ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作2巻編 その③目撃者

「おいおい! あれは正当防衛だっつうの! あっちが俺に殴りかかってきたから、反撃しただけだぞ!」

 

 須藤君が、茶柱先生に食ってかかる。

 

(須藤君、また煽られて、我慢できなくなっちゃったのか?)

 

 憤慨する須藤君を、茶柱先生がなだめる。

 

「落ち着け、須藤。まだお前が悪いと決まったわけじゃない。だからPPの振り込みが保習になっているんだ。お前の処遇次第で、CとDのCPが変わって来るからな」

「まだ決まったわけじゃねぇって……じゃあ、いつ決まるんすか?」

「2日後の放課後に、CクラスとDクラスの数名で、生徒会の立ち合いの元に話し合いをする事になっている」

「は、話し合い?」

 

 須藤君の絞り出したような声に、茶柱先生が頷いて見せる。

 

「そうだ。Cクラスは訴え出た3名に加え、生徒がもう1人と、担任教師が出てくるとの事。なので、こちらも5名で参加する。私と須藤は決まりだ。後3名、須藤の弁護する奴をクラス内で決めておけ」

 

 そう言った茶柱先生は、教室から出て行った。

 

 しばらくの沈黙の後、軽井沢さんと佐藤さんが須藤君を睨みつけた。

 

「須藤、あんた何やってくれてんのよ!」

「そうよ! せっかくCPが増えたのに、また0になっちゃうかもしれないなんて!」

「はあっ!? だから、俺は正当防衛をしただけだっての!」

「本当に? 須藤って普段から喧嘩っ早いし、信じられないし!」

「……なんだとお!」

 

 女子2名と、須藤君の言い合いに発展してしまいそうになるが、クラスのリーダーポジションである、平田君と桔梗ちゃんが止めに入った。

 

「落ち着きなよ、3人共!」

「そうだよ。須藤君が悪いって決まったわけじゃないし」

「——本当にそうかしら?」

 

 平田君と桔梗ちゃんのフォローに、水をさす人が現れる。

 ……堀北さんだ。

 

「......どう言う意味?」

「簡単よ。たとえ正当防衛だったとしても、暴力を振るってしまった事実は変えられないわ。今回Cクラスが訴え出たのは、須豚君からの暴力。正当防衛を証明できたとしても、須藤君は悪くない……と証明するのは、難しいんじゃないかしら?

『……』

 

 堀北さんの言葉に、全員が黙り込む。

 

 確かに堀北さんの言う通りだ。争点が暴力を振るった事であり、須藤君が手を出したのは事実な訳だから、須藤君を無実にするのは難しい。

 もしできるとするのならば、Cクラスが須藤君にわざと殴られた事を、完璧に証明するしかない。

 

 ——そんなことができるのかな?

 

「……ちっ!」

 

 思わず俺も弱気になっていると、須藤君は舌打ちして、教室から出て行ってしまった。

 

「須藤君!」

 

 慌てて俺も追いかけるが、「これから授業なのに……また評価下がんじゃない」という呟きがちらほらと聞こえていた。

 

—— 中庭 ——

 

 須藤君は、中庭のベンチに座って項垂れていた。

 

「須藤君!」

「……ツナ」

 

声をかけると、一瞬だけ顔を上げたが、すぐにまた俯いてしまった。

 

 仕方なく、俺は須藤君の隣に、腰掛けることにした。

 

「……」

「……」

 

 お互いに無言でいると、須藤君から声をかけてくれた。

 

「……ツナ、すまねぇ。お前につまんねぇ喧嘩はすんな、って言われてたのによ」

「……何があったか、聞かせてくれないかな」

 

 須藤君は、昨日の事件について話し始めた。

 

 昨日の部活終わり。一昨日絡まれた3人の内の、龍園君を除く2人に加えて、石崎というCクラスの生徒に絡まれたそうだ。

 

