ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

52 / 67
投稿だいぶ遅くなっちゃいました( ;∀;)


原作6巻編 その⑥ 結成、沢田グループ

 

 少人数グループの勉強会が終わり、次は勉強会の第2部に参加する時間だ。1部2部の勉強会は大人数なので、学校の図書館を利用する。

 

 

 

 —— 図書館 ——

 

 

「へー。図書室ってこんな風になってんだー」  

 

 俺の隣で、麻耶ちゃんが興味深げに呟いている。  

 

「私図書室って入るの初めて。ツナ君は?」

「俺は何回も来てるよ」

「そっか。前から勉強会にも参加してるもんね」

「うん、というか最近までは勉強会でしか来てなかったよ。最近、読書目的で週に1回くらい来るようになった」

「へー。ツナ君、読書するんだ」

「そうは言っても、他クラスの子がお勧めの本を毎週選んでくれるから、それを読むだけなんだけどね」

「……えっ? 他クラスの子って、女子?」

「うん。Cクラスの椎名ひよりちゃん」

「……」

 

 麻耶ちゃんの表情が固まる。どうしたのだろう。

 

「麻耶ちゃん?」

「……ま、まぁライバルが多いのは織り込み済みだし? 負ける気もないし?」

「ん? なんかやる気になったみたいだね。その意気で、勉強会を頑張ろう!」

「う、うん」

 

 複雑そうな麻耶ちゃんと共に、Dクラスが集まっている一角へと向かう。すでに先生役の平田君と桔梗ちゃんは待機していた。

 

「あ、2人ともお疲れ様」

「ツナ君お疲れ〜♪」

「お疲れ様。2部も、3人で頑張ろう」

「そうだね」

 

 挨拶を済ませ、俺は席に着くことにする。平田君と俺は教えるグループが違うから、彼とは違うテーブルへと着いた。

 

「ツナ君、私たちはここでやろっか♪ 平田君、私達はこっちのテーブルで始めるね」

「うん。わかった」

 

 桔梗ちゃんが俺の隣の椅子に腰掛けると、まだ席に着いていなかったMEDIUMグループのクラスメイト達も、そのテーブルへと集まってきた。

 

「ツッ君、頑張ろうね」

「うん。俺達ペアだもんね」

「私の勉強も見てね」

「もちろん」

 

 2部の勉強会には、ペーパーシャッフルにおけるペアである軽井沢さん。そしてもちろん麻耶ちゃんも参加する。

 

 あれ。でも2人とも部活やってないから1部参加だったんじゃ……まぁいいか。

 

 勉強会は問題なく進んでいき、予定通り2時間で終わりとなり、各自解散となった。

 

「ツナ君、一緒にマンションに帰ろうよ」

 

 皆が帰り支度を始める中、麻耶ちゃんにそう声をかけられた。

 

(この後はまだやることがあるし、せっかくだけど断ろう)

 

「ご——「あははっ♪ ダメだよ佐藤さーん」——え?」

「え?」

 

 断ろうとしたその時、なぜか桔梗ちゃんが会話に加わってきた。

 

「ダメって、なんで?」

「ツナ君はこの後まだやることがあるんだよ。ねぇ〜ツナ君?」

「あ、うん。ごめんね麻耶ちゃん。俺はまだ帰らないんだ」

「そっか……でも、どうして櫛田さんはそれが分かったの?」

「簡単だよ、ツナ君いつもトレーニングしてるから。今日は勉強会があったしトレーニングはまだしていないんじゃないかな〜って思っただけ」

「そ、そうなんだ」

 

 桔梗ちゃんには何度かトレーニング中に遭遇したことがあるし、俺がトレーニングする理由も話してあるから、そう考えてもおかしくないな。

 

 ——でも、わざわざそれを言うために話に加わってきたのはなんでだろう。今までこんなことはなかったのに。

 

「……あの、桔梗ちゃん」

「ん? どうしたのかな?」

「何かあったんだよね?」

「……ううん。何もないよ」

「……本当に?」

「うんっ、本当に♪」

「……そっか」

 

