ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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原作7.5巻編 その① 嵐の後に、また嵐

 —— 病院にて ——

 

「——この8億ポイント計画。俺と協力して、3倍の24億ポイント計画にしよう」

「……てめぇ、一体何のつもりだ? 俺をコケにでもしにきたのか?」

 

 龍園君は明らかにイラついた声色だった。

 俺が自分を嘲笑いに来たとでも思っているのだろうか。

 

「俺は真剣だよ。真剣に、君に協力を求めに来た」

「……じゃあただのバカか。大体24億ポイント貯めたとしても、一体何に使う」

「DクラスがAクラスまで上り詰めた後、他クラスの全員をAクラスに移籍させる」

「ああ、間違いなくバカだな。学年全員Aクラスだなんて学校側が認めねぇ」

「やってみないと分からないだろ」

「そもそも、24億なんて貯められるわけがない」

「その言い方、8億ポイントなら貯められる方法を君は思いついている。そう考えていいね」

「……」

 

 ジロリと睨まれてしまう。リボーンと出会った頃の俺なら、間違いなく土下座していただろう怖い顔だ。

 

 でもそれは、俺の予想が当たっている裏返しでもある。

 

「……じゃあ聞くが、お前には24億ポイントを貯められるアテでもあるのかよ」

「いや、ない」

「——は?」

 

 答えに納得がいかなかったのか、龍園君は額に青筋を浮かべながら聞き返してきた。

 

「俺は正直、8億ポイントを貯める方法すらまだ分かっていない」

「意味がわからねぇな。なら、どうして俺に協力を求める」

「君には8億ポイントを貯める方法が思いついている。そう直感してるから」

「直感、だと?」

 

 訝しげ、いや腹立たしげに眉を吊り上げる龍園君。

 

「俺、勘には自信があるんだ。そして、俺達は24億ポイント貯めることに成功する……その直感もしてる」

「……話は終わりだ。テメェから受けた怪我が疼くからさっさと、出ていけ」

 

 速攻で拒絶されてしまった。綿密に準備して計画を遂行する彼からしてみれば、直感なんてものを作戦の核にしようとする俺は馬鹿にしか見えないのかもしれない。

 

「——そうだね。今日の所は退散しておくよ。君達には今後の動き方を考える時間も必要だ」

 

 俺は龍園君の寝ているベッドに彼の学生証端末を乗せ、廊下の方に向き直った。

 

「……随分あっさりと引き下がるんだな」

「まあね。今すぐに決めてほしいことでもないし、ま、猛反省しながら頭の片隅にでも置いといてよ」

 

 それだけ言い残し、俺は病室を出て行った。

 

 ——スタ、スタ、スタ。

 

「……」

 

 ——スタ、スタ……ピタッ。

 

「……」

 

 1人廊下を歩いていた俺だったが、とある気配を感じて足を止める。

 

 

「……はぁ」

 

 ため息を一つ吐き、俺は独り言を呟いた。

 

「もう、付いて来ないでって言ったのに。一回帰ってから戻ってきたわけ?」

「……すまん。気になってな」

 

 独り言に返事をしながら、廊下の死角から清隆君が顔を出した。

 

「全く!」

「すまんって。……だが、さっきの会話を聴かせたくなかったのか? 別に聴かせてもいい内容だった気もするが」

「!」

 

 痛いところを突かれた。本当は龍園君達を再度脅そうとしていたところを見られたくなかったのだ。

 

「き、清隆君ならさっきの計画聞いたら怒ると思って」

「そうだな。今にも病室に入って文句言ってやりそうだったぞ」

「で、でしょ!?」

「……でも、お前があんなにあっさり引き下がるものだから、入るタイミングを逃したんだ。……なぁ、あんなにすぐ退くなら、なんで話をしたんだよ」

 

 話を聞いていたのならそうだと思っていたけど、やはり彼もそこが気になっていたようだ。

 

「……種を蒔いたんだ」

「種?」

「うん。俺の計画を成功させるための花、その花を咲かす種」

「ということは……あの計画自体は本気、だったと?」

「もちろん」

 

 超本気である。ボンゴレからの最終課題「学年のボスになれ」をクリアするためにも、仲間達の為にも、俺は必ずやってみせる。

 

