ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作3巻編 その③特別試験、1日目

 

 —— 1日目、昼。川沿いのスポット ——

 

 

「どうだ!?  この川、スポットもあるぜ! ここを拠点にしたらいいんじゃないか!」

「ははは! そう褒めんな、褒めんな」

 

 浜辺での話し合いの後、Dクラスは拠点を探し回る組と、荷物を運ぶ組に別れて森に入った。

 

 小1時間ほど経ってから、拠点を探し回るチームの池君からの拠点発見の報告を受け、荷物チームもそこに合流した。

 

  池君達が見つけたのは、川沿いにあるスポットだった。

 

 ここを拠点にすれば水には困らないし、暑さも少しは軽減されるだろう。

 拠点としては最高のスポットだと思う。

 

「じゃあ、このスポットを僕達の拠点としよう。まずは茶柱先生に報告をしないとね。あ、誰か行ってくれる人はいるかな? 僕はここでテントとかの設置をしたいから残りたいんだ」

 

 平田君がクラスメイトにそう声をかけたので、俺は真っ先に手を上げた。

 

「あ、じゃあ俺行ってくるよ! ついでに姉妹校の2人も連れて行ってもいいかな? この2人は中学の友達だから、少し懐かしい話をしたいんだ」

「わかった。じゃあ、沢田くんと獄寺君とクロームさんにお願いするよ。あ、ついでにさっき決めた備品を先生に申請してきてくれるかな」

「ありがとう、じゃあ行ってくるよ」

 

 そして、俺は獄寺君とクロームを連れてDクラスの皆から離れた。

 

「さすが10代目です! 上手い事3人になる機会を作りましたね!」

「何か話があるの? ボス」

 

 関心している獄寺君とクローム。

 

「うん。最初に2人と話しておきたかったんだ」

 

 教師用施設に向けて歩きながら、2人と話をしよう。

 志願したのもその為だ。

 

「まずさ、山本を含めた3人以外の Otto talenti のメンバーの事を教えて欲しいんだ」

「あ。そうですよね! 部下の特性を知らない事には、命令がし辛いですよね!」

 

 獄寺君は申し訳なさそうな顔をしながら、見知らぬ6名についての説明を始めた。

 

「まずはAクラス。Aクラスに配属されたのは、ドナート・マッキナという男子と、アルロ・ゼローニという女子です」

 

 【ドナート・マッキナ】

  姉妹校のDクラス所属のメカニック志望。

 メカやシステム・プログラムに対する好奇心が旺盛で、初めて見る機械やプログラムでも、5分程性能を調べるだけでその全貌を理解でき、複製・再現はもちろん、元の物よりも高性能な物へ昇華させる事ができる。

 1年のメカニック志望の中で最もボンゴレ本部に期待されているメカニックの卵である。

 

【アルロ・ゼロー二】

 姉妹校Dクラス所属の武器チューナー志望。

 武器、というか軍事オタクで、戦争兵器、無線通信などが大好き。

 その好きが高じて、兵器や無線機などの製造やカスタムなどがとても得意。

 そして武器チューナー志望の女性には珍しく、自らがカスタムした兵器で戦場に出たがるという、前線が好きなタイプでもある。

 入学してすぐ、訓練で使う銃火器をカスタムして、銃火器の扱いの訓練において圧倒的な成績を残した。

 

「......Aクラスの2名は、こんなとこっすね」

「なるほど。……じゃあBクラスのもう1人は?」

「はい! Bクラスのもう1人は、ビアンカ・セラートという女子です」

 

【ビアンカ・セラート】

 姉妹校Cクラス所属の諜報員志望。

 声をどんな年齢の声にでも性別関係なく適応させることができ、変装をすればほぼ見破られることはない。

 そして観察眼に優れており、対象の仕草や癖などを見抜いて完璧に再現する事もできる。

 その特性により、将来有望なスパイだとボンゴレ本部からも高評価を得ている。

 

「へ~、いろんな人がいるんだね」

 