 やっぱり今の俺では、君の本心を引き出すことはできないのか。

 

 

 

 

 ——  数日後 ——

 

「……では、これでお願いします」

「わかった。放課後には準備しておこう」

「ありがとうございます。また当日の注文ですみません」

「かまわないさ。またいつでも来なさい」

「はい。じゃあまた放課後に!」

 

 学校に行く前に、ケヤキモール のとある店に寄った。プレゼントも用意したし、後は放課後に2人を家にお誘いするだけだな。

 

 

 

 〜 放課後 〜

 

「ごめん、お待たせ」

「遅かったな沢田」

「一度家に帰ってたんだ」

「なんで?」

「おい、全員揃ったんだし、さっさと勉強会を始めるぞ」

 

 

 早いもので、少人数勉強会も今日で5回目となった。いつものようにパレットで集まり、6人で席に着く。そして昨日の復習をざっとやって、幸村君が作ってくれている問題用紙を3人に配る。もうお決まりの流れだ。

 

「うわぁ〜、今日の問題も容赦ないねぇ」

 

 問題を見るなり、長谷部さんが嫌そうに呟いた。

 

「うぅ……私の問題も難しそう」

「3人の勉強進行度合いを見て、ちゃんと考えて作ってる。よく考えれば解けるはずだぞ」

「……確かに、取っ掛かりは分かるから、頑張れば俺達でもなんとかなりそうだぞ」

「え〜。なんでみやっちはそんなにやる気なの? 熱血系?」

「違う。せっかく部活が休みなんだから、遊びたいだろ。今日はこの問題を解ききれば終わりだからな」

 

 今日からテストが終わるまで、勉強のために部活動は休みになる。いつもは忙しい部活組も、遊ぶ時間ができるというわけだ。

 

「ん〜、まぁ早めに終わるにこしたことはないけどさ」

「だろ。教えてもらってるわけだし、この時間は頑張ろうぜ」

「わかったよ。んじゃ、頑張る為にお代わり取って来ようかな」

 

 コーヒーカップを手に取り、長谷部さんが席を立った。

 

「また砂糖マシマシか? あんな激甘よく飲むよな」

「私からすれば、ブラック飲む方が理解に苦しむけどね」

「……分かる」

 

 分かる。俺もまだブラックコーヒの旨さは分からない。おかげでリボーンからのガキ扱いからなかなか抜け出せない。

 

 

「じゃあいってきまーす……わっ!」

 

 長谷部さんはテーブルの脚に少し躓き、手に取りかけていたカップを床に落としてしまう。  コロコロと回転して転がるカップを、何となしに目で追う。すると、カップは1人の男子生徒の足元まで転がっていく。

 

「あ、ごめ───」

(!)

 

 謝って拾い上げようとする長谷部さん。その頭上に小さな影がかかろうとした、その瞬間。

 

 俺は死ぬ気の臨界点突破を行い、スーパー化した状態で長谷部の元に急ぐ。

 

 ……そして。

 

 ——ズダンっ!

 

「えっ!」

「……ちっ」

 

 長谷部のカップに迫っていた男の足を、屈んで自分の腕で受け止めた。

 

 その音が響いたせいか、騒がしかったパレットに静寂が訪れる。

 

「ちょ、沢田君。だいじょうぶ?」

「問題ない。……ほら、無事だよ」

 

  反対側の手でカップを拾い上げ、長谷部に手渡す。

 

「あ、ありがとう——ってそうじゃなくて! 腕大丈夫なの?」

「ああ。大丈夫だ。なんのダメージもない。それより……いつまで俺の腕を踏みつけているつもりだ?」

「……おっと悪いな。虫と間違えちまったみたいだ」

 

 腕から足が退けられ、男の笑みが視界に入る。

 

「虫? コーヒカップと虫を見間違えたのか?」

「そうだが?」

「嘘をつけ。わざと潰そうとしていただろ」

「はっ。言いがかりも甚だしい。間違えたもんは間違えたんだよ」

「……お前、まだ懲りてないんだな。——龍園」

 

