ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作7巻編 その③ 嵐の前兆

 

 —— sideツナ ——

 

 

「……皆、大丈夫だった?」

 

 龍園君達の背中が見えなくなり、俺は後ろに振り返ってクラスメイト達に声をかけた。

 

「うん! 大丈夫だよ♪」

「大丈夫よ」

「俺達も問題ない」

 

 よかった。特に問題はおきていないようだ。

 

 帆波ちゃんと一緒に桔梗ちゃんを探していたら、清隆君からCクラスと揉めそうだと連絡が入った。それで急いで来てみたら、さっきの状況だったと言うわけだ。

 

 ……帆波ちゃんの件に加え、今回の騒ぎ。ここ数日のCクラスからの監視。そして去り際の「また近いうちに遊ぼうぜ」という言葉。

 

 龍園君が何かを仕掛けてくるのは明らかなんだけど、一体何を仕掛けてくるのか。もっと用心しておかないとな。

 

「ツーナ君っ!」

「あっ、ごめんね。無事でよかったよ桔梗ちゃん」

 

 視線を下げて考え込んでいると、桔梗ちゃんが俺の顔を覗き込んで来た。

 

「うんっ! 助けに来てくれてありがとうね♪」

「当然だよ。約束したもんね」

「えへへっ♪ そうだよね〜」

 

 なぜか視線をチラリと鈴音さんに向ける桔梗ちゃん。それを見た鈴音さんの顔が怖くなっているのは気のせいじゃないよな。

 

(こ、ここは早く話題を変えよう!)

 

 俺はお茶を濁すために話題を桔梗ちゃんを呼び出していた理由の説明に切り替えた。

 

「そうだ桔梗ちゃん。今日呼んだ理由なんだけどさ」

「? うんっ」

「実は相談していたあの件、今日正式に学校に認可されたよ」

 

 相談していた件というのは、俺が生徒会役員として行った初仕事。とある校則の改変案である。彼女にはその為に必要な在校生達の賛同者を集めるのを手伝ってもらっていたのだ。

 

「わあっ! それはよかったね♪」

 

 桔梗ちゃんはぴょんぴょんと跳ねながら喜んでくれた。

 

「桔梗ちゃんが賛同者集めを手伝ってくれたおかげだよ」

「そんなぁ、私は知り合いに片っ端から声をかけただけだよっ!」

 

 集まった賛同者の9割は桔梗ちゃんの集めてくれた人達だったし、案が通ったのはほとんど彼女のおかげだ。

 

 桔梗ちゃんと笑い合っていると、鈴音さんが会話に加わって来た。

 

「綱吉君、認可されたって何のことなの?」

「校則の改変だよ」

「校則? どんな?」

「ペットショップの設置だよ。元々学校にペットを飼えないって校則はないけど、この敷地内ってペットショップとかないじゃない? だから飼いたくても飼えない人が沢山いたと思うんだ」

「そうね」

 

 などと言いつつも、実際は敷地内でナッツを自由にさせたいからという考えから生まれた校則の改変だった。

 

「へー、ペットショップできるんだな。今度皆で行くか?」

「俺は興味ない」

「俺も別に」

 

 明人君が清隆君達に声をかけるが、2人とも興味ないようだった。

 

「そういえば、ツナ君はもう飼うペットが決まっているんでしょ?」

「うん。ライオ……猫を飼うんだ」

 

 ナッツはライオンだけども、猫ということにしておこう。

 

「猫なんだ〜。今度見せてね!」

「うん。もちろん」

 

 明日には学校より校則改変の通達が出るはずだから、明日の放課後に皆にナッツを紹介することに決めて、今日は解散することになった。

 

「綱吉君、生徒会室に戻ろっか」

「そうだね」

 

 まだ生徒会の仕事が残っているから、俺と帆波ちゃんは一緒に生徒会室へと戻ることにした。

 

 その途中、とあることを思いついた俺は足を止めた。

 

「帆波ちゃん、お願いがあるんだ」

「ん? なにかな?」

「学生証端末って、緊急連絡先を指定できるでしょ?」

「うん」

「その緊急連絡先を、2学期が終わるまででいいから、俺にしてくれない? 龍園君の動きが気になるんだ。クラスは違うけど、帆波ちゃんも龍園君からちょっかい受けてるから念のために」

 

 Cクラスは、Dクラスを狙うと同時に帆波ちゃんにも攻撃を仕掛けている。これは偶然とは思えないし、彼女に危険が及ぶ可能性は高いからな。

 

