喫茶店代はもちろん喜多ちゃんが払いました。

今回は前作が、まあ、アレだったので、今回は結束バンドで楽しく遊んでもらいました。ぼっちはもっと10代のうちに色々楽しい思い出を作ってほしいですね。
ぼっち愛されではありますが、「そういう」意味で好きなのは虹夏ちゃんだけで、リョウと喜多ちゃんは友愛です。やはりぼ虹。でも一度ネタはそんなにはないけどリョウ喜多も書いてみたい今日この頃。

今回の作品は一応『ぼっちと虹夏の紅葉狩りデート』と設定上は繋がっております。読まなくても大丈夫レベルの繋がりですが読んで頂けるとより楽しめるかもしれません。

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愛されぼっちちゃん

ぼっちside

 

「すごーい! 一面雪景色だわー!」

「いやー、降るとは予報で聞いてはいたけど随分積もったねー」

「あ、すごいですね……」

「さむ……」

 

 スタ連が終わり、外に出てみると外が一面真っ白になっていた。

 STARRYに向かう途中の時点で少し降ってはいたけどこんなに積もるとは思わなかったなぁ。練習してる間に一気に降ってきたんだろうな。

 でもこれだけ積もってるとなると電車が……。

 

「ぼっちちゃん、今日ウチに泊まっていきなよ。電車止まってるだろうし」

「……いいですか?」

「もちろん! お姉ちゃんも喜ぶよー」

 

 うう、やっぱり虹夏ちゃんは優しいなぁ。私を安心させるために店長さんが喜ぶだなんて嘘までついて……。

 

「虹夏ちゃんはやっぱり天使……、いえ、雪の妖精さん……」

「なに訳の分かんないこと言ってるの……、って、ぶえ!? なに!? 冷たっ!」

「に、虹夏ちゃん!?」

 

 急に虹夏ちゃんの顔に雪玉が!?

 

「伊地知先輩隙ありですよ!」

「ぺっぺっ! 喜多ちゃんやったな~!」

「うふふ、せっかくこれだけ積もったんですから今日は皆で雪合戦しましょう!」

「喜多ちゃんやる気だね。確かにこれだけ積もるのも珍しいし、やろうか!」

「私はパス」

「ちょっとリョウー?」

「だって寒いし。ぼっちもそうでしょ?」

「え!? えっと、その……」

 

 ど、どうしよう。確かに体を動かすのは苦手だけど、でも雪合戦、雪合戦かぁ……。正直ちょっとしてみたいけどリョウさん嫌そうだし迷惑だよね……。

 

「そ……、そうです」

 

 ね、と言いかけると右手が柔らかくて温かい何かに握られた。虹夏ちゃんの手だ。

 

「ぼっちちゃん、やりたいこと言って良いんだよ?」

「に、虹夏ちゃん。でも……」

「誰かに迷惑とか考えなくていいから。ぼっちちゃんがどうしたいのか、私は聞きたいな」

 

 小声で私の本心を聞いてくれる虹夏ちゃん。

 本当に虹夏ちゃんって私が何を考えてるのか分かっちゃうんだ。……なんだかすごく、嬉しいな。

 

「ちょっと虹夏、ぼっちを唆さないでよ。やりたいからって無理強いは良くない」

「い、いえ、あのその……。わ、私も雪合戦やりたい、です……」

「えぇ?」

「そ、その、雪合戦やってみたくて……」

「雪合戦なんて子供の頃にやった事あるでしょ」

「……したこと、ないです。友達いなかったので……」

「あー……」

 

 リ、リョウさんはやっぱり嫌だよね……。でも雪合戦って人数多い方が楽しいらしいし、出来ればリョウさんにも参加してほしいな……。

 

「……そんなあからさまに『迷惑かな?』みたいな顔しないでよ。ぼっちが本当にやりたいって思ってるなら構わないよ。やろうか」

「あ、は、はいっ! ありがとうございます!」

「お礼とか言わなくていいから。友達と遊ぶってだけの話でしょ」

「あ、はい。へへ、友達……」

 

 リョウさんが私の頭を撫でる。

 へ、へへへ。リョウさん私の事友達ってちゃんと思ってくれてたんだ。会ったばかりの時は友達は虹夏ちゃんだけって言ってたけど、今は私も友達なんだ。うへへへへへへへへへ。