 長谷部のコーヒーカップを潰そうとした男。それはCクラスの龍園翔だった。

 

 奴は背後にいつもの取り巻きを連れ、嫌味な笑みを浮かべながら、すぐ近くの席に座っている勉強会メンバーを見回す。

 

「随分と楽しそうだな。俺らも混ぜてくれよ」

「何よあんたら……」

 

 長谷部が警戒心を一気に強め、龍園を鋭く睨み付ける。  

 

「ていうかさ。間違えて踏んだなら、すぐに足を退ければいいじゃん」

「気づくのが遅れたんだよ。仕方ねぇだろ、なぁお前ら」

 

 龍園と取り巻き達が笑いだす。同時に、背後で三宅が立ち上がった。

 

「おい龍園。前々から言いたかったんだけどな、そういう態度はいい加減やめろよ」

「俺が何したって言うんだよ。ただ挨拶しようとしただけだろ」

「何が挨拶だよ。完全に嫌がらせしてただろうが」

「はぁ。相変わらずDクラスの奴らは言いがかりばかりだな」

「てめぇ!」

「落ち着け三宅。こいつのペースに呑まれるな」

「っ。……そうだな、すまん沢田」

 

 手が出そうになった三宅を抑え、代わりに俺が相手をする。

 

「龍園。俺達は忙しいんだ、用件があるなら手短に済ませてくれ」

「何もねえよ。今日は本当にただの挨拶だけだからな。お前らに伝えておくぜ。近いうちに改めて会いに来る」

「どういう意味だ」

 

 俺の質問を無視して、龍園は取り巻きたちを連れてカフェを出て行ってしまった。

 

 一瞬静寂に包まれた店内だったが、すぐに活気を取り戻し勉強ムードを取り戻した。 俺も死ぬ気状態を解除する。

 

「……なんかごめんね長谷部さん。多分俺のせいで龍園君は——」

「気にしなくていいよ。むしろ助けてくれてありがとね、ツナぴょん」

「あはは……えっ、ツナぴょん?」

「うん、沢田君のあだな、ツナぴょんに決めた」

「あ、そうなんだ」

 

 男のあだなにしては可愛すぎないかな? 今までダメツナかツナとしか呼ばれてこなかったから余計にそう感じる。

 

「じゃ、私今度こそおかわり取ってくるから」

「うん、行ってらっしゃい」

「——あ、それなら大丈夫ですよ」

「え?」

「え? ……あ、ひよりちゃん」

 

 急に誰かに声をかけられたかと思えば、その声の主はひよりちゃんだった。パレットにいることには気づいていたけど、声はかけてこないと思っていた。

 

「あなた確か、Cクラスの子だよね」

「はい、椎名ひよりと申します。先程のクラスメイトの非礼に対するお詫び、になるかは分かりませんが、よかったらこれをお飲みください」

 

 そう言って、ひよりちゃんはコーヒカップを差し出してきた。

 

「えっ?」

「コーヒーです。おかわりをするご様子でしたので、よろしければどうぞ」

「あ、ありがとう?」

 

 ひよりちゃんへの反応に困っている様子の長谷部さん。龍園君と同じCクラスだからって、あいつのやったことの責任を負う必要はないからね。

 

「別にあなたに怒ってるわけじゃないし、それにごめん。私ブラック飲めなくて」

「ご心配なさらず。これは砂糖入りですので」

「あ、そうなの? じゃあありがたく……んっ。あれ、美味しい。さっき私が飲んでたのと全く同じだ」

「先ほどのカップの注文時に、砂糖を大量に投入されていたのを見ていたので。間違えていなかったようで良かったです」

 

 全く同じ量で砂糖を投入って。これが生粋の地球人の力……いや、ひよりちゃんの観察眼の力か。

 

「それでは、私はこれで」

「あ、うん。あの、コーヒーありがとね」

「ふふっ、いえいえ」

 

