ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作3巻編 その⑥特別試験3日目

 

 

 —— 3日目、午前。Dクラス拠点 ——

 

 特別試験3日目の朝、午前11時。

 焚き火用の木材集めから帰ってくると、獄寺君が話しかけてきた。

 

「——10代目。アルロから報告がありました」

「! 何が書いてあったって?」

「はい。Aクラスと龍園の間に交わされた契約書でした」

 

 どうやら、ビアンカは無事に葛城君をおびき出す事に成功したようだ。アルロとドナートも、葛城君が初日に持っていた紙の中身を確認してくれたらしい。

 

 紙に書かれていた契約内容はこうだ。

 

① Aクラスの欲する備品200ポイント分をCクラスのポイントで購入する。

② Cクラスが得た他クラスのリーダー情報をAクラスに教える。

③ 2学期以降、Aクラスの生徒は龍園に毎月2万PPずつ譲渡する。

 

「……なるほど、やっぱりAクラスの備品は、Cクラスのポイントで買ってたんだ」

「ええ。伊吹の奴も、やはりリーダーを見つける為のスパイですね」

「うん。そしてBクラスの金田君もね」

「……」

 

  獄寺君が難しい顔をして考え込み始めた。

 

「どうかした?」

「……いや、毎月2万ポイントも龍園に渡す事になんのに、Aクラスにとってはそれでもいいと思える程の取引なんでしょうか?」

「……確かにそうだよね」

 

 毎月2万PPを失うなんて、俺達Dクラスにとっては大損害。

 1学期終了時点でのAクラスのCPは、確か1040。

 

 10万以上あるPPの中から2万失っても、それほど困りはしないのかもしれないけど、それでもこの試験で勝つために、これ以降ずっと2万PPを失う事になる。

 

「きっと、何かしらAクラスにも思惑があるんだろうね」

「……それも調べた方がいいんですかね?」

「いや、分かればラッキーくらいでいいよ。取引内容が分かっただけでも十分だし」

 

 ——ピピピ。

 

 獄寺君の腕時計から、音が鳴った。その音は俺達の腕時計にもついている目覚まし機能の音だけど、Otto talenti のメンバーの腕時計では、通信を受けた合図でもあるらしい。

 

「! レオナルドからです。……獄寺だ。どうした?」

『獄寺、朗報だ。龍園の潜伏先を見つけたよ』

「お、そうか。どこだ?」

『森の最深部の茂みだ。周辺にはスポットも木の実や果物のなる木もないから、人が来る可能性が低そうだよ』

「なるほどな。龍園はその茂みで潜伏してんのか?」

 

 獄寺君がそう聞くと、レオナルド君は少しの間を置いて話始めた。

 

『……それがさ、全然じっとしてないんだ。朝からずっとこそこそ動き回っているよ』

「あ? なんでだ? 葛城と密会でもする気か?」

『いや、Aクラスの拠点もここから見えるんだが、葛城は洞窟の中から出ていない』

「……じゃあ、なんで動いてんだ?」

『ん~、確証はないけどね。森の中を隅々まで探し回っているような印象を受けるんだよ。まるで誰かを探しているかのようにね』

「誰かを探してる? ……一体誰を探してんだよ。他のクラスに見つかるリスクもあんのによ」

『ん~、それはわからないが……Bクラスのスパイの金田、だっけ? そいつも食糧調達に森に入っているんだが、食糧には一切手をつけずに茂みとかをゴソゴソしながら、無線機で誰かと通信しているよ』

「無線機? 龍園も持ってんのか?」

『ああ、龍園も持っているね』

 

 一旦会話を止めて、獄寺君が俺に顔を向けて声をかけてきた。

 

「10代目、どう思います?」

「バレない様に潜伏していたいはずなのに、わざわざリスクを犯して動くって事は……そうしてでも見つけ出したい何かがあるんだろうね」

「見つけ出したい何か、ですか?」

「うん。例えば、浜辺で龍園君が言っていたけど、本当に支配者である彼に従わない奴が現れたとか」

「なるほど、見つけ出して制裁しようとしていると?」

「……どうだろう。むしろ利用しようとするんじゃないかな」

 

 龍園君、伊吹さん、金田君の3名以外の全員がすでにリタイアしているはず。

 そして、残された伊吹さんと金田君は、指示通りにスパイをやっているのは間違いない。

 