 

「ニヤニヤしすぎ。ほら雪合戦するんでしょ。正気に戻って」

「……ハッ! ははははい!」

「じゃあ近くの公園に移動しようか! 流石にSTARRYの前で雪合戦してたらお姉ちゃんにゲンコツされちゃうし」

「そうだね。よし、行くよ郁代!」

「やめて!!!!」

 

 

 

 

虹夏side

 

「ねぇリョウ」

「なに?」

「さっき私がぼっちちゃんに小声で話しかけてた時、ぼっちちゃんが雪合戦を強制させられてると思ってちょっと怒ってたでしょ」

「……」

「あの自分以外どうでも良さそうなリョウがぼっちちゃんが無理強いされてると思って怒るなんてね~。しかもぼっちちゃんのお願いなら聞いちゃうんだから、リョウってぼっちちゃんの事本当にお気に入りだよね~」

「うっさい」

 

 ぷぷっ、素直じゃない奴。耳まで赤くなってやんの。

 

 

 

 

 

 

ぼっちside

 

「ひとりちゃん行くわよー! それー!」

「ま、待ってください喜多ちゃ……! あぶっ! ぼべべべべ!」

「喜多ちゃん少しは手加減してあげて! ぼっちちゃんが一瞬で雪に埋まっちゃったよ!」

「ぼっち、南無」

 

 そして公園に着いて早々、私は喜多ちゃんの無数の雪の弾丸をもろに浴びて雪に埋まっていた。視界が物理的に白く染まっていく……。

 

「甘いですよ伊地知先輩! 雪合戦は相手が動けなくなるまで続くデスゲーム! 手加減なんて言語道断です!」

「雪合戦ってそんな物騒だったっけ!?」

「郁代の地域のローカルルールかな?」

「喜多ちゃんの地域殺伐とし過ぎだよ! てかそんなに離れてないでしょ私たちの住んでるところと!」

 

 そ、そんな命の削りあいの様な遊びだったんだ雪合戦って……! そ、それなら私も……!

 

「わ、私も行きます! え、えい!」

「お、ぼっちちゃんが投げ返した」

「めっちゃふんわりだけどね」

 

 だ、駄目だ……! 運動センス抜群の喜多ちゃんには運動センスゼロの私の雪玉なんかカスリも……。

 

「きゃっ! 当たっちゃったわ!」

 

 あ、あれ? 絶対当たらないと思ったんだけどな……。

 

「やるわねひとりちゃん! 私も負けないわよー! それそれー!」

「ぶべべべべぼぼぼぼぼ!」

 

 既に完封負けな気がする!! で、でも諦めないぞ! えい! えい!

 

「やん! また当たっちゃった!」

 

 ぜ、全部当たった! 距離的に届かなさそうなのもあったけど喜多ちゃんがフラフラ歩いてたのもあって命中しちゃった。わ、私雪合戦の才能あるのかな? うへへ、私の事は令和の次元大介と呼んでください……。

 

「って、ぶへぇ!」

「ふっ、調子に乗らないことだねぼっち。敵は一人だけじゃないんだよ」

 

 リ、リョウ先輩がいつの間にか喜多ちゃんの仲間になってる……!

 

「郁代は運動神経抜群。郁代の仲間になれば勝ったも同然」

「きゃー! リョウ先輩と同じチーム! 2人の愛の力を見せてあげましょうリョウ先輩!」

「うん。行くよ郁代!」

「それはやめてください」

 

 き、喜多ちゃんだけでも勝ち目がないのにリョウさんまで! 私みたいなプランクトンじゃどうひっくり返っても勝ち目が……!

 

「う、うぅ……」

「ほらぼっちちゃん。私はぼっちちゃんチームに入るから一緒に頑張ろ!」

「に、虹夏ちゃん!」

 

 私の味方なんかしたら負け確と言っても過言じゃないのに、やっぱり虹夏ちゃんは天使、女神なんだ!