 長谷部さんに微笑んで、ひよりちゃんは俺の横を通り過ぎて行くが、真横を通る瞬間に小声で「一瞬での臨界点突破、さすがでした」と呟いていた。

 

(……本当にすごい観察眼だな)

 

 

 

 

 —— 勉強会後 ——

 

 

 

「ちょっとコンビニ寄ってっていいか」

 

 この三宅君の一言で、勉強会終わりに皆でコンビニに行くことになった。

 

 6人でコンビニの外に立って、買ったアイスを食べる。

 

「ん〜♪ がんばった後に食べるアイスも美味しいよね」

「分かる!」

「わ、分かる」

「甘党3人組はここでも気が合うのか」

 

 苦いのが苦手な俺・長谷部さん・佐倉さんがアイスを頬張る様を見て、幸村君がそう呟いた。 

 

 一方で幸村君はあまりアイスが好きじゃないのか、原材料を見ている。

 

「保存料と着色料のオンパレードだな」

「そんなとこいちいち気にしてたら、何も食べられなくない?」

「俺は食べるものにはこだわりたいんだ。無人島生活の後、体調を崩してそう思うようになった。今はケヤキモールのスーパーに売っているオーガニック食品中心だ」

「まじか、ガチなヤツじゃん」

「そもそもコンビニは単価が高い」

「細かいやつだなー」

 

 そんな会話をしながら、6人で笑ってアイスを食べる。

 

 こういうのいいよね。中学の時、獄寺君と山本ともこんな風に買い食いしたっけ。

 

「ふふっ」

「?」

 

 ノスタルジーを感じていると、ふいに長谷部さんが笑った。

 

「長谷部さん、どうしたの?」

「思い出し笑いでもしたのか?」

「ううん。そういうんじゃなくって。……こういう関係も悪くないな〜って」

「こういう関係?」

 

 言葉の意味を聞くと、長谷部さんはどことなく嬉しそうに話し始めた。

 

「ほら。私を含めて、ツナぴょんと綾小路君以外のメンバーは基本1人でやってきた系じゃん?」

「ああ」

「そうだな」

「う、うん」

 

 三宅君達が頷いて同意する。

 

「……いや、俺も1人でやってきた系だな」

「え。そういうこと親友の前で言う?」

「……親友?」

「体育祭で深まった俺達の絆はどこに行ったの!?」

 

 悪ノリする綾小路君と俺のやりとりに、6人の中で再び笑いが起きる。

 

「あははっ——でさ、この勉強会は意外と居心地がいいっていうかさ。だからさ、この6人で新しいグループを作りたいなって思ったんだ」

 

 ……新しいグループか。いいね。

 

「そうだな、悪くない」

「俺も、このメンツは一緒にいて楽だ」

「わ、私もこのメンバーと一緒にいる時間が好き、です」

「でしょでしょ? ツナぴょんは?」

「俺も、このグループは楽しいと思ってるよ」

「だよね〜。ゆきむ—は?」

「……俺は、お前達の勉強を見る為だけに一緒にいる」

 

 お。まさか幸村君はこのビッグウェーブに乗らない気なのか?

 ……と思ったら、そうではなかった。

 

 少し顔を赤らめながら、幸村君はメガネの位置を指で直しながら言葉を続ける。

 

「だが……こ、効率化のために、認めても構わない」

「なにそれ、分かりにくっ。でも……ありがとっ」

「ふ、ふん。退学者を出してこれ以上クラスの評価を下げないためだ」

「幸村君はツンデレなんだね」

「いや、こういうのはツンデレとは言わないだろ」

「とにかく。じゃあこれで決まりってことで。これから私達は沢田グループってことでヨロシク!」

「え、なんで俺中心なの?」

「このメンツを繋ぎ合わせたのは沢田だし、それでいいんじゃないか?」

「異議なしだ。勝手に幸村グループと名乗られても迷惑だしな」

 

 三宅君と幸村君も長谷部さんの意見に同調する。綾小路君と佐倉さんに至ってはコクコクと何度も頷いている。

 