 須藤君は無視して帰ろうとしたが、無理やりに特別棟に連れて行かれたらしい。そして、特別棟で3人に暴行されかけて、正当防衛で相手に反撃をしたとの事。

 

「……あっちから、暴行しようとしてきたんだね?」

「ああ。……それがな」

「? どうしたの?」

 

 須藤君は一瞬言い淀んだが、ゆっくりと話し始める。

 

「最初は、一昨日みたいに煽ってきたんだよ。でもツナにも言われてたし、俺はなんとか無視しようとしたんだ。だけど、あいつらはそれが気に食わなかったのか、今度は2人が俺を抑えて、残りの石崎が俺の事を殴ろうとしてきたんだよ。それも、俺の腕と足だけを狙ってだ」

「! 腕と足を狙って!?」

 

 須藤君がコクリと頷く。

 

「石崎以外の2人……小宮と近藤って言うんだけどよ。あいつらもバスケ部なんだ。日頃から俺の練習を邪魔したりしてきてたし、俺がレギュラーになったことが、許せないんじゃねぇかな」

「……それが理由で、こんな事を?」

「わかんねぇけどな。でもよ、俺の体にしがみついて、動けなくしようとしてた小宮と近ーがよ、小さい声でこう言ったんだよ。『しばらくバスケができねぇ体にしてやるよ』......ってな」

「っ!」

 

 須藤君の言葉を聞いて、無言で立ち上がる。

 急に立ち上がった俺を見て、須藤君が心配そうな顔になっていた。

 

「……ツナ?」

「——安心して、須藤君。俺が……俺が絶対、君の無実を証明してみせる」

「! ツナっ」

 

 須藤君に顔を見せる事無く、そのまま話を続ける。

 

「教室に帰ろう。とりあえず、授業には出ておいた方がいいよ」

「......おう、行くか」

 

 それ以降、俺達は会話をする事もなく、視線を合わせる事もしなかった。

 

 だって顔を見られていたら……激怒している、俺の顔を見られてしまうから。

 

(Cクラスの奴ら、許せない。絶対に無実を証明してやる!)

 

 —— その日の昼休み ——

 

 昼休みになり、綾小路君・堀北さん・桔梗ちゃんに、昼ごはんを一緒に食べようと持ちかけた。

 

 いつもは嫌がる堀北さんも、なぜか俺の顔を見て、すんなりと了承してくれた。

 

「ツナ君が昼ごはんに誘ってくれるなんて、初めてだね〜っ♪」

「うん。皆も集まってくれてありがとう。実は、皆にお願いがあるんだ」

「……須藤の件か?」

 

 綾小路君の質問に、頷いて返事をする。

 

「俺は須藤君の無実を信じて、その証拠を探そうと思う。それを皆にも手伝ってほしい」

「うん! もちろんだよっ」

「……俺も構わないぞ」

「……」

 

 桔梗ちゃんと綾小路君は、すぐに受け入れてくれたけど、堀北さんは決めかねているようだ。

 

「堀北さん。この事件に屈したら、Dクラスは窮地に陥ると思わない?」

「……そうね、それはありえるわ」

「でしょ? わざと須藤君に殴らせたのなら、もし須藤君が退学にでもなれば、CクラスはもっとDクラスを狙ってくると思うんだ。だから、これを解決する事は、Dクラスの為にもなるはず……どう?」

 

 堀北さんはため息を一つ吐き、渋々領いてくれた。

 

「はぁ……わかったわ。退学者が出ると、評価が下がる危険性もあるものね」

「本当? ありがとう!」

 

 こうして、須藤君を助けるべく、調査チームを結成することになった。

 

「あ、須藤君達は誘わないの?」

「うん。須藤君本人が聞き込みとかしたら、脅して証言させたー、とか言われかねないからさ」

「そっか、確かにそうかもね!」

 

 

