ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作6巻編 その⑧ 命を賭けて

 

 

 —— 放課後、職員室。side清隆 ——

 

 

「茶柱先生、これが最終決定稿です」

「わかった。預かっておこう」

 

 締め切り当日の放課後、俺と堀北は茶柱先生に問題文を提出した。

 

「……それで先生、櫛田さんは来ましたか?」

「ああ。今朝問題文を持ってきたぞ。お前達と同じようにな」

「では、やはり?」

「ああ、自分以外からの問題文提出は受け取るだけで受理はしないで下さいと言われたよ」

(やはり読み通りだったか)

 

 櫛田と俺達の勝負が決まった後、俺と堀北は具体的な戦術について話し合った。初めに考えたのが、櫛田の策略に対する対抗策だ。

 

 あの櫛田が何の策略もなしに真っ向勝負をするわけはない。俺達はお互いにそう考えた。そしてその具体的な策略についてだが、まず間違いなく龍園と取引をするだろうと読んでいた。

 

 櫛田と龍園はすでに繋がっているし、俺達が実際に解く試験問題はペーパーシャッフル における対戦相手、Cクラスが作成する物だ。その問題をあらかじめ入手できれば確実に100点を取ることができる。そしてその見返りに、Dクラスの問題文をCクラスに流す。

 

 こうすれば櫛田は絶対に負けることはないし、最悪でも引き分けにしかならないわけだ。

 

 そして対抗策だが、この取引が成立してしまえば俺達は最高でも引き分けにしか持っていけなくなる。しかもその為にはこちらも100点を取らなければならないからほぼ不可能に近い。……そんな事態を避けるために、俺達は取引自体が向こうになるように仕向けることしたのだ。

 

 櫛田から龍園に渡るであろう問題文。これが試験本番で使われないとなれば取引は不成立となり、櫛田にCクラスの問題が渡ることもなくなるはずだ。問題は櫛田がいつ試験問題を龍園に渡すのかだが、これは間違いなく締め切り当日だろう。

 

 もしも余裕を持って試験問題を渡してしまうと、訂正した問題文を再提出などされた場合に対応できないからな。だから最終決定の問題文が茶柱先生に提出された後に渡すか、あらかじめ別の問題文を用意して先に提出し、茶柱先生に自分以外から問題文を受け取らないように頼むかのどちらかの方法を選ぶはず。

 

 どちらの場合でも対応できるように、俺達は勝負が決まった翌日のうちに茶柱先生に「堀北鈴音以外からの問題文提出は受け付けない」という約束を取り付けた。そして平田・櫛田・堀北の3人で作った問題文が完成した後、レベルは同じくらいだけど全くの別の問題文を俺と堀北で作成した。問題文を提出した際、茶柱先生に櫛田が接触していなければ作り直した問題文を。逆に接触していれば本物の問題文を提出する予定だった。

 

 櫛田は後者を選んだようなので、俺達は本物の問題文を茶柱先生に提出する。

 

「……確かに問題文は受け取ったぞ。あとはCクラスが作成した問題文の対策だな……策はあるのか?」

「一応は。全力で対処します」

「そうか。陰ながら期待しておこう」

 

 そう言い、茶柱先生は職員室に戻って行った。残された俺達は軽くお互いを見合い、廊下を進み始める。そしてその途中、俺は学生証端末を取り出し、メールアプリを起動。とあるアドレス宛のメールを入力する。

 

 

 

 TO 龍園

 

 櫛田桔梗から受け取った問題は、ペーパーシャッフルでは使われない。取引は中止した方がいい。

 

 

 ——ピッ。

 

 

 

 メールを送信し、堀北に声をかける。

 

「……送ったぞ」

「ありがとう。……これで櫛田さんへの対策はひと段落ね」

「そうだな。後は取れるだけ高得点を取れるように、勉強するだけだ」

「ええ。今はただ純粋に学力で勝負できるようになっただけ。安心なんてしてられないものね」

「だな」

 

