ありふれた職業で世界最強の主人公である南雲ハジメがキヴォトスで先生となる話です。その場の思いつきで書いたものなので、続きは未定。仮に書けたとしても対策委員会編までかも
ありふれに関しては、本編は全て読んでいますがアフターの方は読んでいない部分が多いです。
「なんでこんなことをやってんだか……」
白色系を基調とするピカピカのオフィス。その一角にある書類が山積みされたデスクにて、ぼやいている男がいた。
白髪に眼帯で、左腕は義手。それに加えて黒ずくめの衣装を纏っており、端から見たら男子中学生が憧れる中二病スタイルだ。彼もそれを指摘された時はしばらく凹んだこともあった。
彼の名は南雲ハジメ。かつて異世界トータスへの勇者召喚に巻き込まれたクラスの一員であり、奈落から這い上がった末に邪神を倒した神殺しの魔王にして、8人の嫁がいるハーレム野郎である。
ハジメは地球に帰還後、8人の嫁達やクラスメイトと共に暮らしつつ、異世界からの帰還者を狙う勢力を潰し続けていた。だがある日、彼は未知の世界に連れてこられてしまった。
ハジメが連れてこられたのは、数千の学園が集まった学園都市であるキヴォトス。銃火器が支配するこの都市にて、先生として都市の命運をかけた仕事をすることになったハジメ。
当初は見捨てて元の世界に帰ってしまおうかと思ったが、頼みの綱の“導越の羅針盤*1”と“クリスタルキー*2”は何故か起動しなかった。仕方ないので、連邦生徒会とやらに貸しを作れるかもしれないという下心を抱きながらも協力することを決めた。
こうして紆余曲折ありながらも、ハジメは連邦捜査部S.C.H.A.L.Eとかいう超法規的組織の顧問として着任し、元の世界へと帰る手段を探りながらも学園都市を駆け回ることになったのだが……
現実は残酷である。目の前には大量の書類が山積みになっており、ハジメはその処理に追われている現状だ。ほぼ人間を辞めている強靭な肉体を持つ彼であっても、こればかりは苦戦させられている。
「あれを使うか……」
そこで、ハジメは固有魔法を発動した。彼の知覚能力が大幅に引き上げられ、周囲の時の流れがスローになったかのように感じられる。これは“瞬光”という魔法であり、重要な戦いの際にお世話になったものだった。
ハジメはこの魔法の力を使い、大量の書類をかなり早い速度で片付けていく。肉体への負担を考えてインターバルを挟みながら処理していくこと1時間。ようやく書類の山は消滅した。
「ふぅ、やっと終わった……」
そう言いながらデスクに額を叩きつけるハジメ。その顔には疲労の表情が見えている。戦いの時に“瞬光”をここまで連続使用したことはなく、完全に参ってしまっていた。
「お疲れ様です、先生」
その時、ハジメは労いの言葉をかけられる。顔を上げてその声がした方向を見てみれば、菫色の髪をツーサイドアップにした生徒が立っていた。
「うわっ、早瀬じゃねえか」
「何ですか、その“うわっ”って。今日は当番だから来たんですけど?」
「あぁ、そうだったな。わりぃな早瀬」
彼女の名は早瀬ユウカ。ミレニアムサイエンススクールの生徒会であるセミナーにて会計を担当している2年生だ。
ユウカと出会ったのは、ハジメが連邦生徒会長なる人物によってキヴォトスに連れてこられた初日であり、会長が行方不明になったことで生じた混乱について問いただすため、ミレニアムの代表として連邦生徒会に来ていたところだった。
彼女はそのままS.C.H.A.L.Eのオフィスを奪還する作戦に参加することになり、同じく他の学園から来ていた代表達と共に、ハジメに率いられて戦闘を行った。その後、その面々と共にシャーレの初期メンバーとなっている。
そもそも、連邦捜査部S.C.H.A.L.Eというのは、絶賛行方不明中の連邦生徒会長が作った組織であり、どの学園の生徒であっても無制限に加入させ、学園自治区の問題に介入する権限を与えられた超法規的組織である。
ハジメはその顧問である先生として連れてこられたわけだが、連れてきた張本人である連邦生徒会長に対して良い感情を抱いていない。
それもそのはずだ。いきなり未知の場所に連れ去られ、その世界の命運をかけた仕事をさせられるという事態に、とある過去の出来事を重ね合わせているからだ。
かつてハジメは、勇者召喚に巻き込まれて異世界トータスに飛ばされ、召喚した神を崇める人間族を救うために戦争に参加させられることになったことがある。なお、その神は人々を遊びの駒として扱っており、神託によって戦争を誘発して人々が殺し会う様子を楽しむクソ野郎だったりする。
ハジメは連邦生徒会長が戻ってきたら必ずとっちめてやろうと心に決め、シャーレの先生として活動してきた。
「そういえば先生、手紙が届いていましたよ」
「手紙? 珍しいな……」
ハジメが今までのことを思い出していた時、ユウカが一通の手紙を渡してくる。砂が付着していたのか少し汚れていた手紙を開封すると、次のような内容が出てきた。
こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。
今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。
単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。
それも、地域の暴力組織によってです。
こうなってしまった事情はかなり複雑ですが、どうやら校舎が狙われているようです。
今はなんとか食い止めていますが、そろそろ弾薬等の物資が底をついてしまいます。
このままでは、暴力組織によって学校が占領されてしまいそうな状況です。
それで、今回先生にお会いできればと思いました。
先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?
