ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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今回から原作6巻編です!


原作6巻編 その① 副会長就任

 

「……」

「……あ、綱吉君。そこ間違えてるよ」

「え? あ、本当だ。ありがとう帆波ちゃん」

「へへへ〜」

 

 体育祭が終わってから数日後の放課後。俺は生徒会室で、生徒会役員としての仕事に邁進していた。

 

 新人だからと、基本的に同じ1年である帆波ちゃんとペアになって作業をすることになったのだが、帆波ちゃんはとても仕事ができるようで迷惑をかけっぱなしである。

 

「おーおー。相変わらずイチャイチャしてんねぇ君達」

「してませんよ!」

 

 友達なこともあり、和気藹々と仕事をこなす俺達は、まるでカップルのようだと2年の先輩達からからかわれてしまうこともある。まぁ、それでも何とか生徒会のメンバーとして仕事をこなしているのだが、本当の本番は明日からだ。

 

 実は明日、新旧生徒会の交代式が執り行われるのだ。そこで現生徒会長の堀北先輩は生徒会から引退し、現副会長の南雲先輩が新会長となる。——ちなみに俺は、新副会長です。

 

 ……いや、俺も驚いたんだよ。入ってすぐに副会長なんてびっくりだし。でも堀北先輩から副会長の座に付いてくれと言われたし、南雲先輩までも俺の副会長就任に賛同してしまったから、受け入れざるを得なかった。それに、副会長じゃないと出来ないこともあるし、ね。

 

 ——実は体育祭の翌日、俺は堀北先輩に「どうして俺を生徒会に入れたかったのか」という疑問を直球でぶつけていたのだ。

 

 

 

 〜 体育祭翌日 〜

 

 

 

「堀北先輩、どうして俺を生徒会に入れたかったのか、教えてもらえませんか」

「……ああ。もう少し先に話すつもりだったが仕方ない、今話しておこう」

 

 俺は堀北先輩の考えを聞いた。

 堀北先輩が俺を生徒会に入れたかった理由を簡単に言うと——。

 

「南雲雅を、生徒会長の座から更迭して欲しい」

 

 ……ということだった。

 

「え、どうしてそんなことを?」

「お前も生徒会に入れば知るが、南雲は非常に危険な考えをする男だ。奴が生徒会長として君臨し続ければ、この学校の仕組みは崩壊してまうだろう」

「……それを防ぐ為に、南雲先輩を更迭させたい、と。……あの、まだ正式に生徒会長になったわけではないですし、事前に防ぐ方法とかはないんですか?」

「事前に防ぐには、生徒会長選挙で南雲を当選させないようにするしかないんだが……これは無理だ。奴は2年全体を、その手中に収めているからな。まず投票戦では勝てないし、そもそも対抗馬の参戦させようにも、すでに締め切りが過ぎているんだ」

「……なるほど。やはり生徒会長になった南雲先輩から、その座を奪い取るしかないってことですね」

「ああ。もう実力行使しかないだろう」

「それで、その実力行使を行う役目を、俺に頼みたいわけですね」

「……すまない、俺の任期では間に合わなかった」

 

 申し訳無さそうに頭を下げる堀北先輩。すぐに頭を上げるように促す。

 

「頭を上げてください。結局は俺自身が受けると決めたんですから」

「……ああ。ありがとう」

 

 顔を上げた堀北先輩は、わずかにずれたらしいメガネの位置をなおした。そして軽く咳払いをし、続きを話し出した。

 

「それでだ。南雲を生徒会長から更迭する方法だが、これも簡単なことではない」

「というと?」

「南雲は、今の生徒会規則を色々と改編しようとしていてな。その中に、〝生徒会役員の任期を卒業するまでとする〟というものがある」

「! 南雲先輩は、卒業するまでこの学校を牛耳るつもりってことですか」

「そうだ。つまり、その改正案が通ってしまえば、任期満了での退任という時間制限も無くなってしまう」

「……任期以外で、生徒会役員が退任したりするパターンってあるんですが」

「今の生徒会規則では、学校から不適切と判断された場合のみだな」

(……どうする。間違いなく優等生である南雲先輩を、生徒会役員として不適切だと学校に判断させるのはとても難しいだろうな)

 

 何か解決策はないかと思案していると、堀北先輩が助け舟を出してくれた。

 