 後はひたすら、テスト勉強に集中するだけ。純粋な学力勝負なら堀北が勝てる確率は格段に上がるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……とか、思っちゃってるんだろうなぁ♪

 

 

 

 

 —— side桔梗 ——

 

 

「……ありがとうね、木下さん♪」

「ううん。私なりのけじめだから」

 

 Cクラスの木下さんから受け取った1枚のプリントを胸に抱え、私は屋上から廊下に出た。1年生のフロアに戻るために階段を降りていると、ポケットの学生証端末からメール受信音が鳴り響いた。

 

 ——ピロン。

 

 一度足を止めて、届いたメールを確認する。

 

 送信者は龍園君だった。

 

 

 

 TO 櫛田桔梗

 

 Cクラスの問題文を送る。

 

 from  龍園翔

 

 

 

 メールには1枚の画像データが添付されている。

 

 私は一度メールを閉じ、1年生のフロアまで降りると近くの女子トイレの個室に入った。

 

 個室の鍵を閉め、もう一度メールを開いて添付された画像を確認する。写っているのは、1枚のプリントだ。

 

 画像に写ったプリントと、先ほど木下さんからもらったプリントを並べて見比べてみる。

 

(……難易度的には同じだけど、問題文が全部違うね。と、いうことは……やっぱり堀北と綾小路が対抗策を打ってきたってことか)

 

 問題文を見ながら口角を上げ、私は学生証端末をポケットにしまった。そして個室から出て廊下に戻り、誰もいない廊下を歩き始めた。

 

 これで私の負けはない。堀北と綾小路は完全に油断してるはず。……その油断が命取りだとも知らずにね♪

 

「あ〜あ。せっかく前もって教えてあげてたのに。私、大事なことは2回確認しないと気が済まない、ってさ♪」

 

 

 

 

 

 —— side鈴音 ——

 

 

 

 

 茶柱先生に問題文を提出した私と綾小路君は、2人で廊下を歩いていた。

 

「で、試験勉強の方は大丈夫か」

「ええ。Cクラスへの問題を考える中で、色々な問題パターンを思いついたから。大体の出題パターンには対応できると思う」

「大体、ね。……足元を掬われないように気を付けろよ」

「わかってるわ。試験までは油断はしない」

「なら、いい」

 

 会話しながら廊下を歩いていると、廊下の突き当たりから出てくる生徒が目に入った。……木下さんだ。

 

 

「こんにちは、木下さん」

「あ、堀北さんこんにちは。あと……えっと」

「……綾小路だ」

「そうだ、綾小路君だったね。沢田君と仲のいい」

 

 彼の名前が出てこなかったのか、木下さんは申し訳なさそうに頭に手を添える。

 

「別に気にしてない」

「……あの、足の具合はどう?」

「え?」

「体育祭での事故で負った怪我。……もう運動しても大丈夫なの?」

 

 木下さんは陸上部のジャージを着ている。おそらくこの後部活に出るのだろうけど、もう走っても大丈夫なのかしら。

 

「あ、うん。もう完治したから、先週から陸上部の練習にも参加してるんだ」

「そう……よかったわ」

 

 よかった、本当によかった……。

 

「堀北さんは? 足はなんともない?」

「ええ。私はただの捻挫だったし、すぐに治ったわ」

「そっか……よかった。これで私も一安心できたよ。お互いに怪我も治ったし、間接的にでも堀北さんと沢田君の助けになれたみたいだし」

「え?」

「……助け?」

 

怪訝な顔になっている私達を、木下さんは不思議そうな顔で見つめている。

 

「……」

「……;

 

 私は周囲を見渡し、誰にも見られていないことを確認する。

 

「……ごめんなさい木下さん。少し場所を変えていいかしら」

「う、うん。大丈夫だよ」

(念のために、場所を変えて話を聞きましょう)

 

 彼女を連れて、彼女がさっき歩いてきた道を戻っていく。

 

 歩きながらふと思ったのだけど、この廊下の先にあるのは……屋上に登る階段だけだったはず。ということは、彼女は屋上から降りてきたところってことになるけど……どうして屋上から?

