魔法少女リリカルなのは Goddess Was Fallen 作:ルル・ヨザミ
「グラナードの出撃準備完了しました」
高町なのはこと私が自室でお茶を飲んでいると、そうアナウンスで流れてきた。グラナードの準備、つまり整備が終わったということは、遂に保安局との戦いが始まるということだ。取り合えず、コックピットに行った方がいいのかな?
「部隊の方々は自室で待機。次元航行を開始し安定に入った時に再び連絡されるそうです」
なるほど、じゃあこのままお茶飲んでよ。…あー麦茶おいしい。でもたまには紅茶も飲みたいな…。またすずかちゃんやアリサちゃんと一緒に…。
そんなことを考えていたら、ガタガタと揺れ始めた。グラナードの発進である。今座っている椅子に付いているシートベルトを巻いた。そして窓の外が光に包まれた。
しばらくすると、窓時から見えるのはいつもの次元空間の景色となった。あとは保安局の拠点となっている世界に着くのを待つだけだ。
「安定に入りました。部隊の方々はミーティングルームに集まってください」
指示のアナウンスだ。この声はフェイトちゃんだな。部隊長にもなるとこんな仕事もするんだ…。大変だな。
シートベルトを外し、部屋を出てミーティングルームに向かう。
その途中、シグナムさんと出会った。特に話すこともなかったが取り合えず一緒に部屋へ向かった。
ミーティングルームに到着。中に入ると薄暗い照明で、部屋の真ん中にある大きな円卓が目に入った。出入口から見て真正面の奥の席にフェイトちゃんが座っていた。
「あ、なのはにシグナム!早かったですね」
フェイトちゃんがさっと立って、出迎えてくれた。
「なのはは右側の席で、シグナムは左側の席ね。机に名札置いてあるから、すぐわかるよ」
「はーい」
「む、この席か。」
どうやら、シグナムさんとは向かい合わせの席のようだ。このミーティングは部隊全員で行うため、席はあらかじめ決まっている。変に混雑しないためだ。
今回の作戦の役割分担を確認するためのミーティング。ちなみに私はシグナムさんと一緒に、白騎士を保安局制圧まで足止めするのと、保護が役割だ。まあ保護はできたらやる程度でいいと本局からは言われたけど、私は話し合って戦闘が止まるならそれはそれで…いや、でも戦いたい…。
…あれ?私ってこんなに戦いたいって欲求強かったっけ。前はもっと、助けたいとか、救ってあげたいとかそういう気持ちで戦っていた気がするんだけど…。なんでだろう、まるで私の中の信念や信条が丸ごと書き換えられたような感覚だ…。昔はこう思っていたというのは覚えているのに、その時の感情や考えに自分自身が理解できないし共感できていない…そういえば、この部隊に志願する時、フェイトちゃんと話していた時の私も戦いたいからって言ってたな。これってもしかして、”隷属の影”が私の海馬に出した謎の信号が関係しているのかな?
