ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作4巻編 その①船上試験、開始。

 

「……5人部屋でも快適そうだな」

「うん。さすがは豪華客船だよね」

「俺達の様な高校生の身分で、こんな船に乗れるのはありがたいことだ」

「そうだね。滅多にできる経験じゃないよ」

「ふふ、今日も美しい〜」

 

 表マフィアランドから客船に戻った俺達は、荷物を纏めて別の豪華客船に乗り移った。

 日本校と姉妹校の1年が全員乗船しているから、今回の船は前の船よりさらに巨大な客船だ。

 

 しかし、前の船では個室だったのに、この船では4〜5人部屋になっているのはなぜだろうか。船自体が大きい訳だから、全員に個室を与えてもよさそうだけど。

 

 ……まぁ、学校側には何かしらの思惑があるってことなんだろう。

 

 俺が泊まる部屋は5人部屋。ルームメイトは綾小路君・平田君・幸村君・高円寺君の4人だ。今は荷物を部屋に置いて小休止を取っている所だった。

 

「よし、俺は船内を見回ってくる」

「ふふふ、私はプールにでも行ってくるよ」

「うん。行ってらっしゃい」

(……いつの間に水着に?)

 

 小休止が済むと幸村くんは船内の探索に向かい、いつのまにか水着に着替えて準備万端だった高円寺君は、デッキ内に設置されたプールへと向かった。

 

 部屋に残ったのは俺と綾小路君と平田君。

 これから何をしようかと考えていると、平田君が話しかけてきた。

 

「沢田君。綾小路君。この後、一緒にお茶しないかい?」

「え? お茶?」

「うん。軽井沢さんと約束してたんだけど、良かったら2人もどうかなって」

 

 平田君からお茶のお誘いを受けた。俺はお受けしようかなって思ってたんだけど、綾小路君は首を横に振った。

 

「……遠慮する。平田との時間を邪魔すれば、軽井沢に恨まれそうだからな。俺も適当に船内をうろついてくる」

 

 そう言って、綾小路君は1人でどこかに行ってしまった。

 

(ん〜。軽井沢さんが平田君と2人でお茶したいなら、俺が行くのは申し訳ないかなぁ)

 

 綾小路君の言葉に納得して俺もお断りしようとした所、平田君が先に口を開いた。

 

「沢田君、君にはどうしても来て欲しいんだ」

「でも、軽井沢さんは君と2人の方が……」

「その軽井沢さんが、沢田君を連れてきて欲しいって言っているんだ」

「えっ! 軽井沢さんからそう言われてるの?」

「そうだよ」

「……何か話があるのかな」

 

 軽井沢さんが俺を呼んだ理由を考えていると、平田君は少し申し訳なさそうに笑った。

 

「そんなに警戒しなくていいよ。僕と軽井沢さんに沢田君に聞いてほしい話があるだけさ」

「ん~。まぁ呼ばれているなら行かないとね。わかった。一緒に行くよ」

「うん、ありがとう」

 

 そして、俺は平田君と共に船内にあるカフェへと向かった。

 

 

 

  —— 船内カフェテリア ——

 

 

「あ、平田君!」

「軽井沢さん、お待たせ」

 

 客船内のカフェテリアに着くと、入り口付近で待っていた軽井沢さんと合流した。

 

 軽井沢さんが平田君の腕に抱きついて店内に入っていくので、俺もその後ろについて行った。

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「3名です」

「3名様ですね。こちらへどうぞ」

 

 店員さんに案内されてテーブル席に着いた。紅茶を人数分注文して店員さんがいなくなると、平田君が話を切り出た。

 

「沢田君。今日君を誘った理由なんだけどね」

「うん」

「実は、軽井沢さんについて相談に乗ってもらいたかったからなんだ」

「軽井沢さんについて?」

 

 軽井沢さんの方をチラリと見ると、軽井沢さんは無言で頷いた。

 

「僕達が付き合っている事は、知っているよね?」

「うん。もちろん」

「本題はその事に関わる事なんだけど、実は僕達——」

 