 

「あの、さっきまで屋上にいたの?」

「うん。櫛田さんと会ってたから」

「!」

「……なんで櫛田と?」

「それは——」

「待って、その続きは屋上でしましょう」

 

 

 

 —— 屋上 ——

 

 

 

 

「……それで、間接的に私や綱吉君の力になれたと言ったのは、どういう意味?」

 

 屋上の隅、入り口近辺がよく見える位置まで移動し、私はさっそく話を切り出した。

 

「えっと……堀北さんも知っていると思うけど、実は櫛田さんに頼まれたんだ」

「何を?」

「CクラスがDクラスに出す問題文、なんとか手に入れてくれないかって」

「!」

 

 つまり櫛田さんは、Cクラスの問題文を木下さんから手に入れようとした?

 

 龍園君からも問題文をもらえるはずなのに、一体どうして。

 

「……私達の読みが間違っていた、ということなのかしら」

「いや、それはないだろ。そうなら、櫛田が茶柱先生に偽の問題文を出す必要がない」

「……確かに。それもそうね。でもそれならどうして」

「……念のため、だろうな」

「え?」

 

 念のためって、まさか。

 

「……大事なことは2回確認しないと気が済まない。そう櫛田は言っていたな」

「まさか……問題文も、2人からもらってチェックしたっていうの?」

「ああ。木下は体育祭の一件でお前に負い目があるだろ? そこを利用したんじゃないか」

 

 確かに、木下さんは「堀北さんも知っていると思うけど」と前置きをつけていた。それは彼女が櫛田さんから頼まれた際に、私や綱吉君の名前を出したという何よりの証拠と言えるかもしれない。

 

「木下さん、どう言う言葉で問題文の入手をお願いされたの?」

「えっとね。今回の特別試験でDクラスがCクラスに負けちゃうと、堀北さんと沢田君が退学しちゃうことになるって言われたんだ」

 

 ……なるほど、それで木下さんの罪悪感を刺激したってことね。

 

「それで、どうにかできないかなって櫛田さんに相談を受けたの。2人で話を進めていくうちに、私がCクラスが作る問題文を櫛田さんに横流しするってことになったんだ」

「……なるほどな。それで、その計画はうまく行ったのか?」

 

 綾小路君の質問に、木下さんは頷いて答える。

 

「うん。ついさっき、櫛田さんに渡した所だよ」

「……そうか」

「……」

 

 これで櫛田さんは、龍園君と木下さんの2人から問題文を得たことになる。それらが意味することは……。

 

「……あの、どうかしたの?」

 

 不安そうに私達の顔を覗き込む木下さん。

 

 いけない。困ったことになったなんて知ったら、彼女はまた自分を責め続けることになる。それだけは避けなければ。

 

 私はできるだけ優しい顔を作り、木下さんに言葉を返す。

 

「なんでもないわ。ありがとう木下さん、本当に助かった」

「そう? それならいいんだけど……」

「そろそろ陸上部の練習が始まるでしょ? 私達はもう少しここに乗るから、あなたは部活に行って」

「うん。分かったよ。じゃあまた」

 

 木下さんは、嬉しそうに屋上から去って行った。

 

(よかった、少なくとも彼女のメンタルを傷つけることにはならなかった)

 

 しかし、こちら側には大きすぎる問題がいきなり現れてしまった。

 

「……櫛田さんにはすでに、私達の取った対抗策がバレている。ということなのね。そして、本物の問題文も手に入れてしまった」

「そうだな。むしろ、櫛田は俺達が対策を打ってくると考えていた、というべきかもな」

 

 