 

「虹夏が敵になったか。郁代気を付けて。虹夏の剛速球をまともに受けたら鼻が折れるよ」

「折れるかオラァ!」

「前が見えねえ!!」

 

 虹夏ちゃんの全力で投げた雪玉がリョウさんの顔面にめり込んだ。……当たった雪玉が形状を保ってるんだけど、リョウさんの鼻折れてないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 それから暫く雪合戦をして私とリョウさんがボコボコにされた後別の雪遊びもしようという話になって、二手に分かれて雪だるまの胴体と頭を作って大きな雪だるまを作った。

 

「後は顔を描いて、胴体には結束バンドのマークを描いて……、出来ました! 結束だるまさんです!」

「いやー思ったより大きいのが作れたねー」

「頭を持ち上げるの大変だった……」

「あ、そうですね」

 

 でも頑張った甲斐はあったな。小さい雪だるまなら一人で作ったことはあったけど、こんなに大きいの、それも友達と一緒に作ったのは初めてだ。

 でも明日には溶けてるか、イタズラで壊されちゃうんだよね。……ちょっと寂しいかも。

 

「……ねえ、雪だるまと皆で写真撮ろうよ!」

「写真ですか?」

「うん。結束バンドで作った初めての雪だるまの記念写真!」

「私のモデル料は高いよ?」

「払います!」

「払うな! まったくまったく。じゃあ喜多ちゃんタイマーセットよろしく!」

「はい! ……よし、OKです!」

「じゃあぼっちちゃんは雪だるまの横にしゃがんでくれる?」

「え? は、はい」

 

 指示通り雪だるまの隣にしゃがむと、虹夏ちゃんが私の右腕に抱きついてきた。

 

「に、虹夏ちゃん!?」

「へへー、ぼっちちゃんの右腕もーらい」

 

 あ、あわわ! に、虹夏ちゃんのいい匂いがするぅ……!

 

「ズルいですよ伊地知先輩! じゃあ私はひとりちゃんの左腕をもらいますね!」

 

 き、喜多ちゃんまで!!

 

「じゃあ私は頭」

 

 ぐえっ! リョウさんがのしかかってきた、重い……!

 でも、うへへ……、温かいし、皆に囲まれてなんか幸せかも……。

 

「ほらほら、いつまでもにちゃにちゃしてないで」

「時間ですよ! 3、2、1……」

 

 パシャッ、と喜多ちゃんのスマホから音がなる。

 

「上手く撮れたかしら? ……うん、バッチリ!」

「どれどれ? おっ、いいじゃん!」

「……うん、悪くないね」

「素直じゃないねリョウは。ぼっちちゃんはどう?」

 

 へへ、へへへ、うへへへへへへへへへ。

 

「ご満悦だね。じゃあそろそろいい時間だし、解散しようか?」

「そうですね。今日は楽しかったわ!」

「たまには悪くなかったかな」

 

 あ、今日はもう解散か。またこういう遊び出来たらいいな……。

 

「……ぼっち、ちょっと」

「あ、はい。なんですか?」

「あの、さ。えーと、なんていうか……」

 

 言いにくそうにモゴモゴしてるリョウさんって珍しいな。普通は言いにくい事でもスパッと言う人なのに。どうしたんだろう?

 

「……ぼっちがさ、今日みたいなやりたいことあるんだったら言ってくれていいから」

「え?」

「ほら、何事も経験っていうか、作詞の肥やしにもなるかもだしっていうか。あー……、とにかくぼっちのやりたいこと、ちゃんと付き合うから遠慮しないで言って。それだけ、じゃっ。郁代、行くよ」

「うふふ、はーい。でもそれはやめてくださーい」

 

 ひとりちゃんまた遊びましょうねー! と手をブンブン振って早足に歩いていくリョウさんと一緒に喜多ちゃんも公園を出ていった。

 リョウさんのさっきのって……。

 

「また一緒に遊ぼうって事だよ。じゃあ私達も行こうか」

「あ、はい」

 

 そ、そっか。また遊べるんだ。楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

リョウside

 

「ひとりちゃんすごく楽しそうでしたね」

「そうだね」

 

 ……雪合戦は初めて。それなら当然雪だるまも初めて。初詣の時に押しくら饅頭でうれしそうにしてたけどきっとあれも初めてだったんだろうな。

 今日の楽しそうなぼっちを見て思ったけど、ずっとぼっちが独りぼっちだったことを軽く考えてたのかもしれない。バンド組んで最初の一年なんて全然遊ばなかったし、もっと早くにたくさん思い出を作ってやれた筈だ。