 平田君が何を言おうとしているのか。なんとなくわかっていた俺は、自分から核心を突くことにした。

くことにした。

 

「——本当の恋人じゃない、とか?」

『!』

 

 俺の言葉を聞いて、2人共驚いた表情になる。

 

「驚いたな。気づいてたのかい?」

「なんとなくね。そうなんじゃないかな、ってくらいには思ってた」

「そっか……はは。やっぱり沢田君は只者じゃないね」

 

 まさか怪しまれているとは思ってもいなかったのだろう。

 そりゃそうだ。誰もそんな事を考えもしないくらいに、普段から2人は一緒にいるからな。

 

 俺が2人が付き合っていないのではないかという考えを持てたのは、間違いなく超直感の恩恵だろう。

 

「その通り、僕達は本物の彼氏彼女じゃない。それなのにどうして付き合っている風に装うのかというとね」

「うん」

「軽井沢さんの事を守るためなんだ」

「え、守る? 守るって何から?」

 

 平田君は俺の質問に答える前に、紅茶を一口飲んだ。

 

「……ふう。彼女を取り巻く全てから、かな」

「全て……何かあったの?」

「うん。軽井沢さん、話してもいいよね?」

 

 平田君が軽井沢さんに確認を取ると、軽井沢さんは頷いた。

 

「いいよ」

「ありがとう。じゃあ沢田君、信じがたいかもしれないけど聞いてほしい」

「う、うん」

「実は軽井沢さんは——小中の9年間に渡って、ずっと酷いいじめを受けていたんだ」

「えっ」

 

 軽井沢さんに対する俺の印象は、勝気で女子のリーダー格という感じだ。

 普段の様子からは、いじめられっ子だったようにはとても見えない。

 

 しかし、この話に入ってから軽井沢さんの目の光が弱くなっている気がする事もあり、それが事実なんだろう。そんな辛い過去がありながらあんな風に振るまえるのだから、軽井沢さんは相当強い心を持っているのだろうか。

 

「つまり、またいじめられることがないように、平田君が守ってるって事?」

「うん。この学校に入学してすぐに、軽井沢さんに頼まれたんだ」

「そうなんだ……」

 

 黙っている軽井沢さんの姿からは、いつものような強気な態度は見えない。

 いや、むしろこの姿が軽井沢さん本来の姿って事か。

 

 平田君の彼女となれば、クラス内でも高い地位に上り詰める事ができる。平田君と言うバックがいる事で、強気に振舞えてたってことなんだろうな。

 

「それでね。沢田君にも——」

 

 ——ピロン。

 ——ピンポンパンポーン。

 

 平田君の話を、メール受信音と船内アナウンスが遮った。

 

『生徒の皆さんに連絡です。先程、全生徒に連絡事項を記載したメールを送致しました。各自確認次第、その指示に従ってください。尚、メールが届いていない場合は、お近くの教師まで申し出てください』

 

 アナウンスの直前に届いたメールを開いてみると、こんな内容が書かれてあった。

 

 

 TO  沢田綱吉

 

 間もなく特別試験を開始します。

 各自指定された部屋に、指定された時間に集合してください。

 

 10分以上の遅刻をした者には、ペナルティを科す場合があります。

 本日14時40分までに、2階201室まで集合してください。

 

 所有時間は20分程度ですので、お手洗いなどは済ませた上、携帯をマナーモードか電源オフにしてお越しください。

 

 FROM  高度育成高等学校

 

 

「え、特別試験!?」

「……無人島で終わりじゃなかったみたいだね」

「え~、もう嫌なんだけど!」

 

 それは、新しい特別試験の内容を知らせるメールだった。

 

 各自指定と書かれてるので、それぞれ指定された時間と部屋は違うみたいだ。

 俺の集合時間は14時40分。今の時刻は14時25分。

 

 わ! 後15分しかないじゃないか!

