ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作6巻編 その② 新たな試験と新たな決意

 とある日のホームルーム。ガラリと教室のドアを開き、茶柱先生が教室に入ってくる。

 

「……席につけ」

 

 いつもならホームルーム前や授業前は、割と騒がしいのが我らDクラスなのだが、今日はとても静かだ。

 

「フフ、随分と事前準備が出来ているようだな」

 

 茶柱先生も、いつもの俺達との違いをわかっているだろう。控えめにニヤリと笑う。

 

「揃いも揃って真剣な顔つきだ。とてもあのDクラスとは思えないな」

「だって今日は、中間テスト結果発表の日っすよね?」  

 

 やや緊張した面持ちで池君が言う。それを見て茶柱先生はまたもニヤリと笑った。

 

「その通りだ。中間、期末テストで赤点を取れば即退学。緊張や不安を抱くのは当然のことだろう。だが、お前達は今までその当然の気構えすら出来ていなかった。成長した姿を見られたことは喜ばしく思う」  

 

 珍しく俺達を褒めた後、茶柱先生は普段通りのキリッとした表情に戻った。

 

「ではこれから中間テストの結果を貼り出す。自分の名前と点数を間違えないように」

「やっぱりテストの点数は全部見られるんですかっ」

「もちろんだ。この学校のルールだからな」  

 

 この学校では、強制的にクラス全員分の成績が公表されてしまう。プライバシーなんて一切ない。

 

「全教科平均して合格点は40点以上が目安と思っておいて結構だ。それ未満の点数を取った者は必然的に退学処分となるだろう」  

 

 これまでのテストと赤点ラインはほとんど変わらない。でも、状況は少し異なっていた。

 

「今から発表する点数には体育祭での結果も反映されている。活躍した者の中には結果として点数が100点を超えた者もいるが、等しく満点扱いだ」  

 

 この間あった体育祭で結果を残せなかった下位10名には、中間テストにおける10点の減点措置が取られることが決まっていた。Dクラスからも、博士がその対象者になっている。まぁ博士なら赤点を取ることはないだろう。

 

 とは言え、ペナルティを負っていない者達の表情も強張る。赤点を取れば即退学という制度は、それだけ生徒の心身に強い負荷をかけるのだろう。

 

 ゆっくりと貼りだされていく試験結果を固唾を呑んで見守る生徒達。  

 

『お、おぉっ!?』

(ほっ……)

 

 ざっと全体を見たけど、赤点をとっている人は誰もいないようだ。よかった。今回も退学者はなしだね。

 

「っしゃぁぁ!」

「嘘だろ? 健に負けただと!?」

 

 急に須藤君が大声を出したが、それも仕方がない。彼は今回の試験、平均57点という大躍進を遂げていたのだから。

 

「一気に自己記録大幅更新! 見たか、しかも平均60点まで後一歩だぜ!」

「その点数程度で騒がない、あなたの場合は体育祭の貯金もあった。みっともないわよ」

「ぐっ、お、おうっ。わかってるぜ、鈴音!」

 

 小躍りし始めた須藤君に、ぴしゃりと放たれる鈴音さんの一言。しかし須藤君は気落ちすることはなく、冷静に座りなおした。

 

 多分、怒られた悲しさより、嬉しさの方が勝っているんだろうな。

 

 体育祭で学年別の最優秀生徒に選ばれれば、鈴音さんのことを名前で呼ぶ、と言う約束をしていた須藤君。結果としては最優秀生徒にはなれなかったけど、鈴音さんが彼の頑張りを汲んでくれて、特別に名前呼びを許可したのだ。

 

 ……ちなみに、ナチュラルに俺も堀北さんのことを名前呼びしてるけど、これは鈴音さんから、お互いに名前呼びすることを提案されたからであって、どさくさ紛れに呼んでいるわけではない。

 

「……まるで忠犬だな」

「ぶっw」

 

 後ろの席から放たれた綾小路君の一言に、思わず吹き出してしまった。

 

 須藤君が席についてクラス内が少し静かになると、再び茶柱先生が口を開いた。

 

「今回の中間テストによる退学者は見ての通り0だ。無難に試験を乗り越えたな」  

 

 またも素直に生徒を褒める茶柱先生。

 