「俺は決めたよ。俺達は必ずAクラスに上がって、卒業する時には同級生全員をAクラスに移籍させる」

「……そんなことができると思う根拠は?」

「直感!」

「清々しいほどに根拠になってないな」

「そう? ボンゴレ的にはこれ以上ない根拠なんだけどな」

「あいにく俺は限りなく一般人寄りなんでな。……だが、まぁ」

 

 反対をする体を装いながら、ポリポリと頬を掻く清隆君。その仕草だけで、彼の本心は見え見えだ。

 

「……まぁ、協力はしてくれるんだね? 相棒?」

「……まぁ、な。堀北いわく俺の役目は、規格外すぎるお前のブレーキングだからな」

「素直じゃないなぁ」

 

 片方は笑い、もう片方は恥ずかしがりながら、俺達は拳をぶつけ合わせた。

 

「3学期もよろしくね」

「ああ。もちろんだ」

 

 ついに固まった目標に向かい、俺は相棒と共に歩み始める。

 

 

 

 

 

「——あ、そういえば綱吉」

「ん?」

「明日から10人と1人づつ出かけるんだろ。明日は誰と出かけるんだ?」

「それはまだ決まって——」

 

 ——ピコン。

 

 学生証端末からメール受信音が流れた。俺はちょっとごめんと断り、メールを確認した。

 

 送信者は……麻耶ちゃんだった。

 

 

「麻耶ちゃんからだ」

「なんだって?」

「えっと、『明日出かけるのは私になったよ♪』だって」

「そうか。佐藤はお前のこと——」

 

 ——ピコン。

 

 何かを言いかけた清隆君だったが、彼の学生証端末からメール受信音で遮られた。

 

「悪い、今度は俺だ。えっと、堀北から……無視するか」

「なんでだよ」

「ちょっとした嘘だろ。すぐ見るさ……」

 

 嫌そうにメールを確認する清隆君。しかし、メールを読んだ彼は更に嫌そうに眉間に皺を寄せた。

 

「……」

「なんだって?」

「……今すぐ私の部屋に来い。だってよ」

 

 

 

 

 

 

 —— マンション 清隆side  ——

 

 

 

「はぁ。一体何の用だよ」

 

 独りごちながら、俺はマンション女子棟にある堀北の部屋を目指していた。

 

 堀北の部屋がある階でエレベーターを降りて、廊下を進む。目的の部屋番号を見つけ、インターホンを鳴らした。

 

 ——ピンポーン。

 

「——はい」

 

 音が鳴った瞬間に返事が返ってきた。室内のインターホン前で仁王立ちでもしていたのだろうか。

 

「綾小路だ」

「すぐに開けるわね」

 

 言葉の通り、堀北はすぐに玄関のドアを開いて、俺を中に招いた。

 

 リビングに入ると、ダイニングテーブルで待つように言われたので大人しく待つことにした。

 

「お待たせ」

 

 少し待つと、堀北はコーヒーカップを2つ持って戻ってきた。

 

「悪いな」

「招いたのはこちらよ」

 

 いつも通りの淡々としたやりとりをしながら、堀北は向かいの席に着き、片方のコーヒーカップを俺の方に差し出した。

 

 まずはお互いに一口コーヒーをすすり、それからやっと本題に入る。

 

「えっと。呼び出した理由なのだけれど」

「ああ」

「今日人質になった被害者10人、1日づつ綱吉君と出かけることになったでしょう?」

「そうだな」

 

 お前からの提案だったが、いい判断だったと思うぞ。

 

「それで、誰がいつ綱吉君と出かけるのかをあの後話し合ったのよ」

「綱吉に聞いたぞ。明日は佐藤らしいな。他の9人も決まったのか?」

「ええ」

 

 堀北によると、以下の通りになったそうだ。

 

 12/23 佐藤麻耶

 12/24 堀北鈴音

 12/25 軽井沢恵

 12/26 王 美雨

 12/27 木下美野里

 12/28 長谷部波瑠加

 12/29 佐倉愛里

 12/30 椎名ひより

 12/31  櫛田桔梗

 1/1 一之瀬帆波

 

 

 堀北はいわゆる、クリスマスイヴに綱吉とデートするらしい。割といいところを獲得したと言っていいんじゃないか?