 池君も誘おうかと思ったけど、そうすると山内君も誘わないといけなくなる。正直、山内君に関する不信感は、まだ拭い切れていなかった。

 

 

 

 普通に会話とかはするけど、大事な作戦に参加してもらうほど、、信用ができなかった。

 

 

「じゃあ、とりあえずは聞き込みをしまくろう。 部活後の事件だから、運動部の人達が目撃してる可能性が高いかもしれない」

 

「そうだな。まずは運動部から当たっていくか」

 

 そして放課後、俺達は予定通りに、運動部の人達に聞き込みをしまくった。しかし、2時間程聞き込みをしても、何の成果も得られなかった……。

 

 

 —— 2時間後、カフェ ——

 

 

 2時間も聞き込みを続けた俺達は、一休みする為に、カフェにやってきた。

 

「……何の進展もなかったわね」

「うん……。わざわざ学校を巻き込んで起こした騒動だし、Cクラスにも勝算があるとは思ってたけど……まさか、ここまで目撃者がいないとは」

「他クラスの子達にも、メールで聞いてみたんだけど、目撃者は見つからないね」

「……はあ〜」

「あっ! 櫛田さん、沢田君もだ! 何で落ち込んでるの?」

 

 皆で落ち込んでいると、誰かから声をかけられる。振り返ってみると、声をかけてきたのは一之瀬さんだった。

 

 一之瀬さんも、クラスメイト何人かと一緒に、お茶をしに来たようだ。

 

「あ、一之瀬さん!」

「あ~、実はさ……」

 

 帆波ちゃんに、須藤君の事件について、調査している事を話した。

 

「ふ~ん、そうなんだ。事件の事はBクラスも聞いてたけど、私達の中に、事件の事を詳しく知ってる子はいなかったよ。だから、きっとBクラスにも目撃者はいないだろうね。……神崎君はどう思う?」

「——そうだな。一応、クラス全員参加のチャットで聞いてみるか」

(神崎君、か。かっこいい人だなぁ)

 

 神崎君と呼ばれたイケメン君が、学生証端末を操作し始める。どうやらチャットで聞き込みをしてくれているようだ。

 

 その様子を見ていると、後ろから肩を掴まれる。

 

「待て。簡単に他クラスに頼むのはどうかと思うぞ」

 

 綾小路君だ。どうやら、Bクラスの協力に反対らしい。

 

「大丈夫だよ! 悪いようにはしないから。それに、沢田君には借りがあるし。これくらいは喜んで協力するって♪」

「ありがとう、一之瀬さん。綾小路君、一之瀬さんの事は、信用してもいいと思うよ?」

「……わかった。沢田がそう言うなら、かまわないさ」

 

 綾小路君が受け入れると、神崎君は再度、学生証端末を操作し始めた。

 

 

 ——数分後、神崎君が学生証端末を確認すると、すでに、数名から返事があったようだ。

 

「……残念、やはり目撃者はいないらしい」

「そっか……」

「だが、情報を一つ手に入れたぞ」

「え、情報?」

「須藤を訴えた内の1人、石崎についてだ」

 

石崎……この間、須藤君に絡んでたやつらの1人か?

 

「石崎君——って、ガラが悪かったりする?」

「ああ。石崎は中学の時から、札付きの悪だったらしい。しかも、不良グループの頭をやっていたらしく、本当はトップでふんぞりかえってるような奴だそうだ」

「そうなんだ……」

 

やっぱり、あの中の誰かだな。

 

「あ、でも今のCクラスでは、トップになれてないよね?」

「そうだな。Cクラスのトップは龍園だ。龍園は暴力でクラスメイト達を支配していて、今の石崎は龍園の雑用係って感じだしな」

 

 龍園……。この間のロン毛のセンター分けの人か。つまりは、そいつの計画ってことだろう。

 

「そっか、ありがとう! 貴重な情報だったよ」

「気にするな。俺達のリーダーの決めた事だ」

 