 

「ごめん、俺もうすぐ集合時間だから行くよ。話の続きはまた後でいいかな?」

「うん。また後で声をかけるよ」

「ごめんね、じゃあ行ってくるよ」

 

 ——結局、本題に触れる事なくお茶会はお開きになってしまった。

 

(まぁ、後でじっくり聞けばいいか)

 

 俺は集合時間に間に合う様に、急いで201号室に向かった。

 

 

 

 —— 14時35分。201号室 ——

 

 

 ——コンコン。

 

「は~い。どうぞ~」

 

 ドアノックをすると中から返事が帰ってきた。

 

「失礼します」

 

 ドアを開けて中に入ると、そこは教師用の個室の様で、かなり広めな部屋だった。

 

「沢田君。こっちおいで~」

「あ、はい」

 

 Bクラス担任の星乃宮先生が、部屋の奥のテーブルと椅子の所で手を振っている。

 テーブルの方へ向かうと、すでに俺以外に3人の生徒が待機していた。

 

「ほう、君も一緒なのかい? シーチキンボーイ」

「沢田君、よかったあ~」

「さ、最後の1人は沢田君だったんだね」

 

 そこにいたのは、高円寺六助君・佐倉愛里さん・王美雨さんの3人だった。

 

(男女2人ずつか……王さんとはあんまり話した事ないな)

 

 1つだけ余っている席に座ると、星乃宮先生が口を開いた。

 

「よし! 全員が集まったので、これから干支試験の説明をはじめま~す★」

『干支試験?』

 

 元気のいい星乃宮先生の言葉に、俺達は首を傾げた。

 

「そう、干支試験! これから試験の説明を行うけど、こちらから質問の有無を尋ねたとき以外は黙って聞くようにね。あと、質問の内容によっては答えられないこともあるから、そのつもりでお願いします!」

『……』

 

 俺達は黙って先生の説明に耳を傾けた。

 

「今回の試験は、1年生を干支になぞらえた12のグループに分けて、そのグループ内での試験を行うの。試験の目的はシンキング能力を問うものよ」

 

 そう言ってから、星乃宮先生1枚の紙を配った。

 

「今配ったのは、このグループのメンバーリストです。あなた達のグループは『巳』。この紙は退室時に回収するので、必要なら今覚えていてね」

 

 紙に書かれたメンバーリストに視線を落とす。

 

 巳(ヘビ)グループ

 

 Aクラス 篠田恭美・清水直樹・西春香・王小狼

 

 Bクラス 小林夢・二宮唯・渡辺紀仁

 

 Cクラス 石崎大地・野村雄二・椎名ひより

 

 Dクラス 沢田綱吉・佐倉愛里・王美雨・高円寺六助

 

 知っている顔が1人だけいるけど……ほとんど知らない人だな。

 

「今からあなた達には、Dクラスとしてではなくグループとして行動してもらいます。そして試験の合否は、グループ毎に設定されているわ」

 

 そう言い、星乃宮先生はもう1枚別の紙を配った。

 

「その紙には基本ルールと4つの結果が記載されています。この紙に関しても退出時に回収するから、しっかり確認しておくようにね。一度私が読み上げます」

 

 もう1枚の紙に書かれている内容はこうだった。

 

①本試験では、各グループに割り当てられた『優待者』を見つけ出す事が課題となる。

②試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由日を挟む)。

③試験開始当日午前8時に一斉メールを送る。『優待者』に選ばれた者には、同時にその旨もを記載する。

④1日に2度、午後1時と午後8時にグループだけで所定の部屋に集まり、1時間の話し合いを行うこと。

⑤話し合いの内容は、グループの自主性に全てを委ねるものとする。

⑥試験の解答は試験終了後、午後9時30分から午後10時までの間のみ優待者が誰であったかの答えを受け付ける。尚、解答は1人1回までとする。

⑦解答は自分の携帯電話を使って、所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。

⑧『優待者』にはメールにて答えを送る権利はない。

⑨自身が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。

⑩試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。

 

 

「それが基本ルールよ。試験における結果については裏面に記載されているから裏面を見て下さい。あ。最初に言っておくけど、この試験の結果は4通りしか存在しません。例外は存在せず、必ず4つのどれかの結果になるように作られているの」