「うんっ、全然かまわないよ」

 

 帆波ちゃんは自身の学生証端末を取り出し、パパッと操作し始める。そして俺を緊急連絡先に指定してくれた画面を見せてくれた。

 

「はいっ、これで完了!」

「ありがとう」

「ううん。こちらこそ心配してくれてありがとう」

 

 ニコッと微笑む帆波ちゃんと共に、俺は生徒会室へと戻った。

 

「あと2日で冬休みだね〜」

「そうだね。この学校の年越しってどうするんだろうな」

 

 

 —— 翌日の放課後 龍園side ——

 

「龍園さん、今日はどうしますか?」

 

 ホームルームが終わり、放課後になると、石崎がそう声をかけてきた。

 

「今日はターゲットの全員を一人一人監視する」

「分かりました。アルベルト達にもそう声かけします」

 

 石崎はすぐ近くにいたアルベルトの元に向かった。かと思えば、今度は伊吹が話しかけてきた。

 

「決行は明日でしょ? いまさら何で一人一人監視するわけ?」

「最終確認の為だ」

「最終確認?」

「ああ。それで10人の内、誰が沢田に一番ダメージが行くかを考える」

「なんでそんなことを」

「そいつは俺の所に監禁すんだよ。それで、奴へのとどめに使う」

「……」

 

 伊吹は何も口にはしないが、俺に対する嫌悪感は隠し切れていない。

 

「はっ。嫌ならお前は不参加でもいいぜ」

「参加するわよ。不参加した場合のデメリットを考えられないほど馬鹿じゃないから」

 

 面倒そうに呟き、伊吹は先に教室から出て行った。

 

「龍園さん。カバンお持ちします」

 

 両手を差し出す石崎に鞄を投げ渡し、アルベルトも引き連れて俺も教室を出た。

 

 配下に調べさせた所、Dクラスのターゲット達は全員、学校とマンションを繋ぐ並木道に集っているらしい。一之瀬やひより達については別の奴に関しさせることにし、俺はDクラスのターゲット達を監視することに決めた。

 

 

 〜 並木道 〜

 

 ターゲット達は並木道の隅で、沢田を取り囲むようにして集まっていた。

 

「わぁ、これがツナ君の猫ちゃん?」

「うん、ナッツっていうんだ」

「可愛い〜」

「ガウ♪」

 

 沢田の足元には猫がいた。そういえば、今日からペット飼育が許可されたんだったな。

 

「沢田のペットと遊んでいるみたいですね」

「ああ。これじゃ知りたい情報は得れそうにねぇな」

 

 俺には他にもやることがある。ここの監視は石崎達に任せて、俺はあいつのとこに行くとするか。

 

「石崎。俺は坂上の所に行く。しっかりと見張っとけよ」

「は、はい。分かりました」

 

 石崎・伊吹・アルベルトを残し、俺は一人で並木道を去る。

 歩きながら、学生証端末を取り出して電話をかけた。

 

 ——プルルルル。ガチャ。

 

『……はい』

「俺だ。今から特別棟に来れるか?」

『かまわないが?』

「じゃあ待ってるぜ」

『わかった。すぐに向かおう』

 

 ——ガチャ。

 

 電話を切り、俺は特別棟へと向かった。

 

 

 〜特別棟〜

 

 特別棟へ向かうと、すでに坂上が待っていた。目線だけ交わし、お互いに何も言わずに3階へと向かう。あそこは監視カメラがないからな、明日についての話をするにはうってつけの場所だ。

 

 3階に誰もいないことを確認し、俺は壁にもたれながら坂上に明日の計画について話した。坂上は終始無言で話を聞いていたが、俺の話が進むごとに顔をしかめた。

 

「……」

「どうした坂上。まさかやめろとか言うんじゃねぇだろうな」

「うむ。普段なら、君の作戦を指示するところなんだが……その作戦は、沢田綱吉を無闇に刺激するのはやめた方がいい」

「はぁ?」

 

 坂上は俺がこれまでに考えたどの策略もただ賞賛していた。単に自分の評価を上げる為に俺が上を目指すのが都合がいいにすぎないだろうが、まさか否定をしてくるとは思わなかったな。

 

「これまでにDクラスを何度も攻撃してきた。だがあんたはこれまでに一度も否定しなかったはずだ。……どういう心境の変化だ?」

「……」

 