「当たり前だ。おうおう、来月のPPも楽しみにしてるぜ先生」  

「そうだな。体育祭も特に問題は無かった。11月のPPもある程度期待して良いだろう。それにしても、私がこの学校に着任してからの3年間、過去Dクラスからこの時期までに退学者が出なかったことは一度もなかった。良くやった。そしてこの学校の創設以来、Dクラススから生徒会役員が出るのも初めてだ。よくやったな、沢田」

「あ……はいっ!」

 

 褒めるように、茶柱先生が俺を含めクラスの生徒全員を評価した。

「な、なんかむず痒いな」

「確かにな」

 

 俺達Dクラスは普段から褒められることが少ないからか、照れ臭そうな人が少なくない。 ただ、俺の後ろの席の2人に気の緩みは一切ないようだ。

 

 もちろん赤点が無かったことは喜ばしいんだけど、茶柱先生が褒めただけで話を終わらせるような人物ではないと考えてのことだろう。

 

 その考えが正しいことは、茶柱先生が次の話に入ったことで分かった。 

 

「——さて、ここからが本題だ」

『!』

 

 急に空気が変わり、照れていた生徒達も一斉に背筋が伸びる。まるで茶柱マジックである。

 

「お前達も分かっていると思うが、来週、2学期の期末テストに向けて8科目の問題が出題される小テストを実施する。既にテストに向けて勉強を始めている者もいると思うが、改めて伝えておく」

「げえっ! 中間テストが終わってホッとしたばっかなのに! またテスト!」

 

 寒い季節になり始め、勉強が苦手な生徒達が苦しむ時期が立て続く。学生であり続ける限り逃れることの出来ないテストの嵐だ。昔は特に嫌だったけど、今でも俺は憂鬱です。特に2学期はテストの間隔が短いしね。

 

「つか小テストまであと1週間だったっけ! 聞いてないッスよ!」

「聞いていないは通用しない。そう言いたいところだが、安心しろ池」

「マジっすか先生! 安心していいんスか!? やったぜ!」  

 

 池君の素直な発言を無視し、さらに視線を外し茶柱先生は言葉を続けた。

 

「まず第一に、小テストは全100問の100点満点となっているが、その内容は中学3年生レベルのものになっている。言わば基礎をきちんと覚えているかの再確認を兼ねたテストだということだ。更に1学期の小テスト同様に成績には一切影響しない。0点だろうと100点だろうと取って構わない。あくまでも現状の実力を見定めるためのものだ」

「お、おぉっ。マジっすか! やった!」

 

 池君は喜んでいるが、このトーンの茶柱先生の話がそんな甘いわけがないだろうな。

 

「だが——もちろん小テストの結果が無意味なわけでもないことを先に伝えておく。何故なら、この小テストの結果が次の期末試験に大きく影響を及ぼすからだ」

 

 ……やっぱり。体育祭が終わって間もないのに、もう次の特別試験が始まるようだ。

 

「次回行われる小テストの結果を基に『クラス内の誰かと2人1組のペア』を作ってもらうことになる」

「ペア、ですか」

 

 テストとは無縁そうな単語に、平田君が疑問で返した。

 

「そうだ。そしてそのペアは一蓮托生で期末テストに挑むことになる。行う試験科目は8科目各100点満点、各科目50問の合計400問。そして取ってはならない赤点が今回は2種類存在する。1つは今まで通りに近いが、全科目に最低ボーダーの60点が設けられており、60点未満の科目が1つでもあれば2人とも退学が決定する。この60点とはペア2人の点数を足した合計点のことを指す。例えば池と平田がペアだとするならば、池が0点でも平田が60点を取ればセーフということだ」  

 

 なるほど、成績優秀なパートナーがいれば相当楽な試験だな。その逆もしかりだけど。そして一蓮托生ということは、点数を共有するペアが両方脱落することになるわけか。  

 

 しかし、赤点が2種類あるとはどういうことだろうか。そう思っていると、茶柱先生は更にもう1つの赤点を説明しだした。

 

「もう1つの赤点の基準は、ペアの総合点だ。仮に8科目全てが60点以上であっても、ペアにおけるボーダー得点を下回れば不合格になる。まだボーダーの正確な数字は出ていないが、例年の必要総合点は700点前後となっている」

「……700点ということは、2人合わせて全16科目だから、1科目あたり平均……へ、平均〜」

「43.75点、だね」

 