 

「……要件もそのことなのか?」

「ええ。その……クリスマスイヴに出かけるわけだし……何かプレゼントをしたいと思って」

「なるほどな」

 

 つまり、何をあげれば綱吉が喜ぶのかを知りたいと。

 

「綱吉に渡すプレゼントで悩んでいるわけか」

「違うわ」

「え?」

 

 違ったらしい。しかしそれ以外に何を悩むと言うのだろうか。

 

「プレゼントはもう決まっているの。私が聞きたいのは……」

「……なんだよ」

 

 途中で言い淀む堀北に続きを促す。数秒は口をもごもご動かすだけだったが、意を決したのか話し始めた。

 

「その……男性からすると、女性から指輪を贈られるのって、重いかしら」

「指輪?」

 

 指輪……か。俺はよく知らないが、波瑠加から恋人なら指輪を贈ることはよくあるみたいな話をきいたことがあったはずだ。その話から察するに、特段重いようには感じない。

 

「……前に長谷部に、恋人に指輪を贈るのはよくある……みたいな話を聞いたことがある。だから問題ないんじゃないか?」

「そうなのね」

「ああ。それに宝石とかのついてない、オシャレ用のアクセサリーだろ? そんなに重い意味にはとられないと思うけどな」

「……宝、石」

「? どうした?」

 

 宝石の話題になった途端、堀北の歯切れが悪くなる。

 

「……宝石付きの指輪だと、重いってこと?」

「……まさか。宝石付きの指輪を渡すつもりだったのか?」

「……え。、ええ」

 

 まさかの宝石付きだった。学生でも宝石付きの指輪って所持してるものなのか?

 

「学生の贈り物としては……どうなんだろうな」

「やっぱり、重いかしら?」

「どうだろうな……というか、この敷地内にそんな高価なもの売ってる店があるんだな」

 

 いくら国営とはいえ、学生に宝石付きの指輪を買わせることはないと思うのだが。

 

「違うの、その指輪は買ったものじゃなくて、譲り受けたものなの」

「譲り受けた?」

「ええ。この前兄さん経由で受け取ったのだけれど、言うなれば堀北家に受け継がれし家宝ね。その家宝の1つなのよ」

「家宝……」

 

 いやいや、家宝の指輪を贈られるって。

 重い以外にどんな意味に取れというのか。

 

 というか、俺とほぼ同時期にこいつも家宝を受け取っていたのか。

 

「それは重すぎないか? いくらお前が家宝の指輪を贈りたいほどにあいつを好きなのだとしても」

「ち、違うわ! す、好きだから渡したいとかでは決してない!」

 

 それ以外に家宝の指輪を、しかもクリスマスイヴに渡す理由とは?

 

 堀北は顔を赤くしながら言い訳を並べ始める。

 

「私はただ、家宝と共に受け継がれた伝承に従っているだけなの!」

「えっ」

 

 まさか伝承付きなところまで同じとは。なんか不気味だ。

 

「その伝承に『片割れの形無き物は、汝が最も敬愛し、寄り添い、そばにいたいと思う者へ手渡せ。さすればそこに、永遠の愛が蘇るだろう』って一節があるの。だからっ」

「……それ、簡単に言えば愛している人に渡せって意味じゃないのか」

「っ! 違う! そ、尊敬している人に渡せと言う意味よ!」

「ふ〜ん」

 

 これ以上おちょくるとゆでだこになりそうなので、ここらでやめておこう。それより気になることがある。

 

 堀北の言う伝承の一節が、俺の家宝にあった伝承の一節に酷似していたのだ。

 

 俺の場合は『片割れの形無き物は汝が最も信頼し、力になりたいと思う者へ手渡せ。さすればそこに、永遠の友情が巡るだろう』——だが、「片割れの形無き物」という単語は全く同じだ。

 

 全く接点のない両家の家宝、そこに付随する伝承の類似。……これには何かの意味があるのか?

 

 伝承が酷似しているなら、もしかしたら家宝そのものが同じ可能性もある。

 

「……堀北。お前の受け継いだその家宝、まさか長方形の宝石箱じゃないよな?」

「——え?」

 

 ……この反応、まさか?