 坂上は何も言わないが、顔色は確実に悪くなっていた。

 

「おい、何とか言えよ」

「……これまでのようにDクラスを攻撃する分には一向に構わない。だが、その作戦だけは……とにかくやめておいた方がいい。いいな? どうしてもやるなら、私を巻き込むことは許さない」

 

 普段とは明らかに違う、坂上の焦り様。これでは作戦に協力させるのは難しいだろう。……仕方ない。少しばかり作戦変更するしかねぇな。

 

「……そうかよ。なら、明日の一之瀬の審議だけは予定通り頼むぜ」

「ああ。それは約束だからな。任せておけ」

 

 坂上は頷くと、さっさと特別棟から去って行った。

 

 1人残された俺は、舌打ちをしながら壁にもたれかかった。

 

(まさか坂上に協力を拒否されるとはな。……ま、いいさ。俺らだけで出来る範囲でも——)

 

 ——プルルルル。

 

「!」

 

 その時、学生証端末に着信が入った。

 ……石崎だ。

 

 ——ピッ。

 

「どうした、石崎」

『龍園さん! 実は……』

「! ……へぇ」

 

 石崎からの連絡で、今日決める予定だったメインターゲットが決まった。

 

 

 —— 翌日、放課後 ——

 

 

「以上で、ホームルームを終了する。冬休み中も当校の生徒としての自覚を持ち、節度ある一日を送るように。以上だ」

 

 坂上のありがたくも無意味な言葉を聞き流し、俺は学生証端末を取り出す。

 

 ついに仕掛けるべき日がやって来た。今日は2学期の終業式。この日は午前で全ての行事が終わり、放課後となる。部活動は休みであり、学校側も生徒に早く帰るよう促す日だ。つまり校内にほとんどの生徒が残らない。……沢田は別、だがな。

 

 この日の為、俺はペーパーシャッフルの試験以降、ある行動を起こした。 Cクラスで動かせるヤツをフル動員させ、見張るべきターゲットに張り付かせた。たったそれだけでも、Dクラスの連中は俺の行動の不穏さに気づいただろう。

 

 この行動において肝心なのは俺が『狙っている』ということを沢田に常に意識させることにある。ヤツは日々、戦々恐々とした時間を過ごしたことだろう。狙われているのは確実なのに、いつ、どのクラスメイト達が攻撃を受けるのかという肝心な部分は知り得ない、そういう恐怖。

 

 沢田はこの2週間ほど神経をすり減らし続けてきたはずだ。一体に俺が誰を攻撃するのか。どう攻撃をしかけるのか。ウィークポイントであるお仲間達に日々の進捗を聞き異変がなかったかを問い掛けただろう。自分を狙っている俺がどんな行動をしてくるのか。そのことばかり考えていたに違いない。

 

 それは、想像以上に疲弊する。そして一種の混乱をきたす。

 そして今日こそが───パニックに陥った沢田を潰する最良の日だ。

 

 ものの数分でクラスは半数以上が帰路に就き始める。教室に飾られた時計の針の進みはいつもより遅い。生徒は次々と学校を後にする。

 

「クク……」

 

 俺は心が高鳴っているのを感じていた。ここ数年味わうことの出来なかった、初恋を思わせる高揚だ。  

 

「龍園君」

 

 1人動かない俺の隣に立ち声をかけてきたのは椎名ひよりだった。

 

「なんだ」

「今日は随分と、皆さん落ち着かない様子ですね」

 

 そう言い周囲を見渡す。作戦に使うコマもほとんどは、すでに担当するターゲットの所へと向かわせた。

 残っている生徒は、俺の近くで動かすコマ共だけだった。

 

「これから何をなさるつもりですか?」

「……さあな。お前は知らなくていい」

「……そう、ですか。まぁ、無理に聞き出すつもりはありません」

 

 納得したのか、ひよりは歩き出す。

 

「私は図書室にいます。もし困ったことがあったら連絡してください」

「お前が力になれることはなにもねえよ」

 

 さすがにお前もターゲットだとは言えないからな。

 

「そうですか。それでは良い冬休みを……送れるといいですね」

「は? どういう意味だよ」

「いえ、なんでもありませんよ」

 

 そう言い残し、ひよりは帰って行った。

 

「……ま、せいぜい人質として、俺の役に立ってくれよ 」

 

 ひよりは頭はキレるが、争いを嫌う。 上手く利用できるかと思ったが、俺のコマとしては役に立たない。それならば、別の用途で使うだけだ。  

 