 暗算しようとしていたら、隣の席のみーちゃんが教えてくれた。

 

「みーちゃん、ありがとう」

「えへへ〜」

 

 ふむ。組むペアによっては相当厳しいな。これは勉強会を頑張らないと……いや。その前に一手打たないとダメだな。

 

「ボーダーがまだ不明確とのことですが、それはどうしてでしょうか」

「そう急くな平田。総合点のボーダーラインについては後でしっかり説明しよう。期末試験は1日4科目の2日間に分けて行われる。それぞれの科目の順番はおって通達する。万が一体調不良で欠席する場合には、学校側が欠席の正当性を問い、やむを得ない事情が確認できた場合には過去の試験から概算された見込み点が与えられるが、休むに該当しない理由であった場合には欠席したテストは全て0点扱いとなるので注意するように」

 

 どうやら、例え高円寺君でも絶対に避けては通れない試験ということらしい。

 

「それにしても、お前達も少しはこの学校の生徒らしくなってきたな。以前であれば試験内容を聞いた段階で悲鳴を上げていただろうに」

「……そりゃ、慣れもしますって。色々やってきたんですから」  

 

 池君がそう答えたが、そこには僅かながらに自信も見えた。

 

「頼もしい発言だな池。そして、恐らくこの中にも同じように考えている生徒は少なくないだろう。だから1つだけアドバイスをしておく。1年の1学期を終えただけでこの学校の全てを把握した気にならないほうがいい。この先お前達は今よりもずっと大変な試験を何度もクリアしていかなければならないからだ」

「こ、怖いこと言わないでくださいよ先生」

「事実だから仕方がない。例えばだが、例年この特別試験……通称ペーパーシャッフルでは1組か2組の退学者を出している。そしてその脱落の大半はDクラスの生徒だ。けして脅しではなく本当の話だ」

 

 ここまでまだどこか楽観的だったクラスに、張り詰めた空気が流れた。

 

 ——特別試験ペーパーシャッフル、か。一体どういう意味なんだろう。

 

「ボーダーを下回ったペアは例外なく退学だ。私の発言が只の脅しだと思うなら上級生に聞いてみるといい。お前達もいい加減コネクションが出来始めただろうからな」

 

 しかしこれだけ過酷そうな試験なのに、例年1組か2組の退学者で済んでいるなんて奇妙だな。組み合わせ次第じゃ壊滅的な結果になりかねないのに……つまりはまぁ、今までのように突破口は必ずある、ということなんだろう。

 

「最後に、本番中のペナルティについてだ。当たり前のことだがテスト中のカンニングは禁止とする。カンニングした者は即失格とみなし、パートナー共々退学してもらう。これは今回の試験に限らず全ての中間、期末試験に該当することだがな」

 

 カンニングはまぁ、しなければ何も問題じゃない。本当の問題は、ペア制度のテストということだろう。

 

「肝心のペアの決定方法は、小テストの結果が出た後伝える。……それからもう1つ、期末試験では別の側面からも課題に挑んでもらう」

「もう1つ? まだ何かあるんですか?」

 

 Dクラスがまたも動揺する中、取りまとめるように平田君が応対してくれた。

 

「そうだ。まず、期末テストで出題される問題をお前達自身に考え作成してもらう。そしてその問題は所属するクラス以外の3クラスの1つへと割り当てられる。他のクラスに対して『攻撃』を仕掛けるということだ。迎え撃つクラスは『防衛』する形となる。自分たちのクラスの総合点と、相手のクラスの総合点を比べ、勝ったクラスが負けたクラスからポイントを得る。CPにして50ポイントだ」  

 

 つまり、今回の特別試験のポイントは3つ。学校が用意する赤点のライン各教科60点以上をペアで維持しつつ、例年700点前後とされる総合点のボーダーラインを超える。更に、クラス全体の総合点で対戦する相手クラスの総合点を上回る必要がある、ということか。

 

「僕達が問題を考え、他クラスの生徒に出題する……聞いたことがない話です。ですがそれは成立するんでしょうか。生徒が答えられないような問題を作れば、相当難易度の高いテストになってしまうと思いますが……」