 

・本試験における最終結果は4通りのみである。

 

 結果1。グループ内で優待者、及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員に50万PPを支給する。また、優待者には特別ボーナスとして100万PPが与えられる。

 

 結果2。優待者が正体を隠し通し、1人でも未解答や不正解があった場合。優待者にのみ50万PPが支給される。

 

「この試験の肝は「優待者』の存在です。グループには必ず1人優待者が存在するから、その優待者が誰かを見極めることが試験の行く末を左右します。例えば沢田君が優待者だとすると、この場合の解答は『沢田綱吉』となるわけね。あとはこれをグループ全員で共有して、試験終了後の解答時間の間に、全員が沢田君の名前をメールで打ち込めばそれで結果1が確定。沢田君には100万PP、他のメンバーは50万PPをゲットできる。逆に誰にも気づかれなければ結果2となって、沢田君のみ100万PPをゲットって事です」

 

 なるほど。自分が優待者なのと、そうでないのでは立ち回り方が全然変わってくるな。

 

「そして、あとの2つの結果についてだけど、その2つは試験終了を待たずに優待者の回答があった場合にのみ発生するの」

 

 ・以下の2つの結果に関してのみ、試験中24時間いつでも解答を受け付けるものとする。また試験終了後30分以内であれば同じく受け付けるが、どちらの時間帯でも間違えばペナルティが発生する。

 

 結果3。優待者以外の者が試験終了を待たずに回答し、それが正解していた場合。答えた生徒の所属するクラスはCPを50得ると同時に、正解者にはPPを50万ポイント支給する。また、優待者を見抜かれたクラスにはマイナス50CPのペナルティが課せられる。及び、この時点でグループの試験は終了となる。尚、優待者と同じクラスメイトが正解した場合、解答を無効とし試験は続行となる。

 

 結果4。優待者以外の者が、試験終了を待たずに回答し、それが不正解だった場合。答えを間違えた生徒が所属するクラスはマイナス50CPのペナルティが課せられる。またその場合、優待者は50万PPを得ると同時に、優待者の所属するクラスはCPを50ポイント得る。そして答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。尚、優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、解答を無効とし試験は続行となる。

 

 ……結果3か4ならば、CPも手に入れる事ができるということか。

 

「今回、学校側は匿名性についても考慮しているの。試験終了時には、各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表するし、優待者が誰だったか、解答者が誰だったかについては公表しないわ。クラスポイントは結果発表後に反映される。PPについても基本的には同じね。でも結果3と4についてのみ、結果確定直後に学校から受け取り方法についてのメールを送ることになっているの。受け取り方法だけど、一括で受け取るか分割で受け取るかも生徒が要望すれば好きにすることができるよ。仮IDを発行してそこにポイントを振り込むなんてことも可能だから、本人さえ黙っていれば、試験後に発覚する恐れはないわね。もちろん隠す必要がなければ、堂々と受け取っても大丈夫よ」

 

 匿名性か。まあ優待者で100万PPも手に入れたりしたら、その事を隠したい人もいるのかな。

 

「試験についての説明は以上です。各グループの話し合いの時間は、明日のメールに記載されているからそれに従ってね。最後に、何か質問のある人はいる?」

「あ、はい」

 

 質問が許されたので、1つ気になっていた事を聞いてみる事にした。

 

「はい、沢田君」

「あの、今回は姉妹校の人達は参加しないんですか?」

「ええ。これは本校だけの特別試験よ。姉妹校との交流は、試験外でしてもらわないといけないわね」

「わかりました。ありがとうございます」

「じゃあ、これでお開きとします」

 

 星乃宮先生から説明会の終了を宣言され、俺達4人は201号室から出た。

 

「……沢田君、試験どうするの?」

「……どうしようかなぁ」

「できれば、CPを増やしたいよね」

 

 廊下を歩きながら、佐倉さんと王さんとそんな話をする。

 あ、高円寺君は笑いながら1人で別方向に歩いて行った。

 