「アビドス……早瀬、知ってるか?」
「はい、知ってますよ。数十年前まではキヴォトス最大の学園でしたが、砂漠化の進行によって衰退してしまったとか……」
「結構ヤバい状況みたいだな……」
「先生はどうするんです?この救援要請に答えますか?」
「そうだな、とりあえず向かうつもりだ。罠の可能性も捨てきれないが、砂漠方面に行ってみようと思っていたところだ。丁度良い」
ハジメは元の世界に帰る手段を探るため、キヴォトスのありとあらゆる場所を訪れる予定であり、その一つが砂漠地帯だった。
「アビドスに向かう準備をしてくる。早瀬は書類の見直しをしておいてくれないか?書類は片付いたが、内容を間違えている可能性があるからな」
「えぇ、任せてください」
ハジメはユウカに先ほど処理した書類の見直しを頼むと、ポケットからスマホを取り出して何処かへと電話をかけ始める。何回か呼び出し音が鳴った後、相手の声が聞こえてきた。
「はい。便利屋68、陸八魔です」
「俺だ」
「せ、先生!? わ、わぁ……!」
受話器の向こう側からドタバタと音が聞こえる。電話の相手は相当驚いているらしい。
「慌て過ぎだ、アル。そんなんじゃハードボイルドにもアウトローにもなれねえぞ。せいぜい、ハーフボイルドが関の山だろ」
「すみません、偉大なるハジメ大先生。この私としたことが……」
「あぁ?誰が大先生だ。それはさておき、お前ら便利屋に依頼を頼みたい。それはだな……」
翌日、アビドスの砂にまみれた市街地にて、ハジメはハマーによく似た見た目の魔力駆動四輪〈ブリーゼ〉を走らせていた。車内には、ハジメ以外に4人の人間が乗っている。
「ねえ、先生。本当に私達が来る必要があったのかしら?先生の力なら、たった1人でなんとかなりそうだけど」
助手席に座っているのは陸八魔アル。ゲヘナ学園の2年生で便利屋68の社長である。アウトローに憧れている彼女は、とある出来事からハジメのことを真のアウトローとして尊敬していた。
「まあ、あれだ。1人で行くよりも何人かで行った方が賑やかだろ?」
「ふーん?もしかして、先生は寂しがり屋なのかな?」
後部座席にいる3人の内、小悪魔みたいな性格の少女の名は浅黄ムツキ。アルと同じくゲヘナ学園の2年生で、便利屋68の室長だ。
「想像に任せる」
そう言って肩をすくめるハジメ。寂しがり屋だというのは結構当たっていたりする。嫁達や仲間が全くいない状況でキヴォトスに飛ばされたハジメは、嫁達や娘と共にトータスを旅した過去に思いを馳せていた。
その結果、ハジメはアビドス自治区への遠征に便利屋68を雇って同行させるに至ったわけだ。
「ムツキ、あまり先生をからかわないの。私達は雇われている身。あくまでも先生に従うだけ」
「カヨコっちは真面目だねぇ。色々とお話しした方が楽しいでしょ~?」
ムツキに注意したのは、ゲヘナ学園3年生の鬼方カヨコ。便利屋68の課長であり、顔が怖いことから不良と誤解されがちな生徒だ。
「ねえ、ハルカちゃんもそう思うよね?」
「は、はい。わ、私もそう思います……」
最後はゲヘナ学園1年生の伊草ハルカ。内気で陰気な性格の彼女は便利屋68の平社員であり、昔はその性格によって苛められていたが、アルによって救われた過去がある。
「お前ら。楽しく話しているところ悪いが、敵の反応を検知した。数はおよそ30人。おそらく、手紙にあった暴力組織だろう」
「聞いたわね?我が社員たち!仕事の時間よ!」
「よーし、依頼を始めよー!」
「行こう」
「こ、殺します、全員……」
各々が得物を手に取り、戦闘に備える。しばらくして、道を封鎖しているヘルメットを被った集団が現れるが、ハジメは速度を落とさずに突っ込んでいき、直前でドリフトすると車体で数人をはね飛ばした後に停止させた。
「ふふっ、流石は真のアウトロー!ドリフトで敵を吹っ飛ばすなんて素敵だわ!」
「アル、口を動かしている暇があったら体を動かせ。よし、いくぞお前ら!」
ハジメはホルスターから愛銃である大型リボルバー銃のドンナーを引き抜き、目の前のヘルメット団員をヘッドショットの一撃で倒すと、先陣を切って戦闘を開始した。
読んでいただき、ありがとうございます