「当然、生徒だけに任せたらそうなるだろう。そのため、作り上げた問題は私達教師が厳正かつ公平にチェックする。指導領域を超えていたり、出題内容から解答できない問題がある場合には都度修正してもらうことになるだろう。そのチェックを繰り返し、問題文とその解答を作成し完成させていく。今危惧しているような事態にはならないだろう」

「問題を400問作成、ですか……結構タイトなスケジュールになりそうですね」

 

 テストまで残り期間は1ヶ月ほど。1人で問題を作れば1日10問から15問作る必要があるわけだ。これはかなりキツそうだな。あんまり大人数で作るとクオリティーにばらつきも出るだろうし。

 

「万が一問題文と解答が完成しなかった場合、救済措置も残している。期限終了後、予め学校側が作っている問題に全て差し替えることになる。だが気をつけておけ、学校側が用意しているテストの難易度は低めになると思ったほうがいい」  

 

 ……そうなると、何が何でも問題文を完成させる必要があるだろう。

 

「問題を作る際、クラス内だけで決めようと教師に相談しようと、他クラス他学年の生徒に相談しようと、あるいはインターネットを活用しようと自由だ。特に制限は無い。学校側が容認できる問題であれば簡単だろうと難しかろうと、内容は問わない」

「僕達が挑む期末テストも、当然他クラスが考えた問題になるということですよね?」

「その通りだ。気になるであろうところは、肝心のクラスがどこなのか───だが、それに関しては単純明快だ。希望するクラスを生徒側が1つ指名し私が上に報告する。その際に別のクラスと希望が被っていた場合には、代表者を呼び出してクジ引きを行う。逆に被っていなかった場合には、そのまま確定となりそのクラスに問題を出題することになる。どのクラスを指名するかは来週行う小テストの前日に聞き取る。それまでに慎重に考えておくことだ」

 

まとめると、テスト問題を使ってどこかのクラスと1対1で行う決闘ってわけか。……これは複雑な思惑が絡み合うことになりそうだぞ。

 

「以上が小テスト、期末テストの事前説明になる。あとはお前達で考えることだ」

 

 そう茶柱先生は締めくくり、朝のホームルームは終了となった。  

 

 

 —— 昼休み ——

 

 昼休み、俺は1人で屋上にやってきていた。例の如く、今回の特別試験に合わせた特別課題の確認である。

 

 ドアを開き、屋上に出ると、少し高いところにある貯水タンクの上にリボーンがいた。

 

「リボーン、来たぞ」

「ちゃおっス。待ってたぞ」

 

 近づくと、リボーンはピョンと俺の前に飛び降りてきた。

 

「さて。今回の特別試験——ペーパーシャッフルにおける特別課題を発表するぞ」

「うん」

 

 毎度のことだけど、やっぱり緊張するな。

 

「今回の試験、お前がするべきことは——」

「うん……」

 

 今回はやけにタメるなと思いながら、ドキドキして待っていたのだが、リボーンの口から飛び出した課題は驚きのものだった。

 

「——ない」

「……はい?」

「お前がすることはない。むしろ、何かをしてはいけない」

 

 ど、どういうことだ? 特別課題の発表なのに、ないってどういう意味だ?

 

「えっと……意味不明なんだけど?」

「そのままの意味だぞ。お前はこの特別課題において何もするなってこった」

「何もするな!? それってどの程度だよ、まさかクラスの勉強会も参加しちゃだめとか言わないよな!」

「クラスの勉強会は、必要不可欠だからな。それに参加して、クラスメイトの勉強を見るのはかまわねぇ。大事なのは、お前がペーパーシャッフルにおいてクラスの指揮を取ったり、行動方針や出題問題を決めたりすんなってことだ」

 

 あ、なるほど。それで何もしないのが課題ってわけか。

 

「でも、何もしないってのは……」

「安心しろ。何も対策するなっていってるわけじゃねぇ。今回の課題では、お前がどれだけ仲間のことを理解しているのかを計るぞ」

「仲間のことを? ——あ、そういうことか!」

 

 自分なりに課題の意味を理解したその時、リボーンがニヤリと笑う。

 

「そうだ。この課題の本質は、お前が仲間のことをどれだけ理解し、信用しているかだ。つまり、普段ならお前が率先してやっているクラスを引っ張る役割。それをお前が1番適している思う仲間に任せ、そいつを信頼して全て任せろ——ってことだな」

 

 この課題で俺が求められていることは、大きく分けて2つ。

 