「難しいことに変わりはないが、南雲が行う他の改革の中に、南雲の牙城に亀裂を入れられそうなものがある

「え、それはどういう」

「それは——」

 

 

 

 〜 現在 〜

 

 

 

 堀北先輩から教えてもらったその改正案は、確かに上手くすれば南雲先輩を更迭するのに役立つものだった。まぁそれでも相当難しい戦いになるのは間違い無いけれど。

 

 そして、実際に成功させる為には、俺が副会長の立場にいる方がいい。そういうことで、前会長である堀北先輩からの推薦を受けての、俺の副会長としての生徒会入りが決まったのだ。南雲先輩本人も俺の副会長就任に賛同してくれたのは僥倖だったのかもしれない。

 

 

「ついに明日から、正式に副会長就任だね〜」

「うん。今から緊張しちゃうよ」

「あはは、綱吉君なら大丈夫だよ!」

 

 その日の仕事を終えた俺は、帆波ちゃんに励まされながらその日は帰宅したのだった。

 

 

 

 

 —— 翌日、朝。講堂にて ——

 

 

 

 

 生徒会交替式、当日。

 交替式は、前生徒会長の任期終了から幕を開けた。

 

「それでは、堀北生徒会長より、最後のお言葉を賜りたいと思います」

 

 司会の言葉と共に堀北先輩が、ゆっくりとステージに用意されたマイクへと歩みを進めた。

 

 2〜3年の先輩たちは、堀北先輩の勇退を見守るように、しっかりとした眼差しで見つめている。

 

「約2年、生徒会を率いて来られたことを誇りに思うと同時に感謝します。ありがとうございました」

 

 短く簡潔に、それでも沢山の思いが詰め込まれていたであろう挨拶が終わり、堀北先輩は静かに後退し元の位置に戻った。

 

 さぁ、前生徒会長の引退セレモニーの後は、新生徒会長の就任式である。

 

「堀北生徒会長、今までお疲れ様でした。それではここで、新しく生徒会長に就任する2年A組南雲雅より、お言葉を頂戴いたします」  

 

 そう呼ばれ、新たな生徒会長に就任した南雲先輩が歩みを進め、マイクの前に立った。

 

「2年Aクラスの南雲です。堀北生徒会長、本日まで厳しくも温かいご指導のほど、誠にありがとうございました。歴代でも屈指のリーダーシップを発揮した最高の生徒会長にお供できたことを光栄に思うと共に、敬意を表したいと思います」

 

 そう言い、堀北先輩の方に深々と頭を下げる南雲先輩。それから再び在校生に向き直る。

 

「改めまして自己紹介させて頂きます。南雲雅です。この度、高度育成高等学校の生徒会長に就任させて頂くことになりました。どうぞこれからよろしくお願いいたします」  

 

 普段の南雲先輩そのままに、穏やかな空気で進んでいく新生徒会長の挨拶だったが、南雲先輩が薄く小さく笑ったその時から、空気が変化していく。

 

「早速ではありますが、まず始めに、私は生徒会の任期と任命、総選挙のあり方を変更することを公約します。堀北前生徒会長が、例年12月に行われていた総選挙を10月に変えられたことは1つの試みだったと思います。早い段階で次の世代に移れるようにした配慮は一定の効果を生み出しました。そこで新しい生徒会は新たなステップへと踏み出す時期と判断し、生徒会長及び生徒会役員はその任期を在学中無期限とし、卒業まで継続できるように変えていきます。同時に総選挙の制度と規定人数の制限を撤廃し、生徒会役員を常に受け入れられる体制を作り上げて参ります。つまり優秀かつ必要な人材はいつでも、そして何人でも生徒会のメンバーとして活動できるようにしていきます」

 

 南雲先輩が行う予定の改革。生徒会メンバーはすでに大方の概要はしらされているが、他の生徒達にとっては驚きの内容ばかりだろう。

 

 

「万一任期中不適格だと判断された人材がいれば、会議にて多数決を行い、それをもって除名する規約も作ります」

 

 ——これだ。この改正案が、南雲先輩の牙城に亀裂を入れられる可能性のあるものだ。

 