「自分が優待者かどうかで、立ち回り方は変えないといけないからね。明日の朝までは特に作戦も立てられないかなぁ」

「そっかぁ」

「……自分が優待者だったらどうしよう」

 

 ——ピタッ。

 足を止めて2人に振り返った。

 

「俺はクラスメイト同士で協力しあって、結果1か結果4を目指したいと思うんだけど。佐倉さんと王さんはどうかな? 協力してくれる?」

「も、もちろん。わ、私は沢田君についていくよ?」

「クラスメイト同士で優待者の告発はできないし、どうせならクラスメイト全員でポイントを取りたいよね。私も協力するよ」

「うん、ありがとう!」

 

 これで4人の中に優待者がいようといなかろうと、2人の協力は得られる事になった。

 

 その後。2人と別れた俺は、考え事をするべくデッキへと向かっていた。

 

 

 —— デッキ ——

 

 

 潮風を浴びながら、言葉にして考えをまとめよう。

 

「今回の試験、クリアする方法は4つ。グループ全体で優待者を共有するか、誰かが優待者を見誤るか。そして裏切り者が優待者を密告するか、裏切り者が誤った告発をすること。そして、この試験で俺達に求められていのはシンキング能力。——つまり考える力って事?」

「ん〜。厳密には考え抜く力だねぇ」

「!?」

 

 独言ちている俺の背後から、誰かの声がした。

 その声の主は——。

 

「あっ、高円寺君!」

 

 そう、高円寺君だったのだ。向こうから話しかけてきたのは初めてかもしれない。

 

 高円寺君は手すりに掴まって海を見ていた俺の隣に来ると、ゆっくりと話し出した。

 

「シンキング能力とは、考え抜く力の事を指すんだよ。シーチキンボーイ」

「考え抜く力?」

「そうさ。それはつまり現場を分析し、課題を明らかにする力だ。そして課題をクリアするための準備をする力も必要だねぇ」

「……なるほど。学校側の意図を読み取って、試験の法則を見つけ出さないといけないわけか」

「イエス。まあそれができるのは一部の優秀な者達だけだろうがねぇ。……ところでシーチキンボーイ?」

「ん? 何?」

「このバカンスに来てから、トレーニングが疎かになっているようだねぇ」

「えっ!?  あ、まあ確かに」

「ノンノン、そんな事ではイケない。私達のような選ばれし男には、自分を磨く責任があるんだよ」

「選ばれし男って……高円寺君は巨大財閥の御曹司だからわかるけど、俺は別に」

「そんな事はないさ。君は私が高円寺グループのトップになった際に、1番のビジネスパートナーになってもらうのだから」

「ビジネスパートナー!?  俺、別に起業しようとか思ってないんだけど!」

「ははは! 別に企業しろとはいっていないさ。ただ、自分磨きを忘れてもらっては困るんだよ」

 

 そう言うと、高円寺君は手を振りながら歩きだしてしまう。

 歩きながら、彼は最後に1つだけアドバイスをくれた。

 

「この船でなら、自重トレとスイミングがおすすめかな? あっはっはっは!」

「……」

 

 高円寺君が見えなくなったあと、俺はジョーコファミリーの事を思い出していた。

 

(またジョーコが来たときの為に、フィジカルアップはしておかないといけないよな。よし!)

 

 その後、高円寺君の後を追いかけた俺は、高円寺君のトレーニングに参加させてもらう事にした。

 トレーニングに一生懸命になりすぎて、その日は平田君達の話の続きを聞く事が出来なかった。

 

 

 

 —— 翌朝、7時59分。船内カフェテリア ——

 

 

 その翌朝。俺は綾小路君と堀北さんと一緒に、カフェテリアに来た。

 堀北さんの発案で、干支試験の意見交換をしようと言う事になったのだ。

 

「……3、2、1」

 

 ——ピロン。

 

「!  時間ぴったりだな」

 

 8時ちょうどに学校からメールが届いた。俺達は各々で学生証端末を確認する。

 

 

 TO  沢田綱吉

 