 続いて、Cクラスの2名について聞こうとすると、獄寺君ではなくクロームが口を開いた。

 

「……Cクラスの2人は」

「あ!? 説明なら俺がしてんだろ!」

「ダメ。私も説明したい。それでね、ボス。Cクラスに配属されたのは、レオナルド・サペーレという男子と、カルメン・セグレートという女子だよ」

 

【レオナルド・サベーレ】

 姉妹校Dクラス所属の情報屋志望。

 整った容姿をしており、人身掌握術に長けている。さらに自分の周囲を俯瞰して見る能力を持ち、視力や聴力も常人よりも遥かにいい。

 それらを駆使して目的の集団に潜入し、あっという間にその潜入先の内情を暴き出してしまう。

 姉妹校入学前から、他ファミリーに単発で雇われることもあった為、即戦力だという評価を本部から受けている。

 

【カルメン・セグレート】

 姉妹校Bクラス所属の暗殺者志望。

 小柄で柔軟、そして俊敏な身体を駆使し、相手に気配を悟らせずに接近することが可能。

 武器としている刃物の扱いがまだ未熟な為、アサシンとしてはまだまだだが、持っている柔軟な身体やその俊敏な動きは、プロのアサシンに引けを取らないほど高レベル。

 暗殺術などを学べば伸び代は計り知れないという事で、Otto talenti に抜擢された。

 

「——こんな感じかな」

「そっか。ありがとう、クローム」

「……俺も説明できたのに」

 

 少し落ち込んでいる獄寺君を励ましながら、別の質問を投げかける。

 

「獄寺君、他の Otto talenti のメンバーとはどうやって連絡を取るの?」

 

獄寺君は急に元気を取り戻し、腕にはめた俺達のつけているものと同じ腕時計を見せてきた。

 

「これです! Otto talenti の腕時計には、通信機能が付けられてるんですよ。で、Dクラス配属の俺が、10代目と他のメンバーを繋げる役割を与えられたんです!」

「そ、そうなんだね。わかったよ」

「あ、早速何か指示出してみます?」

「ん~、そうだなあ。じゃあ——」

 

 俺は Ottotalenti のメンバー全員に、とある命令を出すように獄寺君にお願いした。

 

「あ、ボス。あそこじゃない?」

「ん? あ、本当だ」

 

  獄寺君が他のメンバーに連絡をし始めた時、クロームが少し先にある大きめのテントを発見した。

 きっとあそこが教師用施設だろう。

 

 獄寺君に連絡しながら待っておいてと伝え、クロームと2人で教師用施設へ向かった。

 

 

 —— 1日日、昼。教師用施設 ——

 

 

「沢田か。拠点が決まったのか?」

「はい。そうなんです」

「どこだ?」

「森の中の、そばに川が流れているスポットです」

 

 茶柱先生はパソコンを操作し、Dクラスの拠点を登録していく。

 

「川、と。——よし、わかった。ここをDクラスの拠点として登録しておく」

「ありがとうございます。あと、購入したい備品があるんですけど」

「そうか。どれだ?」

 

 預かってきたマニュアルを見せながら、皆で決めた購入する備品を説明した。

 

「よし、分かった。量が多いから何名かで取りに来い」

「分かりました。あ、先生。1つ聞きたい事があるんですが」

 

 クラスの用件ついでに、ルール説明から感じていた疑問を解消しておきたかった。

 

「なんだ?」

「あの、——ですか?」

「! ——だ」

「わかりました。では」

 

 茶柱先生に一礼して、教師用施設から離れる。そのまま連絡を取り終えた獄寺君と合流して、Dクラスの拠点へと帰った。

 

 

 

 —— 1日目、昼。Dクラス拠点 ——

 

 

「あ、おかえり沢田君」

「ただいま。拠点の登録と、備品の申請出してきたよ」

「ありがとう。備品は取りに行かないといけないんだよね?」

「うん。数が多いから、何人かで取りに来いって」

「そっか。僕達は食糧調達に出ようとしてたんだけど、そういう事なら備品を受け取るグループと、食糧調達のグループに別れようか」

 