 そう言い終えると、神崎君はBクラスの子達が集まっている席へと戻って行った。

 

「……神崎君、クールだね」

「あはは、彼は少し口下手なの。じゃあ私も戻るから。またねっ!」

「うんっ♪ またね~」

「一之瀬さん、ありがとう。助かったよ」

 

 一之瀬さんは笑顔で手を振りながら席に戻って行った。

 

「……ねぇ」

「ん? どうしたの?」

 

 一之瀬さん達がいなくなった途端、堀北さんが口を開いた。

 

「私、少し気になってる人がいるのよ」

「気になってる人?」

「ええ、沢田君が須藤君を追いかけている時なんだけど。平田君と櫛田さんの発案で、クラスメイト内で目撃した人がいないか、って話になったのよ」

「うん」

「それでその時、ほとんどの人が櫛田さん達に注目していたのに、1人だけ目を伏せていた人がいるの」

「え! 誰!」

 

 堀北さんの発言に、桔梗ちゃんが驚いて反応した。

 

「……堀北、佐倉の事か?」

「! 気付いてたのね。そう、佐倉さんの事よ」

 

 綾小路君も気付いていたらしい。

 

 確か佐倉さんは、物静かでいつも1人で行動している子で、須藤君の隣の席だったはずだ。

 

「その佐倉さんが、何か知ってるかも、って事?」

「ええ。このまま闇雲に調べるより、可能性がある方を調べた方が効率的だわ」

「わかった! 私連絡先知ってるから、電話して聞いてみるね!」

 

 さすがは桔梗ちゃん。佐倉さんの連絡先もゲットしていたらしい。

 

 早速、学生証端末で電話をかける桔梗ちゃんだが、一向に出る気配がない。

 

「……出てくれないみたい。明日、直接聞いてみようよ」

「そうだね。そうしようか」

「……じゃあ、今日はもうお開きか」

「そうね。私はもう帰るわ」

 

 お開きモードになると、堀北さんと綾小路君は、スタスタと帰って行ってしまった。

 

「んー。私達も、帰ろっか?」

「うん、そうだね」

 

 今日やれる事はやり尽くしたっぽいので、俺と桔梗ちゃんも、マンションへ帰る事にした。

 

 

 —— 翌日、昼休み ——

 

 昼休み。俺と桔梗ちゃんは、どこかに行こうとする佐倉さんを呼び止めた。

 

「あ、佐倉さん! ちょっと待って!」

「!......な、なんですか?」

 

 廊下を歩いていた佐倉さんは、桔梗ちゃんに声をかけられて、ビクビクしながら振り向いた。

 

「ごめんね、呼び止めちゃって。実は、佐倉さんに聞きたい事があるの」

「……聞きたいこと、ですか?」

「うん。あのね、昨日の須藤君の事件の事なんだけど——」

「っ! わ、私は何も知りませんっ!」

「あっ、ちょっと待って!」

 

 走って逃げようとする佐倉さんの腕を、桔梗ちゃんが掴む。

 

「......きゃっ!」

「あっ!」

 

 しかし、勢い余って佐倉さんは転んでしまった。

 

 その時に、佐倉さんが持っていたデジカメが、大きな音を立てて、廊下の地面に叩きつけられてしまう。

 

「ああっ!」

 

 佐倉さんが慌てて拾い、電源ボタンを押してみるが、一向に電源が入らない。

 

「嘘……壊れた」

「ご、ごめん。私が腕を掴んじゃったから」

「——いえ、私の不注意ですから。修理にだせば……あっ」

 

 修理に出すと言った途端、佐倉さんが微かに震え始める。

 

(どうしたんだろう)

「佐倉さん、大丈夫? 修理代はもちろん、私が出すよ」

「い、いえ。ポイントはあるんですけど……」

「......?」

「その、これを買ったお店の店員さんが、その……苦手でして」

「店員さんが苦手?」

「は、はい。あの人の目線……なんか気持ち悪くて。修理に出すのが、怖いなと」

 

 そう言うと、佐倉さんは手を組んで震え始めた。

 

 ......1人で行くのは怖い、ってことか?