(......この状態で、もしも龍園君の指示に逆らっている奴がいるとしたら……それはあの2人しかいないよな)

 

 獄寺君は興味津々そうな顔で俺が話すのを待っている。

 

「10代目、奴は誰を探しているのでしょうか?」

「……俺の予想だと、レオナルドとカルメンだね」

「なっ!?」

『ふっふっふ。私を探しているとは、愚かな男だ』

「な、なぜにその2人を?」

「クロームの予想だと、姉妹校の2人は他の人達と違って船に戻ってはいないかもしれない、って話だったろ? レオナルド、実際どうだったの?」

『ボスの言う通りですよ。他の奴らとは砂浜で別れて、遊園地に向かうと言ってもう一度森に入ったんだ』

 

 やっぱりそうか。龍園君の性格を考えるなら、付き合いの浅い一時的なクラスメイトを手放しに信じたりはしないだろう。

 

「その後、すぐに潜伏した?」

『いえ、一応表と裏マフィアランドの境目まで行って、周囲を確認してから潜伏に移りました』

「そっか……その間誰かにつけられていたって可能性は?」

『カルメンが気付かなかったのでね、誰にもつけられていなかったはずですよ』

「じゃあ、なんで龍園君は森の中を探し回ってるんだろう」

 

 俺のこの疑問に、レオナルドは1つの可能性を示してくれた。

 

『もしかしたら、我々が潜伏している可能性には気付いているが、確証がないから探し回っているのかもしれませんねぇ』

 

 なるほど。確かにその可能性が一番高いかもしれないな。

 

「レオナルド、龍園君の動きに注意して。もしもカルメンに近づきそうになったら、すぐにカルメンにも連絡してあげて」

『わかったよ、ボス。金田の動きはどうする?』

「山本に、適当に理由を付けて拠点に連れ戻してもらおう。獄寺君、山本に連絡してもらえる?」

「分かりました!」

『じゃあレオナルド、君も気づかれないようにね」

『無論ですよ、ボス』

 

 レオナルドとの通信はこれで終了した。

 獄寺君はすぐに山本へと連絡を取り始めた。

 

(龍園君、レオナルドもしくはカルメンを見つけてどうするつもりなんだろうか——)

 

 1人で考え込んでいると、後ろから声をかけられた。

 

「あ、あの。沢田君」

「え? あ、佐倉さん」

 

 声をかけてきたのは佐倉さんだった。

 

「何人かで食糧調達に出ることになったんだけど、わ、私と沢田君がチームになったんだ」

「食糧調達ね……綾小路君もその中にいる?」

「え? あ、うん。綾小路君は1人で行くらしいけど」

「そっか……わかった。ちょっと待ってて?」

 

 佐倉さんに少し待ってもらい、通話を終えた獄寺君に話しかける。

 

「獄寺君、綾小路君が1人で食糧調達に出るみたい。こっそり後を付けて見張りをお願い」

「!  了解です、10代目!」

 

 ビシッと敬礼を決めて、獄寺君は綾小路君のいる方へと走って行った。

 

「佐倉さん、お待たせ。じゃあ行こうか」

「う、うんっ!」

 

 そして、俺も佐倉さんと共に森に入って行った。

 

 

 —— 3日目、正午。 浜辺付近 ——

 

 

 佐倉さんと俺のペアは、拠点から浜辺までの道で食糧を探す担当らしい。

 

「はぁ、とんだバカンスだよね」

「あはは、うん。全然バカンス感はないよね」

「せめて、デジカメがあったらなぁ……」

 

 佐倉さんが両手の親指と人差し指をカメラの様に俺に向けて、構えながらそう言った。

 

「風景写真も撮るんだね」

「え!? あ、うん。風景写真も撮るよ。あははは……」

「?」

 

 佐倉さんがなぜか悲しそうなので、元気付けてあげたくなった。

 

「この試験の後は、島の反対側の遊園地に行って、その後はまた客船でバカンスらしいから。その時に一杯、思い出の写真を撮ろうよ」「! ……そうだよね、うん。まだチャンスはあるよね」

「そうだよ、まだまだバカンスは続くんだからさ。元気出して行こう!」

「う、うん! ……あの、沢田君?」

「ん?」

「——その時は、一緒に写真を撮ってくれる?」

「うん。もちろんだよ」

「っ! あ、ありがとう!」

 