 あ、これ断れない奴だ。

 

「それからグループ発足に当たってひとつ。これからは堅苦しい名字は禁止にしようよ」

「禁止にするのは勝手だが、俺はあだ名では呼ばないぞ。恥ずかしい。それ以前にバカみたいだろ」

「じゃせめて下の名前で呼び合おうよ。それならいいでしょ?」

「まぁ、それなら問題ない」

「はい決まり——。ちなみに私は波瑠加だよ」

「明人だ」  

「綱吉だよ」

「清隆だ」

「あ、愛里です」

「……」

 

 それぞれが下の名前を言い合う中、幸村君だけは言いにくそうに顔を歪めていた。

 

「幸村君の下の名前は……輝彦だったよね」

「……覚えていたのか」  

「へー、ゆきむーって輝彦って言うんだ。じゃあ輝彦で——」

「やめろ」

 

 強い口調で止められて、少しだけ長谷部さんが萎縮する。

 

「何かまずかった?」  

 

 明らかに態度が変わった幸村君に尋ねると、すまないと頭を下げられた。

 

「すまない。だが、俺を輝彦と呼ぶのはやめてほしい」

「え、なんで?」

「俺は、自分のその名前が嫌いなんだ。今まで誰も俺を下の名前で呼ぶことがなかったから気にしないようにしていたが、事情が変わった」

「……何か特別な理由があるってことか」

「……ああ。輝彦という名前は俺の母親が付けた。小さい頃に俺と姉、父親を置いて出て行った卑劣な人間だ。だから受け入れることが出来ないでいる」

 

 思った以上に重たい理由だったことを知り、長谷部さんと三宅君の表情が硬くなる。それを察してか、幸村君がすぐに話を切り上げる。

 

「すまない。余計なことを言ったな」

「ううん、私こそごめん。気をつけるよ」

「謝る必要はないさ。……そうだな。不都合がなければ、今後は啓誠と呼んでほしい。これも俺が小さい頃から使っている名前だ」

「啓誠?」

「父が名付けようとしてくれていた名前の方だ。母親が出て行った日から俺は自分自身でそう名乗るようにしている。もし納得がいかないなら今まで通り幸村と呼んでほしい」

 

 幸村君がそう決めていることであれば、これ以上追求することは出来ない。 それに複数の呼び名を持つ人と言うのは意外と少なくない。俺もボンゴレⅩ世だし。

 

「啓誠ね。わかった」

「それじゃあ、改めてよろしくね啓誠君」

 

 長谷部さん……もとい波瑠加ちゃんの言うように、気にせず希望する名前の方で呼んでいくことを決まる。

 

「ああ、よろしくな。……綱吉、清隆、明人。それに波瑠加と愛里」

 

 幸村君から全員が改めて下の名前で呼ばれる。俺も一度口に出しておこう。

 

「明人君に啓誠君に清隆君……波瑠加ちゃんに愛里ちゃん、よし。覚えた!」

「ふひゅううっ///」

「え、愛里ちゃん?」

「ふひゅう……///」

「愛里ちゃーん!?」

 

 突然、愛里ちゃんが顔を真っ赤にしてへたり込んだ。一体どうしたんだ!?

 

「沢……綱吉。それ以上愛里の名を連呼するな。死ぬぞ」

「死ぬ!?」

「……あ〜、なるほどねぇ」

 

 波瑠加ちゃんが何かを悟ったのか、ニヤニヤしながら愛里ちゃんを支えて立ち上がらせる。

 

「じゃあもう一度改めて。この6人がツナぴょんグループってことでヨロシク」  

 

 波瑠加ちゃんが、愛里ちゃんの手を取って、男子組の前に手を出した。それで何をするか悟った俺達も、同様に手を出し、6人の手が重なる。

 

 これで、正式にグループ結成ということなのだろう。

 

「……よしっ、じゃあ帰ろっか」

「そうだな」

 