 それからすぐ、ぞろぞろと準備を終えたコマが集まってきた。

 

「時間ですね龍園さん」

 

 石崎が、どこか落ち着かない様子で話す。

 

「精々楽しめよ。せっかく復讐の機会をやるんだからな」

 

 俺は鞄を石崎に持たせる。その中には必要不可欠なものが入っている。

 

 伊吹とアルベルトも立ち上がったことを確認し、俺はコマ共を引き連れてCクラス教室を出た。

 

 

 

 ホームルームが終わって30分もすれば、冬休みに突入した校内はほぼもぬけの殻だ。夏休み同様、生徒達は一斉に校舎を後にしている。堂々と移動したところで、俺達を意識する人間はほとんどいない。

 

「……ねぇ、1つ聞いていい?」

「なんだ」

 

 廊下に出ると、伊吹が質問をしてきた。

 

「どうして10人も必要なわけ? 1人でよくない?」

「沢田を完全に潰す為だ」

「どういうこと?」

「見てればわかる」

「……」

 

 

 俺達以外に誰もいない廊下、階段と進んでいき、その先にある屋上の扉を開いた。年中屋上が開放されている学校は珍しいが、それには訳がある。しっかりとした柵が備え付けられているだけじゃなく監視カメラも常備されているからだ。危険を伴う問題行動を起こせば、すぐに記録として残ることになる。

 

 当然、それが分かりきっているから生徒は大人しく屋上を利用する。だが、屋上は年中を通しての不人気スポットだ。この学校にはカフェやモールと、人気となる場所が無数にある。わざわざここに来ようと思う変わり者は俺くらいなもんだろう。

 

 だがカメラを設置している箇所は限定的。

 屋上に出た外側の扉の上にしか設置されていない。

 

 隠れる死角の少ない屋上には1台で十分ということだが、逆に言えばこれが機能しなくなれば監視するものはなくなるというわけだ。

 

 監視カメラの真下に立ち、カメラのレンズを直視する。  そして予め用意しておいた黒のスプレー缶を鞄から取り出し、それを屋上を見張る監視カメラに向けて噴射した。

 

 これで監視の目は無くなるが、目隠しを付けただけだから備品の破壊行為には該当しないだろう。

 

「これで監視する目はなくなった」

 

 学校側がどのような監視体制を敷いているかも下調べは済んでいる。

 

 校内に設置されてある何百台というカメラのうち、リアルタイムにモニタリングされているのは主要な場所に限られている。すぐに異常事態に気づくことはない。

 

 俺は以前にも同じように、別の場所で監視カメラを塗り潰した。そして坂上に自ら申告しペナルティを受けた。結果は監視カメラの修理清掃費としてのポイントを取られ注意を受けたのみ。そしてその時に常に見られているのかどうかも聞き出しておいた。

 

 特に今日は既にほとんどの生徒が帰路に就いている。尚更学校側の警戒は緩いはずだ。

 

「アルベルト。お前は少し下りたところで待機だ。コマ共が軽井沢を拐って来た時には通せ。逆に予期せぬ客人……教師連中が来た時にはすぐ俺に連絡しろ」

 

 静かに頷き、アルベルトが階段を下りていく。

 念のために見張りを立てておけば、不測の事態にも対応できる。

 

 あとは、全ての準備が整うのを待つだけだ。

 

 

 

 ——約1時間後。屋上に来てから〝9回目〟のメール受信音が屋上に鳴り響いたことで、全ての準備が整った。

 

 

 

 報告を聞いた俺は学生証端末を取り出して、予め作成しておいたメールに追加で10枚の画像を添付し、沢田綱吉宛に送信する。

 

 

 TO 沢田綱吉

 

 お前の大事なお仲間は預かった。

 10人はそれぞれ別の場所に監禁している。

 全員を助けたければ、一人一人見つけて助け出すか、敷地内のどこかにいる俺の所に来い。

 

 一定時間経っても俺の所に来ない場合、罰としてお前の大切なお仲間達は全員ぶっ壊す。

 

 

 送信されたことを確認し、俺は更に高まった高揚感に頬を緩ませた。

 

「……ククク。さぁ、どうする沢田綱吉。お前は誰を助け、誰を犠牲にする?」

 

 お前がどの選択肢を選んでも、結末は変わらない。

 たとえ最初に俺の元にたどり着いたとしても、お前に待っているのは絶望だけだ。

 

 

 




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