 ぼっち、独りぼっちか……。

 

「あのさ、郁代。ぼっちにぼっちってあだ名付けたの私なんだよね」

「え?」

「あの時はひとりって名前と友達がいなさそうな感じだったから何となく思い付きで付けたんだ。虹夏からもツッコまれたけど本人も喜んでるし、まぁいいかって」

「そう、だったんですね?」

「うん。でもぼっちってさ、普通に考えてあんまり良くない名前でしょ」

「まぁ他人が聞いたら一歩間違えるとイジメでもしてるのかと思われますね」

「そんなあだ名をぼっちは喜んでくれたけどさ、でもぼっちって普段自分から話したりはしないけどたまに昔の話をすると、かなり落ち込む辺り独りぼっちだったこと結構気にしてると思うんだよね」

「良い思い出がない、って事なんでしょうか」

「いや、まず思い出自体が作れてないんじゃないかな」

 

 ずっと独りぼっちで過ごしてきたんだ。良い思い出どころか、私のようにバンドの方向性ですれ違って解散のような嫌な思い出すら作ることが出来てないはずだ。寂しい思いはずっとしてきただろうけど。

 

「それで最初は初めてのあだ名を喜んではくれたけどさ、やっぱり改めて考えてみてぼっちなんてあだ名、嫌がってないかなって」

「……」

「私は結構好きなんだ、ぼっちって呼ぶの。だって私が愛称で呼ぶなんて滅多にないし。虹夏のことすらあだ名で呼んだことないよ」

 

 あの時は便宜上必要だから付けたあだ名だったけど、私は初対面の時点で結構、いやかなりぼっちの事を気に入ってた。だから会って間もないぼっちに大切な歌詞づくりを任せたんだ。

 それに友達としての相性なら虹夏以上。きっと一番良いと思う。一緒にいてあんなに退屈しない相手なんてぼっちくらいだから。

 

「呼ばない方が良いのかな。ぼっちが嫌な思いするなら、呼ばない方が……」

「呼んであげてください。ぼっちって」

「え?」

「ひとりちゃんはぼっちってリョウ先輩や伊地知先輩に呼ばれるの、大好きだと思いますよ」

「何でそう言い切れるの?」

 

 そんなの分かんないじゃん。ぼっちが内心嫌な思いしてるかどうかなんて……。

 

「これ見てください。さっき撮ったんですけど」

「……これは」

 

 さっきの雪合戦の時の写真? これが一体……。

 

「……って、これ。ぼっちの顔」

「ええ。すごく良い笑顔でしょう?」

 

 いつも引き攣ったような、一歩引いたような笑顔しか見たことないのに。こんなに楽しそうに笑ってるぼっちは初めて見た。こんな笑い方するんだ。ぼっちって。

 

「嫌な思いをさせられる相手と遊んでこんな笑顔すること、ないですよ。大好きな結束バンドの皆で全力で遊んだからこんなに良い顔で笑ってるんだと思います」

「……」

「今更呼び方変えたらそれこそひとりちゃん悲しんじゃいますよ。だからこれからもいつも通り、リョウ先輩が付けてあげた名前で呼んであげてください」

「……うん、ありがと」

 

 ……はぁ、らしくない事で悩んじゃったな。それにしても。

 

「良く雪合戦の最中に写真なんて撮れたね」

「シャッターチャンスを逃すようではバズすることは出来ませんからね!」

「しかもあの雪合戦の時、ぼっちの雪玉にワザと当たってたでしょ」

「……バレちゃいました?」

「バレバレ」

 

 虹夏の雪玉はキレイにかわしてるのにあっちこっちにフラフラ投げられてるぼっちの雪玉に全部当たってるんだもん。あれで気付かないのはぼっちくらいだよ。どういう運動神経してるんだか。

 

「郁代が全力でぼっちに雪玉投げてたのもぼっちに遠慮させないためでしょ?」

「まぁあれくらいしないとひとりちゃん本気で遊べないでしょうし、それにひとりちゃんの場合本気でやっとちょうどいいくらいっていうか」

「なるほどね」

 