 1つ。仲間の適性を判断するために根本的に必要な、仲間に対する深い理解。

 

 2つ。自分で選んだ仲間を、何があっても信じ抜く覚悟。

 

 ——この2つだ。

 

 これまでの学校生活で、俺がどれだけの交友と信頼を積み上げてきたのか。

 それが試される課題ということだろう。

 

「よし、わかった」

「しっかりやれよ、ツナ」

 

 リボーンとの話が終わり、俺は校舎内へと戻る。歩きながら今回の特別課題について考えてみた。

 

(クラスの為に俺の代わりに動いてくれて、なおかつ俺が最も信頼できる仲間か。……ふふっ、そう考えるだけで、すぐにあの2人が頭の中に浮かんでくるな。まぁ当然か? なんせ()()()()()()()()だし)

 

 そして屋上から出て生徒棟に戻った時。見知った顔とばったり出くわした。……噂をすれば鈴音さんだ。ちょうど彼女のことを考えていたから、すこしびっくりしてしまう。

 

「綱吉君。よかった、ここにいたのね」

「あ、俺のこと探してたの? ごめん、ちょっと屋上に行ってたから」

「大丈夫よ。急ぎではない……いいえ、やっぱり急ぎの用だったから、すぐに見つかってよかったわ」

「? 急ぎの用?」

 

 首を傾げていると、鈴音さんはなぜか短く深呼吸をして、それから口を開いた。

 

「——綱吉君。今回のペーパーシャッフル、私と綾小路君に任せてもらえないかしら」

「えっ!? 任せるって……対策をってことだよね」

「そう。今回の試験に関する対策の一切を、私達に任せて欲しいの」

「!」

 

 なんというタイミングだ。俺からお願いしようと思っていたことを、鈴音さんからお願いされるとは思っても見なかった。

 

 ……そうする理由もなんとなく分かるけれど、彼女がそうしたいと思っているなら、きっと課題がなくとも俺は受け入れたと思う。

 

「……わかった。今回俺はサポートに徹すればいいんだね」

「! ええ。綱吉君には、勉強会での先生役をお願いするつもりよ」

「了解。それ以外のことでは、大人しくして口を出したりしない。それでいい?」

「ええ。それでお願い」

 

 ——よし、俺はしっかりとサポートをしよう。そう決めて鈴音さんと一緒に教室に戻る。

 

「……ねぇ綱吉君」

「ん?」

「理由とか……聞かないのね」

「ん〜。聞かないほうがいいかなって思ったから。それに、俺は君達の事——」

「信頼してる、かしら?」

「あはは、耳にタコだったかな」

「そんなことないわ。あなたならそう言うだろうなって思ったから。あと、私もあなたを信頼してる……そう言いたかっただけよ」

 

 

 —— 放課後、side綾小路 ——

 

 

「作戦会議よ、綾小路君。平田君に声をかけてもらえるかしら」

 

 放課後になるなり、堀北は立ち上がりそう言った。

 

 沢田はすでに生徒会に行ってしまったが……沢田抜きで会議をするつもりなのか?

 

「了解」

 

 短く答えた俺は、平田に声をかけに行く。その間に堀北は須藤に声をかけていた。

 

 数分後、堀北の机の周りに平田・軽井沢・須藤・櫛田の4人が集まった。

 堀北が櫛田も呼んだようだが、以外だな。

 

「お待たせ、今度の試験の対策かい?」

「ええ。早めに話し合っておきたくて」

「でもさ、ツっ君なしで進めてい〜わけ?」

 

 沢田の不在を気にする軽井沢だが、堀北は即答で切り捨てる。

 

「綱吉君には許可を取ってあるわ。私達だけで話を進めておきましょう」

「俺は鈴音に従うぜ!」

「そうだね」

「あの、どうせなら場所を変えない? パレットとか」

「いいね! 私も櫛田さんに賛成〜!」

 

 櫛田が場所を変える提案をし、軽井沢がそれに賛同した。

 

「わかったわ。4人は先に行っててもらえるかしら。私と綾小路君は、少し私用を済ませてから行くわ」

(? 私用?)

