舞を放つシーンは格好良かったです!
本作の主人公も流牙並みの強さにしていきたいなと思いました。
まあ多分大分先になると思いますが………

それでは、また次回!
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