 確かに本気でやっとアレなのを考えると、遠慮して投げてたらきっと雪合戦そのものが成立してなかったかもしれないな。

 

「本当に郁代ってぼっちが大好きなんだね」

「えー? リョウ先輩がそれを言うんですか?」

「む……」

「さっき公園を出る時にひとりちゃんにモゴモゴ言ってるリョウ先輩可愛かったですよ!」

 

 あーうるさいうるさい。

 

「もうこの話は終わり。打ち切り。それより郁代、寒いからちょっと喫茶店寄っていかない? 近くにお気に入りの店があるんだ」

「え!? リョウ先輩の行きつけ!? 行きます行きます! っていう事はこれデートですよね!」

「……そうだね。デートってことにしようか」

「きゃー!! じゃあじゃあ腕組んだりとかOKですか!?」

 

 言いながら腕に絡みついてくる郁代。

 まったく。でも今日は……。

 

「こっちの方がデートっぽくない?」

 

 郁代の手を解いて、肩に手を回して抱き寄せた。

 

「え、え!? あ、あの、リョウ先輩!?」

「嫌?」

「い、嫌な訳ないですけど! でもリョウ先輩がこういう事するの珍しいって言うか……」

「まぁ私も寒いからこうした方が温かいし、今日は気分が良いからサービスだよ」

 

 後は、さっきのお礼も兼ねてね。

 

「それにあんまりぼっちばっかり可愛がってると郁代が拗ねちゃうでしょ」

「そ、そんなことは……」

「郁代の事も、ちゃんと可愛いって思ってるから」

「ピャア……」

「ぷぷっ、なにそれ。ウケる」

 

 顔真っ赤にしてさ。本当、私の後輩は可愛いんだから。

 

 

 

 

 

ぼっちside

 

「うー……、あったかい……。外で冷えた身体に温かいお風呂が染み渡るよー……」

「そ、そうですね……」

 

 あれから公園から帰ってきた私たちは冷えた身体を温める為にお風呂に入っていた。最初はお互いに先にお風呂に入るのを譲り合っていたんだけど、虹夏ちゃんから

 

「もう一緒に入ろうよ!」

 

という一言で一緒に入ることになった。

 それでも私が虹夏ちゃんと一緒に入るなんて万死に値すると固辞しようとしたんだけど、虹夏ちゃんに問答無用で服を剥ぎ取られて湯船に放り込まれ、今に至る。

 

「でもやっぱり家のお風呂に二人で入るのはちょっと狭いね。肩まで浸かれないや」

「や、やっぱり私後から入りますよ。虹夏ちゃんはゆっくり温まって……」

「んー……。あ、そうだ。ぼっちちゃん、ちょっとごめん」

 

 向かい合って膝を立てて座っていた私の足を、虹夏ちゃんがこじ開けた……!? ちょ、ちょっとこれは流石に恥ずかしい……!

 

「お邪魔しまーす」

「え!?」

 

 すると虹夏ちゃんがこじ開けた私の足の間に背を向けて入り込み、私にもたれかかる様に座ってきた。

 

「これならお互いしっかり肩まで浸かれるでしょ?」

「ひゃ、ひゃい……」

 

 わ、わわ……! 私の身体にに、虹夏ちゃんの素肌が……!

 

「いやーそれにしても背中に当たる感触……。これは最高級のクッションですなぁ」

「い、いやこんな脂肪の塊、何の価値もありませんよ」

「ねじ切ろうか?」

 

 ヴェッ!?

 

「ぼっちちゃんが価値を感じなくても私には感じるんですー」

「あ、はは。で、でしたら虹夏ちゃん以外欲しい人もいないでしょうし差し上げますよ? に、虹夏ちゃんならどうとでも好きに扱って貰っても大丈夫ですので……」

「…………ぼっちちゃんはさぁ、もうちょっと考えて発言しないと駄目だよ?」

 

 ? 何か変な事言ったかな?

 

「ハァ……。まあいいや。それよりも、今日の雪合戦はどうだった?」

「あ、すごく楽しかったです。何回か喜多ちゃんに雪に埋められちゃいましたけど、すごく夢中になって、時間を忘れちゃうくらいでした」

「そっか。よかった」

 

 ……沈黙。え、どうしたんだろう虹夏ちゃん。急に黙り込んじゃって。な、何か話しかけた方がいいのかな。で、でも私から出せる話題何て……。

 

「私さ」

「え、あ、え? あ、はい」

「ぼっちちゃんに笑顔でいてほしいんだよね」

「……え?」

 

 えがお? 私に? どういうこと?