 俺は今後、何かしらで南雲先輩が生徒会長に不適格だという訴えを起こし、さらに他の生徒会役員から賛成票を集めないといけない。2年生は南雲先輩の手中にあると考えると、2年生の生徒会役員を味方に引き入れるのは簡単ではないだろう。

 

「これを手始めとし、ここに集まっている生徒、先生方、そして前生徒会長の率いた生徒会の皆さんに宣言させていただきます。私はこれからの学校作りとして……まずは歴代の生徒会が守ってきた、こうあるべきという学校の姿を全て壊していくつもりです」

 

 そう強く言い放つ。まるで、背後に立つ前生徒会の功績を全て否定するかのような発言だな。

 

「本来なら、今すぐにでも私の考える新体制として動き出したいところなんですが、残念ながらそうもいきません。新米生徒会長には色々としがらみも多いもので」

 

 南雲先輩が堀北先輩を見るが、すぐに在校生の方へと振り返る。

 

「近々大革命を起こすことを約束します。実力のある生徒はとことん上に、実力のない生徒はとことん下に。この学校を真の実力主義の学校に変えていきますので、どうぞよろしくお願いします」

 

 その宣言に、一瞬体育館は静まり返った。だが直後、2年生のほぼ全員が歓喜の悲鳴を上げて盛り立てた。俺達1年生は知らないだけで、上級生同士の確執があったのかも知れない。そう感じさせるような出来事だった。

 

「以上で、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました」

 

 礼儀正しく一礼する南雲先輩に、2年生から惜しみない拍手が送られる。

 

 これで生徒会交代式も終わりか……誰もがそう思い、司会が式の終了を告げようとしたその瞬間。南雲先輩が再び口を開いた。

 

「それでは、以上を……」

「待ってください」

「え?」

 

 司会の言葉を止めた南雲先輩はなぜか俺の方に振り返り、そして俺のことを片手で指し示した。

 

「本当なら式事にはない項目ですが、ここで新生徒会副会長にも何か挨拶をしてもらおうと思います」

「!」

「さぁ、これから私と共に学校を改革していく右腕をご紹介します。新生徒会副会長、沢田綱吉君です!」

 

 2年生から歓声が上がり、俺が挨拶をしないといけない状況を作られてしまった。他の生徒会メンバーからも早く行けと言われ、俺はステージ中央に設置されたマイクへと歩き出した。

 

 その途中、俺とは反対に袖に戻ろうとする南雲先輩に、すれ違い様に肩を叩かれる。

 

「いいスピーチを頼むぜ、沢田」

「……わかりました」

 

 俺の返事に満足したのか、南雲先輩は笑顔でステージ袖に戻っていく。その背中を一瞥し、俺はステージ中央のマイクの前に立った。

 

「……」

『……』

 

 全校生徒の視線を感じながら、短く静かに深呼吸。そして、副会長としてスピーチを開始する。

 

「……只今ご紹介に預かりました、1年Dクラスの沢田綱吉です」

『!?』

 

 ——ざわざわ……。

 

 俺がDクラスだと分かると、上級生たちから驚愕の声が複数上がる。やはりDクラスの生徒が生徒会入り、それも副会長になるなんて前代未聞なのかもしれない。

 

 困惑と蔑み、そして少しの期待する視線を全身に受けながら、スピーチを進めて行こう。

 

「今回、堀北前会長の推薦と、南雲新会長の快い歓迎を受け、新生徒会副会長の任に就くことになりました。選んでいただけたからには、この学校がより良い学び舎になるように全身全霊で生徒会役員として動くことをここに誓います。その主な仕事として、南雲会長の右腕として力を奮いたいと思います」

 

 ここまで話して、チラリと袖にいる南雲先輩に視線を向けると、ご満悦な様子で笑顔を浮かべていた。どうやらご希望のスピーチはできたようだ。

 

 ——さて、ここからは俺の決意表明とさせてもらおう。ここで言う必要はないのかもしれないけれど、俺の方針は全校生徒に知らしめておきたい。南雲先輩と戦おうと言うのなら、俺と言う存在が南雲先輩よりも優れていると過半数の生徒に思って貰わないといけないからな。

 

「……しかし、自分の中に信念を持つことも忘れないでいきたいと思います。私の生徒会役員としての信念は、この学校や生徒にとって、1番良い選択肢を選んでいくということです。この信念に従い、もしも他の生徒会役員と意見の相違があった時は、例え相手が上級生……例え相手が()()()()だとしても、恐れずに意見を戦わせるつもりです」