 

「中はベルベッド張りで、2つの物が入ってたりしないよな」

「……その通りだけど、どうして綾小路君が知っているの?」

「……」

 

 どうやら、俺の予感は当たっていたらしい。俺達はお互いに同じ家宝を受け継いでいたらしい。

 

「……実は、俺もつい先日に家宝を譲り受けたんだ」

「えっ。あなたも?」

「ああ。それで、受け継いだのは長方形の宝石箱。中はベルベット張りで、2つの物が収まっていた。しかも、俺の家宝にも伝承がある」

「……まさか。そんな偶然ある?」

 

 俺も信じがたいが、状況的にそうとしか思えない。

 

「……待ってろ。俺の家宝を取ってくる。お前も準備していてくれ」

「わ、わかったわ」

 

 俺は一度自室に戻り、自分の宝石箱をとって堀北の部屋へと戻った。

 

 堀北はすでに家宝を準備しており、ダイニングテーブルに置いていた。

 

「……まじか」

 

 堀北の家宝の横に、俺の家宝を同じように配置する。

 

「……同じね」

「完全にな」

 

 受け継いだ家宝、宝石箱の外観は全く同じだった。

 

「えっ、家宝がかぶることなんてあるの?」

「ないとは言い切れないが……限りなくゼロに近い確率だろうな」

 

 堀北は驚愕して、口元に手を当てている。俺達はその限りなくゼロに近い確率を突破してしまったのだから、偶然とは恐ろしいものだな。

 

「……どうして? しかも伝承があるところまで同じなんて。……ねぇ、あなたの方の伝承はどんなもの?」

 

 そう聞かれ、俺は理事長に聞いた伝承をそのまま伝えた。

 

「……一部違うけれど、流れは同じね」

「そうだな」

「……」

 

 眉間に手を当て、堀北は考え込んでいる。

 当然だ。俺だって驚いているのだから。

 

「……どういうこと? どうしたらこんな偶然が起きるの?」

「……そうだな。例えばだが」

 

 俺は頭に浮かんでいた仮説を堀北に伝えた。

 

「俺達の先祖が、偶然同じ年代で家宝も持つようになった。で、偶然同じものを同じ店で買っていた……っていうのはどうだ?」

 

 宝石箱だし、家宝を持った年代が同じなら、同じ店で購入したとうことはありえるだろう。

 

「ありえるけど、それだと伝承が酷似している説明がつかないわ」

「その当時、家宝を持って伝承を付けるのが流行っていた……とか」

「……本気で言っているの?」

「そんなわけないだろ」

 

 そもそも、家宝を持つのが流行った時代なんて聞いたこともない。完全に適当発言だった。

 

「でも、男のあなたは譲り受けても困るわよね」

「なんでだ?」

「だって、髪飾りと指輪なんて持っていても使えないでしょう? まぁ、錆びているから私も使えないけれど」

 

 髪飾り? 一体何のことだ?

 

「髪飾りじゃないぞ。俺が譲り受けたのは懐中時計と指輪だ」

「えっ?」

「ほら」

 

 俺は自分の宝石箱を開き、堀北に見せた。中身を確認した堀北は、慌てて自分の宝石箱も開いてみせてくれた。その中身は、錆びた白い髪飾りと指輪だ。

 

「本当に髪飾りだな」

「ええ、あなたのは懐中時計なのね」

「……なんで箱と指輪は同じなんだ?」

 

 箱と中身の一部は同じ。でも、もう一部と伝承は違っている。伝承は家庭のオリジナリティで違っていてもおかしきはないだろうが、どこかで買ったであろう宝石箱の中身が違うのはどうしてだ?

 

「……2種類売られていたのか? 2バージョン商法だったのかもしれないな」

「髪飾りと懐中時計の? そんなことあるかしら」

「箱と指輪は同じなんだ。そう考えるしかないだろ」

「そうかもしれないけど……あっ」

「?」

 

 何を思ったのか、堀北は自分の方の指輪を取り出した。

 

「あなたの方の指輪を見せてくれないかしら」

「ああ。かまわないぞ」

 

 自分の指輪を取り出し、堀北に手渡す。

 すると、堀北は両手の人差し指と親指で指輪を1つずつ摘み、双方をじーっと見つめはじめた。

 

「——!」

 