 手を引いて、帰路に着こうとするグループメンバー達。グループ結成が決まった時に、とあることを考えていた俺は、歩き出そうとする5人を呼び止める。

 

「あ。ねぇ皆、この後もう少し俺に付き合ってくれない?」

「? 私はいいよ〜」

「わ、私もっ!」

「俺もいいぞ」

「少しなら、まぁいいだろう」

「……ああ」

「ありがとう。じゃあ皆を、俺の部屋にご招待します!」

『?』

 

 首を傾げる5人と共に、俺はマンションへと歩き始めた。

 

 

 

 

 —— ツナの部屋 ——

 

 

 

「おじゃましまーす」

「お、おじゃましますっ!」

「綱吉は最上階に部屋があるのか。いいな」

 

 様々な反応を示す5人を部屋に入れ、リビングに招き入れる。全員が椅子やベッドの上に腰掛けたことを確認し、リビングの明かりを全て消した。

 

 ——パチっ。

 

「! おい、なんで電気を消したんだ?」

「ごめん、少しそのままで我慢して」

「ツナぴょん? 何してるの?」

「まぁまぁ。とにかく待っててよ」

 

 明かりがないので、目を凝らしながらキッチンの冷蔵庫を開き、中からとあるものを取り出す。そして、横に置いてあったチャッカマンを使い、上に乗っている蝋燭に火をつける。

 

 蝋燭に火が灯ると、俺の周辺だけが明るくなった。シンク部分が壁になって、俺の持っているものは見えていないだろう。

 

「えっ?」

「蝋燭の明かりか?」

「なになに? 何が来るの〜?」

 

 皆の興味がキッチンに集中する中、俺はすっと立ち上がり、皆のいるリビングへと移動する。

 

「じゃーん!」

「っ!」

「わぁ! バースデーケーキじゃん!」

「今日、誰かの誕生日なのか?」

「へへへ。そうなんだよ。実は今日10月20日は、清隆君の誕生日なのです!」

「……」

 

 清隆君は、目を大きく開いて何も言わず固まってしまっている。

 その時、明人君が俺の持つバースデーケーキを見て何かに気がついたようだ。

 

「あれ、このチョコのメッセージボード。『清隆&愛里、ハッピーバースデー」って書かれてるぞ」

「えっ? 私?」

 

 明人君の言葉に、愛里ちゃんが驚く。彼の言う通りで、ケーキの上に乗ったホワイトチョコのボードには『清隆&愛里、ハッピーバースデー」と書かれている。

 

「愛里ちゃんは10月15日が誕生日だったでしょ? 当日にお祝いできなかったからさ、どうせなら清隆君の誕生日に2人を俺の部屋に呼んで、3人で誕生日パーティーをしてお祝いしようかな、って思ってたんだ」

「なるほど。それでタイミングよくこのグループができたから、俺達も誘ったってわけか」

「正解! 祝う人数は多い方がいいしね」

「そだねー、2人ともおめでとう!」

「おめでとう!」

「おめでとう」

「……」

「……

 

 主役の2人は、突然のお祝いに固まってしまっているようだ。

 

「じゃ、皆でバースデーソングでも2人に送ろうよ」

 

 波瑠加ちゃんの提案に乗り、4人で2人を祝う歌を唄うことに。

 

『ハッピーバースデー、トゥーユー〜。ハッピーバースデー、トゥーユー〜。ハッピーバースデー、ディア清隆&愛里〜。ハッピーバースデー、トゥーユー〜♪ ——おめでと—っ!』

 

 4人からの盛大な拍手を送る。その音で、2人は正気に戻ってきたようだ。

 

「あ……あの……そのだな」

「うう、うぅぅ〜。ありがとぅ〜」

 

 清隆君はどんな顔をしていいのか分からないのだろう。視線をあっちこっちに動かしている。一方で愛里ちゃんは涙を流していた。反応は違うけれど、無事に2人に喜んでもらえたようだ。

 

 蝋燭の火を2人に吹き消してもらい、リビングの電気を付ける。

 