 佐倉さんに笑顔が戻った。元気も出た様なので、その勢いのままズンズンと進んでいく。

 やがて、昨日まではCクラスがバカンスを満喫していた、浜辺に出た。

 

 

 ~浜辺~

 

 

 昨日見た喧騒がまるで嘘かの様に、Cクラスのいない浜辺は静かだった。

 浜辺に放置された備品だけが、昨日見たものが現実だと教えてくれる。

 

「誰もいないね。備品は残ってるけど……ここってCクラスの拠点だったんじゃないの?」

「うん。でも誰もいないって事は、Cクラスは全員リタイアしたのかもしれない」

「ええっ!? な、なんでえ?」

「リタイアすれば船に戻れるからね、この試験が嫌になったんじゃない?」

「そ、そんな事をするクラスがあるなんて」

 

 目を見開きながら片手で口を押さえる佐倉さん。

 まぁ、試験から逃げるクラスがあるなんてびっくりするよねぇ。

 

 ——実際には試験に挑む気満々なんだけども。

 

 2人で浜辺を見渡していると、後ろから誰かに声をかけられた。

 

「あれ? 沢田君だ!」

「隣の女子は……佐倉だったか?」

「あ、一之瀬さんと神崎君」

 

 声をかけてきたのはBクラスのリーダー格。一之瀬さんと神崎君だった。

 

「うわぁ、本当にいなくなってるねぇ。Cクラスが全員リタイアしたって情報を手に入れたから、来てみたけど」

「お前達も偵察か? 沢田」

「いや、食糧調達で森の中を歩いてたら、浜辺に出たんだよ」

「そうか」

 

 2人も俺達の隣に並ぶと、浜辺全体を見渡し始める。

 

「あ~あ、Cクラスのリーダーくらい当ててやろうと思ったのに」

「一之瀬、俺達は安定を取ると決めただろう?」「

「あはは、そうだよね。リーダー当てなんて難しいもんね」

「Bクラスは、リーダー当てには参加しないの?」

 

 今度は俺から質問してみる。

 神崎君は領いてから答えてくれた。

 

「ああ。俺達はポイントを節約してなるべく多く残し、確実にCPを増やしたい。Cクラスがリタイアし、Dクラスとは協力関係にある今、無理してAクラスのリーダーを当てにいく必要はない」

「それに、私達はリーダーをきちんと隠してるからね~。Aクラスにはバレないはずだよ♪」

「なるほど。堅実な作戦だ」

「ふふっ♪ 私達は地道に頑張るのがモットーだからね♪」

「......」

 

 午前中に受けたAクラスとCクラスの契約、その中の2万PPの譲渡の項目。

 その事で浮かんだ疑問の答えを、この2人なら知っているんじゃないか?

 

「ねぇ、Aクラスってどんなクラス?」

「ふぇ? Aクラス?」

「うん、普段から葛城君がリーダーをやってるのかな?」

 

 俺のその言葉に、2人とも首を横に振った。

 

「ううん、Aクラスは葛城君が率いているわけじゃないよ。正確には半分はね」

「半分?」

「うん。Aクラスは葛城君、そして今回は久席してる坂柳さんって言う子の、2つの派閥があるんだ」

「クラス内で派閥!?」

「そうだよ~。革新的な坂柳さん派と、その真逆に保守的な葛城君。タイプがまったく違う2人のリーダーが存在しているんだよ」

 

 一之瀬さんの説明に、神崎君が補足をしてくる。

 

「坂柳派と葛城派は、どちらが真のAクラスのリーダーかを争っているんだ」

「そうなの?」

「ああ、現在は坂柳の方が有利らしいが……この無人島試験、葛城としては何が何でも結果を残したいだろうな」

「? リーダー争いに勝つ為?」

「ああ、この試験の最終ポイントはCPに追加されるからな。この試験で大量のCPを得ることができれば、形勢が一気に葛城派に傾くだろう」

「なるほど……」

 

 2万ポイントを失っても龍園君の作戦に乗ったのは、Aクラスのリーダー争いに勝つ為かもしれないな。

 

 備品をポイントを使わずに手に入れ、さらに他クラスのリーダーまで教えてもらえるんだ。それなら毎月2万ポイントを失うとしても、この試験で増えたポイントでトントンにできるし、リーダー争いにおいても葛城君を有利にできる。