 平田君の提案で、備品の運搬と食糧調達で別れる事になった。

 

 運搬チームは男子でジャンケンをして決める事になり、その結果、俺・綾小路君・高円寺君と女子数名が食糧調達チーム。残りの男子が運搬チームに決まった。

 

 獄寺君が不服そうにしてたけど、他の男子と交流するのも大事だと言って我慢させた。

 

 先に運搬チームが出発した後、食糧調達チームでグループ分けを行ない、俺は綾小路君、佐倉さん、高円寺君と同じグループに決まった。

 

「……じゃあ、行くか」

「うん、行こうか」

「は、はいっ」

「はっはっは! 美しい自然と戯れる美しい私! なんと美しい組み合わせなんだろうか!」

『……』

 

 1人テンションが違う高円寺君を先頭に、俺達は食糧となる物を探しに森に入って行った。

 

 

 

 —— 1日目、昼。森の中 ——

 

 

「はっはっはっは!」

 

 森に入ってすぐ、高円寺君は木に上った。

 

 一体何をする気だ? なんて思ってたら、高円寺君は木の幹と幹を、まるでターザンの様に渡り始めたのだ。それも、普通に地面を走ってる俺達よりも速く。

 

「……高円寺、あいつ本当に人間か?」

「いや、きっと新人類だよ」

「はぁ、はぁ。——あはは、2人共何言ってるの?」

 

 高円寺君とはぐれない様に、彼のスピードに合わせてこっちも森の中を走っている。

 

 俺と綾小路君はそこまでバテてはいないが、佐倉さんは息も絶え絶えの状態だ。

 

(……さすがに止めた方がいいよな)

 

 俺は高円寺君にペースを遅くする様に頼む事にした。

 

 「高円寺君! もう少しペースを落としてくれない? はぐれると危ないし!」

 

 俺の声が聞こえたのか、高円寺君は木の幹に止まった。そして、全く疲れていなさそうな様子でこちらに振り向いた。

 

「心配ない。この程度の森なら迷う心配はないさ。日が沈むまでに、森を抜けることが可能だからねぇ」

「え? なんで分かるの?」

「ははは! それくらい自分で考えたまえ、シーチキンボーイ」

「シ、シーチキンボーイ!?」

「ツナ、だからだな」

「あはは……」

 

 高円寺君に変なあだ名を付けられて愕然としていると、高円寺君は突然木から飛び降りてきた。

 

 ……高円寺君、この森で迷う心配はないって断言したな。

 きっとこの島に人間の手が加えられている事に、高円寺君は気づいているんだろう。

 

 俺達の少し先に着地した高円寺君は、俺達に向かってゆっくりと近づいて来る。その顔はいつも通りの自信満々な表情ではなく、どこか楽し気な顔に感じる。

 

 ……高円寺君は、この試験が楽しいのだろうか。

 

 そして、高円寺君は俺の目の前で仁王立ちになる。高円寺君の方が背が高いので、俺が見下ろされる形だ。

 

「高円寺君、歩いて進んでくれるの? ありが——」

 

 高円寺君が俺達に合わせてくれる気になったのかと思い、彼に礼を言おうとしたその時。

 

 高円寺君は、下げようとした俺の頭を目掛けて、高速の蹴りを放ってきたのだ!

 

「なっ?」

「ふっ!」

 

 ——ドゴン。

 

 なんとかぎりぎりで両腕でガードすることができたので、顔面に直撃することは避けられた。

 

 が、衝撃はモロに受けてしまっているので、俺は2メートル程後方に後退させられてしまった。

 

(いってぇ~。死ぬ気状態じゃないけど、なんとかガードが間に合ってよかった。……にしても、なんて威力の蹴りだよ!)

