ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ 作:コーラを愛する弁当屋さん
堀北や綾小路と別れたツナは、その足でマンションの女子棟に向かい、櫛田桔梗の部屋を尋ねていた。
「……わかった。3人に、明日も勉強会に参加してほしい……って、伝えればいいんだね?」
「うん。お願いします」
「もちろんだよっ。せっかく出会えたのに、すぐにお別れなんて、絶対嫌だもん!」
理由は、須藤・池・山内の3人に、また明日も勉強会に参加するように、櫛田から呼びかけて欲しかったからだ。
——翌日。
次の日の朝。教室についたツナに櫛田から、池と山内しか参加を承諾しなかったと報告が上がってくる。
それで十分だと、櫛田にお礼を言い、「須藤君は自分で説得するから気にしないで」と付け加えた。
その日の放課後、バスケ部の練習に行こうとする須藤に、ツナが声をかける。
須藤はあからさまに嫌な顔をするが、話は聞いてくれるようだ。
「今日の勉強会に参加しないの?」とツナが聞くと、須藤は「当然だ」と鼻を鳴らしながら答える。
このままでは、須藤は退学になる可能性が高い。
それでもいいのかとツナはさらに問いかける。
須藤は「今更足掻いても、どうにもならねぇよ」と答えるが、ツナはそんなはずはないと切り返した。
元々勉強嫌いの須藤が、わざわざ勉強が必須の特殊なこの高校に入るのは、卒業時に得られる「好きな進路に必ず進める」という特典を求めていたに他ならない。
そう簡単に夢を諦められるのかと、ツナが追求すると、須藤は諦めたいわけがないと大声で叫んだ。
「バスケ選手になる、その夢は絶対に諦めたくない。でも、勉強だけはどうしても苦手なんだよ……」
須藤らしからぬ、弱々しい声で吐露された、彼の本音。
クラスメイトのその声に、ツナはもちろん手を差し伸べるのだ。
まずは自分が信じること。それが一番大事だと、ツナはリボーンから学んだのだから。
「俺が手伝うよ」
「……は?」
「須藤君1人で無理なら、俺が支える。赤点を回避して、かつAクラスで卒業できるように!」
「……お前、何言ってんだよ。昨日見ただろ? 全然勉強できない俺を手伝っても、どうせ途中で嫌になるに決まってる」
須藤の言葉を、ツナは大きく首を横に振って否定する。
俺は絶対に見捨てないよ、と。
全力でサポートするから、一緒にAクラスで卒業しようよ、と。
ツナの本心からの言葉に、須藤は心が揺れ動いた。しかし、堀北が自分の参加を認めないのではないかと心配をしているようだ。
心配する須藤に、ツナはとあるノートを手渡す。そのノートには、堀北が昨晩考えた「須藤達にも理解しやすい勉強計画」が、記されていた。
そのノートを見つめる須藤に、ツナはさらに言葉をかける。
「そのノートが、堀北さんの須藤君を助けたいって気持ちを、なによりも証明してくれてるよ」
パラパラとノートをめくっていた須藤は、突然パタンとノートを閉じた。そして、バスケ部用の体育館とは真逆の方向へと、スタスタと歩き始めた。
「え、須藤君?」
「何ぼーっとしてんだよ、沢田。早く勉強会に行こうぜ!」
「! うんっ!」
こうして、ツナと堀北の思いを受け止め、須藤も勉強会に参加してくれることとなった。
その後の須藤達は、少しづつだが、テスト範囲の内容を理解できるようになっていく。
さらに、「先輩達から過去問を買う」という綾小路のナイスアイデアで、Dクラスのテスト対策はさらに万全となった。
——はず、だったんだ。
テストの結果発表、当日。
黒板に、全員分のテスト結果が張り出される。
勉強会の効果があり、ほとんどの者が普段以上の成績を収めている。
これで赤点はいないだろうと、暖かな空気になるDクラスだが……それは大きな間違いだった。
ツナ達は、「クラスの平均点が上がれば、必然的に赤点ラインも上がってしまう」という簡単なことを見落としていたのだ。
「須藤。お前は赤点だった。残念ながら退学となる」
「は、はぁ!?」