 厳正なる調整の結果、あなたは優待者に選ばれました。

 グループの1人として自覚を持って行動し試験に挑んで下さい。

 

 本日午後1時より試験を開始いたします。本試験は本日より3日間行われます。

 巳グループの方は、2階巳部屋に集合して下さい。

 

 FROM 高度育成高等学校

 

 

(わぁ、ドンピシャで俺かぁ)

 

 メール画面を見ていると、堀北さんと綾小路君はお互いのメール画面を見せあっていた。

 

「同じ文章ね」

「ああ。お互いに選択肢が狭まるな。——沢田は?」

「あ、うん。……これです」

『……』

 

 2人と俺のメールの違いは「選ばれました」と「選ばれませんでした」の一部分だけのようだ。

 

「沢田君。(優待者として)どう動くつもり?」

「う~ん。同じグループの佐倉さんと王さんの力を借りて、結果1か4を目指すつもりだよ」

「王さんと佐倉さんが一緒なのね。あと1人は?」

「……高円寺君」

「……協力は見込め無さそうだな」

「だよね~」

「そうね」

 

 高円寺君の協力するのは難しいかもしれないけど、あとの2人とは協力関係を結べた。

 

「なんとかやってみるよ。それとCPの増減もある以上、結果3を他クラスに取られるのも、Dクラスの誰かが取るのも絶対に避けたいよね」

「そうだな。結果によっては、Aクラスとのポイント差が手がつけられなくなる可能性もある」

「(優待者である)沢田君には、できれば結果4を目指してほしいわ」

「ぜ、善処します」

 

 そんな会話をしていると、背後から誰かが近寄ってくる気配を感じた。

 この気配は——龍園君か?

 

「よう。気持ちいい朝だなぁ、鈴音ぇ」

 

 予想通り、来たのは龍園君だった。

 隣にはアルベルト君と伊吹さんを連れている。

 

「……そうね。でもあなたの顔を見て気分最悪になったわ」

「つれねえなぁ。……お? はっ、お前ら仲違いしたんじゃないのか?」

 

 堀北さんから俺と綾小路君に視線を移した龍園君。

 仲違いとは、無人島試験での対決の事を言ってるんだろう。

 

「……仲直りしただけだ」

「ほぉ、俺に猿のパシリを売ったのにか? おいパシリ、こいつはお前を俺に売ったんだぜ? それなのに仲良くするのか?」

「友達だもん。喧嘩だってするさ。その事についてはもう解決したから大丈夫だよ」

「はっ、そうかよ。……にしてもだ。あの時はよくも俺を嵌めてくれたなぁ、鈴音ぇ?」

「? 嵌める?何のことかしら?」

「とぼけんなよ。俺が失格になったのはお前の仕業だろう? 大方腰巾着を使って、俺が失格になるように仕向けたかったんだろうがな」「意味が分からないわ」

 

 堀北さんが意味が分からないのは当然だ。だって俺と綾小路君で勝手に起こしたいざこざだもの。堀北さんは完全無関係だ。

 

「堀北さんは関係ないよ。俺達の喧嘩に君が巻き込まれただけだから」

「あ? 巻き込まれただぁ?」

「そうだよ。……あと、君を失格にさせたのは俺。あそこに行く前に、先生を呼んで近くで待機してもらってたんだよ」

「……そうかよ」

 

 そう言うと、龍園君は俺の顔に自分の顔を近づけた。

 

「……なら、この前のお礼をしねぇとなぁ」

「……暴力でもする気?」

「いや、別の方法でお前に復讐してやるよ。楽しみにしてろよ? 猿のパシリ」

 

 そう言ってこの場を去ろうとする龍園君。

 俺は去っていく彼の背中に言葉を投げかけた。

 

「——ねぇ!」

「あ?」

「狙うなら俺を狙ってね? もし別の誰かに手を出そうとするのなら……死ぬ気で止めるぞ」

「.......はっ、言ってろよパシリ」

 

 俺の言葉を鼻で笑って、龍園君はどこかに去っていったのだった……。




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