『……』

 

 ……2、3年から鋭い視線が飛んできているのが分かる。でもこれでいい。これで俺が、相手が生徒会長だとしても戦う男だということは周知できた。これは必ず今後の南雲先輩との戦いで生きてくるはずだ。

 

「……以上で私の挨拶。そして決意表明とさせていただきます。ありがとうございました」

 

 深々と一礼し、頭を上げる。すると、講堂の一番端っこの方から拍手が湧き上がった。そこは、俺のクラスである1年Dクラスが並んでいる場所だ。クラスメイト達からの惜しみない拍手で、今のスピーチをやってよかったと思えた。

 

(……ありがとう、みんな)

 

「それでは、これで生徒会交替式を終了とさせていただきます」

 

 司会による閉会の言葉を聞きながら、ステージ袖へと戻る。袖では満面の笑みを浮かべる南雲先輩が待っていた。

 

「いいスピーチだったな、沢田」

「どうも」

「……だが、最後のあれはどういう意味かな?」

 

 笑顔の南雲先輩から、冷たい風が吹き込んでくる感覚がする。これは怒っているのか、単純にあんな発言をした理由を聞きたいのか……。

 

「そのままの意味です。副会長である俺は、会長の右腕という1番の味方であると同時に、1番意見をするべき立場だと思うので。……会長の求める副会長像とは違いましたか?」

 

 俺がそう答えると、南雲先輩は笑いながら首を振った。

 

「フフフ、いいや——最高だよ沢田。それでこそ、俺と一緒に覇道を歩む男にふさわしい。これからもよろしくな、沢田副会長」

「はい。南雲会長」

 

 そう言うと、南雲先輩は満足そうにステージ袖から去って行った。

 

 俺もステージ袖から去ろうとした時、ふいに視線を感じた。視線の方に目を向けると、そこには堀北先輩と橘先輩がいた。2人とも微笑んでいて、俺と視線が合うと、堀北先輩は何も言わず頷いて見せた。俺もただ頷き返し、ステージ袖から離れた。

 

(よかった、堀北先輩にも希望を持ってもらえたみたいだな)

 

 

 —— その後 ——

 

「ツっ君、お疲れ様」

「うん、ありがとう軽井沢さん」

「ツナ君、ビシッとしててカッコ良かったよ〜♪」

「あはは、ありがとう桔梗ちゃん。でもちょっといいすぎたかな〜って思ったりして」

「そんなことないわ。副会長ならあれくらい言って当然よ」

「あ、堀北さん。そうかな〜」

 

 教室に帰ろうと講堂を出ると、軽井沢さんと桔梗ちゃんが待っていてくれた。そこに堀北さんも加わり、おしゃべりをしながら教室に戻っていた時だ。

 

 クラスメイトの佐藤麻耶さんに声をかけられた。

 

「あ、あのっ。沢田君!」

「! 佐藤さん? どうしたの?」

 

 足を止めて返事をすると、佐藤さんはなぜかモジモジしながら人気のない講堂の裏側を指さした。

 

「あの、なんていうか……ちょっと顔貸してくんない? 話があってさ」

「? うん、わかった。ごめん皆、先に教室に戻ってて」

 

 軽井沢さん達と分かれ、俺は佐藤さんと一緒に講堂の裏へ向かう。

 

「……ちっ」

「えっ、櫛田さん? 何か言った?」

「ううん、何も言ってないよ〜♪」

「そ、そう?」

「うんっ! ね〜、堀北さんっ」

「……そうね」

 

 

 〜 講堂裏 〜

 

 

 講堂裏の人目がないところまで来ると、佐藤さんは立ち止まり、髪を指で弄りながら話し始めた。

 

「ちょっと変なこと聞くけどさ……沢田君って誰か付き合ってる人とかいるわけ?」

「えっと、それってどういう意味?」

「そのままの意味に決まってるじゃん。彼女はいるのかってこと。……どうなの?」

 

 いるかいないかと聞かれれば、もちろんいない。

 自慢じゃないけど、モテないんですよね。

 