今回の赤点ラインは40点。須藤は39点で、あと1点足りなかった。
須藤も反論しようとするが、担任の茶柱はそれをにべも無く突っぱね、さっさと教室を出て行ってしまった。
退学者が出てしまったことで、沈黙するDクラス教室。須藤でさえも、もう吠える気力も無くしてしまったようだ。
誰もが口を開かず諦めムードの中。ツナは学生証端末を握りしめ、1人席を立つ。
「……堀北さん。茶柱先生って、ホームルームの後はいつも屋上に行ってるよね」
「え? ……ええ、喫煙者だから、たばこを吸っているのでしょうね」
「だよね。よし、じゃあ、俺行ってくる」
「……行くって、何しにだよ」
「——当然、須藤君の退学を取り消しに!」
最後の言葉でクラス中の視線を集める。
だがツナは気にせずに廊下へと出て行った。
堀北の情報通り、茶柱は屋上でタバコを吸っていた。
ツナは茶柱に、ある取引を持ちかける。
「茶柱先生。須藤君の足りない1点、ポイントで買わせてください」
ツナがそう切り出すと、茶柱は大声で笑い始める。
「まさか、テストの点数を売ってくれと言い出すとはなぁ」
「この学校では、ポイントで買えないものはない、そう言ったのは先生ですよ」
「ああ、確かに言ったな。だが沢田。その場合の売値は、教師側の言い値で決まるぞ」
「……いくらですか」
茶柱は少し考え込むフリをするが、本当は学校側で、明確にこういう場合の値段は決められているのだろう、と、ツナは超直感で感じ取っていた。
芝居がかった思考の末、茶柱はテストの1点を10万ポイントで売ってやろうと、ツナに告げた。
しかし、ツナの所持ポイントは7万ちょっとしかない。約3万ポイントが足りなかった。
どうしたものか、ツナがそう思案していると、後ろから堀北と綾小路が現れる。
どうしてここに来たのかと尋ねると、堀北に「あなたね。自分を信じろと言っておいて、勝手に決めて1人でなんとかするのは、どうなのかしら」と、呆れた顔で言われてしまう。
ツナは慌てて謝るが、堀北は気にしないでと言いながら、ツナの隣へと並ぶ。もちろん綾小路もだ。
「沢田君、私もポイントを半分出すわ」
「! え、いいの?」
「当然よ。だって私達は……パ、パートナー、なんだからっ///」
やはり恥ずかしいのか、また顔を赤らめる堀北。ツナはそれでも嬉しくて、笑ってお礼を言った。
「沢田、俺も少し出そう」
「え! 綾小路君もいいの?」
「ああ、乗りかかった船だからな」
綾小路もポイントを出してくれることになり、3人で10万ポイントを払うと茶柱に告げると、茶柱は須藤の退学取り消しを約束してくれた。
茶柱は安堵している3人に対して「いまだかつてDクラスが昇級した前例はない。それでもAクラスに上がるつもりか?」と問いかける。ツナと堀北は「もちろん」と即答し、綾小路は「サポートくらいは、するつもりです」と答えた。
その答えに満足したのか、茶柱はフッと笑い、「担任として見守らせてもらおう」と呟くと、屋上から去って行った。
その後、3人が教室に戻ると、須藤が不安そうに駆け寄って来た。
ツナが退学は取り消してもらったよと告げると、須藤は目に涙を浮かべてツナの肩をがっしりと掴む。
「ありがとうな沢田! いや、ツナ!」
「いいんだよ、あはは……ツナ?」
「おうっ! 今日から俺達は親友だぜ、ツナ!」
こうして、須藤の退学を取り消したツナに、この学校で初めての親友ができた。
さらに、ツナは他のクラスメイト達からも称賛を浴びる。
まるでこれまでの反応が嘘だったかのように、クラス中がツナに普通に接してくれるようになったのだった。
その日の放課後。ツナ・堀北・綾小路・櫛田。そこに須藤達3人組を加えての、祝勝会をツナの部屋で行うことになった。
道中、山内がツナの部屋番号をなぜか知っているなどの、ちょっとした事件が起こりつつ、一行はツナの部屋に到着した。
部屋では、盛大に祝勝会が開かれた。
当然と言えば当然だが、会話の話題には「須藤の退学を取り消した方法」が取り上げられる。