「よし、じゃあケーキ食べようか。まだ皆食べれるよね?」

「もちろーん♪」

「俺は……少しでいい」

「俺もだ」

 

 ブラックが好きな明人君と啓誠君は、アイスでお腹いっぱいになったようだ。甘いものが別腹じゃないらしい。

 

 それぞれの要望を聞いて、ケーキを切り分ける。余った分は主役の2人のお土産にしてもらおう。

 

 

 

 ケーキを食べながら談笑し、場が大分落ち着いてきた。このタイミングだなと思った俺は、クローゼットに隠してあった包装された箱を2つ取り出す。もちろん2人へのプレゼントだ。

 

「清隆君、愛里ちゃん! 俺からの誕生日プレゼントです」

「っ、いいのか?」

「そんな……もう十分お祝いしてもらったよ?」

「そう言わず受け取ってよ。俺が祝いたくて準備したんだから」

 

 体育祭のおかげでPPも潤ってるし、2人が喜びそうなものを選んだんだ。ぜひとも受け取って欲しい。

 

「もらっておけよ、2人とも」

「そうそう。せっかくのツナぴょんからの気持ちなんだしさ」

 

 明人君と波瑠加ちゃんからの言葉が効いたのか、2人は一度顔を見合わせると俺からプレゼントを受け取ってくれた。

 

「ねーねー。何をもらったの?」

「さあな。……綱吉、ここで開けていいか?」

「うん。かまわないよ。愛里ちゃんも開けて見てよ」

「う、うん。じゃあ——」

 

  ガソゴソと音を立てながら、2人は包装を剥いでいく。包装の下から出てきたのは高級感のある箱と、前面が透明のプラスチックで、中にかわいらしいぬいぐるみが見える箱だった。

 

「! 高級紅茶の茶葉セットか」

「うん。清隆君、紅茶も好きでしょ? だからこういうのがいいかなーって」

「……ありがとうな、綱吉」

 

 清隆君には、イタリアの高級紅茶の茶葉とティーセット。リボーンに頼んで、ボンゴレに用意してもらったのだ。お金はポイント換算でリボーンに払ってるし、友達の為にボンゴレの力を使うこともI 世なら許してくれるだろう。

 

「わぁ、かわいい……」

「ほんと〜。かわいいくまだね〜」

「み—ちゃんに愛里ちゃんの好きそうなものを聞いたんだ。そしたらぬいぐるみが好きって言ってたから」

「ありがとう。つ、つつ、つつ綱吉きゅん!」

「あはははっ♪ 愛里噛みすぎ〜」

「うぅぅ……まだ名前呼びに慣れなくて」

 

 愛里ちゃんには、イタリアで大人気のテディベア。これもリボーンに頼んで取り寄せた。とにかく喜んでもらえてよかった。

 

「よーし。せっかくだし、初誕生会とグループ結成記念に、皆で記念撮影しようよ」

 

 波瑠加ちゃんが学生証端末を取り出しながらそう言う。すると、愛里ちゃんが自分の鞄からデジカメを取り出した。

 

「あの、私デジカメ持ってるから、こ、これで撮らない?」

「お。愛里いいねー。じゃあこれで撮ろ撮ろ!」

「並びはどうする?」

「リーダーのツナぴょんと、主役の2人が上でいいんじゃない? 私達は床上に座ろ」

「わかった」

 

 波瑠加ちゃん・明人君・啓誠君がベッド前のフローリングに座り、俺と主役の2人がベッドの上に座ることになった。

 

「じゃあ、タイマーセットします」 

 

 愛里ちゃんが勉強机の上にデジカメをセットし、タイマーをセットする。セットした愛里ちゃんは小走りで俺の隣に急ぐ。

 

「来るよ〜。はい、チーズ♪」

 

 ——カシャ。

 

 こうして、愛里ちゃんのデジカメに、俺達のグループの初めての記念写真が記録されたのだった。

 

 

 

 

 —— その後。side愛里 ——

 

 

 