 何かに気づいたらしく、アッという表情を浮かべた。

 

「どうした?」

「この指輪の宝石部分、よく見てみて」

「?」

 

 言われるままに2つの宝石を見比べる。

 どちらも宝石がついているが、どちらも形が歪だ。

 

 俺の方の宝石は、一個の宝石を縦半分に切り裂き、その内の右半分だけつけられたような形。

 

 堀北の宝石は、一個の宝石を縦半分に切り裂き、その内の左半分だけつけられたような形。

 

「……ん? 形が違うようだな」

「そうね。どちらも一つの宝石を半分だけ切り取ったみたいな形だわ」

「だなぁ」

「なんというか、2つの宝石を合わせたら、ぴったりとくっ付きそうよね」

 

 堀北は、2つの指輪の宝石部分を合わせるように近づけていく。

 

「リング部分が干渉して無理だろ」

「わかっているわ。できるだけ近づけてみたいだけ——」

 

 ——カチッ!

 

「——あ」

「あ」

 

 どこかからカチッという音が鳴った。どこからだと辺りを見渡そうとした俺の視界に、指輪を見て固まっている堀北が映った。

 

「……」

「どうした?」

「ご、ごめんなさい。……くっ付いてしまったわ」

「は?」

 

 意味がわからず首を傾げていると、堀北は手に持った1つの指輪を見せてきた。

 

 おかしいな。さっきまでは2つ持っていたはずなのに。

 

「おい、俺の指輪はどこ、に……」

 

 口にしている最中に、自分で答えに気づいてしまう。なぜなら、先ほどまで歪だった宝石が、今は綺麗な1つの宝石に見えたからだ。

 

「おい、もしかして?」

「……ええ。綺麗にくっ付いているわ」

 

 なんと、2つだった歪な指輪は、くっ付いて1つの指輪へ姿を変えたのだった。

 

「まじか。リング部分が干渉するはずだろ」

「それが……くっつけるつもりで近づけたらそのまま、綺麗に組み上がったみたいなの」

「それって……元々2つの指輪は合わさるようになってたということか?」

「そうとしか……思えないわね」

 

 どういうことだよ。元々この宝石箱は2つ揃わないといけないものだったとでもいうのか?

 それが世代を超えて、今やっと揃ったのか?

 

 

「元々カップル向けの商品なのか? お互いにプレゼントしあって、指輪を合わせて1つにする……そういう遊びをするためのもの?」

「だとしたら、指輪は2つにならないといけないのでは? 1つではペアリングにならないわ」

「……それもそうだな」

 

 いくら考えても、この不思議な家宝の被り問題の答えは出そうにない。

 

「……とりあえず、その指輪はお前が持っていてくれ」

「どうして?」

「綱吉に渡すんだろ?」

 

 そう聞くと、堀北は顔を真っ赤にして首を横に振り始めた。

 

「無、無理よ。歪な指輪ならまだしも、こんなの完全に深い意味のある指輪じゃない。こんなもの贈れないわ」

「いいから、贈れって」

 

 俺の方の伝承によれば、指輪は綱吉に渡すべきものだ。堀北が渡してくれるなら、堀北も俺も家の伝承を成功させたことになって、一石二鳥である。

 

「なら、あなたが渡しなさいよ」

「なんでだよ。俺から渡したら綱吉も困るだろ」

「そんなことないわ」

「お前から渡せ。せっかくクリスマスイヴに一緒に出かけるんだろ」

「っ〜///」

 

 結局、俺は無理やり指輪を堀北に預けた。

 

 文句を言われながら、堀北の恋路に対する応援の言葉を並べながら部屋を出た。

 

 マンションの自室に戻りながら、俺は自分の胸元に手を当てた。

 

(なんだろう。指輪がくっついた時から、胸の奥が熱い気がするな……)

 

 風邪でも引いたのかもしれない、暖かくして寝よう。

 

 歩く速度を少し早め、俺は自室へと戻る。

 

 ——その最中。手に持った宝石箱から光が漏れていることを、この時の俺は気がついていなかった。




読んでいただきありがとうございます♪
感想もおまちしています!

7.5巻編、10人との個別デートはさくさくスムーズに進めていきたいっ!
なるべく早く8巻編に行くつもりですっ!
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