 

 地面には、踏ん張っていた足の引きづられた跡がくっきりと残っている。

 

 俺にガードされてしまった高円寺君は、なぜか高笑いをしだした。

 

「あっはっはっは!」

「……何がおかしいのさ」

 

 同じクラスなのに、急に攻撃して来た高円寺君。俺はなぜ彼が笑っているのか理解できなかった。

 

 そんな俺に、高円寺君は楽しげな表情のまま口を開いた。

 

「私の本気の蹴りを受け止めるとは——いやはや、きちんとトレーニングを積んでいる様で嬉しいよ。シーチキンボーイ」

「何でいきなり蹴ってきたの?」

「いやぁ、すまない。どうしても君の力を確かめてみたくてねぇ」

「俺の力? なんでそんな必要があるんだよ」

「ふっ、それも自分で考える事さ」

 

 そう言い終えると、高円寺君は再び木に登って行った。そして木の幹で止まると、俺達を見下ろしながらウインクをしてきた。

 

「諸君、私はこの島を探検してくる! 食糧探しは君達で行ってくれたまえ、では、アデュー★」

「ちょっ!? 高円寺君!」

「……もう見えなくなったな」

 

 突然の1人行動宣言。普段から自由人だと思っていたけど、試験でも自由でいるとは思わなかった。

 

 追いかける間も無く見えなくなってしまったし、今から追いかけるのも、佐倉さんには厳しいだろう。 

 

「......しょうがない、3人で行くしかないね」

「だな。後で堀北にでも叱ってもらおう」

「あはは。堀北さんでも、高円寺君には効かないんじゃないかなぁ」

 

 短いため息を吐き、俺達は3人で森を進み始めた。

 

 

 ~森の出口~

 

 しばらく森を進んでいると、意外とすぐに森を抜け出す事ができた。そこは森を切り開いて作られた原っぱの様で、少し先に洞窟が見える。

 

「意外とすぐに抜けられたね」

「はあっ、はぁ、うん」

「高円寺が森で迷う事はないって言ってたのは、この事を知っていたからかもな……ん?」

 

 綾小路君は、洞窟の入り口を目を凝らして観察し出した。そして、何かに気づいたのか急に森の茂みに隠れた。

 

「2人共、隠れろ。誰かが洞窟から出てくるぞ」

「えっ! わかった、佐倉さんもこっちに来て!」

「えっ? ええええっ!」

 

 佐倉さんの手を引っ張って、茂みに一緒に隠れる。

 

 隠れてから3秒程すると、綾小路君の言う通り、洞窟の中から2名の男子が出て来た。

 

「ふうっ! ひとまず良さげなスポットを抑えられて良かったですね、葛城さん!」

「……そうだな、弥彦」

 

 葛城、弥彦と呼びあう2名。葛城と呼ばれたスキンヘッドの男は、話しながらも周囲を見回しながら警戒をしているようだ。

 

(……スポットって、言ってたね)

(あの洞窟がスポットだったんだろうな)

(……2名しかいないのに、スポットを押さえたって言っているということは)

(ああ。2人のどっちかが、あのクラスのリーダーってことだな)

(あ、綾小路君、スキンヘッドの人の手を見て!)

(ん?)

 

 スキンヘッドの男子こと葛城君は、右手にキーカードを持っていた。

 

(……キーカードだな。ということは、あいつがリーダーって事か?)

(どうだろう。あの2人ってどのクラスかな?)

(確か、Aクラスだな)

 

 あの2人はAクラス。ならば、カードを持っている葛城君がAクラスのリーダーって事か?

 いや、早合点はいけないな。

 

 さっきの会話からして、弥彦という男子が葛城君に従ってるのは間違いないと思うんだけど。

 別にこの試験のリーダーとクラスのリーダーって関係ないはずだし。

 

(……なんでだろう。なんか引っかかるんだよなぁ)

 

 心の中にあるひっかかかりについて考え込んでいると、Aクラスの2人はどこかに去って行った。

 

「……一応、本当にスポットがあるか調べておくか」

「そうだね。佐倉さん、行こうか。……佐倉さん?」

 

 茂みから立ち上がって、佐倉さんに声をかけると、佐倉さんからの返事がなかった。

 

 どうしたのかと佐倉さんの方を見て見ると、顔を真っ赤にして動けなくなっていた!