 かちゃかちゃと音を立て、ノートパソコンをいじる愛里。液晶には、デジカメに保存されてる写真の一覧が表示されている。

 

 愛里はその内の最新の2枚だけをクリックし、写真のインポートを始めた。

 

 インポートされた写真はプリンターで印刷され、1枚を勉強机の上に設置されたコルクボードにピンで止めた。そのボードには何枚かの写真が貼られており、そのどれにも高度育成高等学校の1年生の数名が写っていた。

 

「これで、よし。あとは……」

 

 愛里は残った写真を大事そうに腕に抱え、机の鍵付きの引き出しに手をかける。

 

 鍵を開けて開くと、そこには1つの冊子のような物が入っている。表紙には、「MY Favorite OneScene」と書かれている。

 

 愛里は冊子を手に取ると、ページをめくる。中にはコルクボードと同じように写真が貼り付けられているが、全ての写真が同じ男女のシュツエーションの違うツーショットだった。

 

「……えへへ」

 

 写真を見ながら嬉しそうに笑った愛里は、残った1枚をその冊子の最新のページに貼り付ける。そして写真を貼り終えた冊子を引き出しを戻し、大事そうに鍵をかけた。

 

「……あ、そうだ。さっきの写真をグループチャットに送らなきゃ」

 

  パソコンから学生証端末に写真を送り、別れ際に作ったツナグループのチャットルームにも送信する。

 

 愛里:さっきの写真を送ります。

 

「これでよしっ」

 

 送信を確認した愛里は、手に持っている学生証端末を机の上に置き、すぐ後ろのベッドにダイブする。ベッドの上には、ツナからもらったテディベアが行儀良く座っていた。

 

 愛里はテディベアを手に持ち、ふわふわな感触を確かめると、今度は胸に抱きしめた。

 

「えへへ。綱吉君からプレゼントもらっちゃった♪」

 

 ぬいぐるみを抱きしめたまま、愛里はしばらくの間ごきげんにベッドの上を転がり続けるのであった。

 

 

 

 

 

 —— その後。side清隆 ——

 

 

 

 ——コポコポ……。

 

 白地に綺麗なオレンジ色の模様が入った新品のティーカップ。そこに、これまた新品のティーポットから紅茶が注がれていく。

 

「……いい香りだな」

 

 清隆は帰宅後、さっそくもらったティーセットで紅茶を淹れていた。

 

(ホワイトルームでも脳にいいという理由で紅茶やコーヒーを飲むことがあったが……香りが段違いにいいな)

 

 さすがは高級茶葉だと感心しながら、清隆は紅茶の淹れてあるカップと帰り際にもらったケーキの残りをダイニングテーブルへと運ぶ。

 

 テーブルに着き、まずは紅茶を一口。

 

「(ゴク)……うまいな」

 

 紅茶の上品な苦味が口に残っている内に、ケーキも一口。

 

(これも美味い。紅茶の上品な苦味とケーキの甘味がよく合う)

 

 あっという間にケーキを食べ終えた清隆は、紅茶のお代わりをしにキッチンに戻る。そして、カップを持ったままベランダへと出た。

 

 ベランダの塀に片腕を乗せながら、もう片方の手で紅茶を啜る。……やっぱり美味い。

 

 ふと空を見上げてみると、綺麗な満月が視界に入る。ぼーっと見ていると、入学してから今日までのツナやクラスメイト達との日々が蘇ってくる。

 

 もう一口紅茶を啜ると、学生証端末の通知が鳴った。別れ際に作った、グループチャットにメッセージが入ったらしい。

 

「愛里からか……」

 

 送られてきたメッセージを見て、清隆はフッと笑った。

 

 送られて来たのは愛里のメッセージと、記念写真。その写真に映る自分の顔が、なぜかとても嬉しそうに笑っているように見えたのだ。

 

 見たことのない自分の表情から、月の輝く空に視線を上げる。

 

 そして、こう呟いた。

 

「……誕生日って、嬉しいものなんだな。綱吉」

 




読んでいただきありがとうございます♪
感想もお待ちしてます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。