 

「ぼっちちゃんって普段笑わない訳じゃないんだけど、常に遠慮してるっていうか、貼り付けた下手くそな笑顔しかしないじゃん?」

「そう、なんでしょうか……?」

「うん。でも今日の雪合戦の最中さ、ぼっちちゃんは気付いてなかっただろうけど、すごく良い笑顔してたんだよ。何ていうか、無邪気な子供みたいな感じで」

 

 私がそんな顔を? し、信じられない……。

 

「可愛かったよー?」

「う、うぅ……」

「で、さ。その時のぼっちちゃん見てね。ぼっちちゃんにはこれから先もこんな風に笑ってほしいし、ずっと見ていたいなって思ったの」

「……」

「だからさ、リョウも言ってたけど遠慮しないでやりたいこと言ってほしいんだ。皆と一緒に思い出作っていこうよ」

 

 虹夏ちゃん……。そこまで私の事考えて……。

 虹夏ちゃんの優しさに触れたからなのか、私の中の名前の知らない感情のままに、自然と後ろから虹夏ちゃんを抱きしめてしまった。

 

「あ、ぼっちちゃん?」

「ご、ごめんなさい。何だかこうしたくって。嫌ならすぐ離しますので……」

「嫌な訳、無いよ。嬉しい。暫くこうして?」

「は、はい……」

 

 な、なんだろうこれ。胸がすごくドキドキする。今私の胸、虹夏ちゃんの背中に密着しちゃってるからきっと伝わっちゃってるよね。

 暫くの間、沈黙が流れる。虹夏ちゃんが抱きしめている私の腕をスリスリと指先で撫でて遊んでて擽ったいし、何か変な痺れが走る……!

 

「……ねえぼっちちゃん。ぼっちちゃんって私の匂い、好きなんだよね?」

「え、あ、気持ち悪くてごめんなさい……」

「そういうことじゃなくてさ。普段だったらちょっと恥ずかしいけど、今はお風呂に入って綺麗にしたから多分、大丈夫だと思うんだよね」

「……え、と?」

 

 虹夏ちゃんが髪を横に流して、綺麗なうなじを私に見せる。

 

「今なら……、いいよ? 匂い、嗅いでも……」

 

 虹夏ちゃんの言葉に頭が真っ白になる。

 嗅いでもいい? 誰の? 虹夏ちゃんの? 虹夏ちゃんの匂い、私の好きな匂いを嗅いでもいいの? 私の、好きな、私の、虹夏ちゃんの……!

 

「んっ……ふっ……、ぼっちちゃん……」

 

 虹夏ちゃんの首筋を顔を埋めて、大好きな匂いを胸いっぱいに吸い込む。

 ああ、すごい……。もっと、もっと。

 

「ん、恥ずかしい……、でも、ああ……」

「虹夏ちゃん……、虹夏ちゃん……」

 

 胸がドキドキがどんどん早くなっていく、頭がボーっとしていく。どうしたんだろう、自分がどうなっているのか全然分からない。

 

「あっ、ぼっちちゃん……」

 

 虹夏ちゃんを抱きしめて肩に掛かっていた手が自然に下へと、虹夏ちゃんの肌を滑る様に降りていく。どうしてしまったんだ、私は。

 

「いい、よ……。私の、私のも、ぼっちちゃんに、あげ……!」

 

 私の手が虹夏ちゃんの膨らみに触れる。そしてその瞬間。

 

「きゅう……」

「え!? ぼっちちゃん!?」

 

 私の身体から力が抜けた。

 ああ、そうか。この尋常じゃない心臓の鼓動、頭がボーっとしてるこの症状。これ。

 

 逆上せたんだ……。

 

「ぼっちちゃん! 大丈夫!?」

 

 それから虹夏ちゃんが大慌てで応急処置をしてくれた後、私は虹夏ちゃんのベッドに寝かされた。

 何だかすごく惜しいことをしたような気もするし、命拾いをしたような気もする。


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