幻想黒狐伝   作:赤狐イナリ

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兄と妹

「ダークヒーローね……」

 

初めて聞いた時は小説の一節なのではと感じた。

依頼を受けて人を躊躇もなく殺すなど、正に必殺仕事人の部類ではないか。

 

「果たしてこれが『必要悪』となるかどうか、見物ね。」

 

もしも脅威となるようであれば、その時は容赦なく――――

 

 

○

 

 

「大勢の人から恨まれるなんて、何をしでかしたらそうなるんだか。」

 

当然生きていれば恨みを買うことの一人や二人はあっても仕方がない。

しかし大勢の人間から恨まれるということは相当な悪行を重ねたのか、

はたまた人の反感を知らず知らずの内に買ってしまっていたのか。

 

「気を付けた方がいいぞ、お前もいつかは他の狐共から反感を買って殺されることがあるかもしれない。」

「そうしたらお前が守ってくれるだろう?……兄(・)さ(・)ん(・)。」

 

自分の身は自分で守るのが一番だ。

守りきれなければ兄が守ってやる。

……できるだけ。

 

「藍しゃま〜今戻りましt」

 

2尾の猫の尻尾。

藍の式神の橙(ちぇん)と言ったか?

 

「ら、藍様…藍様の前に居られる方はもしかして……」

「私の兄だ。」

 

それを聞いて更に縮こまる橙。

何と言うか……カワイイ。

 

「そんなに縮こまらなくても良いんだぞ?」

 

実際一度だけボコボコ(手加減なしの弾幕ごっこ)にしたことはある。

こんな縮こまられるようなことをした覚えなどない。

 

「お前が式を扱うようになるとは……」

「なんか嬉しくない。」

 

それを言われると少し傷つく。

こう見えてもかなり繊細だったりもする。

 

「それで…………徳利密かに盗むのやめてくれませんか?紫様。」

「失礼、いつもの癖で。」

「いつもの癖で徳利盗む人がどこにいるんですか。」

 

会話をしている時から薄々気になってはいた。

どことなくいつもより幻想郷の気配が違う。

そしてスキマから漂う異様な気配を前にして思わず反射的にナイフを突きつけた。

 

――――紫の首筋に。

 

「……一体何をした。」

「スキマから見えなかったかしら?それに貴方ならもうこの異様さの元凶くらい分かるでしょう?」

 

悪趣味な。

 

「今回は殺さず、捕獲もナシで頼むわ、後はさっきも言ったように人や妖怪を無闇に殺さない(幻想郷のルール)ようやってくれればこっちからは特に何も言わないわ。」

「そうか、分かった。」

 

スキマから飛び出す。

 

「一体どういつ育て方をしたらこんな暗殺に対してずば抜けた才能を持つ狐が育つのかしら……」

 

一度でいいから神様とやらに訊いてみたいものだ。

できるなら稲荷大神か宇迦之御魂神がいい。




藍様は黒狐を呼ぶ時は『兄さん』呼びがいいのか『兄貴』呼びがいいのか……
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