「いないよ」

「ふぅん、そうなんだ……。じゃあさ、今彼女は募集中ってことでいいわけ?」  

 

 バカにするわけでも、哀れむわけでもなく、佐藤さんは口元を緩めた。

 

「ん〜、彼女募集中ではないけど。まぁ出来れば嬉しいかな〜とは思う」

 

 まぁ、今彼女を作っている余裕なんてないというのが正直なところだ。

 

「そ、そっか。じゃあさ、友達からでいいから───その、連絡先交換してよ」

「連絡先? うん、もちろんいいよ」

 

 学生証端末を取り出し、メールアドレスと電話番号を佐藤さんと交換する。交換を終えると、佐藤さんは嬉しそうに学生証端末を制服のポケットにしまった。

 

「あの。もう1つお願いがあるんだけど……わ、私もツナ君って呼んでもいいかなっ!?」

 

 食い気味な佐藤さんの迫力に、少したじろいでしまう。

 

「う、うん。もちろんいいよ。じゃあ俺も麻耶ちゃんって呼んでもいい?」

「! うんっ! えへへ♪」

 

 すごく嬉しそうだけど、麻耶ちゃんは異性の友達もたくさん作りたい人なのかな。正直彼女とはこれまで特に深い関わりもなかったんだけど、そうしたいきっかけでも何かあったんだろうか。

 

「でもどうして急に、俺と友達になってくれる気になったの?」  

「……」

 

 そう聞くと、麻耶ちゃんは少しだけ頬を赤らめて、視線を逸らした。

 

「どうして、って……体育祭のさ、リレー。沢田君凄く格好良かったって言うか。今までこんな近くにいたのに全然ノーマークだったって言うか。クラスじゃさ、平田君が1番かなって思ってたけど軽井沢さんの彼氏だからどうしようもないじゃない?」  

(ん? 平田君?)

 

 そう言った後、麻耶ちゃんは俺のほうを見上げ、慌てて言葉を付け足す。

 

「あ、だからって沢田君が平田君以下なんてもう思ってないって言うか。正直、良く見ると平田君より格好いい気がするし、優しいし……と、とにかくそういうわけなのっ!」

「……」

 

 なるほど、本当は平田君と仲良くなりたいけど、1人じゃ無理そうだから俺を通じて仲良くなりたいってことだね?

 

「なるほど、よく分かったよ。でも俺を介さなくても 、平田君は優しいからと仲良くなれると思うよ」

「えっ? えっとあの……何を勘違いしてるのかは分からないんだけど、そこまで鈍感だと困るというか、それも素敵っていうか〜」

「?」

 

 麻耶ちゃんが困ったような顔になっている。どうしたのだろう。

 

「〜。と、とにかく用件は済んだからっ。私先に教室に戻ってるね!」

「あ、麻耶ちゃん!?」

 

 ——脱兎の如く、麻耶ちゃんは走り去って行った。

 

(……な、何かまずいことでも言ってしまったのか?)

 

 麻耶ちゃんが急に去って行った理由がわからず、俺は首を傾げながら1人教室へと戻った。

 

 

 ——その日の昼休み、昼食を食べながら麻耶ちゃんのことを綾小路君に相談してみた。

 

「……ってことがあってね。何か気に触ること言っちゃったのかな」

「……お前、本当に変なところで鈍感だよな」

「えっ?」

 

 綾小路君は呆れたようにため息を1つ吐く。

 

「はぁ……前から思っていたがな。お前って普段はすごい洞察力や直感力があるのに、こと女子のことに関しては鈍感にも程があるだろ」

「いやいや、そんなことないと思うけどな」

「あるんだよ。多分お前、何か呪いでも架けられてんじゃないか」

「呪い!? どうしてそう思うの?」

「そこだけ異常に鈍感だからだよ。多分、異性に対してだけ直感が効かなくなって鈍感になる枷、みたいなものが付けられているんじゃないか。裏社会になら呪いとかあるだろ」

「うっ! あ、あるね……」

「え——いや。俺から言ったことだけど、本当にあるのかよ」

「あっ……」

 

 しまった。裏社会のことをポロッとこぼしてしまった。

 

「い、今のは誘導尋問だよ!」

「何も誘導してないぞ」

 

 その後は2人でたわいもない話をしつつ、昼休みは過ぎて行った。

 




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