 

「佐倉さん。じゃあ俺達も付き合うよ」

「え?」

「修理に出しに行くのなら、俺達もついていくよ」「あっ、そうだね! それなら、佐倉さんも少しは安心でしょう?」

「……い、いいんですか?」

 

 遠慮がちに、俺達の顔を見上げる佐倉さん。

 

「もちろん! 今日の放課後にでも行ってみようよ」「うんっ♪ 佐倉さんは、放課後大丈夫?」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 こうして、俺と桔梗ちゃんは、佐倉さんと一緒に、放課後に家電量販店へ向かう事になっ

た。

 

—— 放課後、家電量販店 ——

 

 放課後、俺達は家電量販店にやってきた。

 

「佐倉さん、保証書持ってる?」

「え? は、はい。在ります」

「そっか」

「?」

 

 そんな会話をしつつ、俺達はサービスカウンターへと向かう。サービスカウンターには、30代くらいの男性店員が立っていた。

 

「いらっしゃいませ〜」

「!」

 

 お客への挨拶をした男性店員は、佐倉さんに視線を向けた。

 

(.......確実にじろじろ見てるな。佐倉さんが言っていたのは、この店員だな)

 

 その証拠に、佐倉さんはまたも手を組んで、震えている。

 

 佐倉さんは何とかサービスカウンターに、カメラを保証書と一緒に差し出した。

 

 店員さんはカメラの状態を確認すると、なぜかカウンターに置かれた、展示用カメラをチラッと見た。

 

(なんか、あのカメラ……本物のカメラのような気がする)

 

 そして、再度カメラを確認しながら、ぶつぶつと呟き出した。

 

「ああ~、これは電源関係だなぁ。あ、でも保証書があるから、無料で新しい物と交換できますよ!」

 

 そう言うと、なぜかニタニタしながら一枚の紙を取り出した。

 

「ではこちらに、お名前と住所。そして……電話番号を記載してもらえますかぁ?」

「ひっ!」

 

 男性店員の言い方が嫌だったのか、佐倉さんは小さく悲鳴を上げる。

 

「……ほらぁ! 早く書いてください?」

「は、はい——え?」

 

 佐倉さんが震えた手でペンを取ろうとするが、すでに俺が記入をし始めているので、取るペンがなかった。

 

「……沢田君?」

 

 本人ではない、俺が記入している事に、なぜか男性店員が文句をツケ始めた。

 

「ち、ちょっと! このカメラは、その女の子のだろう!? だったらその子に書いて貰わないと困るよぉ!?」

「いえ、メーカー保証がありますので、購入日も購入店舗もきちんと証明されてます。……問題はないですよね?」

「……くっ、まぁいいでしょう」

 

 書類を書き終えた俺は、気になっていた展示用カメラに手を伸ばしてみる。

 

  だが、なぜか男性店員が慌てて、展示用カメラをカウンターの中へ移してしまったので手に取れなかった。

 

「て、展示用のカメラには、触れないでくださいよ!」

「……すみません」

 

店員の反応で色々分かったし、佐倉さんの精神衛生が心配なので、俺達はさっさと、家電量販店を後にした。

 

 

—— 敷地内、カフェ ——

 

 家電量販店を出た俺達は、テラス風のカフェに入店した。

 

「あの……今日はありがとうございました」

「いいよいいよ! 元々私の所為だったわけだし」

「気にしなくていいよ」

「はい……」

 

 まだ申し訳無さそうな佐倉さんに、桔梗ちゃんが優しく声をかける。

 

「佐倉さん、私達同級生なんだし、タメロで話していいんだよ?」

「そういえば、ずっと敬語だよね」

「う……わ、わかった。頑張ってみる、ね」

「あはは、無理はしなくていいからね。……あ、ごめん。私、ちょっとお手洗いに」

 