 

 堀北の提案に4人とも同意し、特に異を唱えることもなく承諾して先に向かった。一方俺は堀北に連れられて、屋上へとやってきた。

 

 

 〜屋上〜

 

 

「良かったのか? 櫛田を仲間に引き入れて。沢田には確認とったのか?」

 

 櫛田桔梗はDクラスにとっては貴重な戦力だが、堀北や俺とは犬猿の関係だ。そしてこの前の態度を見る限り、今回も邪魔してくる可能性は高い。

 

「彼女は貴重な戦力だもの、当然引き入れるわ。あと最初に言っておくけれど、今回の特別試験では綱吉君の力は借りないことにしたから」

「……は?」

「本人にもそうお願いして、受け入れてもらっているわ。彼にはサポートに徹してもらう」

「……いやいや。どうしてそんなことするんだ?」

 

 一体堀北は何を考えているんだ。沢田にサポートを頼んで、実働は俺と堀北でやるなんて。

 

「……今の私達には、すぐにでも解決しないといけない問題があるでしょう?」

「……櫛田か?」

「ええ」

 

 体育祭の後、俺と堀北は櫛田の異常なまでの沢田への心酔っぷりと執着、俺達に対する異常なまでの嫌悪を目の当たりにした。

 

 確かにこの問題を解決しない限り、俺達は毎回何かあるたびに櫛田との水面下でのいざこざをしないといけなくなってしまうだろう。

 

(堀北はその争いに、沢田を巻き込みたくないってわけか)

 

「ペーパーシャッフルを利用して、櫛田と決着をつける気か?」

「ええ、そのつもり」

「……だが、沢田なら勝手に気づいて、なんとかしようとしてくるぞ。あいつはそういう奴だろ」

 

 沢田なら揉め事に気づかないはずはない。堀北や櫛田の微妙な空気の違いで、すぐに気づかれてしまうだろう。

 

「そうね。だから、彼には今回の試験に口出しを一切しないように言ってある。全てを私達にまかせて、とね」

「! ……お前、そこまでして沢田を巻き込まないようにしたいのか」

「当然よ。だって、これは私達と櫛田さんの問題だもの。当人同士で解決するのが筋だわ」

「……決着を付けられる見込みでもあるのか」

「彼女に期末試験で勝負を持ちかけるわ。それで決着を付ける」

 

 ……つまりは、純粋な点数勝負ってことか。

 

「……俺とお前、それぞれと勝負してもらうつもりか?」

「いいえ、勝負は私の櫛田さんでする。あなたには、自らの進退を私に賭けてもらうわ」

「お前が櫛田に負けたら2人揃って退学、ってわけか」

「ええ。それくらいじゃないと、勝負に乗ってくれないでしょうから」

「……」

「……なに?」

 

 堀北の考えを聞いて、俺は正直驚いていた。

 櫛田との問題は、堀北にとって己の退学を賭けてでも解決したいほどのレベルなのか。

 

「いや、お前が自身の退学を賭けてでも、櫛田との問題を解決しようとするなんて。って思ってな」

「……そうね。以前の私ならスルーしていたか、綱吉君に助けてもらっていたでしょうね」

 

 堀北は可笑しそうに軽く笑った。今までの自分とのズレが可笑しかったのだろうか。

 

「……でも、この問題だけは自分の手で解決したい。綱吉君の隣に、自信を持ってこれからも立っていられるように」

「……沢田の隣に、ね」

 

 なるほどな。こいつが今抱えている感情は、体育祭の後、坂柳と話した時に俺が感じた感情と同じようなものなのだろう。

 

「綱吉君からもらった〝パートナー〟という言葉は、心の中でとても大事なものとして今もずっと残っているの。——だから、この言葉は誰にも譲れないわ。当然櫛田さんにもね」

「……そうか」

「それで……どうするの? 私の賭けに乗ってくれるのかしら?」

 

 堀北は話が終わると、改めて俺の目を見つめながら確認する。

 

 ……その質問に対する答えは、1つしか持ち合わせていない。

 

「ああ。俺も同じような気持ちだし、その賭けに乗ってやる」

「——決まりね。もちろんあなたにも働いてもらうわよ。ペーパーシャッフルじゃないけど、私達はある意味ペアでもある、運命共同体なんだから」

「……だな」

 

 最終確認として、お互いに頷き合う。

 そして、2人同時に作戦会議の場であるパレットへと向かって歩き始めた。

 

「……堀北」

「何?」

「……負けんなよ」

「……当然よ」

 




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