 思えば彼女は、私達が勝負を挑もうとする前に自分から勝負を挑んできた。おそらくその瞬間から、こうなることを見越していたのだろう。私達にこれまでの自分の裏切りを悟られたことさえも、彼女は自らの勝利への布石にしたのだ。

 

「……私達は、櫛田さんに勝負を挑んだその瞬間から、彼女の掌の上だったわけね」

「……だな。勝利への執念……いや、綱吉への執念が、俺達よりあいつの方が強かった、そういうことだ」

 

 綾小路君のその物言いに、私の感情が思わず昂る。

 

「……何よその言い方。もう負けが決まったみたいな言い方しないで!」

「……じゃあ、お前はここから勝つ方法があると思っているのか?」

「っ!」

 

 私とは対照的に、彼は冷静に現状を分析している。

 

 ……彼の言うことは正しい。櫛田さんがCクラスの出す問題文を手に入れてしまった以上、彼女は間違いなく100点を取ってくるだろう。それはつまり、「櫛田さんよりも高い点数を取る」こと。彼女との勝負に勝利することが完全に出来なくなってしまったということなのだ。

 

(……つぅ、甘かった)

 

 自分の考えた策が成功して、もうこれで負けはない。そう思ってしまっていた。櫛田さんに勝つことがそう簡単であるはずがないのに。

 

 血が出てしまいそうなほどに強く、私は自分の唇を噛み締める。

 

 ——悔しい。

 

 勝負はすでに付いてしまったのだ。まだ始まってもいないのに、すでに私に勝ちはなくなってしまった。……全ては私の甘さのせいで。

 

「……綾小路君。あなたには、ここから勝ちにいく方法があると思う?」

「質問に質問で返すな。だが答えるなら……ないな」

「そう、よね」

 

 勝ちの芽は完全に潰えた。これは変えようのない事実なのだ。

 

(……)

 

 思わず視線が地面へと落ちる。私は慌てて視線を上に挙げた。

 

 諦めるわけにはいかない。櫛田さんとの勝負に負けてしまえば私達は退学になってしまう。誇りと言ってもいい今のポジションを守るという目標も、ただの妄想に成り下がるのだ。

 

(そうよ。「綱吉君のパートナー私の居場所」は、たとえ死んでも譲れない)

 

 負けないようにするには、私も100点を取るしかない。しかしそれは……限りなく難しいことだろう。

 

「ねぇ綾小路君……Cクラスの考えた問題文、適当に選んだなんてことはないわよね」

「そりゃあな。櫛田と取引したくらいだし、龍園も今回の試験は勝ちにきていそうだが」

「そうよね……」

「——だが、そんな質問が出てくると言うことは、お前は100点を取りにいく気概がある、そういうことだな?」

「え?」

 

 綾小路君は私の目をじっと見つめている。私もじっと見つめ返して答えた。

 

「当然でしょ。負けるわけにはいかないわ」

「ならいい。残念ながら俺達に立ち止まってる暇はないみたいだからな。勝てないのなら、引き分けに持ち込むように作戦を変えるぞ」

「そうね。その方法を考えないと」

 

 私は目を閉じて、深く思考を巡らせる。私はどうすれば100点を取れるのだろう。不可能と思われることを、どうしたら実現できるのだろう。

 

 

 ——死ぬ気で。

 

(!)

 

 その時、頭の中に1つの言葉が浮かんできた。その言葉は、綱吉君がたまに口にする言葉だ。

 

「……死ぬ気で」

「え?」

 

 浮かんだ言葉をそのまま口に出すと、綾小路君がハッとした顔で私を見た。

 

「死ぬ気でって、綱吉君がたまに口にするじゃない。あの言葉の意味ってどういうことなのかしら」

「そのまま、命を賭けてっていう意味じゃないのか?」

「命を賭けて……」

「まぁ、命を賭けてやるなんて、そう容易いものでもないだろうけどな」

 

 その通りだろう。命を賭けてでも欲しいもの。守りたいもの。そういうものがないと本当の意味で死ぬ気でやるとは言えないはず。

 

 ——なら私はどうなの? 