 

「ふみゅぅぅ……」

「佐倉さん!? どうしたの!? 具合悪いの?」

 

 体調不良になってしまったのかと心配していると、綾小路君が俺の肩に手を置いた。

 

「沢田、まずは手を離してやれ。それが原因だ」

「えっ、手? ……あ」

 

 綾小路君に言われ、自分の手を見てみると、俺の右手と佐倉さんの右手が繋がれたままだった。

 

(あ、佐倉さんを引っ張った後、そのまま手を離さなかったんだ……)

 

 慌てて手を離して、佐倉さんに謝る。

 

「ご、ごめん佐倉さん! あの2人を見るのに夢中で!」

「ぜ、全然大丈夫だよ? す、少し恥ずかしかっただけだから」

「そ、そう? 本当ごめんね」

 

 顔はまだ赤かったけど、具合が悪いわけではなさそうなのでもう一度謝った。

 

 少し佐倉さんを落ち着かせる時間を取って、俺達は洞窟内に侵入した。

 

 洞窟内には何かの機械が設置されている。その機械にはデイスプレイが付いていて、そこに「Aクラス占有スポット』と表示されている。

 

「……やっぱり、占有してたみたいだな」

「うん。ということは、俺達がここにいるのはまずいよね」

「そうだな。早いとこ出るか」

 

 Aクラスの占有を確認した俺達は、そさくさと洞窟から出た。

 

「これからどうする? 別の道に行って食糧を探す?」

「いや、一度拠点に戻って、平田に報告した方がいいんじゃないか?」

「わ、私もその方がいいと思う」

「そうだね。じゃあ拠点に戻ろうか」

 

 俺達は、来た道を戻って拠点に帰ることにした。洞窟に出るまではほぼ一本道だったから、迷うことはないだろう。

 

 ——しかしその道中。急に綾小路君が足を止めて俯いた。

 

「……」

「綾小路君、どうしたの?」

「具合でも悪くなったんですか?」

「……」

 

 佐倉さんと2人で話しかけるも、綾小路君は無言のままだ。どうしようかと考えていると、綾小路君は俯いたままゆっくりと口を開いた。

 

「……沢田」

「! どうしたの?」

「お前、この試験にどういう姿勢で望む?」

「え? ……終了時点のポイントを、4クラスの中でトップにするつもりだけど」

「——そうか」

 

 綾小路君は顔を上げて俺の顔を見た。俺を見る綾小路君の表情は、どことなくいつもと違う気がした。

 

 綾小路君は一歩前に出ると、さらに続けた。

 

「……沢田。今回の特別試験、俺はお前のサポートをしない事にする」

「え!? ど、どうして?」

「えっ? えっ?」

 

 突然の綾小路君の宣言に、俺も佐倉さんも戸惑うことしかできない。

 

「心配するな、Dクラスを勝たせたいのは俺も同じだからな」

「なら、尚更どうして? 目的は同じなのに」

「それは……俺のワガママだ」

「ワガママ?」

「ああ、俺はこの試験で確かめたい。俺とお前の何が違うのかを」

「……どういう意味?」

「俺は前から疑問だったんだよ。お前の、他人の事を第一に考えて行動する所がな。目的を果たしたいのなら、自分の事を第一に考えるべきだ」

「……急に何を言い出すんだよ」

 

 理解できなくてそう聞き返すと、綾小路君の目の色が消えた。

 そして、今まで見た事ないくらいに冷たい表情になった。

 

「——俺には、お前の考え方が理解できない。いや、理解したくないのかもな」

「!  な、なんで? これまでは俺のサポートをしてくれてたじゃないか!」

「それは、お前のやり方に興味があったからだ。DクラスをAクラスにするって無茶な目標を掲げてるくせに、友達とかクラスメイトとかを1番大事にしている、お前のやり方がな」