 桔梗ちゃんがお手洗いに行ったので、俺と佐倉さんの2人きりになった。

 

「……」

「……」

「……あ、あの」

 

 しばらく無言が続くかと思えば、佐倉さんの方から話しかけてくれた。俺から話かけてあげれば良かったな……。

 

「どうしたの?」

「さ、沢田君は、どうして修理依頼書に、私の代わりに記入してくれたの?」

「ああ、佐倉さんがあの店員さんをすごく怖がってたから。そんな相手に、個人情報なんて教えたくないだろうと思ってさ。あ、法律の事は、前に綾小路君に聞いた事があったんだよ」

「そっか。あ、ありがとう」

「気にしないでよ」

「……」

 

 再び沈黙が訪れるが、佐倉さんがチラチラとこちらを気にしているのが分かった。

 

 よし、今度は俺から話しかける事にしよう。

 

「佐倉さん」

「っ! は、はいっ!」

「何か、言いたい事がありそうな顔をしてるけど……どうかした?」

「!」

 

 佐倉さんは、モジモジしながら語り始めた。

 

「沢田君は、どうするのが正しい……と思う?」

「正しい?」

「うん……本当の事を言わなかったら、後悔する、とは思うんだ。……だけど、私なんかが言った所で、誰も信じてくれないかも、って思ったら……怖くなっちゃって」

 

 佐倉さんの体がまた震え出した。

 

「——佐倉さん」

 

 なるべく恐怖心を与えないように、微笑みながら、佐倉さんに近づいた。

 

「沢田、君?」

「ありがとう。須藤君の為に、勇気を出そうとしてくれて。本当に嬉しいよ」

「……うん」

「でもさ、須藤君の為だって事は一度忘れてみなよ」

「えっ? ど、どうして?」

 

 まさかの発言だったのか、佐倉さんは驚いた表情で目を見開いた。

 

「誰かの為じゃ無く、自分の為に、証言をしてほしいんだ」

「自分の、為に?」

「うん。自分が後悔しない為に。証言する理由はそれだけでいいよ。須藤君の為に頑張るのは、俺が引き受けるから。佐倉さんはそこまで考えなくていい。……そう考えたら、少しは気楽になるんじゃない?」

「う、うん……でも」

 

 少しは気が楽になったようだが、まだ決心が出来ない様子。

 

「……自分の発言を、信じてもらえないのが怖い?」

「——うん」

「大丈夫。俺はどんな事になっても、佐倉さんの見たモノを信じるよ。たとえ誰も言じなくても、俺だけは、ずっと君の味方で居続ける。約束する!」

「……沢田君」

「だから俺の事を、信じてみてくれない?」

「……うんっ、わかった」

 

 佐倉さんは、目に涙を溜めながらそう言って微笑んでくれた。初めて見た佐倉さんの微笑みは、なんだか心が暖かくなるものだった。

 

「お待たせ~、そろそろいい時間だし、今日は解散にしようか?」

 

 佐倉さんと微笑みあっていると、桔梗ちゃんがお手洗いから帰ってきた。

 

「おかえり、そうだね。そろそろ暗くなってきちゃうし」

「う、うん。わかった」

 

 涙を見られないように、佐倉さんは急いで、目をこすりながら立ち上がった。

 

「じゃあ、今日はこれで解散っ♪ 2人ともまた明日ね!」

「うん、また明日」

「ま、また明日」

 

 佐倉さんは俺達にペコリと頭を下げると、マンションに向かって帰って行った。

 

「俺達も帰ろうか」

「うん♪ あ、ツナ君!」

「ん、何?」

「この後、ツナ君の部屋に行ってもいい?」

「もちろん……え?」

 

 き、桔梗ちゃんが、俺の部屋に来るだと!?




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