 

 よく考えられた作戦だな……これを考えた龍園君も相当頭がキレるんだろうな。

 

「わかった。教えてくれてありがとうね」

「かまわないさ。俺達は協力関係だからな」

「じゃあ、私達は拠点へ戻るね。またね~沢田君、佐倉さん♪」

 

 そう言うと、2人は森の中へと戻っていった。

 

「……私達も、帰りながら食糧を集めないといけないね」

「うん。ここまでの道にも結構あったもんね」

 

 そして、俺達も森の中へと戻って行ったのだった……。

 

 

 

 ——  ツナが佐倉と行動している頃、別の場所にて ——

 〜side綾小路〜

 

 

(さて、どうするかな……)

 

 昨日の早朝、俺は伊吹のナップザックを調べた。

 そしてデジカメを見つけたんだ。

 

 クラスを追い出されてるのに、デジカメを持っているのはおかしい。それもあのCクラスだ。勝手に備品を持っていくのを龍園が許すとは思えない。

 

 もし何かの目的があって、デジカメを持って他クラスに潜入しているなら、あのカメラはDクラスの何かを撮影する為に持っているはずだ。

 

 ……おそらくDクラスのキーカードだろうな。

 

 キーカードにはリーダーの氏名が表示されている。

 キーカードを撮影すれば、そのクラスのリーダーを確実な証拠付きで誰かに教える事ができる。

 

 昨日の夕方、Cクラスはリタイアをしているはず。だが、伊吹が誰かにキーカードの写真を見せようとしているのなら、きっと龍園もこの島に残ってるはずだ。あの龍園がその役を誰かに任せるとも考えづらいしな。

 

 そうなると、伊吹やBクラスにいる金田と言う奴がリーダーである可能性も低い。どちらかがリーダーなら、龍園が残る必要がなくなる。

 

 だから、Cクラスのリーダーは龍園に間違いないはずだ。伊吹がキーカードを撮影したら、すぐに逃げられてしまうだろう。その後に何かの仕掛けを施しても、龍園に気づかれる可能性がある。

 

 それを防ぐ為には……伊吹に限界まで任務を達成させずに、勝つ為の秘策を打っても、龍園に気づかれる時間がない状態にするのが望ましい。

 

 その為の布石として、俺は今朝早くに伊吹のデジカメに水をかけて壊しておいた。これで、確実な証拠を得るにはキーカードの実物を見せるしかないだろう。

 

 キーカードは堀北が肌身離さず持ち歩いているし、そう簡単には持ち出すことはできないはずだ。

だから後は堀北を誘導して、いいタイミングで伊吹にキーカードを持ち出させて、その後で勝つ為の秘策を打てばいい。

 

 その秘策はすでに考えてある。——しかし、それを成す為には堀北にはリタイアしてもらわないといけないが……それはそう難しくないだろう。

 

 あいつ、試験開始前から体調不良みたいだからな……伊吹がカードキーを持ち出す時に、堀北にも体調不良で倒れてもらうのが都合がいい。

 

(だが、この作戦を沢田が思いつかないとも思えない)

 

 そして沢田がこの作戦を思いついたら、堀北に事情を話して自らリタイアするようにお願いするだろう。わざと堀北に体調を崩させるなんて事は絶対に選ばない。

 

 ……それに、もしも沢田が俺の作戦に気付いたとしたら、俺のやろうとしてる事を止めようとするはずだ。

 

 沢田に勝つ為には……沢田に気づかれたとしても、邪魔をできないように準備しておく方がいい。

 

 沢田の性格、それを利用すれば確実に足止めをする事は可能だ。

 後は誰を使って足止めをするかだが……。

 

 ——ピキッ。

 

「!」

 

 ......考えを纏めながら歩いていると、少し先の茂みで枝を踏んだ音が聞こえた。

 

(……誰かに後を付けられている? 確認した方がいいな)

 

 俺は何にも気付いてない風を装いながら、音がした茂みの付近を通りすぎようとする。;

 そして、通り過ぎた瞬間に素早く方向転換をして茂みの中を確認する。

 

「……!」

「……ちっ」

 

予想通り茂みの中に隠れている人物がいた。

その人物は——。

 

「……龍園」

 

Cクラスの支配者、龍園だった。




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