 

 冷たい表情で、俺の事を否定しようとする綾小路君。

 

 ……どうして、急にそんな事を言い始めたんだろう。

 

「そんな。綾小路君は、俺の考え方に反対だったの?」

「分からん。それもこの試験で確かめたいんだよ」

「……」

 

 悲しい気持ちでいっぱいになり、しばらく無言になってしまう。そんな俺を無視して、綾小路君は話を続けた。

 

「勝敗の決め方は簡単だ。Dクラスがトップになれた要因を作った方の勝ちだ」

「……要因?」

「そうだ。結果発表後、お互いにどんな仕掛けを施したのかを教え合う。それでどちらの仕掛けが、Dクラスのポイント獲得に貢献しているのかを決めるんだ」

 

 勝負? そんな勝負に意味なんてあるのだろうか。

 

 でも、綾小路君は本気のようだ。止めようとしても無駄だろう。

 

「……俺が勝ったら、どうなるの?」

「今まで通り、お前のサポートをしてやる」

「君が勝ったら?」

「……そうだな。逆にお前に、俺のサポートをしてもらおうか」

 

 俺のやり方より自分のやり方が優れているなら、自分のやり方でAクラスを目指すってことか?

 

 でも、綾小路君は別にAクラスを目指しているわけではなかったはずなのに。

 

 ——何かあったのか?

 いや、今考えても仕方ない。

 今は彼の思いを受け止めるしかないか。

 

「……わかったよ。それが君の望みなら、受けて立つ」

「……よし」

 

 俺が頷いて見せると、綾小路君は1人でズンズンと森の中を進んで行ってしまった

 

 残された俺と佐倉さん。佐倉さんは心配そうに俺の顔を見つめている。

 

「……さ、沢田君?大丈夫?」

「……うん、大丈夫だよ。俺達も拠点に戻ろうか」

「うん……」

 

 不安げな佐倉さんに悟られないよう、なるべく気丈に振る舞いながら拠点へと戻った。

 

 

 

 —— 1日日夕方、拠点 ——

 

 

 俺と佐倉さんが戻ると、すでに拠点には購入した備品が運び込まれていた。

 

 男子で組み立てをする事になったので、俺はその作業に参加。作業中、綾小路君は普通に話しかけて来たので、クラスメイトとしての会話はしてくれるようだ。

 

 組み立て作業終了後、綾小路君は佐倉さんと山内君。そしてクロームと共に、焚き火に使う予備の木材を取りに向かった。

 その間、俺は池君と共に焚き火に火を灯す事になった。

 

 池君はアウトドア経験者らしい。サバイバルで使える知識を豊富に持っていて、焚き火のやり方や、川の水の綺麗さの判断。木の実の見分け方まで知っているようで、今回の試験では大活躍している。

 

 焚き火の火が安定しだした頃、綾小路君達が戻って来た。

 なぜか、Cクラスの伊吹さんを連れて……。

 

 そして同時に、須藤君の怒号がDクラスの拠点近辺に響き渡った。

 

「ふざけんなよ!? 高円寺いいいっ!」

 

 

 ——Dクラス拠点にて須藤の怒号が響き渡る中、高円寺は客船の錯に掴まっていた。

 

「ふふ、月が綺麗だ……」

 

 そうこぼした後、高円寺は錯を伝って客船に登ろうとする。が、一旦動きを止めて島の方へ視線を向けた。

 

「——ふっ」

 

 高円寺の視線は、Dクラスの拠点がある川のスポットの周辺に向けられている。

 

「……これまでの学校での活躍。そして今日の身のこなし。確かに頑張っているようだが、まだまだだよ? シーチキンボーイ……いや、ボンゴレX世。君には、もっと支配者らしくなってもらわないといけないんだからねぇ。なぜなら将来、私の良きビジネスパートナーになってもらわないといけないのだから。……はっはっはっは!」

 

 そして高円寺は、高笑いしながら客船へと登って行った……。




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