色々考え事していると、続々人が集まってきて席に座っていっていた。どうやら全員集まったようだ。フェイトちゃんが周りを見渡して欠席がいないかどうかを確認している。
「全員集まった様なので、これから今回の作戦の再確認と質疑を行います」
ミーティングが始まった。最初の数分間は保安局の拠点の世界に到着した時の行動の確認。私は上空から敵局員の体制を崩す段取りである。
「そして、保安局の建物内に入った時はまず、私を含めた突入隊の五人が局長室に向かいます。あ、これを見せるのを忘れていました…」
そう言い、フェイトちゃんが皆に見せたのは保安局が拠点としている建物の見取り図である。なるほどこれがあるから、一番最初に局長室に行けるって事なんだ。
「えっと、なのはとシグナムはできるだけ白騎士をこの建物から離れさせてください。向こうの局長を捕まえるのに時間がかかる場合も想定されるので、すぐに白騎士が局長を助けに行けないようお願いします」
「わかりましたー」
「了解した」
しまった、気の抜けた返事をしてしまった…。ちょっと反省。
「そうだ、テスタロッサ。白騎士について情報が欲しいのだが…。私が知っているのは凄腕の魔導師ということだけでな」
とシグナムさんが質問した。そういえばそうだ。私たちは白騎士について何も知らないな。
「白騎士についてですが…今でもほとんど情報は無く、唯一あるのは白騎士が使うデバイスがジャマダハルの形をとっているということだけです」
「ジャマダハル?」
「先に刃の付いた籠手のような物だ」
「ま、まあそれは種類によりますけど様はそういう事です」
「つまり近接戦闘向けなんだね!」
「そうなるな。が、それしか情報がないのか…」
「そうですね、使う魔法もよくわかっていないようですし」
シグナムさんとフェイトちゃんの会話で部屋の空気が少し重くなる。そもそもこの作戦自体うまくいくのかわからないのに、もっとわからない白騎士の存在が部隊の士気を下げているのだろう。さらに今までの部隊がことごとく壊滅させられているのに、自分たちがこの事件を解決できるのか不安に思っている人も多いだろう。
「とにかく、私たちは白騎士を足止めすればいいんだね。使ってくる魔法がわからない以上、主に私が足止めする形の方がいいですかね?」
とシグナムさんに問いかける。今はこの空気を変えなきゃ。このままじゃどんどん士気が下がってしまう。
「ふむ、確かに相手の出方がわからない今、近接戦は向こうが圧倒的有利だろうからな…しかし、お前にばかり負担をかけるような事になっては…」
「シグナムさん中距離魔法ありませんでしたっけ」
「無いことはないが少ないからな、中距離戦闘となるとお前に頼る点が多くなってしまうだろうな。だから私はできるだけ前に出るさ。私が危なくなったら援護してくれ」
「危なくなくても勿論援護しますけど…無理しないでくださいね?」
「ああ、わかっている」
そして、他の作戦の確認も終わり、ミーティングは予定より少し遅く終了した。そして、私の心の中にある不思議な感覚が、再び私に襲ってきた。そのままミーティングルームで立ち尽くしてしまっていた。
さらに、その所為でしかめっ面をしていたらしく、フェイトちゃんが心配して声をかけてきてくれた。
「なのは、大丈夫?何か体調悪そうだけど…」
「ううん、大丈夫だよ!心配してくれてありがとうフェイトちゃん」
「なのは…”隷属の影”に潜伏されている時もそんな風に辛そうだったんだから、無理しちゃだめだよ。もしかしたらまだなのはには”隷属の影”の影響が残っているかもしれないんだよ?」
「わかってるって、ただ…なんだか変な気持ちなんだよね。」
「変な気持ち?」
「うん。何か…私の中にあった何かが、無くなっているような気がするの」
「ほ、本当に大丈夫?」
「にゃはは…多分…。あ、身体的な面は問題ないのは自信あるよ!」
「もう…心配だなぁ…」
「ご、ごめん…」
皆、部屋に戻り私とフェイトちゃんだけになったミーティングルームでずっとこのようなことを話していた。
ただ、私の今の心の中の変化は詳しくは言わなかった。別に心配をかけたくなかったとかそういうわけではない。なんだか話す気にはならなかったのだ。
精神的に何か問題があるのかと言われればどうなんだろうか…?自分にもわからない。さっきフェイトちゃんに言った私の中にあった何かが無くなているような気がするというのは本当のことだ。ただこれが今の私の心の違和感に関係しているのかもわからない。
こんなにも考えが纏まらないことがあったかな。…部屋についた。…今部屋に戻ったらまたこのことについて色々考えてしまいそうで入りづらい。でもこの違和感はなんだかとても大切なことのような気もする。
「休憩室に行って何か飲み物買おうっと」
休憩室でミルクティーを飲んでいると、そろそろ保安局の拠点世界に到着するというアナウンスが艦内に響いた。
予定より数分速い到着となるが、遂に戦いの時が来たんだ。
ーSIDE OUTー
高町なのはの心の靄は消えることなく、フェイト・T・ハラオウンの心配もまた消えることなく戦いの時を迎えてしまった。
シグナムは段々と思い出してきた”影”に操られていた時期のことを思い出し、その時のようなことを二度と起こさせないためにも、自身が高町なのはを守ろうと固く決心していた。
そんな一行を待っていたのは、白騎士の熱烈な歓迎であった。