 綱吉君のパートナーという居場所は、命を賭けてでも守りたいものなの?

 

 ……その答えなら、ついさっきに自分で出していた。

 

 『綱吉君のパートナー私の居場所は、たとえ死んでも譲れない』

 

 これが答えだ。私は、命を賭けてでも綱吉君の隣にいたいのだ。いままでも、そしてこれからもずっと。

 

 退学を賭けただけでは櫛田さんの綱吉君に懸ける想いには勝てなかった。ならば今度は、命を賭けて100点を取りにいくしかない。

 

 その為には……っ!

 

 頭の中に、唐突に閃きがあった。それは、さっきまで選択肢にもならなかった方法。普通なら絶対にやろうとなんてしない方法。……だけど、私が100点を取る為にはこの方法しかないと思えるもの。

 

(……やるしか、ないわね)

 

 私は覚悟を決め、綾小路君に声をかけた。

 

「綾小路君。私に1つ考えがあるわ」

「奇遇だな、俺も1つ思いついたぞ。多分お前と同じだがな」

「え? ……ふふっ、そのようね」

 

 どうしてかはわからないけれど、彼の考えていることは私と同じだと、何の引っ掛かりもなく確信することができた。

 

「じゃあ、早速動きましょう。私は木下さんに当たる」

「なら俺は龍園に当たろう。お互いに必要なものが揃ったら集まって作業……ということでいいか」

「ええ」

 

 綾小路君と頷きあい、私達は屋上の入り口へと歩き始めた。

 

 ——ガチャ。

 

「——あ」

『!』

 

 屋上の扉を開けて中に入ると、階段を上がってきている人と目があった。——綱吉君だ。

 

「あ、よかった。まだ屋上にいたんだ」

「綱吉君……どうしたの?」

「何か用か」

「さっき廊下で木下さんと会ったんだけど、2人が屋上で深刻そうな顔をしてるって聞いてさ。それで気になっちゃって。その、今回の試験中は口も手も出さない約束だから、遠巻きに様子を見ようかなって思ったんだよ」

 

 綱吉君は申し訳なさそうな顔をしながらそう答えた。

 どうやら心配で見にきてくれていたようだ。

 

「そう……」

「そうか……」

 

 綾小路君と目を合わせ、なんと答えようかと迷っていたのだが、先に綱吉君の方が口を開いた。それも、にっこりと笑って。

 

「でも、そんな心配いらなかったね!」

「え?」

「2人を見たら、何の心配もいらないって分かったよ。だっていつもの2人のままだし」

「……いつもの私達?」

「うん。いつものように鈴音さんは凛としてるし、清隆君もいつもどおりクールでキリッとしてる」

「凛とって……」

「クールで……キリッ?」

 

 綱吉君からはそんな風に見られていたと分かり、少し気恥ずかしくなる。

 

 だけど彼がそんな私達を見て安心できるのなら、きっとそれが1番いい。綱吉君に心配をかけるなわけにはいかないのだ。

 

(……)

(……こくり)

 

 綾小路君も同じことを思ったのだろう。私の目を見て頷いて見せた。

 

 私達は階段をゆっくりと降り始め、綱吉君の横を通り過ぎ、彼より一段下に降りてから足を止める。そして、振り返ることなくこう告げた。

 

「綱吉君。あなたの言う通り、何も心配はいらないわ」

「ああ。だからお前はリーダーらしく、後ろでどーんと構えてろ」

「そうね。私達を信じて、大人しくしてなさい」

「……うん」

 

 短い会話を終え、私達は再び階段を降り始める。

 

 綱吉君は屋上の扉を見つめたまま動こうとしなかったが、踊り場から少しだけ見えた彼の顔は……きっと笑っていたと思う。




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