ツナは堀北や綾小路から、情報は隠した方がいいとアドバイスをもらっており、「ひたすら土下座して頼み込んで、自分の点数を1点分須藤に移した」と、ごまかしておいた。
すると、その話を聞いた須藤や池が、唐突に「ツナに関するあの噂」はでたらめだったんだな、と言い始めた。
ツナは自分に関する噂が気になり、池に噂について教えてもらうことにした。
池が語った、ツナの噂を簡単にまとめるとこうだ。
1. PPについて、ツナが教えてくれていたというのは、茶柱の嘘である。
2. 茶柱がそんな嘘をついた理由は、ツナの行動でクラスメイト達にポイントを無駄遣いさせることができれば、ツナだけボーナスでPPを受け取れるという取引を、ツナと茶柱の間で交わしていたから。
そして、上記の噂が書かれたメールが、5月1日の放課後にツナ・堀北・綾小路・長谷部・佐倉・高円寺以外のクラスメイト全員に送信されている。
ツナは、皆がこんな噂を信じて、今日まで冷たく接してきたのだと分かり、少し馬鹿らしくなった。
そんなツナに、綾小路が「5月1日はPPが貰えなくて、皆パニックになってたから、こんな噂でも真実と勘違いしてしまってもおかしくない」と、フォローを入れてくれた。
堀北の機転で、「最初のメールを送った、送信主のアドレスに何か心当たりはないの?」と、池に尋ねる。
聞かれた池は、これまでの受信メールの中に、その送信主と同じアドレスからのメールを見つけ出す。
そして、その送信主は。
……現在も一緒に祝勝会に参加しているクラスメイト。
——山内春樹だったことが判明する。
池や須藤が、どうしてこんな嘘のメールを流したのかと、山内を問い詰める。
山内は、その時は本当にそう疑っていたから、嘘はついていないと発言。
そして「悪かったと思ってるから、頼むから許してくれ」とツナに懇願する。
内心では警戒を続けながらも、「もう疑いは晴れたから、気にしなくていい」と、ツナは山内を許した。
本人が許すならと、他のメンバーもこれ以上この話はしないということで決まり、祝勝会はその後も日が落ちるまで続けられたのだった。
——その日の夜。1人で敷地内を歩いている山内に、リボーンが姿を見せずに声をかけた。
「お前、どこのファミリーの回し者だ?」
「ほう、それを聞いてくるって事は、あんたはボンゴレの関係者ってわけか」
「どうしてツナに関する、嘘の噂を流した?」
いくつかの会話で、山内がツナを狙った裏社会からの刺客であることを聞き出したリボーン。
山内は、自分が「ジョーコファミリー」という中国生まれのマフィアが、世界各地に持っている奴隷の1つ〝Schiavo Giappone〟であることを告白する。
山内はジョーコファミリーからの命令で、ボンゴレⅩ世を抹殺する為に、この学校に入学した刺客だったのだ。
ボンゴレは学校との取り決めで、学内で発生する問題には一切関与することができないという制約がある。そこを利用しようということだろう、とリボーンは判断した。
任務遂行の為、ツナを孤立させようと嘘の噂を流したのだが、うまくいかなかったと憤慨する山内。
そんな彼に、リボーンは「お前ではツナは殺せない、諦めろ」と断言してみせる。
だが山内は、必ずボンゴレⅩ世——沢田綱吉を消すと宣言し、夜の闇へ消えて行ったのだった。
——その様子を、すぐ近くで見ていた者がいた。
綺麗な銀髪の上に帽子を被り、片手で杖をつく少女。
1年Aクラスの坂柳有栖である。
リボーンと山内のやりとりを聞いた坂柳は、マンションに自室に帰ると、部屋で待っていたクラスメイト「山村美紀」にそのことを楽しげに話す。
その話を聞いた山村美紀。いや山村
しかし、彼女の言葉もどこ吹く風な様子で、好奇心で一杯になっている坂柳。
そんな坂柳を、ユニはとても不安そうな目で見つめるのであった。
読んでいただきありがとうございます♪
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